カオ転三次 転生者がガイア連合山梨支部を作る話   作:カオス転生三次っていいよね

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霊装開発

「来、遠隔式対霊兵装開発について聞かせてもらおう」

「あいあいりょーかい、ってもバチバチに順調だよ。

 アンタが想定する相手に操作させるのを考えるとちときついかもしれないけれどね」

 

 いずれガイア連合ですることになるであろう自衛隊との協力において越えなければいけないのが一つ、未覚醒者の戦力化だ。

 いかにも食いついて娯楽として利用できそうな分野で開発できたのも、それを良しとするような経験をした転生者の技術者を引き込めたことは大きかった。

 特殊な素材を使用した模型を覚醒者の操作により遠隔で自由に動かす、それもまるで本当に戦っているかのように大迫力にビームやレーザーや実弾を…そう見える物を出しながら。

 

「かなり小型とはいえ人型に凝りに凝った上で基礎フレームはよっぽど変なのとか1から自作じゃなければタイプ別に複数ある実稼働の縮小版だ、それを全部監視してデータとってで全国規模で月に何十万戦ってくらい戦わしまくったんだ。

 これで成果出せなきゃ嘘だよ、最近出した1/16モデルも高くてめんどいわりに買ってくのが割といたしね。

 研究用のマッカもじゃぶじゃぶ稼いだ分注いでくれてるから足りてる」 

「成程、発展の余地はまだまだあるとして現状の結果としてはどこまでの物ができている?」

「とりあえず覚醒者オペレーターが付きっきりで操作完全装着者任せなら34までの上限はあるとはいえそいつのレベルをそのまま装着者に付与できる、ただ素材にオペレーターの血液を使うの前提にした方が良いねこりゃ。

 あんたの血入りで動かしてるデータ見た感じ安定性も接続強度もふざけたぐらい跳ね上がってる、もしもの時途切れましたなんて洒落になんないし、距離も伸ばせるから無しは考えないでいいくらいだ」

 

 PCに映るシミュレーターモデルを見る限り、確かに距離や環境を変えた場合の安定性が大違いだ、終末で無茶苦茶になった環境で動かすことを考えると血無しでは不安が大きい。

 

「成程、整備に負荷を掛けることになるが…安定性のために必要な犠牲と割り切るか、武装や魔法については?」

「武装に関しては問題ない、もたせりゃそのまま使える。

 ただ現行のガイア連合式使うんなら干渉しない様にある程度相性は確かめておいた方が良いかな、救難信号とか監視機能に緊急時結界保護機能、民間人やガイア連合に向けた場合の自壊機能。

 転生者が使うってこと前提に本人からマグネタイト吸い上げて機能諸々盛り込みまくったウチのあれじゃ別もんだ、武器としての性能もとりあえずレベルなあれじゃ実験にも何にもなんないっての」

「ふむ…なるほどな、まぁそこは任せることにしよう。

 レベル限界については今後の課題とするとして、武装に関してだ、式符については随分と実験したと思うが、あちらはどうなんだ?」

 

 元々地元の組織が術に使う符や巻物、それらから単一かつ単純な術だけに絞る代わりにマグネタイトを注ぎ込めば発動する武器として開発を進めていた。

 魔法を込められた石などとは違い使い手の魔力を食うしかなりのロスもあり、数度使うと摩耗しだすがそれでも十分に強力であり、応用性も高い。

 こちらについてはカードゲームを模して演出付きで実験していたが、どうにも兵装の方には組み込まれていないように見える。

 

「あぁ…ありゃ確かに便利だが、組み込むのは無理だわ。

 干渉しまくるし、元々繊細なだけに戦闘中衝撃受けて歪んだらボン!だ、外付けにするならハナから武器のカートリッジ入れ替え充実させて属性網羅させるのが一番だね。

 医療用キットとして携行するとかそういうのなら使い道もあるかってくらいかな?」

「高望み過ぎたか、まぁ覚醒者が生身で持つ携行武器としての需要はある、費用分の成果は出たと思っておくとしよう。

 対悪魔戦闘シミュレーターも順調だな、よくやってくれた」

「あぁ、衣装スクラッチだのフィギュアだの体型から推測しての理想的なポージングモーションとかが割とボロイ稼ぎになってくれたからね、開発チームが無茶苦茶やる気出してくれたんだよ。

