転生架空馬の夢の記録(夢日記)   作:よみびとしらず

7 / 9
おまたせしました。第6話目です。
第1話以来の朝スタート、そして物語初の全編日中のウマ娘ではない競走馬モードのチョコエクレールのお話となります。(筆者の文章力が低いので違いがわからないかもしれませんが)楽しめて頂けたら幸いです。新キャラが出ます。

あと馬の下ネタ表現があります。ご注意ください!


改訂

2022/07/11 前書きに注意書きと書き忘れてた後書きのキャラ紹介を追加
2022/07/13 サブタイトル変更


chapter.6 「調教馬場」

――美浦トレセン 御手洗厩舎 AM4:00

 

 私の身体を包み込んでいた光の粒子が消える。ゆっくりと目を開けて馬体(からだ)を確認する。黒鹿毛の前脚に蹄を確認して今日もちゃんと馬の姿に戻れたことに安堵する。

 すると厩舎に明かりが灯り、二人の人間の足音が聞こえてくる。テキと国崎さんだ。

 

「おはよう。コタロウ、ブルドッグ、チョコ」

 

 テキが私達に声をかけてくれる。私はそれに「ヒィン」と鳴いて答える。

 

「テキ、コタロウとブルドッグの様子が――」

 

「ああ、ちょっと見てみる」

 

 国崎さんに呼ばれてテキがボス達の馬房の方へ行くので気になった私は首を伸ばして様子を伺った。

 

「ブルドッグは体調を崩してるようで、コタロウは脚の筋肉が妙に疲労して張っているんです」

 

「確かに様子がおかしいな……国崎、今日はこの二頭の調教と運動は中止だ。俺は診療所へ連絡してくる」

 

 そう言うとテキは走って行った。

 

「一体、どうしてこんな事に……?何が起きたんだ……?」

 

 不安と焦りの表情を浮かべている国崎さんを見ると罪悪感が浮かんで来る。

 ボスとコタロウが不調なのは昨日深夜、私がふたりを連れ出したからだ。

 ボスは私が見つけてしまったビールを飲み過ぎて"フツカヨイ"と言う病気になっている。ボスが言うには『病気じゃない、すぐ治る』と言っていたけど、顔色が悪く苦しそうなボスを見てると、とてもそうには見えない……。コタロウは私が調教馬場で全力で走らせてしまい体力を使い切ってしまったからだ。よく考えれば激しい運動の後のクールダウンと呼ばれるゆっくり目の運動と帰ってからいつも国崎さんが私達にしてくれてる脚や馬体のマッサージを私はコタロウにしてあげてなかった。早く厩舎に戻りたい一心でコタロウの脚のケアを疎かにしてしまったのだ。

 

『ごめんなさい。ボス、コタロウ……そして国崎さん』

 

『チョコは悪くないよぉっ!』

 

『そうだ。お前が気に病むことは無いんだ。それよりも昨日は本当にすまなかった……嬉しくてつい羽目を外してしまった……ふたりにはみっともない姿を情けない所を見せて迷惑いっぱいかけてしまった……本当にすまない……すまない……』

 

「ブ、ブルドッグ!?どうした!?どこか痛むのか!?苦しいのか!?……大丈夫だ!すぐにテキが獣医さん連れてきてくれるからな!」

 

 ボスが悲しそうに呟きヒィンヒィンと鳴くと、心配した国崎さんがボスに寄り添って馬体を撫でながら必死に声をかけてくれてる。重苦しい空気が厩舎を包み込み始めていた。

 

 

「おはようございます!すみません!遅れましたっ!!」

 

 その時、大きめな声とともに頭を下げながら一人の男の人間が厩舎へやって来る。

 

「浦木来たのか」

 

「国崎さん、おはようございます!遅れですみませんでした!…………何かあったんですか?」

 

「実はブルドッグとコタロウが朝から調子を崩していてな、今テキが診療所に連絡とっているところなんだ」

 

