カオ転三次 転生者がガイア連合山梨支部を作る話 作:カオス転生三次っていいよね
「ですから河口湖異界への突入許可を貰いたいと言っています!
盟主である日埜とその側近の実力は分かっておりましょう!」
「分かっている、だからこそ出せんと言っているのだ!
お主らの気持ちも分かるがあの異界は代々河口の家が管理している伝統的な修行場だぞ!」
「今そんなことを言ってどうなるというのです!活性化の影響で分家から集めた人間は何人死にました?
家が滅んでからは遅いのです!」
「だとしても譲れん一線がある!確かに被害はあるが後代のことを思えばこれだけは譲れんのだ!」
「その古い考えが気に食わないと言っています!
我らガイア連合、家々から持ち寄り磨き上げた英知を持ってすればより新しく効率的な修練とて可能となりましょう!
後世のためと言うのならばそれこそが後の為です!」
「それが本音か若造が!!
何でもかんでも新しくすれば良いというものではない!
帰る場所がなくなってから泣いては遅いのだぞ!!」
「泣けるのも生きているからでしょう!
場所にこだわって泣くことすら出来なくなりたいのですか!」
山梨の霊能者を纏めている武田家の跡取りと現当主がひたすらに怒鳴りあっていた。
この家の事ばかりではない、ガイア連合、その理念と眩しいばかりの活躍は若者の目を眩ませるに十分だった。
際限なく増え、強くなる異界と悪魔。長年共に鍛えて来た親戚が死に、知った顔の精鋭が死に、友の父母が死ぬ。いずれは自分もそれに加わるだろうと薄々思いながらそれでもと必死に足掻いていた・・・そこに現れたのがガイア連合だった。
伝統や家の決まり、規律に縛られず、実力者を取り込み使いこなす。車と言う近代技術と今まで日埜の家が積み重ねてきた術式を組み合わせることによる高速移動と回復の両立。異界と言う霊的資源でもある場所を一切躊躇わずに潰す果断さ。
何もかもが求めていたものだった、こうすればいいのだと思いながら伝統と家の柵に縛られて諦めていたものが…メシアの介入で失われた筈の物がそのまま目の前にあった。
山梨の霊能者は誰もが思った、日埜の麒麟児がやってくれた。あれこそが希望だと。
今や若手の多くはガイア連合に合流し、残った者も心情はガイア連合に寄っている。武田の跡取りである義嗣もその一人であり、もっとも初期にガイア連合への協力を始めた男だ。
小異界をほぼほぼ制圧し、今現在も改良された霊装と、新たに作り出された修行により随分と腕を上げた連合の者たちが生まれ出る異界も順次制圧している。
ならば次はそれぞれ家々が重要な修行場であり採取場として利用してきた中規模以上の異界への挑戦となるのが自然な流れであり、その交渉を山梨異能者総代である武田家当主と・・・父と行うのが義嗣に任されたのも自然なことだろう。
しかし交渉は平行線であった、どちらも自らの正しさを信じるが故に一歩も引かない。
刀を抜いていないのが不思議ですらある。
そして今、いよいよ決裂した
「ここまで話が分からないとは思わなかった!これ以上話しても時間の無駄だ、失礼する!」
「とっとと出ていけい!!このバカ息子が!」
バチィと派手な音を立てて襖が閉じられ、どかどかと乱暴な足音を立てて義嗣が去ると程なくして老いた召使が茶を運び込んできた。
「相も変わらず大した演技でありますな」
「何、この程度も出来んなら当主などやっていられるものではない」
ずずっと音を立てて茶を啜る顔には先ほどまでの血気盛んな様子のひとかけらすら残っていない、それどころか穏やかで笑みすらある。
それもそのはず、そもそも彼にガイア連合への隔意も、新しい技術を作り上げようと走り回る息子たちを止めるつもりも無い。それどころかなんと頼もしい者たちだと諸手を挙げて喜んですらいるのだから。
ただ武田の当主として、山梨霊能者総代として様々な問題を抑えるために反ガイア連合の立場を取った方が良いからそうしているだけでしかない。
「それで、河口の翁は頷いたか?」
「いえ、跡取りの方はそれとなく誘導すれば転ぶでしょうが、流石に爺になると頑固で困りますな」
