笑えない少年のヒーローアカデミア   作:兵庫人

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第十四話

 障害物競走と騎馬戦を終えた事により午前の部の種目は全て終了した。この後は昼休憩を挟んでから通常の体育祭の種目、そして最終種目の騎馬戦を勝ち抜いた十六名の生徒達による勝ち抜きトーナメント戦を行う予定である。

 

 昼休憩になると光仙は義父であるオールマイトに誘われて会場の近くにある屋台へ昼食を買いに来たのだが、やはりと言うか例の障害物競走での件もあって、光仙と義父の二人は周囲から注目を集めていた。

 

「あっ!? 見て! オールマイトよ!」

 

「私服姿のオールマイトかよ!? メチャクチャレアだな!」

 

「隣にいるのって例の雷田光仙だよな?」

 

「ああやって二人並んでいるってことは、親子って話は本当なんだな」

 

「未来のオールマイト二世か……。今のうちに写真撮っとこう」

 

 周囲に通行人の視線と言葉にオールマイトはやや苦笑いが入った笑みを浮かべて光仙に話しかける。

 

「HAHAHA! 中々の人気だね、光仙。でもアレだ? 将来プロヒーローを目指すのだったら、こういうのも慣れておいた方がいいぞ?」

 

「……それは理解しています。だけどお義父さん? どこか疲れていませんか?」

 

 光仙が隣を歩く義父の顔色が悪い気がして聞くと、オールマイトは気まずそうに視線を逸らして小声で答える。

 

「う……。実は障害物競走の後で先生とサー・ナイトアイから電話がきたんだ。光仙のことをよりにもよって全国放送でバラしてしまったことについて二人に散々怒られて……。特に先生のお説教がもう本当に怖かった……! しかもこんなことが続くならこっちに直接やって来るみたいなことも言い出して……怖え、怖えよ……!」

 

 話しているうちに電話の内容を思い出したのか、オールマイトはその場で身体を震わせる。

 

 オールマイトが言う彼の先生であり光仙の師匠でもある人物は、非常に厳しい人物でオールマイトも学生の頃はひたすら実戦形式で鍛えられ、何度も血反吐を吐いたらしい。その時のトラウマが蘇ったのだろう。

 

 震える足を止めようと何度も手で叩くオールマイトを光仙が何とも言えない気持ちで見ていると、そこに一人の大柄な男が近づいてきた。

 

「こんな所でお前を見るとはな……」

 

「君は……エンデヴァー君じゃないか? 久しぶりだね。前に会ったのは数年前のトーク番組の収録時だったかな?」

 

「お久しぶりです。エンデヴァーさん」

 

 光仙とオールマイトの前に現れたのはNo.2ヒーロー、エンデヴァーだった。

 

 オールマイトと光仙がエンデヴァーに挨拶をすると、エンデヴァーが意外そうな顔をして光仙を見た。

 

「ん? 君はオールマイトの息子だったな。俺と何処かで会ったことがあるのか?」

 

「はい。三年前にサー・ナイトアイの事務所で」

 

 光仙はオールマイトがヒーローの仕事で忙しいため、師匠であるグラントリノか先生であるサー・ナイトアイも元で厄介になり、そのついでにヒーローとしての訓練を受けることが多かった。そして三年前、サー・ナイトアイの元にいる時に、ヒーローの仕事でサー・ナイトアイの事務所にやって来たエンデヴァーと出会っていたのである。

 

「サー・ナイトアイの……? そうか、あの時の子供か。まさかあの子供が君だったとは……」

 

 光仙の言葉を聞き、彼のことを思い出したエンデヴァーは納得の表情で頷くとオールマイトの方へ視線を向けた。

 

「随分と優秀な息子じゃないか、オールマイト? 障害物競走も騎馬戦も圧倒的な成績で一位となり、しかもウチの焦凍も倒してみせた。しかも自分の個性を完全に受け入れて使いこなそうとして、父親であるお前を超えようとしている。実力面だけでなく精神面でも実に優秀……本当に羨ましいよ」

 

 オールマイトに向けられたエンデヴァーの目には明らかな敵意があったが、同時に言った羨望の言葉には嘘がないように感じられた。

 

「一体どうすれば、彼のような息子が育つのか是非とも聞かせてもらいたいよ。……次世代を鍛えるハウトゥーというヤツを」

 

(ええっ!? それ、むしろ私が聞きたかった事なんだけど!?)

 

 エンデヴァーの言葉にオールマイトは、一人の少年の顔を思い浮かべて内心で慌てた声を出す。

 

 これまで光仙の訓練を自分の先生と元サイドキックに任せてきたオールマイトにエンデヴァーの質問を答えられるはずもないのだが、オールマイトはそれでも何とかエンデヴァーに答えようとする。

 

「そ、それは……私も光仙の特訓はほとんど(というか全部)知り合いに任せていてね……。エンデヴァー君も子供の好きにやらせてみたらどうかな? ほら、可愛い子には旅をさせろって言うだろ?」

 

「……駄目だ。生憎焦凍は子供じみた反抗期が抜けておらんからな。目を離せばすぐに腐ってしまうだろうよ。……邪魔したな」

 

 エンデヴァーはオールマイトの答えを聞くと参考にならないと思ったようで、背を向けるとそのまま去っていった。そしてエンデヴァーの背中を見送ったオールマイトは思いの外緊張していたらしく大きく息を吐いた。

 

「はぁ……」

 

「お疲れ様です。お義父さん」

 

「うん。ありがとう、光仙。………」

 

 光仙の言葉にオールマイトは礼を言うと、そこで一度黙って何かを考えた後、光仙の方を見て口を開いた。

 

「……なあ、光仙。食べ物を買ったら、お義父さんと一緒に来てくれないか? 実は、以前から合わせたかった子がいるんだ……」

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