カオ転三次 転生者がガイア連合山梨支部を作る話   作:カオス転生三次っていいよね

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葛葉葬儀

「これで宗谷岬異界も制圧した、お前らが山梨まで来られる余裕は出来たな?」

「あぁ、十分だ。

 だけれども、なんでここまでする?ガイア連合の噂は聞いているがまだうちに来るほど勢力圏は広がっていないはずだ」

 

 訝し気に問うのも最もだろう、北は新潟が完全制圧に向けての一歩目、山形にわずかに手を掛けたかと言うところなのだから。

 ここでこうして異界を潰したとしてもその間に継続的な支援策や勢力の安定、強化を行うことができなければまた異界が生まれるだけだ、これは本当に一時の余裕を作る対症療法でしかない。

 

「これを読め、そうすれば分かるだろう」

「手紙?一体何が・・・なんだと?おい、これは本気か?いや…正気か?」

「あぁ、本当で、本気で、正気だ」

 

 目の奥にはわずかな喜びと、大きな恐れ、戸惑いの色も多く感情がぐちゃぐちゃになっているのが丸見えだ、仮にも長がこうなるとはな。

 

「メシア教が黙っていないぞ、それにいくらガイア連合と言えど・・・南の方も未制圧の異界がどれほどある?

 出来る余裕だって今の状況なら一月もあるかないかだ。

 間に合うとは思えないが」

「間に合わせるさ、それにやらねばならんことは分かるだろう。

 このままと言うのは余りにも彼らの献身を侮辱している」

「あぁ・・・分かるさ、参加させてもらうよ・・・俺たちだって、望んでいたことだ」

 

――――――――――――――――――

 

 

「国内メシア教過激派は抑えたわね?

 教会施設から偽報を出せる限り出しなさい。天使経由でバレるでしょうが国へのごまかしさえ効けばとりあえず無茶はできないはずよ。

 天使だってまだ高位が出るには戦場で異界との境が緩んでいるか依り代を使うかでもないとできないはず。

 あとこっちに着いた元メシアンと根願寺の伝手で大使館と交渉、そっちには私も出る」

「京都からは許諾の返事が来ました・・・しかし、よろしいのですか?」

「うちに置いといたって気が休まらないでしょうよ、帝都はこれから荒れる。

 なら葛葉始まりの地に眠らせてあげるのが一番でしょうよ」

「えぇ・・・そうですね、安らかに眠っていただきたいものです」

 

 河口の爺様はともかく、姉小路が無茶してくれたからわりときついわね・・・けれどまぁ海外からの報告も合わせて見るにあっちもいい加減に手いっぱいの筈。

 巨大すぎる組織故に広げすぎた版図全てが荒れていることで削られるリソースも多い。 

 なら後は力を示した上である程度の取り繕いさえすれば向こうとしても荒れさせようとは思わないだろう。

 もしもの時のために手も打った・・・成功してくれればいいが。

 

「盟主様、バチカンからの返書です」

「・・・よし!!これで抑えが楽になる。

 秋葉!文字通りの錦の御旗よ、広められるだけ広めなさい。穏健派ならこれで行けるはずよ!」

 

 人の手指や目、骨を埋め込んだあからさまな邪教の姿・・・メシア過激派の敵対閥からすれば政治闘争の絶好の材料だとは思ったが、高く買ってくれたようだ。

 

「四国、土佐を公が抑えました、これですべてです!代表格はすべて参加の意思を示しています!」

「返書書くから筆と紙!今すぐ最上級のを用意しなさい!!」

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

「葛葉四天王の葬儀・・・だと?」

「えぇ、この日本に住む全ての者はあの方々に恩があるはずです」

「分かっている!分かっている・・・だが」

 

 桜島を望む屋敷で島津家当主と、自らの宿した義経の官位に相応しい正装姿の葵が語り合う。

 どこまでも静かに、しかし凛と日本の恩人達を最大の儀で持って送り出さんとする意思を曲げずに説得を繰り返す葵。

 メシア教や根願寺への配慮をせねば何が起こるかわからぬと家を守るために頷かぬ当主、平行線であった。

 

