カオ転三次 転生者がガイア連合山梨支部を作る話   作:カオス転生三次っていいよね

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数年単位で時間飛ばしました


普通の転生者達

 放課後、ある程度人の帰りだした高校で、こないだ転生者って分かってから友達になった八槙がこそりと声を潜めて話しかけてくる。

 

「なぁ、今日はお前空いてるよな、その、なぁ。

 依頼の方手伝ってくれたりしないかなーって」

「…どうすっかねー、良い感じで組みあがってきたしなぁ、俺のデッカード。

 マッカもあるしフリースペースでって思ってたんだが」

 

 正直貯金は作っておきたいし受ける気でもいたが、あえてそっぽを向いて見せる。

 まぁ実際あとは塗装でこだわり抜いて終わりだから本当でもあるんだが、負けたときの補修代考えるとなぁ。

 

「頼む!あとちょいで俺のサイドラできんだって!」

「お前それこの前とりあえずこんくらいでいいかーって適当やって対戦でむしられたからだろ、ってか声でかいって。

 …あー、なんでもない八槙が金貸してくれって言ってるだけだ」

 

 大声に反応したのかこっちに振り向いてくるクラスメイトにひらひらと手を振って何でもないアピールをした後で、まだ頭を下げている八槙に改めて声を潜めて返事を返す。

 

「わかったよ、ただ早く終わるやつだけだぞ、良いな」

「おぉ…恩に着るぜヒロ!」

 

 話もまとまったとともにカバンを背負い、目当ての所に向かう。

 高校からはそれなりに遠く、町外れの少し寂れた所にぽつんと立つそこだけ妙に窓の光も多く、栄えている感じのするビル。

 一階のこの世界にはなかったはずのブランド名したコンビニではご同類っぽいのがイートインでファミリーだったりLだったりするチキンとか未だ流行っていないエナジードリンクを飲み食いしている。

 

 俺たちもコンビニに入り、適当にチキンとポテチと飲むイチゴヨーグルトとハラスおにぎり辺りを適当に籠に突っ込み、店長への挨拶ついでに買う。

 

「ちぃーっす店長、今日イマキさんとか来てる?」

「こんちわー、あとカフェオレいつものもお願いします。」

「お、ヒロくんにヤマくんか、来てるよ。

 ニトさんにネコイヌさんもね、シドさんからの依頼も来てるから大騒ぎだ、急いだ方が良い」

「いぃ!?マジかよ!急ぐぞヒロ!!」

「あ、ちょ、おい!俺のがまだ」「はいカフェオレミルク砂糖マシマシぬるめ」

「来たな!走れ!」

 

 ここだけで普及している電子マネーでちゃっと払った直後に走り出す八槙に引っ張られ、カフェオレを少し零しながらもどうにか付いて行く…ったく、確かに旨い依頼多いとはいえ。

 

「がんばってねー」

 

 送り出してくれる店長に手を振り返しながら、二階へと駆け上がっていく。

 バック走でダッシュに付いて行けるのは我ながら人間してないよなぁ、あ、ヤベそろそろ階段だ。

 流石に振り向いて3段飛ばしに駆け上がる八槙に引きずられながら数秒で3階まで登り、扉に会員カードを叩きつけて開くと同時に滑り込むと、いつも通りの騒がしさが出迎える。

 

「だぁぁぁぁ!!色が決まんねぇぇ!!乾いたらなんか違うし、上から塗ったら違うし、はげもしねぇし!」

「いやお前それ以前に間接これがっくがくじゃねぇか、走らせたら折れるだろこれ」 

「良いんだよ飛行用なんだから、足とか飾りだ!方向転換用のフィンだ!」

「いやそれにしたってこれ…あ、折れた」

「うぉぉぉいぃぃぃぃぃ!!!?」

「だから最初はキット説明書道理に組めって言ったじゃねぇか、フルスクラッチとか無理だこんアホたりゃぁ!」

 

「っし!バック処理完了、ダイレクトアタックだ!」

「甘い!墓地から罠発動!」

「墓地から罠だとぉ!!!」

「いやお前ディスク弄って確かめてたじゃん、それ言いたかっただけだろ」

「…うん、いやけど、そんな冷えた突っ込みしなくてよくない?」

 

