転生架空馬の夢の記録(夢日記)   作:よみびとしらず

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4話目です。

・チョコちゃん騎手デビュー!?

・コタロウ嫉妬する

・ボス、旧友に再会する


……以上の三本立ててお送りします。


あとこのお話で初めて実在する人馬が登場します。性格が違うとか解釈違いだとかあるかもしれませんが生暖かく見守ってくだされば幸いです。(解釈違い等の苦情につきましては活動報告で受付いたします。)


改訂

2022/07/13 サブタイトル変更



chapter.4 「トレセン散策」

――美浦トレセン御手洗厩舎 22:00

 

 

 

 目を閉じて祈る。光の粒子に包まれた馬体が変わっていく。両脚は両腕と両足に、馬体は身体に。四本脚から二足歩行へ、立ち上がりながら目を開ける。

 

『変身完了!』

 

 身体を纏っていた粒子の残りが完全に消えるのを確認して高らかに宣言する。もうすっかりこの儀式には慣れ、自分のモノにできたと思う。

 

『うーん……やはり大体7~8秒は掛かってるな』

 

『ええっ!? そ、そんなぁ……』

 

 隣の馬房から聞こえるボスの声に私は力なくへたり込んでしまう。人間が使っている"トケイ"と言う時間を見る道具をボスの馬房の前に置いてもらっていて私が変身し終わるまでの時間を毎回計ってもらっている。

 この変身能力をより完璧に自分のモノにするため変身時間短縮を狙っているのだ。目標は時間掛からず一瞬で変身できるようになる事。そうすればもしもの時にすぐに変身したり逆に変身解除できるようになり、変身中の無防備状態を回避できるからだ。

 しかし、ここ数日間はどんなに頑張っても5秒の壁を超える事が出来ずにいる。頑張っても7~8秒は必ずかかる感じだ。

 

『チョコ、あまり無理するな。これ以上の時間短縮は望めないし、危険だ』

 

『ううっ……でも……』

 

『良いか、馬が人間になると言うのは本来ではありえないことなんだ。動物の身体が人間の身体になる、身体の小さな細胞レベルで変化、いや作り変えられているるんだ。むしろたった7~8秒で何も危険を冒す事無く変身できること自体奇跡に近いんだ。これ以上無理すれば命の危険すら危ぶまれる』

 

 ボスにちょっと怖い事を言われてしまう。確かに変身時に焦っていると何か違和感や不安感を感じ、身体の中で溢れる力が暴れる痛みのような感覚がある。もしも、変身中に事故が起きたら……そう思うと体が震えてしまう。

 

『わかったよボス。変身時間の無理な短縮はもうやらないよ』

 

『ああ、その方が良い』

 

『そうだよ!今でも十分速いからね!チョコの部屋がピカーッて光ったら次の瞬間には人間の女の子が出てくるんだから!』

 

 コタロウにもそう言われて私は納得する事にした。

 

 

 

 

 すっかりお馴染みになった光景、毎日の日課。

 私が変身してボスとコタロウを馬房から連れ出し厩舎の外を歩く。以前やっていた深夜のお夜食タイムは今はほとんどしてない。ボス曰く、馬は食後に運動はしない方が良いそうなので。コタロウもお夜食タイムよりは外で歩く方が楽しいと言っていた。

 ただ、人間体に変身してる時の私はお出かけ前に少し食べている。人間は空腹で運動するのは身体に悪いらしくて少しだけ水分と食べ物をとる方が良いそうだ。休憩室の冷蔵庫や戸棚にあるお菓子を食べてお水を飲んで、準備をする。

 厩舎の作業服を着て、帽子を被り、ボス達に馬具を着けていく。

 

『チョコ、今日は鞍を着けてくれないか?』

 

『えっ?鞍?』

 

 ボスからそんな提案を受けた。

 

『鞍って私達に人間が乗る為に着けるものだよね?』

 

『ああ、そうだ。チョコ、きょうは俺の上に乗ってみないか?折角人間の身体になってるんだ。馬に騎乗する経験をするのも悪くはないぞ』

 

 確かに、馬に乗ると言うのは人間の姿の時にしか出来ない事だ。

 

『良いの?私、鞍装着したことないよ』

 

『チョコなら大丈夫だ。俺が教えるから。』

 

『うん、じゃあ鞍を着けてみるね』

 

 

