カオ転三次 転生者がガイア連合山梨支部を作る話   作:カオス転生三次っていいよね

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ガイア連合山梨支部活動録

 思いっきりアクセルを踏んだ車を走らせつつミーティングを行う、まぁ占いで人こないかどうか確かめてるし認識されづらくしたうえで人避け全開で通る道に近寄ることすら避けたくなるようにしてるから問題ない!

 ・・・まぁ思いっきり悪用だけれども異界多すぎてこうでもしないと回る速度が・・・中異界以上の一個抑えればそれなりに効果あるのと違ってウチに回されるような小異界は数が勝負だ。

 

「今日回る予定で今のとこ抑えてるのは6つ、これから私が式飛ばして知り合いに回してもらう予定のが15、発生するはずの異界が8、いつも通り全部潰すわよ。

 移動時間も考えると全部20分以内、思いっきり駆け足で行く。

 ただし4番目と13番目、18番目に行く予定の異界は注意しなさい、多分レベル10は超えてそうなそれなりにヤバイのがいるみたい、着いたときまた言うわね」

 

「了解、補給はどこで取る?」

「5番と14番、食事も用意しておいてもらうからそこで取って」

「わかった」

 

 ガイア連合山梨支部を立ち上げて一月、こうして寝泊りできるように改造したマイクロバス(私一人で受けてた依頼のお金が大体飛ぶくらい高かった)に葵と義孝を詰め込んで小異界つぶしのドサ周りをするのも慣れて来た。

 はっきり言ってかなり無理押しなやりかたをしているとは思っているが、実際問題構成人数3人で拠点もしょぼいにもほどがある霊地と零細にもほどがあるうちの組織で、人の耳目を引きつけて人を集めたり中異界、大異界に入れるような評価を得るには才能に頼った無茶をせざるを得ないのだ。

 戦闘要員の二人がかなり意識高く文句も言わずに付き合ってくれる天才という恵まれすぎた引きのおかげでこんなことができている。

 はっきり言って頭が上がらない、ほんとありがとう。

 

 無茶の成果で若手の中にはガイア連合に協力してくれる人間も増えて来た、中には山梨のまとめ役やってる神社の跡取りなんて大物もいるくらいだ。

 ・・・まぁお父さんに頭抑えられているからほんと跡取りとして動かせる範囲、でしかないがありがたいことには変わりない。

 おかげでこの車に着けている回復術式も改良して二人を万全に保ちやすくなった。

 

 ぎゅぎぎぎとドリフトに派手にタイヤが唸るのを聞きつつアクセルを踏み、ちらりとミラー越しに最低限のミーティングを終えたら即眠りに入っている頼もしい二人を見る。

 万能型で弱点をきっちりついてひるませたり道具さえあれば冷静な判断力で回復、立て直しなんでもござれの義孝。

 あの公式チートのヨシツネ(まぁ外見が某運命なのは置いておく、本人もなんでか分かってないみたいだし本霊が女装でもしたがったと思っておこう)、のデビルシフターな葵。

 ・・・この二人が運よく来てくれて協力してくれている、それだけで転生者数百人なんかより価値がある様にすら思える、私も頑張らないと。

 

 思っている間に最初の異界に着いた、ブレーキをかけて周りに焦げた匂いをばらまきながら止まる。

 さて、後はもう起きだしている頼もしい二人を送り出して根回し裏方仕事の始まりだ。

 

「葵!義孝!ついたわよ、お願い!」

「あいよ」

「一つ目、早く片付けようかお兄さん」

 

 扉を開けて異界を指し示した途端にだん、と勢いよく踏み切って勢いよく突入する・・・もう見えないわね。

 さて、多分・・・10分くらいかしら?

 覚醒者として跳ね上がった身体能力と、慣れを生かして手紙を大量に仕上げて印鑑を押す。

 あとはこれを送って3つ次の異界攻略中に返事を受け取る、地元組織のメンツを立てるために許可を取ったって形はいるのだ。

 まぁ実際は組織内の私らの協力者とか私を買ってくれてる知り合いが即許可して返信を即出しているんだからあってないようなものだが。

 

 ばっと式神にした手紙を送り出すと同時に異界が消えて二人が帰ってくる、よっし間に合った!