「メシア教は恐ろしいぞ・・・奴らが何をしたかは知っていよう。

 そんな奴らが直々に滅ぼすべき神の敵として全霊を掛けて討たんとした葛葉の方々、それを弔うという事が・・・どういうことか分かっているのか?」

「分かっています、だから盟主も・・・佳乃も全力を尽くして政治工作を行っているのですから。

 それでもやらなければならないことです、日本の霊的国防のために働き続け、日本の命脈を繋ぐために自死を選んだ誇り高き英霊。

 彼らに安らかな眠りを与えることができずに何故胸を張って日ノ本の民であるなどと名乗れましょう」

 

 背筋をまっすぐに保ち、語る葵の目には一欠けらの迷いや淀みもない。

 その澄んだ瞳に映るぐにゃりと懊悩を示すように折れ曲がり、迷い続け、淀みに澱んだ島津の身の惨めさを本人に教える。

 

「どうしてもやるというのか」

「無論」

「メシア教がどうしても収まらず血を求めればどうする」

「敵を斬れば収まるというのであれば敵を。

 自らの腹を斬れば収まるというのであれば腹を斬りましょう」

 

 はぁっと・・・ため込んだ何もかもを魂ごと吐き出すような重い息とともに落とし、ぐっと足腰に力を入れる。

 

「・・・島津はガイア連合に下り、葬儀に参加する」

「ありがとうございます」

 

 花のような笑顔と、最上の美しさを持つ礼であった。

 

「それでは、不作法ながら失礼いたします。

 まだ一つ、行かねばならぬところがあります」

 

「そうか、船はいるか?」

「いえ、飛行機を抑えておりますので、お気遣いありがとうございます」

「あの地は未だ大戦の亡霊が荒れ狂って居る・・・真に島に着けたかどうかは確かめておけよ、いくらお主でも飛行機に包まれたままニライカナイに沈んではどうしようもあるまい」

「忠告、有り難く」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「良いのですか?キョウジ様」

「良いも悪いもない、これが今までキョウジを名乗っていたものとしてやらねばならんことだ」

 

 白装束に身を固めた一団、その全員が元は葛葉であり、ヤタガラスであった。

 送られてきた手紙にはただ、これから葛葉四天王の葬儀を行う事。メシア教から遺体を取り戻すために関係を悪化させかねない事。可能な限り抑えるからそれに協力してほしいという事があった、それだけがあった。

 招待の言葉は一つもなかった。

 

 根願寺として・・・葛葉として、ヤタガラスとして、その残党として、葛葉キョウジを名乗る者として、蓄えた何もかもを使った。

 財貨を、伝手を、情報を、霊具を、霊薬を、文字通り使えるもの全て使い果たして、国外関係は最低限の安定を得た。

 

 ならば後は、この身の義務を果たすのみである。

 

「ガイア連合・・・いや、地方の全ての霊能者は私達を許しますまい」

「可笑しなことを言う、貴様は自らの不甲斐なさを許せているというのか?」

「いえ、しかし」

「良いのだ、我らは全てを明け渡して腹を切ればいい。

 日和見の爺どもとてもはやどうにもならんことを悟れば諦めもしよう。

 それだけの後継が生まれてくれた・・・」

 

 霊的国防組織としての地位も、対メシア教工作の合間にどうにか認可を得た。

 もはや後の憂いなどない。

 

「・・・あぁ、見ろ、気持ちの良い空だ」

 

 空は、どこまでも青く澄んで晴れ渡っていた。

 

 

―――――――――――

 

 

 葛葉四天王の葬儀はガイア連合の山梨拠点にて行われることとなった。

 

 帝都にあったヤタガラスや葛葉の拠点はすでに焼け落ち、重要なものは残さず持ち出されていたが、僅かに持ち出された物や年嵩の者の記憶をもとに可能な限り再現し、神棚や祖霊舎が再現され、代替とされた。

 遺体はそれぞれ百を超える数に切り刻まれており修復は困難を極めた、しかしそれぞれの顔を知る老人や隠し持っていた写真などの参考資料も活用し、ついにはほぼほぼ完全な復元を為された。

 遺体は北枕に安置したのちそれぞれの地方から集められた最高の米、塩、水、酒、四天王それぞれの好物を祭壇に備える。

 

 納棺の儀も恙なく終え、地方代表者数千がそれぞれに祭詞、祭文を唱え。また腕の限りを尽くし雅楽を奏でる。

 ・・・玉串奉奠にて涙を堪え切れず泣き崩れるものも多く、人数も人数であるためこの時点で1日が過ぎた。

 

