「ただいま」
エラが家に着いても誰も出迎えてはくれなかった。しかし父親に声をかけられた。
「・・・・・・エラ」
「何?」
「あぁ、そのな・・・・・・、その服は一体・・・・・・?」
「あぁ、これ? 不思議な人がくれたんだ。そんなボロボロじゃかわいそうってね」
「そうか・・・・・・」
父親はご機嫌なエラに一瞬不思議そうな顔をしたものの、特に気にした様子はなかった。
「なぁエラ」
「・・・・・・何だ」
「す、すまなかった。お前が辛い思いをしてたなんて知らなかったんだ・・・・・・、そんな最低な親に貰ったお土産なんて嬉しくないのは当然だな。今度はちゃんとしたものをやろう」
謝る父親を見てエラは言った。
「気にしないでくれ。僕こそせっかく買ってきてくれたお土産壊してごめんなさい。ちゃんと直して使うよ」
エラは明るい声で言う演技をした。父親に謝られてもエラは許すことはできるはずがなかった。
(変わらないね。小さい頃の僕なら謝ったら許してあげてた。でもお生憎様、もう子供じゃないんだ)
エラは自室を盗られてしまった時や非常用として、屋根裏に簡易的な寝室を作っていた。そこは何か嫌なことがあった時に愚痴を吐くにはぴったりの場所だった。
エラはベッドに腰掛け独り言を言っていた。
「辛い思いをしてたのを知らなかったって、わざと置いていったくせにどの口が言ってるんだか。それに謝れば許してもらえるとまだ思ってるだなんてね。
母さんは女神級に優しかったからなぁ、僕が母さんと同じような人間に育ったと思ってるなら大間違いだよ。こんな娘に育って、誰に似たんだか。ちょっとはクズの血が入ってるのかな」
ブツブツと愚痴をこぼしていると、いつの間にかエラは眠っていた。
夜になり、屋根裏部屋の入り口を激しく叩かれる音でエラは目を覚ました。
「ん、僕、寝てたんだ」
寝ぼけ眼を擦っていると継母達の怒鳴り声が聞こえてきた。
「シンデレラ! もう夜よ! いつまでも寝てるんじゃないわよ!」
「早く夕飯作って頂戴!」
「私達を飢え死にさせる気なの!?」
(うるさいなぁ)
エラはゆっくり起き上がり、呑気に伸びをしてから屋根裏部屋の扉から顔だけ出した。
「気が付かなかったよ。でも僕、疲れてるんだ、食事くらい自分でも作れるだろう?」
それだけ言ってエラは扉を閉めた。それでも継母達は扉を叩いて半ばヒステリックになりながら叫んでくる。
「ちょっと貴方の仕事でしょ!? 生意気言ってないで早く作って頂戴!」
エラは屋根裏のベッドの下に隠しておいたレシピ本を扉から落として言った。
「それでも見てご勝手にどうぞ。それも嫌なら父さんに頼んで外で食べるか、飢えて死んでくれ」
エラが黙ると継母達は文句を言いながらどこかへ行った。エラが屋根裏の窓から外を覗くと継母達が出かけて行くのが見え、外で食べることを選んだ継母達にエラは言った
「呆れた、ご飯も自分じゃ作れないとはね」
エラはベッドに潜り込んだ。
(さぁて、久々にゆっくり寝るか。後の仕事は……いいや、父さんにやらせよう)
エラはそう考えて眠りについた。