雄英高校の受験日から二週間後。光仙の元に雄英高校から入学試験の合格通知がやって来た。
合格通知は紙ではなくてホログラムを映し出す映写機で、映写機から人間のように二足で立って人語を話すネズミが映し出され、しかもそのネズミが雄英高校の校長だと知った時は流石に驚いたが、それでも雄英高校に合格出来たのは事実である。そのため光仙は義父経由で知り合いお世話になった人達に合格したとメールを送った後、唯一携帯もパソコンも持っていないであろう人物に直接電話で自分の合格を知らせたのであった。
『ほう、雄英に合格したか。それはめでたい。よく頑張ったじゃねぇか、光仙』
「はい。ありがとうございます、『師匠』」
現在光仙と電話をしているのは、義父のかつての師匠であったプロヒーローで昔、仕事が忙しい義父の代わりに自分の面倒を見てくれた恩人の一人であった。同時に基本的なトレーニングから個性を使った戦闘技術を教えてくれた人でもあり、その事から光仙は「師匠」と呼んでいた。
『あー……それで、何だ? 俊典の奴は何か言っていたか? 流石に喜んでくれただろ?』
「いえ、それがお義父さんは新しい仕事の手続きでしばらく家に帰ってきていません。俺が雄英高校に合格したのは知っているはずなんですがメールとかはまだ……」
俊典というのは義父の本名のことで、義父は今年度から雄英高校の教師となることが決まっている。だから光仙の合格は当然義父も知っているはずなのだが、合格祝いのメール一つ来ていないことを彼が言うと、電話の向こうの師匠は苦い声を出した。
『俊典の野郎……。仮にも義息子だろうが……? 全く、あんないい加減な父親でよくお前がグレなかったもんだわい……』
「お義父さんが忙しいのは分かっていますからね。それに俺には師匠や『先生』がいましたからね」
先生というのはプロヒーローである義父のかつての
光仙の言葉に師匠は先程よりも苦い声で、ためらうように話しかけてきた。
『なぁ……? 光仙、お前は俊典を信じてヒーローを目指しているんだよな?』
「? はい。もちろんです」
『もし……もしもだぞ? 俊典がお前を裏切ったとしても、お前は俊典を信じてヒーローを目指せるのか?』
「お義父さんが俺を裏切る? 師匠、それってどういうことですか?」
『いや、何でもない。忘れてくれ……。それじゃあ、光仙、頑張りなよ』
そこまで言うと師匠は電話を切り、いつもと違って歯切れが悪い師匠の言葉に光仙は首を傾げた。
「一体師匠は何が言いたかったんだ?」
電話で師匠が口にした「裏切る」という言葉が気になった光仙だったが、今義父や師匠に聞いても答えてもらえないと思い、話してくれるまで待つことにするのだった。
☆
「ついこの日が来たか」
雄英高校から合格通知が来た日から月日が経ち、ついにやって来た雄英高校の入学式当日。雄英高校の制服を着た光仙は、かつて義父が通っていた学園に自分も入学したことに感動を禁じ得なかった。
しばらく校門で立ち止まり校舎を眺めていた光仙は、掲示板を探して自分のクラスを確認すると教室へと向かう。光仙のクラスは一年B組で、自分の背丈よりずっと大きな扉を開けると、他のB組の生徒達はすでに教室に入っていて彼らの視線が彼に集中する。
「ああ! お前は入試の時の!」
光仙の姿を見て白い髪をした男子生徒が彼を指差して大声を出す。
「……君は?」
「俺は鉄哲徹鐵! 入試の実技試験の時、お前と一緒の演習場にいたんだけどよ! お前がロボットを次々倒すから他のを探すのが大変だったぜ!」
「そうだったのか。俺は雷田光仙。実技試験ではすまなかった」
「気にすんな! あれは早い者勝ちの試験だったからな!」
「何々? 何だか面白そうな話をしているじゃないか?」
光仙と白い髪の男子生徒、鉄哲徹鐵と話しているとそこに金髪の男子生徒が近づいてきた。
「さっきロボットを次々倒したとか聞こえたけど、一体どう言うことなんだい?」
「おう! 雷田の奴、実技試験が始まるといきなり空を飛んで、その後はビームみたいなのを出してロボットを次々と倒したんだ! しかも最後に出たあのデッカいロボットも一撃でぶっ倒したんだぜ!」
『『…………!?』』
鉄哲が実技試験での雷田の戦いを言うと、金髪の男子生徒だけでなく他の生徒達も驚いた顔になる。そして金髪の男子生徒は更に興味深そうな表情となって光仙に話しかける。
「へぇ? それは凄いね。雷田君だっけ? 君の個性って一体何なの?」
「……俺の個性は荷電粒子砲。両手から荷電粒子……要するにビームを撃つ個性だよ。空を飛んだのは個性の応用」
「っ!? ハハッ! それは凄いね! そんな強い個性は中々ないよ。僕は物間寧人。よろしくね」
「ああ、よろしく。……!?」
光仙の個性を聞いて笑顔になった物間が右手を差し出し、それに光仙が右手を差し出して握手をすると次の瞬間、物間の右手が鉄のような硬度になって指先に見慣れた発射口のようなものが現れた。
「その反応だと分かったようだね。僕の個性は他人の個性を使えるようになる『コピー』。強い個性の仲間が多い程強くなれるのさ。だから君みたいな心強い仲間ができて嬉しいよ」
(相手の個性を自分のものにする個性。そんなものがあるだなんて……。雄英高校、中々面白そうだな)
握手をしながら笑みを浮かべる物間を見て光仙は、自分と同年代で個性を競い合えそうなクラスメイトに現れたことに、驚きを感じると同時にどこか嬉しさも感じて、これからの学園生活は退屈しないだろうと思った。
………やっぱり続かない。