「はっはっは、お前ももう爺だろうに、今の義嗣の様子をみていたのだ。
宥めているがどうにも止まらんと弱り切った顔の一つもすれば一つや二つ手放す気になるだろう。元々家内でも突き上げられている筈だ」
ガイア連合へ合流する若者は多い、だがやはり科学技術に手を出すことや、いずれ表にも介入してそちらの技術も使うと言っている事、霊地と霊地のはざまという空白地帯の抑え兼周囲の家への傭兵稼業でどうにか食っていたと言う極めて低い家格である日埜の娘が盟主と言うこともあって反発する老人もまた多い。
それら反ガイアを抑えつつ譲歩を引き出し、じわじわと誘導するのにはやはり同じように息子に反発されているほうが都合がいい。
惣領として期待を掛けている息子が若者らしい熱病に冒されて困りつつもどうにか舵取りをしている総代に、厚顔になれる人間と言うのはそうはいない。
「後はいつも通り盗み見しやすい所に何冊か置いておけ、頼んだぞ。
私は日埜の娘に手紙を書く」
「では今度は多少奥の方から持ち出しましょうか、あれだけ頭に血が上っていれば多少の不自然も見逃してくれそうですな」
茶を・・・ガイア連合で開発された霊水化術式ポットを使って入れられた以前より格段に美味く効能の上がった茶を飲み干して筆を持つ。
「さて、次は長野と静岡あたりへの伸張でも勧めるとするか、十分にこの山梨の術は修めただろう」
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「なるほど・・・確かに手を広げるって意味ならそっちも良いかな、流石に武田の小父様は目端が広いわね」
現地の霊能者を引き入れに引き入れ、ガイア連合山梨支部はそれなりに順調に拡大していた。
覚えている前世からすれば随分とアナログ気味な面も多いが、そこは転生者と言う才能のあるぶっ飛んだ頭した劇薬を寄せ集めたのではなく現地の真面目な霊能者が主軸だからだろう。
現代技術と霊能技術、それぞれ秘匿された家の技術の融合、それらを学んだ才能ある技術者に十分な資源を与える。
なにせ全国規模どころか世界規模の話、技術による平均値の押し上げこそが正義だ。
ただ問題は資金だ、占術と前世知識と言う強みを使って株式投資や先物で資金も調達しているが・・・なにせ前世ではこんなの最大規模でぶん回した上で大富豪と言う立場持ちの転生者が複数共同してやっと世界対応できるようになったのだ。
いずれは海外にも手を伸ばすのだ、それを考えれば今のうちからそっちの伝手も持たなければ行き詰るだろう。
「怪しい新興カルトの親玉として表の人間たぶらかすっていうのも外聞悪いけれど仕方ないわね・・・」
悩みつつ時計を見ると、時間だ。
武田君を交渉に出せば河口湖支流異界を潰す許可が貰えると事前に決まっていた、そのために葵も義孝も、配下になった霊能者達も準備させている。
組織として成長し、大勢の人員が増えた中で初めて中異界を潰す。
つまるところ鍛錬の好機であり資源調達の好機であり実力アピールの好機である。
回復術式による陣地構築に徹底的な集団戦術で一切の悪魔を漏らさず足止めし、その間に葵と義孝による首狩りで終わらせる。1日フルに使う大作戦である。
他県への勢力伸長を考えればここでのアピールは大きい、特にトップの天才3人だけがすごいのではなく、家々から持ち寄った技術を合わせて平均値を押し上げたという組織としての力のアピールは絶対に必要だ。
近場なればこそ交流のあった人間も多い、家にいた時とガイア連合に入ってからの変化はよく見えることだろう。
「フフっ我ながら・・・よくもまぁこんなこと考えられるようになったものね」
元々ただの大学生から転生して、ガイア連合何て怪しげな名前の組織でサーバー管理やってただけのちっぽけな小娘が・・・
転生者としての才能こそあれど、本当によくもまぁここまでこれたものだ。
これも全て葵と義孝のおかげだ、あの二人が居なければ私など早々に折れていただろう。
「さて、行きましょうか、みんな待っているわ」