「そうだったんですか」

 

 国崎さんと話してるこの男の人は浦木巧(うらき こう)さん。私達のレースで背中に乗ってくれる騎手さんだ。ボスが言うには本当は私達の厩舎の人だけど訳あって普段はよその厩舎に居てレースの時以外は時々来て調教を手伝ってくれる人だ。よくお昼過ぎに人間用に細く小さく切られたニンジンを持ってきてくれる人でもある。何でも浦木さんはニンジンが嫌いらしい。人間用のニンジンは柔らかくて食べやすくて色んな味付けがしてあって美味しくて、せっかく人間は私達馬と違って食べれないものが殆ど無い何でも食べれる便利な生き物なのに勿体ないなと私は思った。

 

「おおっ、浦木来てくれたのか、おはようさん」

 

「テキ、おはようございます!遅れてすみませんでした」

 

 テキが小走りで帰ってきた。浦木さんに気づくと声をかけている。

 

「ああ、それは良い。それよりも国崎、診療所と連絡が取れた。すぐ獣医が来るそうだ。その後動かせそうなら二頭を診療所に連れて行くぞ」

 

「はい」

 

「浦木、すまんな。トラブルが発生してな、今日はチョコエクレール号のみの調教となる。俺と国崎はブルドッグとコタロウの面倒見ないといけないからお前一人で調教行って来てくれ。これが今日の調教メニューだ。調教スタンドの職員にはこちらから連絡を入れてある。頼むぞ」

 

「はい!わかりました!」

 

 テキからメモ用紙を受け取りそう言うと浦木さんは私の方へやって来た。

 

「おはようチョコ。なんか大変なことになってるけど今日も頑張ろうな!」

 

ヒィン!(はい!)

 

浦木さんが手早く私に馬具を装着していく。こうして見てみるとテキと国崎さんと浦木さんでは馬具の付け方や力加減が違う事に気づく。浦木さんはスピード重視で少し力が強いのかな?コタロウは嫌がっていたっけ?

 

「チョコ大丈夫か?チョコは大人しくて賢くて我慢強いから少しキツめにしてるけど……大丈夫そうだな、…………よし完成だ!」

 

 馬具を全部付けて、浦木さんに曳かれて私は馬房から出る。

 

『ボス、コタロウ。行ってきます』

 

『ああ、いってこい』

 

『いってらっしゃい~』

 

 ふたりに見送られて私は厩舎を出た。

 

 

 

 厩舎の前でグルグルと引き運動した後に、浦木さんが私に乗る為に準備を始めたので、私は首を横に向けてそれを見ることにした。これから夜に変身してボスやコタロウ達に乗る機会があるから、負担にならない様に上手な乗り降りを覚えたかった。こういうのはプロである人間の騎手さんの動きを参考にするのが確実だ。

 

「…………?」

 

 浦木さんと目が合う。彼はきょとんとして私の方を見つめた後、乗る為の踏み台から降りて私に近づき、優しく首筋を何度も撫でてくれた。

 

「チョコ、大丈夫、大丈夫。ちょっと背中に乗るだけだから……なっ?」

 

 どうやら浦木さんは私が何かをされるのではないかと警戒してると思っているようだった。『違うんです。私は浦木さんの騎乗の仕方を見てボス達に乗るときの参考にしたいんです。だから気にせず乗ってください』そう言いたかったけど今の私は競走馬だ。夜の人間体とは違ってヒトの言葉を発する事が出来ない。

 このままではいつまで経っても浦木さんが乗ってくれないので私は仕方がなく正面を向くことにした。代わりに目を瞑り神経を集中して浦木さんが私に触れる感触と手足の動作の音と気配で覚えることにした。

 浦木さんが私の横に立ち踏み台に乗り鐙に足を乗せ左手を手綱と鬣を掴み鞍を持って乗る。その一挙手一投足の音や感触や感覚とタイミングをしっかりと頭に叩き込む。

 

