食べ物を買った後、光仙がオールマイトに連れて行かれたのは会場内にある雄英高校の教員以外立ち入り禁止の部屋で、部屋の周囲には人の姿がなかった。
「やあ、待たせてしまってすまなかったね」
「いえ、そんな事……雷田君!?」
部屋の中にはオールマイトがすでに呼んでいた男子生徒がいて、その生徒はオールマイトと一緒にやって来た光仙を見て驚いた顔をする。
「君は……確かA組の?」
「そう、彼は緑谷出久君。一年A組の生徒で光仙と同じヒーロー志望さ!」
部屋にいた男子生徒は騎馬戦を勝ち残り、光仙と同じく最終種目のトーナメントに出場することが決まった選手で、オールマイトが男子生徒、緑谷出久の紹介をする。
「み、緑谷出久です。は、初めまして」
「雷田光仙です。初めまして」
頭を下げて挨拶をする緑谷に光仙も頭を下げて挨拶をし、それを見ていたオールマイトが二人に話しかける。
「うん。お互いの挨拶も終わったみたいだし、そろそろ本題に入ろうか。……光仙も少し長くなるが最後まで聞いてくれるかい?」
「はい。分かりました」
オールマイトの言葉に光仙が頷くと、オールマイトは緑谷の方を一度だけ見てから口を開く、
「やはりここは最初から話した方がいいだろうな。……光仙、実はお義父さんね、ここにいる緑谷君くらいの年齢になるまで『無個性』だったんだよ」
「…………………………はい?」
自分が無個性だった言うオールマイトに、光仙は思わず訳が分からないとい声を出す。
「驚くのも無理は無理はない。だが事実なんだ。そして今私の中にある個性は、ある人から聖火の如く受け継がれたものなのさ。その個性の名は『ワン・フォー・オール』と言う」
「
「そうだ。自らが蓄えた力を他者へと引き継がせる『個性を譲渡する個性』。それがワン・フォー・オールだ」
「………!?」
オールマイトが語った個性の内容に光仙は驚き絶句するが、それはある意味当然の反応だった。個性の存在が人々の生活の根幹の一部と化した現在の超人社会で、個性を譲渡する個性なんて存在が知られたら、それだけで間違いなく小さくない混乱を招くだろう。
光仙はこれまでに何度かオールマイトの個性について聞いたが、オールマイトや先生のサー・ナイトアイ、師匠のグラントリノはごまかすだけで教えてくれなかった。その理由が今分かった気がした。
「光仙。お義父さんの身体がボロボロで、もう『マッスルフォーム』が大した時間保てないのは知っているね?」
「……」
オールマイトの質問に光仙は一つ頷く。
現在のオールマイトは、過去のヴィランとの戦闘で内臓に負った深刻なダメージが原因で痩せ細り、骸骨のような姿が本当の姿である。今の筋骨隆々な姿は全盛期の姿を無理矢理保っている状態であり、オールマイトはこの状態を「マッスルフォーム」と呼んでいた。
「私が雄英高校の教師になったのは、本格的に戦いに出られない体になる前に、ワン・フォー・オールを受け継ぐ後継者を見つけ、育てるためだったんだ」
「お義父さんの後継者………ちょっと待って! それって……!?」
そこまで話を聞いた光仙は、一ヶ月以上前にオールマイトとの会話で聞いた言葉を思い出す。
『きっと遠くない未来……私は個性を使えなくなるだろう』
いきなり減退したオールマイトの個性。
後継者となる人材を探すための雄英高校。
個性を譲渡する個性、ワン・フォー・オール。
そして何故かこの場に呼ばれた緑谷出久という少年。
これらの点が線で繋がったような気がした。
「そう……。ここにいる緑谷少年こそが私の後継者で、すでに彼にはワン・フォー・オールを譲渡してある」
オールマイトの言葉を聞いた時、光仙の脳裏に雄英高校の入学が決まった時、師匠のグラントリノが自分に言った言葉が蘇った。
『俊典がお前を裏切ったとしても、お前は俊典を信じてヒーローを目指せるのか?』