アブソリュートゼロ・動じぬ心の可憐な標的者 作:kazuya2009
また甘すぎて胸焼け起こす可能性があります。無理だと思ったらブラウザバックをオススメ致します。
なお。この先を読み進めますとご了承してくださった事と致します。
秋華賞が終わった。
クラシック最後のレースを最後のティアラに定めて、しっかりと勝ち切ったアブソリュートゼロ。彼女は約束通り俺にティアラをプレゼントしてくれたのだ。
そして彼女が阪神遠征から戻って来たら、ある提案をしようと考えていた。
翌日。遠征から戻ったアブソリュートゼロは喜々として病室に入ってきた。
彼女の手には真新しい秋華賞の優勝トロフィーがある。わざわざ持って来てくれたようだ。
「トレーナーさん、ちゃんと大人しくしてますかー」
アブソリュートゼロが俺の顔を覗くとベッドの袖机にトロフィーを飾る。
「ソリュー それだと、まるで保護者みたいだな」
苦笑いをしながらベッドで迎える俺。
元軍属のウマ娘とやりあったのだ。体には相当なダメージが残ってる。点滴をしているとはいえ、今更ながら痛みが襲って来ている。おかげで、あまり体は動かせない。
「本当は恋人気分なのかーって言ってほしいんですけどね」
恥じらいながらいうアブソリュートゼロにこっちまで恥ずかしくなる。
「そういえば大衆の面前で、良くも、ああも宣言してくれたな? 昨日から看護師の人達から冷やかされて大変なんだぞ?」
看護師、特にウマ娘の看護師にはかなり冷やかされた。
わたしも素敵な彼氏が欲しいだの、自分のために尽くしてくれたら惚れない女はいないだの、どこから漏れたのかウマ娘のために軍属に襲われたのさえ隠すなんて惚れるなって方が無理だーとか。
「だってトレーナーさん、わたしの気持ちを知ってもその気になってくれないんですもの。だったらわたしからアタックしまくるしかないじゃないですか」
顔を膨らませて、もっとわたしを見てくださいとアピールしてくる。
参ったな。今まで好意を向けてくれるウマ娘はたくさんいたが、ここまでアピールする娘はいなかった。
このままだと雰囲気がいらぬ方向に向かいそうなため俺は、誤魔化すように伝えようと思っていた提案を口にする。
「なあ、ソリュー。問題は解決して、俺はこんな状態だ。満足にトレーニングを見てやることも出来ない。だから一度、綾峰のところに―」
戻ったらどうだ? と促そうとしたのだが。
唇に柔らかいものが重なり塞がれたのが分かった。
どこで覚えたのか俺の上唇を恥ずかしそうに軽く舐めて離すと顔を赤くしながら彼女は宣言する。
「わたしは、トレーナーさんから離れるつもりはありません。今のが、わたしからの意思表示です」
まさかアブソリュートゼロから先手を打たれるとは思わなかった。
参ったな。ここまでハッキリ意思を示されて拒むのはさすがに酷だ。いや、むしろ断れる男がいるか? ここまで思われて、だ。
覚悟を決めるしかない。
「ソリュー、君の気持ち―いや、覚悟か。良くわかった」
「それじゃ!」
アブソリュートゼロが満面の笑みで次の言葉を待つ。
「ああ。君の想いを受け入れるよ」
「トレーナーさん!」
一応、俺が怪我人なのを考慮してか抱き着くことはなく、代わりに俺の手を両手で優しく握る。
「全く、君の積極性にはさすがの俺も降参だ」
「むー、なんですかー、その言い方は。こんなに可愛いウマ娘が相手なんですよ!」
「自分で言うか。でも、そうだな本当に可愛いウマ娘だよ。ソリューは」
ソリューが握ってくれている手を離すと、頭を下げてくれと手で合図をする。
合図に応えるように頭を下げるソリュー。俺は彼女の頬を包み込むように触れる。
「トレーナーさん……」