 ボスに教えてもらった通りに鞍を着けていく。お腹に回して締め付ける帯を着けている時に力加減が難しくて、少し緩めに着けようとしたらボスに『もっと強く締めるんだ。これではチョコが落ちてしまう』と言われてしまいおっかなびっくりしつつ強めに締めた。

 締める時にボスの馬体がビクンッとなって少し驚いてしまったけど『気にするな大丈夫だ』と言ってくれた。

 ボスに教えてもらいながらなんとか鞍を着け終わる事が出来た。頭絡を合わせると私達が普段着ける馬具全部付けた事になる。

 

『……ボス、出来たよ。どうだったかな?』

 

『チョコ……、お前、人間だったら厩務員の才能があるな。一度しか教えて無いのに馬具装着上手いし問題が無かった。初めてでここまで上手い奴は見た事ない』

 

『えっ!?……ほ、ほんとう?……えへへっ、嬉しいな』

 

 ボスに褒めても貰って私は舞い上がってしまった。それにしても馬具を着けるなんて今までしたこと無かったのにどうしてこんなにすんなり出来たのだろうか?付けている最中、何か以前にもこんな事をしたような記憶があるのだけど、あれはいつ、どこで、誰と誰に――。

 上手く思い出せない。ボスの教え方が上手いのと普段馬の時に国崎さんやテキに着けて貰っている時に神経を研ぎ澄ませて集中していたのでそれで憶えてたのだろうか?

 ふと、視線を感じたので振り返るとコタロウがこちらを見つめていた。

 

『……?どうしたのコタロウ?』

 

『……あ、あのね、チョコ……。お、俺にも……鞍、着けて……欲しいな……』

 

 珍しく歯切れ悪い口調で恐る恐る聞いてくるコタロウ。私はコタロウが自分から馬具を着けて欲しいと言ってきたのに驚いた。

 コタロウは昔から馬具を着けられるのが大嫌いで、育成牧場に居た頃は馬具を着けようとするたびに暴れててスタッフさんがたいそう手を焼いていたのを覚えている。

 私が横について「大丈夫、怖くないよ、怖くないよ」と寄り添い話しかけながら何とか着けて貰える感じだった。

 競走馬デビューして御手洗厩舎に来てからも馬具を嫌がる癖は少しあって良く国崎さんを困らせていたっけ。

 そんな馬具嫌いで特に鞍を載せられるのが何よりも嫌いだったコタロウが――。

 

『良いの?コタロウ鞍着けられるの嫌だよね?』

 

『うん……でもチョコが着けてくれるなら多分大丈夫。ねぇ、お願い。俺にも鞍着けてくれよっ、頼むよ……チョコ。……ボスばかりずるいよ

 

 コタロウがそう訴えて来る。最後は顔を下に向けて語尾が尻すぼみになって上手く聞き取れなかったけど、コタロウなりに精一杯の頼み事なんだと感じた。

 

『ボス……どうしようか?』

 

『……本人がそう望むなら着けてやれ。――コタロウ、お前が自分からつけて欲しいと頼んだんだ、嫌がったり暴れたりするなよ。…………もしも暴れてチョコに怪我させてみろ。ただじゃ済まさないからな、覚悟しておけよ

 

『ううっ、わ、わかってるよぅ……』

 

 ボスがコタロウに近づいて何か耳打ちする。コタロウはビクッと身体を小さく震わせながら答える。何だろう、ちょっと緊張感が出てきた気がする。

 

『……という事だ。チョコ、コタロウの方もよろしく頼む』

 

『う、うん……』

 

 ふたりの間に流れる張りつめた空気に押されながらもコタロウの方にも鞍を着けていく。一つ一つ装着動作をするたびに必死に何かに耐えているコタロウの身体がビクッビクッと震えて心配してしまったけど、何とか装着できた。

 

『……出来たよ。コタロウ……どうかな??』

 

『うん……チョコが着けてくれるなら嫌じゃないよ。ボスの言う通り上手いよ』

 

『よかった……』

 

 ほっ、と安堵のため息が出た。

 

『準備は出来たか、出発するぞ』

 

 ボスが声をかけて来たので私達は厩舎を出る事にした。

 

 

 

 厩舎の周りをボスとコタロウを曳いて歩く。いつもの足音に鞍の揺れる音が加わってほんの少しだけど賑やかな感じになっている。

 

『そろそろ良いか。さぁチョコ、俺に乗ってみるんだ』

 

 ボスが立ち止まりそう言ってくる。改めてボスの方を見るとその大きさに慄いてしまう。鞍が私の頭の上近くにある。

 