 葬場祭も終わりに近づき、これより火葬祭に移らんとする時の事だった、葛葉キョウジが招待無く訪れたのは。

 

 

「止まれ、止まれい狼藉者がぁ!」

「ぬぐ!!済まぬがこちらにも為さねばならんことがある!」

 

 葬儀の場にて血を流すわけにもいかぬと無手により制圧せんとする警備兵は、命すら惜しまぬと言わんばかりの勢いでキョウジの道を開くために縋りつく彼の部下たちを殺すこともできず、ついには声の届くところにまでキョウジの侵入を許していた。

 

「双方止まりなさい!尊き方々の霊前よ、騒がしくすることは私が許さない」

「盟主、しかし」

「いいの」

「・・・ははぁ!」

 

 ざくざくと玉砂利を踏みながら、佳乃が服も乱れ、骨も多少外れている節のあるキョウジに近づく。

 

「何故、ここへ?貴方は確かにメシアの抑えに協力してもらった・・・けれどもこの葬儀に顔を出せる立場であると思って?」

「分かっている・・・それでも来た」

「いったい何を・・・」

 

 戸惑う佳乃の眼前にてキョウジが膝を折り、額を玉砂利だらけの地に擦り付ける。

「不肖の身ながら葛葉が一家を継ぐものとして、奉る。

 もはや力なき我ら葛葉に変わり、どうかこの国をお守りください・・・新たなヤタガラス、日埜佳乃殿」

「・・・・・・」

 

 無言のうちに佳乃の額に汗が流れる・・・重い、余りにも重い言葉だった。

 誰もが事の成り行きに注目していた、風の音すらうるさいほどに静まり返っていた。

 

 白装束を着込み、この場で額を地に擦り付けたキョウジの覚悟は余りにも明らかである、彼は死ぬ気だ、命を懸けてきている。

 

「ヤタガラスは・・・継がないわ」

 佳乃が絞り出すように言葉を紡ぐ、ぴくりとキョウジが震え、会場にも落胆の色が漂う中で他の誰かが言葉を発する前に佳乃が続ける。

「私は、私達はガイア連合として確かにこの国を守る。

 ・・・だから、もう眠らせてあげなさい、葛葉も、ヤタガラスも、祖霊たちも・・・後は私がやるわ」

「その言葉、葛葉として確かに聞き届けた。

 日本を、どうかお頼み申す」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 葬儀の何もかもが終わった後の夜・・・ひたすらに葵に縋って泣いていた。

 

「なんで、なんでみんな私に背負わせるのよぉ!なんでだれかが背負ってくれないの?

 私なんてちっぽけな占い係でいいじゃない、サポート役でいいじゃない!覚悟がもっと決まっているのも、頭が良いのも、力があるのだって・・・何人もいるでしょう!」

「うん・・・うん、つらいよね」

「葵と義孝と・・・三人だけで走り回っていたかった、何にも背負わずただ強いだけで、異界を潰して凄いなんて言われて、上に立つ誰かに従ってたまに案だしたり取り入れてもらえるだけの端が良かった」

 

 我ながら情けないと思う、だけれども止まらなかった。

 やらなければならないと思って動き出した、正しいと思うことをし続けて来た、必死で走った・・・気づけば背負うものだらけ。

 吐きそうだった、重かった、私の一挙一動で誰かの生死が動く、組織が動く。

 私なんてこんなものだと分かってくれているのもふたりだけ、泣いて良いのもこの私室だけ。

 

「やめちゃいたい?」

「うん・・・けど、駄目だから、それは絶対に。

 みんなみんな私を信じて尽くしてくれてる、いろんなものを捧げてくれてる、なら、つらいからってやめちゃ・・・多分私が私を許せない」

「そうだね、お姉さんは真面目だもの」

 

 ひっひっと情けなくしゃくりあげ、涙で顔を汚しながら6つも年下の本来まだ中学校に通っている年の子供に頼り切り、縋りつき、泣きわめく。

 どうしようもなくみっともない、けれどそうしなければ本当に折れてしまいそうだった。

 ショタおじのような本物の英雄だったらと思う、知っていたから動けただけの私なんかよりよっぽどふさわしい人がいると思う、けれど辞めることだけはもうできなかった。

 