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今回の異界はすごいとこだった、異界の存在強度も高いから主を倒して脱出するまではいつもより猶予があると聞いてはいたが、それでも不安になるくらい広い。
方々回りながら悪魔を入り口のガイア連合のみんなの元へ誘導していたとはいえ、僕とお兄さんの二人で異界の主にたどり着くまで20時間かかるのはちょっと尋常ではない。
それに敵の質も凄まじい、小さい異界なら主をやっていそうな悪魔が平然とそこらを出歩いている。
正直入り口が心配になるが・・・お姉さんがやれるしやらなきゃいけないって言っていたのだ、信じるべきだろう。
それでもとそわそわしているとぽんとお兄さんの大きな手が頭に置かれる。
「信じろ、佳乃がやるって言ったんだ。あいつが失敗したことがあるか?」
「・・・最初、僕らを集める時」
「はっはっは、だがそれ以外はみんな成功してきた、心の余裕さえあったらあいつは失敗しないさ。
そんなアイツが堂々とした目でやるって言ったんだ、絶対成功する。俺たちはそれを信じて動けばいい」
頬を手で覆われてお兄さんの力強い目と見つめあうと、心が静まっていく。
そうだ、僕らの仲間でリーダーを、僕らが信じないでどうするんだ。僕らは僕らの仕事をきっちりやればいい。
「ありがとうお兄さん」
「いいさ」
ざくざくと歩き出せばもう、悪魔は粗方誘導を終えて異界の主の気配が近い。
刀と体の感触を確かめ、ゆっくりと力を入れていく。
(八艘飛びは・・・まだ未完成だけど使うべきか、逆落としはあまり意味がない。
魔石に霊薬の準備もできている、刀も万全、よし)
「行くぞ!」
「うん!」
ドガっと音を立ててお兄さんが扉を殴り開ける。
主との決戦が始まった
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力の抜けた葵を背負って、悪魔もおらず崩壊までの時間も長くといつもよりずいぶんと余裕のある異界の崩壊から抜け出す。
中規模異界の主が強化されているという事の洒落にならなさがよくわかる強敵だったが・・・それでも葵は強かった。
ヨシツネ・・・というか牛若丸か?のデビルシフターとしていつか使えるようになるとは思っていたがまさかこんなに早く八艘飛びを目にできるとは。まぁ反動で随分と消耗したようだがこれからは少し俺たちは休みだ、後は異界を出て勝ったとアピールするときだけしゃんとしてくれればいい。
これでガイア連合はまた一段成長できる・・・俺と葵と佳乃の組織が、また一歩先に進む。
「ありがとうな、葵」
「お兄さんこそ・・・ありがとう」
「ふん、疲れてるんだから休んどけ、そんで俺の感謝だけ受け取っとけ」
「なにそれぇ」
ふんわりと柔らかく小さな最強の相棒の体をよりきっちり抱えなおし、休みやすくする・・・本当によくやってくれた。
ざくざくと歩を進めていると悪魔の血の香りと光が見えてくる・・・着いたか。
「さて、行くぞ葵、凱旋だ」
「うん」
くっと力を入れて自分の足で立つ葵を、見えないところまでは支えながらゆっくりと前に進む・・・出た。
わぁぁぁぁぁと大きな歓声と、佳乃が出迎えだった。
「河口湖支流異界・・・討伐、完了だ」
「ただいま」
「えぇ・・・えぇ!お帰りなさい!」
がっと二人まとめて抱きしめられて、祝いの宴会が終わるまでずっと抱きしめられたまま過ごすことになった・・・あぁぁ、気心知れた女二人(かたっぽ中身少年だけれども)の割とある乳×2で顔が緩むけど緩んだら周りから殴られる地獄よ・・・
義孝はもう完全にトゲ抜け落ちて二人にデれまくってます
佳乃は元々転生者として才ある側だったのが完全に覚醒しました
葵は実のところ誰か身内が死ぬとバリバリダメージ受けるので今回一番やばかった枠です
あと追記するなら河口湖異界は本体(元中異界、現大異界)嘯川や新倉掘抜等にある異界(元小異界、現中異界)で今回攻略したのは川の方ですね、本体は河口家が生贄や貢物も駆使して鎮めてます
そして会談の様子は常に式神通して他家に見せてました、ブチ切れたと見せかけた時にまとめて気迫で壊しましたが