ルナティック・ワンダーランド   作:crooze

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シルエット・ダンス

「……あの。シロナさん。もうやめませんか……?」

「何言ってるの。まだ全部の形状のアンノーンを見てないのよ? クロだってポケモンずかんの為、ナナカマド博士の為なら私以上にアンノーンを探すべきでしょう」

「……そうは言っても、もう一週間が経ってるんですよ……」

 ──サファリパークの一件で、なんとなく気付いていた。シロナさんの性格。好奇心旺盛で凝り性。研究者らしい性格といえばそうなのだが、その影響が自身にも降りかかってくるとなると……うん。

 シロナさんは元からアンノーンについては関心があったらしく、この際だからと壁画の解読とアンノーンについての調査を進めるらしい。そのついでにアンノーンの全ての形状を見て調べるために、実際にはアンノーンを捕獲する作業をしていたのだが、現在見事にドツボにハマっているのだ。ポケモンずかんを埋めるためにも必要なことだとはわかっているのだが……正直に言おう。もう俺はアンノーンを見たくない。

 奴らの鳴き声もめざめるパワーも、もう全てが俺の精神を削っていくのだ。精神の保護と癒しのためにメアを抱きしめながら、楽しそうなシロナさんの後を死んだ目でついていく。

 ……繰り返して言おう。このどうくつに通うこと一週間だ。俺はそだてやも見たいし、ポケモンしんぶんしゃだって興味がある。なのにアンノーンだ。ずかんの為ではあるが、アンノーンなんてバトルで一切使わない、育成もせずパソコンのボックスの肥やしになるだけのポケモンを捕まえる理由があまり感じられない。

 

 ──実は俺はぼんやりとだがポケモンと意思疎通ができる、ちょっとした能力を持っている。転生特典というには脆弱な力──Nには負ける程度のものだが、ぼんやりとでも意思疎通ができるのは便利だ。

 だが、アンノーン。奴らとは意思疎通ができない。なんといえばいいのだろう、アンノーンの言っていることが理解できないのだ。まるで異星人とコミュニケーションを図ろうとしている、とでも言えばいいのだろうか。ギーみたいな伝説のポケモンのように発言がぶっ飛んでいる訳では無い。ギー達の意思は理解できる。アンノーンはそもそも言葉がわからない。考えていることもわからない。つまり全てがわからないので、更に無気力というわけだ。普通の野生のポケモンだったらまだマシなのだが。と言ってもゲンガーやムウマージといったちょっと危険なゴーストタイプのポケモンなどはだいぶアレな思考をしているので、その辺りはポケモンの性格・タイプにもよる。

 因みに俺がそういう意味で一番好きなポケモンはカビゴンだ。あいつは分かりやすい。基本的に食事と寝ることしか考えていないからだ。

 

 話を戻す。つまり俺はこのアンノーン探しからなんとかして抜け出したいのだ。ナナカマド博士に恩義はあるが、博士だってそこまでアンノーンには興味はないだろう、多分。

 シロナさんの性格はわかっていたが、ここまでハマるとは思っていなかった。俺の考えは甘かったようだ。

 

「後GとSとビックリマークとハテナだけでしょ。頑張りましょ」

「その言葉、三日前にも聞きました……」

 いい加減日の光を浴びさせてほしい。いや、帰る時に浴びてるけど。もうどうくつは嫌だ……。

 メアを抱きしめて、深いため息をつく。ギーに会いたい。あぁいっそギーを呼び出したらこのどうくつが壊れないだろうか、今すぐ天変地異が起こってどうくつが崩壊しないだろうか。

 数日前の俺を殴りたくなる衝動に駆られながら、天井を仰ぐ。後四体を捕まえるのにどれ位の時間がかかるのだろう。

 ──まだ当分このどうくつから抜け出せない予感に、背筋を震わせた。

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