「よし、行こう」

 

 手綱から伝わる合図で私はゆっくりと厩舎の敷地から出た。

 

 

 浦木さんを乗せて私は厩舎の敷地の外をぐるりと回る。2週ほどしたら再び合図、そのまま厩舎が並ぶ通りの馬道を歩いて行く。

 私の蹄の音が響き、背中には浦木さんがゆらゆらと揺れている感触が鞍を通じて伝わってくる。

 夜中、変身してボス達に乗るようになり、鞍上の人間の視点が分かる様になってから私は考えが少し変わった。今までは背の上の人間はどちらかと言うとレース中は命令を出すけどそれ以外では背に乗る荷物・重石のイメージしかなかったので特に気にせず適当に歩いていた。

 でも今は鞍上の人間の動きが気になり少し理解できるようになったのだ。浦木さんが私の動きに合わせてくれるように私も浦木さんの動きに合わせて体の動きや脚使いを少し意識して動かす。ほんの少しの違いだけど、いつもより歩いてて気持ち良い感じがする。

 浦木さんもそれに気づいたのか、「今日のチョコは調子良さそうだ」と嬉しそうに呟いて私を撫でてくれる。とても気持ちが良い。

 

「あ、そう言えば調教メニュー確認しておくか。……ええっと、"角馬場で軽い運動、次にDコースを一周、単走。馬なりでチョコの様子が良ければ直線やや強めで"かぁ……」

 

 浦木さんがメモ帳を広げながらメニューを読み上げる呟きをしっかり拾いつつ調教メニューを頭に入れる。人間の文字と言葉を理解できるようになってから嬉しい事の一つに自分が今日どんな調教を受けるのか知ることが出来る事だ。以前は今日はどこへ連れて行かれるのだろうか?何をされるのだろうか分からなくて不安しかなかったけど、予め調教メニューを頭に入れておけば心の準備が出来て慌てたり不安になったりせずに済むからだ。

 

 

 

 厩舎が並ぶ馬道を歩いてるとあちこちの厩舎から同じようにヒトを乗せた競走馬(なかま)達が出てきて、私の周りも徐々に賑やかになって来る。鞍上の浦木さんが合流する他の厩舎の人間達に挨拶をしてる。私も鞍下の馬達に挨拶をする。

 

「おはようございます」

「おはよう」

「おはようございます」

「おう、浦木おはようさん」

 

『おはよう』

『おはよう』

『おはよう』

『おはようチョコ。久しぶりだね』

 

 そんな挨拶を交わしつつ私達は進んで行った。

 

 

『うわぁ…!』

 

 調教馬場前の広場に出るとそこには開門待ちの競走馬(なかま)とその上に乗る人間達ででごった返していて、とても賑やかで壮観な光景が広がっている。

 レースから帰って来てからはずっと厩舎の周りでの引き運動ばかりで調教馬場に出るようになっても軽めの調教のみで遅い時間に行っていたのもあってこの大勢の人馬の光景に遭遇するのは本当に久しぶりだ。

 あちこちにいくつも輪乗りの塊が出来ていてその間と所狭しと移動する馬達の群れを避けながら私は進んで行く。

 

 丁度入れそうな輪乗りのグループを見つけ合流しようとした時だった。突然周りの馬や人達がざわめき出した。

 

「なんだ?何の騒ぎなんだ?」

 

 浦木さんが騒がしい方を向くので私も向きを変えると、向こうの方から水色のメンコを付けた一頭の馬が背に乗っていた騎手を振り落としながら走って来るのが見えた。

 

「放馬ぁーーー!!放馬ぁぁーーー!!!」

 

 誰かの大きな声が響いて周りに馬達が半ばパニックになりながら散り散りに避けていく。

 

「マズイ、チョコ!避けるんだ!!早くっ!!動くんだっ!!」

 

 浦木さんが必死に身体を揺らし手綱を引っ張って私に合図を送るけど、私は動かず、駆け寄って来る馬を見つめていた。何故かその馬に見覚えがある気がしたからだ。

 その馬は私目掛けて駆けよって来ると手前に減速してやがて目の前で止まった。水色のメンコから覗く見覚えのある毛色と流星、鋭い目つきから放たれる圧の強い強者独特のプレッシャー。もしかして――?

