「好きなタイプ聞かれてボコられるって何?」
「真顔で聞かないでください」
本当に呪術師って変人ばっかだな、と叶木さんはさらりと言うが、アンタだってひとのこと言えないだろ、とは言わなかった。ベクトルが違うだけで、このひともこのひとで相当な変人だ。
「あ、でもそういえば、傑も前絡まれたとか何とか言ってたな。好きなタイプは答えなかったらしいけど、返り討ちにしたって」
アイツ夏油さんにまで突っかかっていったのか。確かに相手が特級だろうが怯むやつには見えないが、それでも馬鹿だろと思う。この分ならおそらく五条先生にも突っかかって返り討ちにされているのだろう。
しかしまあ、と叶木さんはペットボトルを片手に軽く笑った。
「好きなタイプ聞いて人間性確かめるってのはなかなか面白いな。確かに個性出るし、結構いい手かも」
「そうですか?」
「思いがけない状況ってのは素が出るからな。ノリよく答えるか、意図がわからず警戒するか、慌てないけど答えないか、はたまたクソ真面目に答えるか、まあいろいろあるだろ。回答の内容はさておき、どう答えたかのが俺は気にするかな」
まあ、その東堂くんはマジで回答の内容で判断してるみたいだけど、と手元の水を呷る。
さすが特技・人間関係というか、常日頃から多くの人の話を聞いて研究をしているひとらしい言葉だ。しかしそういうもんですか、と相槌を打てば、いや知らんけど、という適当具合。このひと相変わらずだな。
「でもまあ、ほら傑はさっき言った通り答えなかったっていうし、悟だったら多分適当に嘘つくだろ。もしくは『え〜何だと思う〜?』とか言いながら誤魔化すか」
「目に浮かびますね」
「アイツらはそう簡単に腹割らない。警戒心が強く、たとえおふざけの範囲でも、知らないやつに自分の中身なんて見せてやらない。そういうやつらだってことだよ」
いや〜クズだね〜と言う叶木さんに、アンタもだろと反射的に返す。本当に恵ってば生意気に育って、と下手な泣き真似をされたが軽く無視した。そして、何となくの好奇心で思わずそれを口にした。
「叶木さんはどんな女性がタイプなんですか? 男でもいいですけど」
すると叶木さんはお、と面白そうに目を細めて、そうだな、と少し考えた。
「悪運の強いひと」
「……は?」
「別に強くなくてもいいんだけどさ、どんな絶望的な状況でもなんやかんやで生き残ってるようなひとがいいな! 俺好きなひとの葬式とか絶対出たくないんだよ。あと腰のラインがエロければ尚良し」
「その補足必要でした?」
「重要じゃん?」
いやそこで真顔にならないでほしい。呆れた目線を送れば、叶木さんはいつものようにけらけらと笑った。
多分、嘘はついていない。けど、重要な部分は明かさずに、表層だけを掬ったような回答。嘘をつくより、何も言わないより、ずっとタチの悪い答え方じゃないだろうか。
このひともこのひとで、自分の腹の中を見せる気なんて全くないらしい。
「何だよ、ため息つくなんて失礼だな」
「いえ、叶木さんらしいなと」
「よ〜し褒めてないなクソガキめ〜」
「ところでさっきの、家入さんに言ってもいいですか」
「恵、ジュース買ったげるからやめて」
そう自販機を指しながら言う叶木さんに、またひとつため息をつく。
「ちなみに叶木さんはあの二人の好きなタイプ知ってるんですか?」
「いや知らねーよ、ろくにレンアイしてんのも見たことねーし。AVの好みなら知ってっけど」
「この話やめましょう」