笑えない少年のヒーローアカデミア   作:兵庫人

7 / 16
第七話

 雄英高校一年A組が救助訓練でヴィラン連合の襲撃を受けた事件から一ヶ月程経った日。雄英高校ではある催しが行われていた。

 

 雄英体育祭。

 

 年に一度行われる、かつてのオリンピックに代わる日本のビッグイベントの一つ。内容は学年ごとの総当たり戦で、いくつもの種目を行ってその学年で一番の実力を持つ生徒を決めようというものだ。

 

 この体育祭は多くのプロヒーローも注目しており、体育祭で実力を認められた雄英生徒が、卒業後すぐにプロヒーローにサイドキックとして採用たという話は多い。だからヒーロー科の雄英生徒にとってこの体育祭は在学中に三回しかない、自分を世間に売り込むチャンスで、自然とヒーロー科の雄英生徒はやる気をみなぎらせていた。

 

「ふっふっふ……! ついに! ついに来たよぉ! 憎きA組に一泡吹かせてやれるこの日がさぁ!」

 

 一年B組の待機室で運動服に着替えた物間が心から楽しそうに大声を出し、それを聞いて光仙が首を傾げる。

 

「憎きA組? 一体どういうことだ?」

 

「何を言ってるんだい、雷田!? 君は忘れたのか、先月僕達が味わったあの屈辱を!」

 

「屈辱……ああ、あのことか」

 

 物間の言葉に光仙は先月の出来事を思い出す。

 

 一ヶ月程前のある日、光仙を含めたB組生徒は記者らしき者達から何度も呼び止められた。彼らはヴィラン連合が雄英高校に襲撃をした事件の取材に来た者達で、その為に光仙を初めとする雄英生徒に声をかけたのだが、彼らが話を聞きたかったのは当事者である一年A組の生徒だ。光仙達がA組生徒でないと分かると当てが外れたという顔と態度になり、その時物間は自分達がA組生徒のオマケ扱いされたことに苛立っていたのだった。

 

「確かに話題性は今のところA組の方が上さ。でも実力は僕達だって負けてない。……雷田!」

 

 そこまで言うと物間は光仙の両肩に手を置き、彼の眼を見る。

 

「? どうした、物間?」

 

「君の個性は僕が今まで見てきた中で一番強力だ! この体育祭ではその力でA組を徹底的に叩きのめしてくれ! 期待しているからね!」

 

「はいはい。もう時間ないから皆、そろそろ行くよ」

 

 物間に光仙がなんて答えようか迷っていると、拳藤が手を鳴らして光仙と物間だけでなくB組生徒全員に呼びかける。

 

 そしてヒーロー科に普通科、サポート科と経営科といった一年の生徒全員が会場に出場すると、雄英高校の教師の一人である18禁ヒーロー、ミッドナイトが体育祭開催の挨拶は始める。

 

「選手宣誓! 一年B組、雷田光仙君! 前に!」

 

「あれ? 普通一年の選手宣誓って入試のトップがするんだよな?」

 

「確かに……それじゃあ、あの雷田って子が入試トップなのか?」

 

「へぇ、A組じゃないんだ?」

 

 ミッドナイトが光仙の名前を呼んだことで、B組以外の生徒達でなく観客達の視線がB組に向けられる。それに気を良くした物間が光仙に話しかける。

 

「早速やってくれたね、雷田。この調子で選手宣誓も決めてくれよ」

 

「分かっている」

 

 物間の言葉に光仙は短く答えてミッドナイトがいる壇上に上がると、自分を注目している一年の雄英生徒と観客達を見て、口を開いた。

 

 

「俺はオールマイトを超えるヒーローになる為に、この雄英高校にやって来ました」

 

 

『『………………………………………!?』』

 

 光仙の口から出たNo.1を超えるという言葉に、生徒達や観客達だけでなく雄英の教師達も驚き目を見開いた。だが光仙はそれに構うことなく言葉を続ける。

 

「この日本は世界でもトップクラスでヴィラン犯罪の発生率が低い安全な国で、それには多くのヒーロー達の活躍のお陰でもありますけど、オールマイトという『平和の象徴』がいる事が大きい。……だけど、俺はこのままで良いとは思っていません」

 

 今の日本が平和だと認めているのに、その現状を良いと思っていないという光仙を、この場にいる全員が困惑した顔で見る。

 

「オールマイトは確かに偉大なヒーローですけど、同時に一人の人間だ。いつかはオールマイトも引退する日が来る。その日が来た時、平和を守るために一人でも多くのオールマイトを超えるヒーロー、新しい『平和の象徴』が必要だと思います」

 

 そこで光仙は一度言葉を切り、周囲を見回してから再び口を開く。

 

「もう一度言います。俺はオールマイトを超えるヒーローになる為に、この雄英高校にやって来ました。皆が守ってきた平和を守るために。そしてそれは他の生徒の皆も同じだと信じています。だから皆さん。この体育祭を見て、俺達が次の平和の象徴になれるかどうか見定めてください」

 

 聞きようによっては雄英の生徒どころか現役のヒーロー達にも挑戦状を突きつけているような光仙の選手宣誓に、観客達は全員無言となるがすぐに周囲から光仙に向けて万雷の拍手が送られる。

 

『HEY! オールマイトを超えるとか中々のビッグマウスじゃねぇか! あそこまで言われたら期待するしかねぇな! だけどこれで活躍できなかったらカッコ悪いぜぇ!?』

 

 放送席から聴こえてくる実況役のプレゼントマイクの声を聞きながら光仙がB組の元に戻ると、B組生徒達が彼を興奮した顔で取り囲んできた。

 

「オイオイオイ! オールマイトを超えるとか言ってくれるじゃねぇか!」

 

「凄くカッコ良かったけど、皆の期待のハードル上げすぎじゃない?」

 

「ハハハッ! 見てみなよ、雷田! A組の奴ら、君の選手宣誓に驚いているよ! 早速良くやってくれたよ、君は!」

 

 興奮した鉄哲、苦笑を浮かべる拳藤、大声で笑う物間。他のB組生徒達もそれぞれ反応は異なるが、光仙の選手宣誓でやる気を出しているのは明確だった。

 

 こうして雄英体育祭は開催された。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。