「なんで、転生者もみんなみんな辞めちゃうのよぉ、私の10分の1も辛い思いしてないじゃない、義孝や葵の100分の1も戦ってないじゃない。

 私みたいな普通の女にも耐えられたのになんで逃げるのよぉ、背負ってくれたっていいじゃない。

 一緒に戦ってくれていいじゃない、前はあんなに馬鹿みたいに楽しそうに戦ってたじゃない」

「仕方ないよ、戦うことはほんとはつらいもの、それを何かで誤魔化せなくなったら戦えなくたって」

「馬鹿ぁ、ばかぁ、使命感とか持ちなさいよ。死んじゃうのよ」

 

 自分でもわかっている、私が前世でやられたら諦めるだろうとも思っている。

 もっとじっくりやるとか組織内で嫁や婿を斡旋して後戻りできなくするとかもっと上手いだまし方だってあるだろうと思う。

 それでも、厳しい世界を知って協力してほしかった、つらい事ばっかりだってことを誤魔化さずに知らせて、縛り付けもせず、協力してほしかった。

 

「転生者もっとすごいやつも立場あるやつもいるのよ!シベリアやイランに金突っ込んで石油の権益山ほど得た大金持ち、情報技術40年進めた怪物、信濃にだってワタシ達から隠れてたけど跡取りにありえないくらいの天才がいた・・・転生者がいた!

 なんで私なのよ!なんで知識あるってだけの私ばっかり動いてるのよ!アンタら凄いじゃない!動きなさいよ!もっとすごいことできるでしょう!」

「けど、今は協力してくれているよ、始めるのがつらかっただけで動きたくないわけじゃなかった」

「最初っから作りなさいよぉ・・・特殊部隊でも家のを鍛えて精鋭にするでも・・・なんかできたでしょ、なんで稼ぐだけなのよ、なんで自分鍛えるだけなのよ」

 

 八つ当たりだ、私だって動き出すまではショタおじに乗っかるつもりで、日埜神社の娘として鍛えていただけだった。

 転生者同士でコンタクトを取ろうともせず車を弄ったり前世知識で術を改良して天才って呼ばれて気分良くなったり・・・

 分かるのだ、鮮烈な切っ掛けなく正しいから、やるべきだからで環境を変えてしまおうと努力を始められるのはすごい事だって。

 私みたいな反則女でもなければ初期も初期に危機感持って動きなんかしなかったって。

 

「根願寺だって、なによ今回の責任を取るために中枢みんな・・・腹切るって。

 全部私たちに任せるって・・・もっと生き汚く足掻きなさいよ、なんであんなすっきりした顔するのよ」

「あの人たちだって国を守りたかったんだよ、それで、僕たちを生き残らせるべきだって思ったんでしょう」

「国外逃亡とか企てなさいよ、なんで死ぬのよ、馬鹿、命を大切にしなさいよ・・・死にたくなんかないでしょ、馬鹿ぁ」

 

 メシア教や国への面子を立てるために、根願寺の重役は腹を切った。

 外交的にも、帝や政治家に対してもガイア連合にすべてを譲ると何もかもの手続きを終えた上で。

 

「・・・ごめん、葵、情けない姿見せて、きっちり立つから・・・ありがとね」

 

 離れようとしたら、葵が無言で抱き留めてきて、布団に諸共倒れこむ。

 

「いいよ、僕らしかいないんだから、朝またガイア連合の佳乃に戻らなきゃいけなくなるまでずっと情けないお姉さんのままで。

 僕の胸で良ければいくらでも貸すから、ほら」

「・・・うん、じゃあ、あまえる」

 

 この日は、しばらくぶりに夢も見ずに3時間も眠れた




アライメント
日埜佳乃L:N
やらなきゃならないとなれば動くが、基本的にその時々や相手によって態度が変わるしなんとなく周囲の空気に流される普通の人間
源葵L:L
基本的に社会的規範に従う善人、善き人でありたいと思っているし、その社会で幸せになれる人間を一人でも増やそうと力を尽くす
九条義孝C:N
自らの思うところだけに従う、ガイア連合に参加したのは力をつけ組織力を得るためそれが正しいと思ったからで、ガイア連合へ尽くしているのも葵と佳乃という好いた相手がいるから、善人やるか悪人やるかは相手の好悪で決まる

誰が抜けてもヤバいけど中でも葵が抜けたら一番ヤバいです、メンタルケアと組織の秩序と善性担当なので居なくなったらほんとにガイアになっていきます
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