俺達の担任である茶柱先生の全一学年10万ポイント支給という衝撃発言から少し経ち隣の席の堀北とこの学園について軽く話をしていると如何にも好青年といった雰囲気をした平田の発案により、クラス皆で自己紹介をすることになった
大人しめの少女、井の頭から始まり山内、櫛田と自己紹介が続く。驚いたことに櫛田という少女、校門前で四宮にあの言葉(お可愛いこと)を言われた彼女は同じクラスだったらしい。四宮は彼女見ても何の反応もしなかったが
途中、馴れ合うつもりはないと個人主義の生徒達が教室から出て行くハプニングもあったが残ったメンバーだけで続けるようだ
「あの、自己紹介をお願いできるかな?」
平田が声をかけたのはバスの中で四宮と話していた男子生徒だった。名前は確か高円寺だったか?
「フッ。いいだろう」
髪を整えている手を止め、短く貴公子のように微笑んで見せるが何処となくふてぶてしい態度が見え隠れする。長い足をゆっくりと上げた為、立ち上がるのかと思いきや彼は机に足を乗せ偉そうな態度で自己紹介を始めた
「私の名前は高円寺六助。高円寺コンツェルンの一人息子にして、いずれはこの日本社会を背負って立つ人間となる男だ。以後お見知り置きを、小さなレディー達」
偉そうではなく実際偉いみたいだ。しかもクラスというより女子達に向けて自己紹介しているし、皆お前のこと変人を見るような目で見てるぞ
「それから私が不愉快と感じる行為を行なった者には容赦なく制裁を加えていくことになるだろう。その点には十分配慮したまえ」
「ええっと、高円寺くん。不愉快と感じる行為って?」
「言葉通りだよ。しかし一つ例を出すなら、私は醜いものが嫌いだ。そのようなものを目にしたら、果たしてどうなってしまうやら」
「あ、ありがとう。気をつけるようにするよ」
先ほど出て行った生徒や堀北に高円寺、そして四宮。そのクラスは一癖も二癖もある生徒ばかりだな
「それじゃあ次の人、お願い出来るかな」
平田の視線は四宮に向けられている。どうやら次は四宮の番みたいだ。あれ、じゃあ次は俺の番?自己紹介どうしよう
「四宮かぐやです。中学の頃から弓道をやっていました。この学校にも弓道部があったら入るつもりです。よろしくお願いします」
凛とした声が教室に響く。綺麗な佇まいで自己紹介する四宮を生徒全員が釘付けになって見ていた
最後にぺこりと丁寧に頭を下げるとみんなが拍手を上げる
「ね、ねぇ"四宮"ってもしかして四宮グループの?」
落ち着いてきた頃1人の女子生徒が四宮に質問すると四宮は目を閉じながら肯定し、途端またもクラスが騒めき出す
「やっぱりお嬢様だったんだ!」
「すごい品がある感じだったもんね!」
「すげぇ。あの四宮グループのお嬢様と同じクラスなんだ!後で自慢しよー!」
四宮グループ…確か昔施設の職員が何回か口にしていた名前だな。クラスのほとんどが名を知っているということは相当有名な企業のようだ。一体どれほどなのか興味が湧き四宮に聞いてみることにした
「な、なぁ」
「なんですか綾小路さん」
「四宮の家ってそんなに有名なのか?」
「あら、綾小路さんは四宮グループと言う名を聞いた事がないのですか?」
「い、いや子供の頃に聞いた覚えはあるんだがそこまで詳しくは知らない。まあ、四宮がお嬢様なのはなんとなく気づいていたが」
あの施設にいる生徒達は孤児や職員の関係者が殆どだが貴族など裕福な家庭の子供達が将来の為に英才教育として学ばせる為に在籍してた者も何人か存在していた。四宮もその内の1人なのだろう
「へぇ綾小路さんはコミュニケーションが苦手なだけでなく世間知らずでもあるんですね」
『お可愛いこと』
一瞬息が止まった。いま、お可愛いことって言わなかったか?
「?」
いや、四宮の表情からして言っていない。幻聴か
だが今のセリフの後に続いてもおかしくなかったあの言葉。もしかして俺は今あの言葉を言われる一歩手前まで来てるんじゃないか?それは何がなんでも阻止しなくては!
「ち、因みにどのくらいお金持ちなんだ?高円寺の家と同じくらいか?」
「高円寺グループもそれなりですが桁が違います。私の家は国の心臓と言ってもいいほどです」
「っ!!?(国の心臓!?)」
四宮は俺が思っていた以上にすごい人間なのかもしれない
「皆、静かに!まだ自己紹介は終わってないよ。えーど、次の人、そこの君、お願いできるかな?」
「はっ…あ、はい」
意識が戻った時にはみんなが俺に視線を向けていた。どうやらついに俺の番になってしまったみたいだ。四宮の後となるとかなりハードが高くなってしまってなんだかみんなが期待するような目で見てくる(気のせい)
これは絶対に失敗は出来ない!
ガタッと勢いよく立ち上がる
「えー、えっと、綾小路清隆です。その、えー…得意な事は特にありませんが、皆と仲良くなれるように頑張りますので、えー、よろしくお願いします」
フッ…どうだ四宮見たか?俺の自己紹介をっ!
……失敗した!!!
思わず頭を抱えこむ。そして俺の自己紹介を聞いた四宮は口を開きこう言った
「お可愛いこと…」
「(い、言われたーーーっ!!!)」
その後のことはよく覚えていない
ずっと心ここに在らずのまま入学式を迎えた為か堀北が心配して大丈夫かと声をかけてくれたのがちょっと意外だった