俺の手の上からソリューが手を重ねる。
暖かい彼女の頬と手の温もりを感じつつ、俺は意を決して言う。
「ソリュー、俺も君の事が好きだ。君が初めて弱さを見せて泣いたあの時に心から守りたいと思ったんだ。たぶん、その時にはきっと君に惹かれていたんだろう」
そう。あの時にはきっと俺の心は彼女に奪われていたんだろう。
あんなにも傷つきながら、それでも相手の事を思う強い心に。
だけど強さも支えがなければいつか折れてしまう。だから俺はこの娘のためなら多少の無茶はやってやろうと改めて思えた。
強く優しくも、わずかな弱さを見せる彼女の心を支えたいと。
「あ……。トレーナーさん、わたし、嬉しくて……」
アブソリュートゼロの瞳に涙が浮かぶ。
彼女は堪えるように顔を押さえるが、俺は我慢をさせる気はもうなかった。
「遠慮せずに泣いてくれ。嬉しい時の涙も俺には遠慮なく見せてほしい」
「も、もう……。ほ、んとうに……、トレー……ナーさんは……」
しゃくり上げる彼女の頭を俺は優しく撫でてやる。もう彼女は涙を堪えることはなかった。
「恥ずかしいところ見せちゃいました」
ハンカチで涙をぬぐい終わると恥ずかしそうにそのまま顔を隠す。
その仕草が可愛くて、愛おしく感じてしまう。
「今更何を言っているんだよ。もう俺らは名実ともにパートナーなんだ。もうソリューは俺の、俺だけのウマ娘なんだぞ?」
「ホントにトレーナーさんは女ったらしですよね?」
ハンカチで顔を隠しながらくすくすと笑うアブソリュートゼロ。
そこに関しては反論できない。もうずっとウマ娘たちのモチベーション維持などのテクニックして来たからな。もうすっかり俺の中に女ったらしが根付いてしまっている。
「昔に担当した子たちにも同じことを言われたな」
担当したウマ娘の子たちに、その事でからかわれたこともあったな。
「あ、そう考えるとわたし、悪いことしちゃったんですかね? たぶん、みんなトレーナーさんの事を慕ってたはずですし」
「おいおい。つい数日前は独り占めなんて出来ないって言ってたの忘れたのか?」
あのセリフはなんだったのだろうか。
今や完全独占状態になってしまったぞ。
「あの時はそう思ったんです! でも、ダメでした。どんどんトレーナーさんへの想いが大きくなって、秋華賞勝ったらもう止まりませんでした」
だからか。勝利ウマ娘インタビューであんな暴走したのは。
言ってることが違うぞと思ったんだが―
「それじゃ仕方ないな。なあ、俺が退院して出かけられるようになったらどこに行きたい?」
「……トレーナーさんの部屋に行ってみたいです」
顔を赤くして彼女が答える。
一瞬の静寂が訪れる。
ん? なんて言った、おい?
俺の部屋に来たいだと? 何を意味してるのか分かってるのか?
しかもタイミング的にこの間、綾峰が訪ねて来た時のことを思い出してしまったじゃないか。
だから俺はこういうのが精一杯だった。
「ソリュー、それは君が卒業してからだな」
学園で問題になっては俺もさすがにトレーナー業が続けられなくなる可能性がある。トレーナー同士なら、まあ職場恋愛でいいかも知れないが―
俺の言葉に頬を膨らますアブソリュートゼロに、この先が思いやられるなと思うのであった。
すみません。めちゃくちゃ糖分過多でヤバかったかなと思います。
しかも一日彼氏どころじゃなくて永遠のパートナールートになってしまいました(汗
おかしいな? 本当は病室のシーンを少し書いて数か月後―ってやろうと思ったのがまさかの病室で結ばれることになるとは。
しかし、降りてきてしまったものは仕方ないので思いっきり降りてきたまんま激甘シーンを書ききらせて頂きました!