 

「おかえり、お疲れ!」

「魔石だ、頼んだ」「ただいま」

 

 義孝が少し疲れた顔で挨拶も無しに魔石を投げてよこし、露出過多美少女ヨシツネになったままの葵が挨拶だけして座席を改造した畳床に転がって即座に寝息を立てる。

 やはり小異界とはいえどこの短時間でとなると相応に疲れるらしい。

 なら後は私の仕事だ、魔石を回復術式の燃料代わりに叩き込んで二人を回復させ始めるのを確認して即座に移動を始める。

 

「次行くわよ!すぐ着くから18分寝てなさい!」

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「次、そこ右だ。少し待て・・・よし」

 

 佳乃の占術で作った地図を片手に悪魔を避けて走る。

 ゲームだったら片っ端から狩るんだろうが・・・消耗を避けないと予定数異界を潰す前に俺たちがつぶれる。

 俺たちが倒す数が減ればそれだけ他の組織の余裕が削られる、転生者である俺たちと現地人の才能格差があるとしても数と重ねた年代は嘘をつかないというのも確かだ、可能な限り生き残らせたい。

 

 異界突入前に教えられた此処のボスの弱点は推定だがアギ、ジオ系は無効、物理耐性持ち、なるほど警戒するわけだ。

 葵と言う絶対的な物理火力を持ち、佳乃のサポートで体力を確保できる俺たちはかなり強いが、物理以外はまだ薄い。

 俺も日埜神社で積んだ多少の修行では小器用さの方を優先していたから火力と言う意味では心もとない。

 

 まぁ、勝つが

 

「この部屋だ、行くぞ!」 

「うん!」

 

 ばきりと音を立てて扉を蹴破り異界の主に相対する、と同時に問答無用でアギをぶち込む。

 

「ガ?!貴様ぁぁぁぁぁ!!」

「聞いてる暇なんてないんでなぁ!とっととくたばれ悪魔野郎!」

 

 口上を言い捨てると同時にアギで怯んだ植物型の異界の主は物理耐性すら無視する勢いの葵に無言の4連撃を叩き込まれ体積が半分に減っていた。

 

「あいかわらず俺の相棒は頼もしいことで!オラ、怯め怯め!」

「ギュゥゥァァァァァ!!!!!」

 

 動こうとするたびに俺がアギを叩き込み、葵が刻む。

 異界の主が沈黙するまで一分と無い速さだった。

 

 さて、力だけはため込んでたおかげでレベルアップもしたが、大変なのはここからだ。

 

「葵、道覚えてるな・・・行くぞぉぉぉぉ!!」

 

 異界が崩壊する前に最短距離で大脱出、それも道中で出会う悪魔を逃げず、仲間に警告する暇すら与えずに殺し尽くしながら。

 深刻にトラエストが欲しい。

 

「右前方!」「了!!」

 

 全速力で音を立てずに走りつつ、途上に探知した悪魔の位置を伝え、葵が切り捨てた直後にアイテムやマッカなどめぼしいものを足を止めずにガメる。

 我ながら大分物欲に染まって見える真似だが、零細のウチには取りこぼしている余裕などないのだ。

 悪魔の血を弾き飛ばしつつバックパックをいっぱいにしていると光が見える、よし!

 

 異界を飛び出すと、佳乃が大分違法改造したマイクロバスから式神を飛ばしているのが目に入る。

 佳乃自身は戦っていない事を気にして俺と葵にこっちがちょっと後ずさるくらいにありがとうねぇありがとうねぇと感謝しまくってくるが、佳乃のバックアップと組織との交渉とスケジュール管理能力が無ければ俺たちは今の10分の1も異界を潰せていたか怪しい。

 自分自身の凄さをもっとわかるべきだと思うが・・・まぁそこもアイツの味か。

 目をきらめかせて俺たちを出迎える佳乃の開けたドアからバスの中になだれ込み、魔石を佳乃に渡して他は全部後ろのボックスに流し込む。

 

「おかえり、お疲れ!」

「ただいま」「ほい魔石」

 

 どさどさとそのまま後ろの回復術式畳に葵とともに寝転がる・・・ヨシツネのままだから良いにおいするし柔らかいんだよなコイツ。

 いつもならこのまま寝に入って移動開始だが、確か次は

 

「次のとこで休憩の準備させたからそこでご飯ね、とりあえず霊薬盛り盛りのカレーとただの牛乳にアイス用意させといたからしっかり堪能しなさい。

 私はついでに武田のとこのと会談してくるわ」

 

「ん、今回は別か、了解」

「・・・わかりました」

 

 佳乃が別になると聞いてあからさまに寂しそうに丁寧語を使う葵の髪をがしゃがしゃと撫でまわし、聞くべきことは聞いたと改めて寝に入る。

 