「今日のお目当ては?」

「新惑星でやってる定期の緊急やったあとはぶらぶらかなー、そっちはなんかある?」

「あ、SPオーダーまだとり切ってないから付き合ってよ」

「うぃー、んじゃ俺リーダーやるからついてき」

「あ、僕ちょっと早めにあがるから多分途中で抜けるかも」

「アタシちょっと定期メンテ用のスクショ取りたいから時間とってー、集合版でやりたいんよ」

 

 なぜか全員着ぐるみ姿でゲームを始めようとしてるやつ、塗料と削りカスに塗れながらプラモつくってるやつ、やたらクオリティの高いコスプレでカードゲームやってるやつ、全員が本来この世界にない懐かしい娯楽を思い思いに楽しんでいる。

 しかも全部元だとリアルにはありえなかったおまけつきで。

 ぐるっと知った顔を探していると八槙にまた引っ張られた。

 

「いた!ほらあっこ!やっべぇもう群がられてる、残ってろよぉ!」

「あぁもう、ちっと急いだってそう変わんねえだろっておい!」

 

 引っ張られながら向かう先には人並みに覆われて今は見えないやたら古めいたモンスターをハントする感じの掲示板と、受注用の機械がある。

 …なんで受付嬢じゃなくこっちなんだろうと思って聞いたら受付嬢やりたがるのが居なかったらしい、と言うかいるにはいても覚醒者にならずに稼ごうぜって思ってたら覚醒者の受注者側に詰め寄られて無理ってなったり、体力的に持たなかったりで結局定着しないからセルフになったとか。

 

「いらっしゃいませー、今日も新鮮な依頼が届いてますよー」

「マキさん、時間短めで…えぇと、シドさんかイマキさんのあります?!」

「はい、ありますよー、二人だとこの辺りで、ハイどうぞ―」

「っしゃぁ、受付完了!」

 

 そして案内のマキさんは特に雇われてるわけでもなければ報酬も取ってない癖に妙に強い覚醒者だ、なんだこの人。

 SFチックなオペレーター風ごてごて装飾な服も自作らしい、本当になんなんだこの人。 

 依頼を全部見てて聞かれたら条件と相手の実力に従って渡す上、独占されない様に防いだりもしてるが特に給料も報酬もないらしい、渡そうとしたら逃げられたとか、ほんとなんだこの人。

 

 八槙が受注機に依頼の書かれた名刺サイズのカードと、俺の分も合わせた二枚の会員カードをはめ込むと依頼が消え、俺達の会員カードの裏に依頼名が刻み込まれる。

 確認したいときはちょっと魔力込めて叩けば詳細が浮かび上がる様になっている、慣れたがやっぱり未来に生きてんなこれ。

 

「よっし、ヒロ…ってあれ?怒って…られます?もしかして…」

「いやぁ、散々引き回されて相談なしに依頼決められたってねぇ、怒るわけないじゃないですか、それより次の人の迷惑ですからのきましょうよ八槙君」

「あ、いやー、その、ごめんなさい」

 

 少しばかりイラついたのも確かなので八槙をからかいつつチクチクと攻めていると、大モニターが動き出す。

 お?これは、なんかイベントかな。

 カウントダウン後、仮面に赤いジャケット姿の怪しげな金髪の男が画面に映し出される、やっぱりなんかあるみたいだ。

 

「ごめんってヒロ!報酬の割合7:3で良いからさ!」

「あー、良いから黙っとけ、なんか来た」

「ん?おぉ、イヤァなんだろうなぁ!」

「調子よさげにして誤魔化しても報酬は7貰うかんな」

 

 ぐしぐしと縋りついてくるのを押し返して画面に集中する。

 7割かぁ、これはジェイデッカーまで行けるかもな、報酬良いの選んでたっぽいし。

 

