「(なぁ、おい……。ちょっと……いや、スッゲーヤバい。雷田の電撃、予想以上に強すぎる。多分あと一発か二発喰らったら限界を超えちまう……!)」
「っ!? それは確かにヤバいな」
上鳴が轟と他の騎馬のメンバーにだけ聞こえる小声で話しかける。その内容は轟達にとって無視できない内容であった。
上鳴の個性は、体に電気を纏わせ放出する事ができる「帯電」。自分を中心としてかなり強力な電気を放出でき、数十人の相手も余裕で制圧できる強力な個性なのだが、限界以上の電気を纏ったり放出したりすると脳が痺れて思考能力が大きく低下するという弱点がある。
つまり上鳴の限界が超えるということは、もう光仙の電撃を防ぐ手立てが無くなるだけでなく、騎馬としてもまともに機能しなくなるということ。
轟がなんとかもう一回だけ上鳴に光仙の電撃を防いでもらっている間に反撃する方法を考えていると、光仙はすでに次の行動に移ろうとしていた。
「
光仙が両手を熊手の形にして左右に向け呟くと、両の掌とそれぞれの五本の指から合わせて十二本の光線が放たれ、轟が作り出した氷の壁を破壊して水蒸気を発生させる。しかし彼の行動はそれで終わりではなかった。
「
続けて光仙は両の掌を向けてイオンを噴射すると、それにより発生した強風は周囲に氷の壁を破壊してできた水蒸気を撒き散らし、轟達の視界を塞いだ。
「水蒸気を煙幕代わりに……!? 逃げるつもりか? ………!?」
突然の光仙の行動に、轟は彼が逃げるつもりだと考えて騎馬を組んでいる上鳴達に指示を出そうとする。だがその時突然、轟の両肩に何かが着地したような重さがのしかかって来た。
「一体何が………雷田!?」
轟が顔を上に向けるとそこにあったのは、逆立ちの体勢で自分の両肩に手を置いている光仙の姿。これには轟だけでなく上鳴達、騎馬のメンバーも驚き声を失った。
光仙は先程のイオンの噴射で空へ飛び上がっており、同時に起こった強風で轟達の視界が遮られた隙に彼らの上空へ移動していたのだ。
「俺が空を飛べることを忘れたのか?
「しまっ……がああっ!?」
今度は身体に触れた手から直接電撃を流されたため防ぐことはできず、直接電撃を受けた轟は身体が痺れて動けなくなり、光仙はその隙をついて彼のハチマキを奪うとそのまま上空へと離脱した。しかしその時……。
「待ちやがれ! このスーツ野郎!」
「っ! 君は……!」
上空に飛んだ光仙の元へ、両手から爆炎を放つ爆豪が迫る。突然の爆豪の奇襲に光仙の反応が一瞬遅れ、その隙をついた爆豪が笑みを浮かべた時、下の地上から誰かが大声で話しかけてきた。
「オイオイ! 雷田に挑むつもりか!? 諦めろ! お前なんかじゃ何回やっても勝てないよ!」
「ああん!? 今何て言っ……………!」
突然の爆豪を挑発する言葉に、爆豪が思わず下に怒鳴ろうとすると、爆豪は急に糸が切れた操り人形のように動きを止めたのだった。
「爆豪? 急にどうし……!?」
いきなり動きを止めた爆豪を光仙が不思議に思っていると、彼の身体に何かが巻きついて光仙を下へと引きずりこんだ。彼の身体に巻きついたのは、塩崎の個性をコピーした物間が伸ばしたツルで、そのまま光仙は物間達の騎馬の上に降ろされる。
「轟君のハチマキを奪ったのはいいけど、油断しすぎだよ? 心操君がいなかったら危なかったじゃないか?」
戻ってきた光仙に物間が話しかけて、それを聞いた光仙は空中で爆豪が言葉の途中で動きを止めた理由に思い至った。
「あの声は心操君だったのか。助かったよ」
「まあ……。俺も今はチームの一員だし、少しはな……」
空中にいる爆豪に向けられた声は心操のもので、爆豪はそれに返事をしたため心操の「洗脳」にかかってしまい、動きを止めたのだった。
光仙が心操に礼を言う、心操は視線を逸らしながら照れ臭そうに返事をする。
そして気がつけば騎馬戦の制限時間は残りもう僅かとなっており、光仙達は個性を使った遠距離攻撃で他の騎馬を近づけさせず、一位で騎馬戦を勝ち抜いたのであった。