『チョコ、まずは鐙を引っ張っておろして左足を載せるんだ。そして左手で手綱と俺の鬣を掴め』

 

『ええっ!?ボスの鬣を掴むの!?良いの……?』

 

『ああ、大丈夫だ。ただ、全体重は掛けないでくれ、さすがに千切れて痛いからな』

 

『う、うん……』

 

 左手で手綱とボスの鬣を掴むとボスの身体から熱さと鼓動が感じられてドキドキする。左足を精一杯上げて鐙に掛ける……ううっ、後ろに転びそう……。

 

『チョコ大丈夫?俺が支えてあげるね!』

 

『あ、ありがとう、コタロウ』

 

 後ろからコタロウが私の背中とお尻を頭で支えてくれる。何とかひっくり返らずにすみそうだ。

 

『右手で鞍の前方部分を掴め。そして右足を一気に蹴り上げて上るんだ。コタロウ!チョコにタイミング合わせて持ち上げて支えてやれ』

 

『わかったよぅ!!』

 

 私を支えるコタロウの頭と首に力が入るのが分かる。

 

『チョコ、上るときには合図をくれ。コタロウが支えてくてる』

 

『うん!――じゃあ!ボス、コタロウ!!行くよ!!!セイッ!!!』

『良いよ!――、そぉれっ!!』

 

 右足を思いっきり蹴ってジャンプする。それに合わせてコタロウが私を持ち上げてくれる。身体が、視線が、一気にボスの背の上に乗る。

 

『よし、無事乗れたな!』

 

『やったー!!大成功だーー!!』

 

 ボスとコタロウの声が下から聞こえてくる。前を向けば……見た事のない高くて広い視界が広がる――、これが――、鞍上――。

 

『すごい……すごい……、凄いよボス……』

 

『どうだ、乗ってみて良かっただろう』

 

『うん、こんな世界があったなんて……』

 

 これが私達の上に乗っている人間が見れる景色――。

 

『では、動くとしよう。チョコ、右足も鐙に掛けて手綱を両手でしっかり握るんだ』

 

『う、うん。』

 

 言われた通りに右足を轡に掛けて左手に持っていた手綱を両手に持ち替える。姿勢が真っ直ぐ向いたところで、ボスがゆっくりと歩き始めてくれる。ボスの後ろ頭が動き、耳と鬣がなびくのが見える。カッポ、カッポ、と蹄の音がいつもよりも遠く聞こえ高く広い景色がゆっくりと流れていく。それにしても――。

 

『結構、揺れるんだね。わっ、わわわ…』

 

 ボスの身体がゆったりと波打つように揺れ、身体が前後にゆっくりと揺さぶられる。慎重にゆっくりと歩いてるのにこんなに揺れるなんて知らなかった。これで普通に歩いたら、それこそレースの時みたいに走ったら一体どれほど揺れるんだろうか――、想像しただけで震えてしまう。

 

『怖くて緊張してるのか?チョコ?』

 

 少し視線を下げるとボスが私の方へ視線を向けていた。

 

『えっ、わ、わかるの?』

 

『ああ、分かるさ。チョコの気持ち、鼓動が手綱と鞍を通じて伝わって来るんだ』

 

 ボスがそんなことを言ってくる。確かに良く意識してみれば私も感じる事が出来る。両手に握った手綱から、跨った鞍から、両足の間にあるボスの横腹から、ボスの感情、気持ちが伝わってくる――、そんな気がした。

 

『馬の――、俺の動きに合わせてお前も身体を動かすんだ。大丈夫、お前ならできる。()()()()なら、()()()()()()()()()()()()()できる』

 

 ボスがそう言ってくる。ボスの声が前方にあるボスの頭、正確には口の部分からではなく、足元から――、熱と鼓動を介して伝わってくる。

 私は深呼吸して意識を集中させる。馬の時の自分の動き、身体の動かし方を思い浮かべそれをボスの動きに合わせ自分の身体を動かす。

 

『いい……いいぞチョコ、上手く合わさられている。これなら速歩や駈足も行けるぞ』

 

 ボスが少し興奮気味に伝えて来る。私も何だか乗っていて楽しい……。

 

『ねぇ、ボス。ちょっと遠出してみてもいい?』

 

『ああ、構わないぞ!』

 

 

 

 ボスとコタロウと深夜のトレセンを散策する。ヒトもウマも居ない静かな夜空の下にふたりの蹄の音が聞こえる。

 ゆらり、ゆらり、と揺れるボスの背中が心地よくて、上を見上げれば星空が広がる。私はそんな夜空に手を伸ばす、今なら星を手で掴めそうだ。

 

『……うん?』

 

『ボス、どうしたの?』

 

 ボスが立ち止まったので私は尋ねる。

 

『チョコ、少し寄り道して良いか。会いたい奴が居るんだ』

 

『えっ?……うん、良いけど』

 

 ボスが向きを変えて、ある厩舎の一角へ入っていく。ここはどこだろう?