 

『オジュウチョウサンさんですか?』

 

『ふん、やはりお前か。あの時のブルに乗っていた人間に変身する(ヤツ)は』

 

『はい、そうです。おはようございます』

 

 私がペコリと頭を下げて挨拶するとオジュウチョウサンさんはフンと鼻息を一度大きく鳴らして顔を近づける。スンスンと鼻を鳴らしながら先ずはおでこと鼻先を軽くタッチする。次にお互いに首筋に顔と鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。私達馬同士の初対面の挨拶の作法だ。

 

「オジュウぅ!オジュウゥ!!ゼェッ…ゼェッ…ゼェッ……、う、浦木……すまん……怪我とかは無いか?」

 

「岩神さん!?大丈夫ですか?……俺とチョコ……チョコエクレール号なら無事です」

 

「ゼェッ…ゼェッ……、そ、そうか。それは良かった。お、俺なら大丈夫だ、オジュウチョウサンがいきなり暴れて、何とか落ち着かせようとしたけど駄目だった。でも怪我は無いから心配するな。受け身はちゃんと取れたから」

 

 作業着を泥だらけにして浦木さんと話してるのはオジュウチョウサンさんの騎手さんなのかな?

 オジュウチョウサンさんは首筋の挨拶まで終わると今度は私の身体の横、そして後ろのお尻の方に回りながら鼻をスンスン鳴らして匂いを確認してる。

 

『……………』

 

『……………』

 

 オジュウチョウサンさんが何故か私のお尻の周りを念入りに嗅いでチェックしている。鼻息がお尻に当たってとてもくすぐったくてムズムズする。後ろに回られて密着されると馬の本能でつい後ろ脚で蹴りを入れてしまいそうになり体を震わせながら必死に耐える。

 

「チョコ、大丈夫だ……大丈夫だ……大丈夫だから……」

 

 そんな震えを恐怖感と緊張で震えてると思っているのか浦木さんが優しく声をかけてくれながら私の鬣や首筋を撫でてくれる。違うんだけどなぁと思いつつも撫でてくれる事で揺れる気持ちが落ち着くのでとてもありがたい……。オジュウチョウサンさんの斜め後ろでは石神さんが不安そうに見守ってくれている。

 

 お尻を念入りにチェックされた後、そのまま反対側に回り最後に横側の匂いをチェックし終わったのか、オジュウチョウサンさんが再び私の正面に戻ってきた。

 

『フン、良い顔と馬体とケツと甘い匂いさせやがって。それであいつ(ブルドッグヘッド)を散々誘惑し誑かして骨抜きにしてきたのか、この牝馬(メス)がっ――』

 

――むっ

 

 オジュウチョウサンさんが何やら盛大な誤解をしている事に気づいた。これは早く訂正せねば……。

 

『あの……オジュウチョウサンさん、何か勘違いしてませんか?私は牡馬(おとこ)です!牝馬(おんな)じゃないですよ!』

 

 遥か格上のオジュウチョウサンさん相手には言うのは少し気が引けてしまうが、この問題だけは譲れないので勇気を振り絞ってはっきりと否定する。

 

『あ"ぁん?牡馬だとぉ……? …………フフッ、フハッ、ハハッ、ハハハハハッ!!何、冗談言ってやがる。お前みたいなキュートでラブリーでチャーミングで牡馬を狂わせる濃厚な甘い匂いを纏う繁殖牝馬崩れ(阿婆擦れ)みたいな奴が牡馬なわけないだろう?』

 

――ブチッ、カチンッ!