 んじゃ、これが纏めた資料だ、あちらさんによろしく」

「あぁ、礼を言う」

 

 どっしりしたアタッシュケースを受け取り、席を立つ。

 後のことは俺の仕事で、楽しみだ。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

「これが私達、SGAグループの開発した霊能関連技術だ、問題がないかの精査と利用に関する許諾を貰いたい。

 もちろん対価を払っていただけるのなら使用に関する許可もする」

「確かに、まぁ1週間以内に返事ができると思うわ。

 芳澤、技術班に回して」

「はっ」

 

 ばかりとケースを開けて確認する素振りだけして即座に専門家に回す…そういう言い訳で秘書をしばらく離す。

 

「ふぅ、これで気楽に会話ができるわね、数分だけれど」

「あぁ、半年ぶりだな…葵は流石に無理か?」

「いけるけど流石にここに同席は無理ね、道場にいるはずだから訓練担当に礼に行くって名目で動けば会えるでしょ」

「…贅沢は言えないが、会いたかったなここで」

 

 ぼやく義孝についくすくすと笑ってしまう、ガイア連合に居たときと比べて随分寂しがりになったようだ。

 

「あんたウチのから大体嫌われてるものね、そんで葵は無茶苦茶好かれまくってる、と」

「話しかけると引き離しに来る奴らがごろごろいるからな…地元連中はともかく転生者まで同類で、同類の集まる組織作ってバリバリに貢献しまくってる俺を嫌いまくるんだから大したものだ」

「仕方ないじゃないアンタ私と葵以外には性格悪いもん、幹部も幹部なのにウチ出てったし」

「…俺だって傷つかないわけじゃないんだぞ?」

「んふふふふふふふふ、口元、上がってるって気づいてる?」

 

 濡れた犬みたいにしょぼくれて、自分をさらけ出して私にからかわれているのを楽しんでいる姿に、笑ってしまう。

 離れていた間に随分と弱っていたようだ。

 

「っと、足音来たわね、短いけどもうお終い。

 …九条義孝殿、SGAグループの技術は我らガイア連合と自衛隊の大きな助けとなっております。

 深く、深く感謝いたします」

「いえ、我らSGAグループもまた日本の一員、そして何より別の手段を取らんと外に出た身ではありますが未だガイア連合の志は私の中に根付いております。

 私達の磨き上げたものが国を守る一因となるならばこれ以上の喜びはありません」

 

 扉の前に来たであろう秘書にも聞こえるようにそれなりの声で仰々しく挨拶を交わし、別れる。今度会えるのは何時になるだろうか?

 

「どうぞ」

「あぁ、ありがとう」

「芳澤、九条殿は葵に会いたいようだから案内してあげなさい」

「あぁ、SGAグループの人間を鍛えてもらっている礼を言いたくてね、案内してくれるかな、秘書君」

「はい、ではこちらへ」

 

 歩き出す背を、気づかれないようにほんの少しだけ手を振って見送る…さて、五島に連絡入れないと。

 シュミレーターの改善と装甲服の改良は待ち望んでたみたいだし、早めに教えてあげないと訓練日程も変わるだろうしね。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 柄とハバキを外して、するりと静かに拭い紙で刀身を綺麗に拭う。

 油や汚れが取れたらぽんぽんと満遍なく打粉をはたいてまた拭う。

 きっちりと確かめた後で上等な油を塗り、ハバキや柄を戻して収める。

 

 刀の手入れをするのは良い、無心に刀の様子だけを見ているとすぅっと心が静まっていく。

 

 SGAグループ…義孝お兄さんの組織に居る人の中でも飛びぬけた人の訓練を頼まれて行っていたが、やはりどこか釈然としない気持ちと嬉しい気持ちが入り交じる。

 転生者が、本来戦う所以なんてない平和を生きていた人間が天才だからって戦うのは良くない。

 必要だって分かっているし、上に立つ人間としてお兄さんもお姉さんもよく考えた結果なんだろうとは思う、けれど…やはり良くはないと思う。

 狙われやすいから自衛力が居るのは確かだが、そんなもの身に着けなくって良いくらい僕らがきっちりと守れないからだと思うと、どうしようもなく自分の不甲斐なさに泣きたくなる。

 