 私達が入って来たのにその厩舎の馬達が気づき、ざわつき始める。

 

『なんだなんだ…?』

『なんだこいつら……』

『何でヨソ者がこの時間に来てるんだ……?』

 

 そんな声と警戒する視線が四方から突き刺さる。

 

『ボ、ボス…ちょっと、これまずいよぉ~』

 

 隣のコタロウが不安そうにボスに寄って来る。

 

『ああ、すまない。すぐ終わらせるから……』

 

 そう言うとボスはある馬房の窓に近づいて行き、そっと声をかける

 

『オジュウ、オジュウ、起きてるか?俺だ、ブルドックヘッドだ』

 

ボスが呼びかけると、中からひとりの鹿毛色の額から鼻先にかけて一筋の流星を持つ馬が顔を出してきた。

 

『何だ?何か用か?……お前こんな時間に外出歩いて良いのか?』

 

 とても鋭く厳しい視線を持つその(ヒト)は私に気づいたのかこちらに顔を向ける。

 その瞬間、とてつもない重圧と威圧感を私は全身で受ける。この(ヒト)、只者じゃない!かなり強い私達の上位の存在だ!!

 

『何だぁテメェ?………おいブル、お前んとこのニンゲンは夜中に馬を連れ出すバカ者なのか?』

 

『まぁそんなにイラつくなって。――チョコ、こいつはオジュウチョウサン、俺の同期で古い友人だ。彼に()()()()()()()()()()()()

 

『うん……。えっと、初めまして、オジュウチョウサンさん。私はチョコエクレールと言います。ボス……ブルドックヘッド先輩と同じ厩舎に所属する三歳馬です。以後お見知りおきください』

 

『なっ……!?』

 

 帽子を取って頭を下げて挨拶をする。相手が息を吞み動揺するのが感じられた。

 

『オジュウ、驚いただろう?』

 

『ブル、何だこいつは?ニンゲンのくせに何故俺達と喋れるんだ?……いや、ニンゲンなのにヒトの匂いがしねぇし、俺らと似た耳を生やしてるし……何者なんだテメェはよぉ……』

 

『ひぃいっ……』

 

 再び強烈な重圧と威圧感を受けて私は身を縮こめる。

 

『おいおい、だから威圧するなって。こいつはチョコエクレール。俺の厩舎の新入りで正真正銘の競走馬、俺達と同族だ。訳あって真夜中の間だけ人間に変身できるんだ。』

 

『ほぅ……で、そのニンゲンに変身とやらをするお気に入りを俺に見せびらかしに来たのか?』

 

『違うって……。今日初めて厩舎の敷地外に出てな、たまたまここを通りかかっただけだ。確かお前が帰って来てるとテキが話してたのを思い出して顔を見に来ただけだ。あとは、コイツ――チョコエクレールは昼間は普通に馬の姿をしてる、もし調教馬場で会う事があったら仲良くしてやって欲しいんだ』

 

『ふん、手土産も何もなくか』

 

『それは悪かったって、今度また改めて来るからその時な。で、足の方はもう良いのか』

 

『ああ、まぁ何とかな。ニンゲンどもはまたレースに出させるつもりらしい』

 

『そうなのか。まぁお前は強いからな、走れるうちにしっかり走って稼ぐしかないな』

 

『うるさい、お前こそいい加減早く障害レースへ転向しろよ(こっちへ来いよ)

 

『またその話か。何度も言っただろう、俺に障害レースはとてもじゃないが無理だ。勝てないし完走すら危うい。せいぜい最後尾で障害超えられずに転倒して予後不良(あの世行き)するのがオチだ。お前とのマッチレースなんて夢のまた夢だ』

 

『嘘つくな!お前はまだ本気を出してない!本当のお前なら……きっと――』

 

「何だ!?何かいるのか?誰だ!そこに居るのは!?」

 

 厩舎に明かりが一斉に灯る。オジュウチョウサンさんの厩舎の人に見つかってしまったんだ!