 

 我慢の限界超えました。美浦トレセンに来てから何度も何度も嫌になるくらい遭遇した光景と押し問答。あまりやりたくないし、ボスからいつも止めろと言われてるけど、こういう場合の一番簡単ですぐに片付く解決方法――、チョコエクレール、実行します――。

 意識を集中させて体の血流を、熱を、後ろ脚の間のある一点に集中させて、血と熱が限界まで溜まったら、言葉と共に一気に解放させる――!!!

 

『わたしはっっ!!牡馬(おとこ)だっっ!!牝馬(おんな)でもっっ!!繁殖牝馬崩れ(阿婆擦れ)でもっっ!!ない!!これをよく見ろっっ!!!!』

 

 

――ボロンッ!!

 

 ひと際盛大に嘶きながら後ろ脚から"馬っ気"を出す。後ろ脚の間から5本目の脚が、どす赤黒く太く長く大きな"脚"が湯気を纏い姿を見せて垂れ下がる。これ、結構重い……。

 

『………………』

『………………』

『………………』

「………………」

「………………」

 

 辺りは不気味なくらい、シンと静まり返っていて、ドクンッドクンッと自分の身体の中と現れた"5本目の脚"が強く大きく脈打つ音だけが響いてるような錯覚に陥る。

 周りを見れば人も馬も後ずさりして私達から距離を取るようにして囲んでいる。みんなの目線が低い、下を向いて一点に集中してる。私の"脚"に視線が釘付けになっている。

 

『デカイ……』

『デケェ…』

『負けた……』

『あんなの入らないよぉ……』

 

 周囲から聞こえる困惑と恐れおののく馬達の声が聞こえてくる。牝馬と間違われあらぬ誤解を受けた時には"コレ"をするとみんな納得してくれる。ただ人間達が何かヒソヒソ呟いていて何やら失ってはいけない尊厳のような物を無くしているような気がするが気にしてる暇はない。

 

『……マジかよ』

 

 オジュウチョウサンさんが私の"アレ"を見つめたまま固まって居る。表情がどことなく引き攣っているようにも見えた。

 私はオジュウチョウサンさんを鋭く見つめたまま一歩前に出る。ブルンッと"5本目の脚"が揺れる。オジュウチョウサンさんが一歩下がる。私が"股間のアレ"を揺らしさらに一歩進む、オジュウチョウサンさんがさらに一歩後ずさりする

 

『オジュウチョウサンさん!これで信じて頂けましたか?』

 

『あ、ああ――』

 

 オジュウチョウサンが何か言いかけた瞬間、片方から人間の腕が伸び頭絡に綱が一本繋がる。反対側にもいつの間にか引き綱が追加されていた。

 

「シン!今だっ!綱をひけぇっ!!」

 

「沼永さん!?……はいっ!」

 

『ぐぬっ!?し、しまったぁ!クソがっ!!』

 

 騎手の岩神さんともう一人人間――おそらくオジュウチョウサンさんの厩務員さんらしき人が綱を引っ張ってオジュウチョウサンさんが見る見る引きずられて下がっていく。

 

『チョコエクレールゥッ!!!お前の顔と匂い!!確かに覚えたからなっ!!!』

 

 そんなセリフを吐きながらオジュウチョウサンさんはあっという間に向こうの方へと引っ張られて行ったのであった。

 

「ふぅ~……危なかったな。それにしてもお前また馬っ気だしたのか?最近は無かったから落ち着いたんだとおもっていたんだけどなぁ~」

 

 鞍上で浦木さんがそんな事をぼやいてる。私にも譲れない信条があるんです!大きく深呼吸を繰り返して、生えていた"5本目の脚"を引っ込めると、気を取り直して私が調教馬場へと続く門に向かい歩き始める。すると進行方向に居る馬達が慌てて後ろに下がり始め、眼前には左右に分かれた馬達によって道が作られ私達はその真ん中を堂々と歩いて行くのであった。

 

 

 門のすぐ前に来ると、まだ鍵はかかったままだった。

 昨日、コタロウとここへ来たとき確かこの門の鍵に触れて祈ると開いたんだよね?