 同時に、家族や友達を守りたいという強い気持ちで武器を持って鍛え上げて、僕に何度も打ちのめされながらも強くなっていく人たちを見ると嬉しい気持ちになるのは確かだ。

 あの人が嬉しそうに語っていた職場恋愛の末結婚したっていう奥さんは、生まれたばっかりだっていう子供は、あの子が笑いながらやんちゃで馬鹿な奴らって言ってた兄弟や友達は、彼らが守る限り無事だろうって思えるから。

 

 最後にじっくりと検分した後で刀掛けに戻してしゅるりしゅるりと足袋が擦れる音を立てていた廊下の人に声をかける。

 

「どうぞ、手入れは終わっているから用事があるなら入ってくると良い」

「は、SGAグループの九条義孝殿が訓練の礼をと」「悪いが通してもらおう、顔見知りだ」「何を!?」

「良い、芳澤。

 義孝殿とは旧知の仲だ、それに私の実力は知っていよう、短い間でいい、二人で話させてはくれないか?」

「公がそのように仰るというのなら…」

 

 するりと襖を閉め直し、気を聞かせてか防音の結界も張ってくれる今日のお姉さんの秘書官を見送り、お兄さんと向き直る。

 

「久しぶり、お兄さん」

「あぁ…その…綺麗に、なったな、葵」

 

 すごく色々と表情を動かしながら言葉を探してそんな第一声を零したお兄さんに、少し笑ってしまった。

 

「いや、その、笑われるのも仕方ないと思うが、本当に随分と綺麗になった、見とれたぞ」

「ふふ、ありがとう。

 体が育ち切っていないときからずっとヨシツネをしていた時間が長すぎたせいかな、いろんな影響が出ちゃったみたい、女の人みたいでしょう?」

「大丈夫なのか、それは…いや、それならデリカシーないことを言って悪かった、すまん」

「良いよ、気にしてないから」

 

 語りつつ、さっと湯を沸かして戸棚にしまっておいた抹茶を取りだし、お茶の準備をする。

 がりがりと所在なさげに頭を掻いた後に、結局正面にどかりと腰を下ろすお兄さんは昔と比べるとずいぶんと、情けなく見えて、可愛かった。

 

「それで、その、な、葵。

 俺の会社で…転生者のレベル…霊格を自衛隊とかガイア連合のに付与できる装備がもう完成したんだ、普段から鍛えたり協力はいるけど、前線に出さなくって良いようには出来た。

 気にしてただろ、葵」

「そう、良かった、今までのだと付与できる限界が低すぎてどうしても強い相手に通用しなかったからね。

 …うん、良かった、五島さんも喜ぶよ」

「…五島…さんなんだな、いや、何気にしてるんだろうな俺は」

 

 今まではどうしても才能の面で突き抜けた転生者が、相手の突き抜けた戦力相手に必要と言う面があった。

 それが解決して、戦いたくないなら後ろに下げたままでもいいようになった、大きな一歩だ、つい笑みがこぼれてしまう。

 しゃかしゃかと点てたお茶を礼代わりにと差し出す。

 

「どうぞ、お礼の代わり。

 本当にありがとう、お兄さん」

「あぁ、うん…うまい、優しい味だ」

「もう一杯、いる?」 

「あぁ、頼む」

 

 しゃかしゃかと、静かに茶筅の音が響く。

 今度は、落ち着いた良い静かさだ。

 

「…良い、天気だなぁ」

「うん、そうだね」

 

 庭に落ちる日差しはきれいで、ホトトギスの声が響き、ゆったりと時間が過ぎていく。

 

「はい」

「あぁ、ありがとう」 

 

 ぐっと飲み干すと、椀を僕に返してお兄さんが立ち上がる。

 しっかりと落ち着いて、芯も通ったみたいだ。

 そしてもうお別れだ、僕もお兄さんも仕事が詰まっているし、あまり長くいるとよろしくない。

 少し寂しいが、仕方のないことだ

 

「…それじゃ、またな」

「うん、また、ね」




とりあえず転生者の組織化と自衛隊の装備とかの目処もついて一段落なのでまたしばらくお休みして練ります
いつも感想くれるさいあすさん、玉連さん、tea-さん、イワシ4号さん、プルータスさんにぼるてっかーさんとノートルさんと、カシナートの剣さんありがとうございました、励みになりました

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