 

『マズイ、コタロウ!逃げるぞ!!チョコ!しっかり捕まってろ!!オジュウまたな!!次会うまでにくたばるなよっ!!』

 

『ま、まて!ブルッ!!』

 

 オジュウチョウサンさんが何か言いたそうにしていたが小型ライトを持った人間達が厩舎から続々と出てきたので私達はその前に厩舎の敷地から一目散に駆け出して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フーッ…フーッ…』

『ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……』

「ハァッ……ハァッ……ハァッ……」

 

 何とか御手洗厩舎まで戻って来れた私達は息も絶え絶えになっていた。あの後、人間達が「放馬!放馬!」と騒いで、私達はトレセン内を駆け回りながら必死に包囲網を潜り抜けてここまでたどり着いたのである。

 道中、落ちない様に必死に手綱と鞍にしがみ付いてボスの走りについて来ていた。カーブでは曲がり切れないコタロウを受け止めるためにボスが外側に回りコタロウのタックルを受けながら何とか曲がる事が出来ていた。

 

『ボス……コタロウ……大丈夫?』

 

 私とふたりの息が落ち着いたところで、ふたりに聞いてみる。

 

『ああ、俺は大丈夫だ。ふたりともすまんかったな』

 

『俺こそごめん。曲がり切れなくてボスに何回もぶつかっちゃった。チョコもごめんね』

 

『気にしないで。私は大丈夫だよ』

 

『良かった……』

 

 私は二人を曳いてそれぞれの馬房に入れる。水桶を用意してふたりに飲んでもらいながら馬具を外していった。

 

 

 

 

『なぁ、チョコ。お前、モンキー乗りなんていつ憶えたんだ?』

 

『えっ?モンキー乗り……??』

 

 二人の馬具を外して私が脱いだ作業服と帽子と一緒に片づけた後、コタロウとボスの身体をタオルで拭いてるとボスがそんな事を聞いてきた。

 

『騎手がレースで俺達に乗ってる時にする姿勢だ。鐙の上に立って腰を浮かして背を丸めて膝でバランスを取りながら前傾姿勢で騎乗するスタイルだ。俺が駈足に入ったら、チョコ、お前は自然とその姿勢に移行したんだぞ』

 

 ボスがそんな事を言ってくるが私には全く記憶がない。ひたすら手綱を握りボスの首筋、なびく鬣を見つめながら必死に落ちない様に耐えていただけだと思ったけど。

 

『へぇーあれってモンキー乗りって言うんだ。俺斜め後ろから見てたけど、チョコカッコよかったよ!!まるで人間のホンモノの騎手みたいだったよ!!』

 

 コタロウがそう言ってくる。ふたりがそう言うならきっとそうなのだろう。でもどうしてそんなことできるようになったのだろうか。全く心当たりがない。

 

『モンキー乗りはそう簡単には出来ない。素人が見様見真似でしても形ばかりで実際走ればすぐにボロが出る。しかし、チョコ、お前の騎乗はかなりレベルが高いものだった。重心取り、荷重移動、まるで慣れたプロに近い物だった』

 

 ボスが真剣に私を褒めてくれている。でも少し怖い気がするのは何故だろう。

 

『本当に何も覚えてないのか?チョコ、お前は何者なんだ?』

 

ボスの鋭い目線が私を貫く。私を――、私の心の奥を斬り開くように――。

 

『わ、私は――、』

 

 何か答えなきゃ……そう焦る私の身体が光を帯び纏い始める。時間が来たみたいだ。

 

『時間か。チョコ、よく考えてみてくれ。お前の秘密の何かヒントになるかもしれん』

 

『う、うん。わかったよボス』

 

 私の身体を纏う光が一層強くなったので私も自分の馬房に入る。開けていた閂を閉めて寝藁の上に座り、両手を――もうすぐ両前脚になるモノを自分の身体の前、寝藁の上について俯いたような姿勢を取る。この姿勢だとその体勢のまま馬の姿に戻れて楽だからだ。

 

 視界が眩い光に包まれる瞬間、ふと心の中で呟く。

 

 

『私は誰?』

チョコエクレールはトニービン系とステイゴールド系の血統を持つ競争馬と言う設定がありますが、父系・母系はどちらが良いと思いますか?

  • 父:ステイゴールド系、母:トニービン系
  • 父:トニービン系、母:ステイゴールド系
  • どちらでもよい
  • その他 (詳細を活動報告へ記入)
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