『おはよう諸君、SGAエンターテイメント社長のトロワだ、楽しんでいるところだろうが告知をさせてもらう。

 では早速だが内容からだ、このような怪しげな仮面にいつまでも出ずっぱりになられても詰まらないだろう』

「よ、ロリコン!」

「袖破れよ三分の一!」

「前乱入してきてあっさり俺の00落としていったの忘れてねぇからなこん畜生がぁ!!」

 

「相変わらずえらい人気だなぁ」

「あれ人気か…?」

「罵声も人気だろ、反応無いのが一番なしだ。

 聞こえてないとはいえあんだけふざけたことを社長に言えるんだぞ」

 

 俺や周りがはやし立てたりスルーしてプラモ組んだりデッキを弄っている中でも告知は続いていく。

 あの怪しいのが全国規模の会社の社長で転生者のまとめ役やってるんだからわっかんねぇよなぁ…ガチの人たち曰くすげぇ実力者らしいし、地元の霊能組織ともつながっててそっから引っ張った技術とか資源でこのありえないゲーム群ができてるらしいから凄いんだろうが…

 やっぱ見た目だと日本で一番有名な赤い仮面の情けないロリコンマザコンライバルコスプレにしか見えねぇし、ちょいちょい遊びに顔出すし…

 

『先月のランキングはこのようになっている、そしてこちらが先々月、3月前、見てわかる様に固定化が激しくどうにも後発組や低ランクでのモチベーションが落ちているように思える。

 そこで私達SGAエンターテイメントではこの度直近半年で依頼報酬月5万マッカ以上、かつ3月以上ランク100位以内を続けている場合様々な特権を付与して上位ランキングへ移行することとした。

 特典については技術部への優先的要望権、衣装開発優先権、武器や防具の自由カスタム権、マイキャラクターフィギュア購入権などを予定している、詳しいことは転生者用掲示板公式告知に書き込む予定だ、後で確認してほしい。

 これを機に上位ランカーにはより一層の奮起を、低位ランカーには上位昇格を目指しての奮闘を期待する』

 

「へぇ、ついに対応来たんだ」

「ガチ勢いると勝てないからなぁ…隔離してくれっとありがたいわ、ランク報酬自体はまんまっぽいな」

「いやけど上位のも良いなこれ…目指して見よっかなぁ」

「やめとけやめとけ、お前1893位だったろ、上は格ちげぇよ」

 

 ざわめきも一層激しくなる、それもそうだろう、全国ランキングはなんだかんだで注目の的。

 100位以内報酬は文字道理格が違うレベルの強装備だの、大体のSGAエンターテイメントにある予約式の無茶苦茶効果あるリラクゼーションルーム使用権だとかほしいのばっかだが、ほぼほぼ独占状態で諦められていたのも確かだ。

 これで変動が起こりやすくなる、上目指すのが出だすだろうな、しばらく騒がしそうだ。

 と、暢気なことを思っている俺は隣を忘れていたんだろう、後から思い返すと暢気すぎた。

 

「…くぅぅぅぅぅ!!燃えて来たぁ!行くぞぉヒロ!目指すはまず500内だ!」

「んぬあぁ!?ちょ、おま、反省したんだろひっぱんじゃねぇ?!」

「まずはシドさんの素材依頼で、あとイマキさんの献血な!」

「聞けおめぇ!!報酬8割貰うかんな!絶対だぞ!」

 

 がっとまた腕を掴まれて走り出す、何度目だこれ!

 後ろではまだトロワが話し続けている、後で調べとくか。

 

『またこの度私達の活動実績も踏まえてガイア連合主催の霊能団体向け武術、術式訓練において教わることのできる項目が幾つか新たに解禁された。

 多少のマッカはかかるがそれを踏まえても実り多く、実力向上につながるのは確かだ、希望者はそれぞれの拠点で依頼掲示板から申し込みができる、上を目指すのならぜひ参加してほしい。

 さて、硬いことはこれまでだ、ここからは来月発売する新商品についての発表になる。

 では任せたぞ、広報部長の仁藤』

『アイアイ、ってか可笑しくないですかねぇ、なんで社長に俺の仕事とられまくってんの?

はい、それじゃここからはニコさんからのお知らせでーす』


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