オールマイトのうっかりによって、世間に光仙とオールマイトが親子だと知られた後、オールマイトの元に光仙との関係を取材しようとしたマスコミ達が押し掛けてきた。それに対してオールマイトは文字通り「飛んで」逃走、光仙の方もミッドナイトから許可をもらって早々と生徒用の控え室へ避難して行った。
そしてB組生徒が全員ゴールしたのを見て、光仙は再び会場に出てきてクラスメイトに話しかけようとしたのだが……。
「皆、お疲れさ……」
『『雷田!!』』
光仙がクラスメイトに話しかけるより前に、B組生徒のほぼ全員が大声で彼の名前を呼び駆け寄ってきた。
「雷田! お前なんで父ちゃんがオールマイトだって言わなかったんだ!?」
鉄哲の言葉はB組生徒全員が思っていることであり、光仙も聞かれると予測していたため、すぐに答えることができた。
「お義父さんとその関係者全員に口止めされていたんだよ。オールマイトの家族だと知られたら危険だからって」
この光仙の言葉にB組生徒達が全員納得した表情となる。
確かにオールマイトの家族となると、オールマイトに恨みを持つヴィランなどの標的となる危険性は非常に高い。安全の事を考えれば、オールマイトの家族であることを秘密にすることは当然と言えた。
「……まあ、もっとも? 本人のせいで秘密も何もなくなったけどね」
そう言って光仙が先程まで義父が座っていた観客席を見ていると、拳藤が苦笑しながら話しかけてくる。
「あはは……。でもそれにしても雷田が強い理由が分かった気がするよ。やっぱり小さい頃からオールマイトに鍛えられていたの?」
「いいや。お義父さんは昔からヒーローの仕事が忙しくて家に帰ってこなかったからね。訓練は師匠と先生がしてくれたんだ」
「それって個性把握テストで言っていた、オールマイトが紹介してくれたっていうプロヒーローのこと? 一体誰なんだい?」
光仙が拳藤の質問に答えると、今度はその会話を聞いていた物間が質問してきて、今更隠す必要がないと考えた光仙は、幼少時に自分を鍛えてくれた二人のプロヒーローの名前を口にする。
「師匠の名前はグラントリノ、先生の名前はサー・ナイトアイ。グラントリノは学生だったお義父さんを鍛えた元雄英教師で、サー・ナイトアイはお義父さんの元サイドキックだよ」
『『何その超豪華メンバー!?』』
光仙の言葉にB組生徒達が驚きの声を上げる。だがオールマイト本人ではなくとも、その先生とサイドキックから、幼少の頃よりヒーローとなる英才教育を受けていたと聞かされれば驚きもするだろう。
「………!」
ちなみにこの会話を聞き耳たてていた一年A組に所属する緑色の髪をしたそばかす顔の少年は、驚いた顔をしながら瞳を輝かせ、どこからか取り出したノートに高速でメモを書いていた。
そんなことを話している間にスタートからおよそ一時間が経過して、最後の一人がゴールして障害物競走が終了した。
「ようやく終了ね、それじゃあ結果をご覧なさい!」
ミッドナイトの言葉を合図に会場にある巨大なディスプレイが予選通過者を発表する。
予選通過者は四十三人。A組のB組は全員、そしてサポート科と普通科から一人ずつ予選通過している。
「残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ! そして次から、いよいよ本選よ! ここからは取材陣も白熱してくるからキバリなさい! さーて、気になる第二種目、私はもう知ってるけど何かしら!?」
ドラムロールと共に、ミッドナイトの後ろにある大画面の文字がスロットのように回っていく。
「第二種目はコレよ!」
画面に表示された文字は騎馬戦。
ルールは以下の通り。
四十三名が二人から四人で騎馬を組み、騎手が持つポイントが書かれたハチマキを奪い合う。そして試合終了後、ハチマキのポイントの合計が上位四チームが勝ち抜けとなる。
ハチマキのポイントは騎馬を組んだ選手達にそれぞれ与えられたポイントの合計で、選手のポイントは第一種目の順位によって異なっており四十三位が5ポイント、四十二位が10ポイントと、下から5ポイントずつ増えていく。ただし……。
「上を行く者には、更なる受難を! 雄英に在籍する以上、何度でも聞かされるよ。これぞPlus Ultra! 予選通過一位の雷田光仙くん! 持ちポイント、1000万!」
『『……………!?』』
他の選手達とは文字通り桁が違うポイントに、他の選手達の注目が一斉に光仙に集まる。しかし光仙は特に動じることなく、頭の中で騎馬戦でどう戦うかを考えていた。
(俺のポイントは1000万。つまり所持しているうちは開始から最後まで他のチームに狙われるってことで、迎撃をメインで動いた方が良さそうだな。となると俺は個性を活かすために騎手になるべき、そして騎馬には……)
障害物競走を一位で通過した光仙は、ゴールした後はずっと会場のディスプレイから他の選手の動きと個性を見ていた。そこから得た情報を元に光仙は自分が求める能力を持つ選手を選んだ。
「それじゃあ、今から交渉アンド作戦タイム! 選手同士で相談して騎馬を決めてね!」
「物間。塩崎。二人共、俺と組んでくれ」
ミッドナイトの言葉を聞くや否や、光仙は即座に物間と塩崎の元へ向かった。塩崎の個性なら手を使わずに広範囲を防御できるだけでなく隙をついて相手のハチマキを奪うことができて、物間の個性は塩崎か光仙のコピーすることで行動の手数を増やせると考えたからだ。
「へぇ……? 他の皆は誰と組むべきか悩んでいるのに、すぐ僕を選んでくれるだなんて嬉しいじゃないか。いいよ、君達と組もう」
「私も構いません。雷田さんなら安心できます」
物間は光仙の考えをすぐに理解すると面白そうな笑みを浮かべて頷き、その横では塩崎も頷いてくれた。
「それで? 最後の一人は決まっているのかい? それともこの三人で騎馬に出るのかな?」
「もちろん最後の一人は決めている」
光仙は物間にそう答えると、自分が騎馬になって欲しいと考えている最後の一人に声をかける。
「ちょっといいか? 俺達と騎馬を組んでくれないか?」
「……何?」
光仙が声をかけたのは普通科で唯一予選を通過した紫色の髪をした男子生徒で、声をかけられた紫色の髪の男子生徒は驚いた顔をするのだった。