 この一か月・・・ずっとこんなだ。

 はっきり言って相当無茶苦茶に無茶をやっているだろうなとは思う、だが俺には充実していた。

 異物感を感じていた家族ではない家族ではない、才能も価値観も生まれも同じ相手と、同じ目標を持って全力で能力を思う存分振るう・・・あぁ、この時間が続けばいいのにと思う。

 

 少し物思いに耽っていると、眠っていないことに気づいた葵が寝ぼけ眼にさっさと寝ろとばかりにとんとんと背中を叩く。

 はいはい寝ますよっと。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

「お疲れ様ぁぁ!!今日も目標完遂!ありがとう!ほんとにありがとう!」

「佳乃の方こそな、お前のサポートのおかげでやれた。ありがとう」

「えぇっと、それじゃ僕も。お兄さんのおかげで刀振るだけに集中できたからありがとう」

 

 ちょっと一瞬だけ顔を見合わせ、笑いあってお姉さんの入れてくれた霊草のお茶を飲む。

 元々は悪魔の起こす悲劇が許せなかったから・・・僕みたいなことが無いように、みんなを守るためにこの力を使える組織を探していたらちょうどよくあったからってだけだった。

 けれど、今は正直ここ以外なんて考えたくなかった。

 

「っくぅぅぅぅ!これ、見てよ義孝ぁ!霊装専門の呉服屋が協力したいって・・・ガイア連合に参加したいって!200年の老舗よ!」

「おぉ、すっげぇな。しかも富士の方じゃないかこれ、武田のとこに収めてるってマジのこの辺りトップか」

「そう!そうなのよ!しかも跡取りが、なんて灰色じゃないわよ!全面協力、秘伝だってガチの守秘義務以外は持ちだしてくれるって!くぅぅ・・・」

「お姉さん、泣かない泣かない、ほら」

 

 感極まって涙を流すお姉さんの顔をハンカチで拭う。

 そして離すとニヤリと笑みを浮かべたお姉さんに思いっきり抱きしめられた。

 

「ひゃん?!」

「あぁもう可愛いわね、うちの最高戦力はぁ!お?これ変身してなくても女の子っぽくなって来ちゃってないかなー?うぅぅーん?」

「酒でも飲んでんのかてめぇは!?」

「おぶふ!」

 

 むにむにといやらしい笑みを浮かべたお姉さんに胸を揉まれて困っているとお兄さんが湯のみを振り下ろした。

 倒れたと思ったら突っ伏したまますぅすぅと寝息を立てだした・・・疲れてたのかな?

 

「あー、運んだらとっとと寝るか、明日もあるしな」

「うん、それじゃお布団敷いておくよ」

 

 ぱっと寝室に入ると、空気が違う。

 霊地としては相当に貧弱なこの日埜神社で、名家らしい武田某さんの所の休憩場より凄いものを用意できるのはお姉さんの腕だろう。

 僕らを集めるために全力で動き続けていたり、こんなことができるくらいしっかり努力して学んでいたり、正直あの熱意には頭が下がる。

 だからこそこのガイア連合が発展していく喜びもひとしおではしゃいじゃったんだろうなと思うと、困っているよりぎゅって抱きしめてあげるべきだったんだろうか?

 それじゃお兄さんが反応に困るかな?

 

 考えつつたたんでおいた布団を敷いて整えていると、お姉さんを寝かしたであろうお兄さんが来る。

 

「おつかれさま、それじゃあおやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

 

 隣り合った布団で眠り、軽く手を握る。

 うっとおしいと思われるかもしれないが、悪魔と殺しあっている日々の中では、どうしようもなくこの温もりが恋しくなってしまう。

 暗闇の中でお兄さんがふっと笑い、手を握り返してくれる感触を楽しみつつ目を瞑る。

 

 さぁ、明日も戦えない皆のために、悪魔退治だ。

 




ナチュラルに転生者以外を自分の心許せる相手と思えなかった義孝は転生者3人で擬似家族みたいにワイワイするの一番楽しんでます
葵は前世と今世の家族に悪いと思いつつも二人の温もりにかなり絆されて家族扱いしだしてます
そして佳乃は二人との出会いを毎日3回出会いの神様に感謝してまふ

あと小異界でも現地勢だけだと基本的に耐久して悪魔漏らさないようにしつつ長々儀式してようやく鎮める(中身生きてるし、大元に手を出せてないからからちょいちょい再発)異界の主討伐の場合も儀式や霊具で脱出まで閉じないようにしてたら悪魔も…で被害が出たり逃げられたりしてます
そのあたり一切なしで突っ込んで首狩ってとっとと逃げて異界崩壊に気づかせず中身異界ごと全滅×多数してる二人はマジの怪物級扱いですね

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