 私は門にぶら下がった鍵の本体部分――錠前と言うらしい――に鼻先を当てて祈る。――どうか昨晩の様に開きますように。

 

 しかし、いくら待っても何も起きなかった。私が真夜中に人に変身している時にしかできないんだろうか。錠前を咥えようとしたら「こらこら、咥えるんじゃない」と浦木さんに手綱を引っ張られてしまい錠前を放してしまう。すると職員さんが走って来て鍵を開けてくれた。

 

「開門ー!」

 

 ゆっくりと門が開かれ、私達を先頭に競走馬の集団が調教馬場へと足を進めて行った。

 

 

 

 

(つづく)






☆今回のお話で新規に出た人馬や用語まとめ☆


・浦木巧(うらき こう)

 美浦トレセン御手洗厩舎所属(書類上)の2年目19歳の若手騎手さん。
 チョコエクレール・ブルドッグヘッド・コタロウの主戦騎手を務めている。本来は御手洗厩舎所属なのだが、諸般の事情で現在は美浦の別厩舎「鳥屯(とりとん)厩舎)に所属し普段はそちらで活動している。レースの時以外は時々調教を手伝いに来るくらいである。
 大の競走馬オタクで最近はウマ娘にハマっているらしい。人参が大の苦手で食堂などで「人参要らないよ」と注文するが逆に人参山盛りにされるそうで、その度に御手洗厩舎に来てはチョコたちのエサ箱へ人参を入れている。


・岩神深一(いわがみ しんいち)

 オジュウチョウサンの主戦騎手。2015年の"運命の出会い"からオジュウチョウサンの主戦騎手を務め数々の障害レース記録を打ち立て「オジュウなくして岩神なし、岩神なくしてオジュウなし」と言われるようになった。
 チョコエクレールを見つけ興奮するオジュウチョウサンをなだめようとするが振り落とされてしまう。


・沼永厩務員

 オジュウチョウサンの担当厩務員さん。オジュウチョウサンが放馬したと聞いて一目散で駆け付けて来た。岩神騎手の事を「シン」オジュウチョウサンの事を「オジュウ」「オー君」と呼んでいる。

※参考
https://www.youtube.com/watch?v=oZciDMFw118
https://www.youtube.com/watch?v=LFAAClB6tPU

※オジュウチョウサンの主戦騎手さんと厩務員さんは夢の中では実在する人名で登場してましたが、そのまま掲載するとハーメルンの規約違反になる為、仮名とさせていただきました。ご了承ください。

------------------------------------------------


【馬っ気モード】

 チョコエクレールが怒ったときにする威嚇行為。
 トレセンに来たばかりの頃、その馬体や顔、物腰の低い性格から頻繁に牝馬と間違われ同期や年上の牡馬に絡まれる事が多く「牝馬(おんな)」と揶揄されていた。
 彼はそれがとても嫌で何度も否定するが信じて貰えず、弄りが増々エスカレートしていく。ついに我慢できず怒りで吠えたところ、まさかの馬っ気を出してしまう。
 すると、彼の馬っ気を見た牡馬達が恐れ慄いて逃げ出しその後二度と揶揄われなくなった。
 これ以来、彼は「牝馬(おんな)」と揶揄されるたびに馬っ気を出して牡馬を追い払うようになったがそれを見た人間達が「便所(※御手洗厩舎の蔑称)の黒鹿毛の新馬は牡に興奮して発情してる」「♂チョコエクレール♂」などと揶揄されるようになり、変な評判が付くようになってテキ達が心配してるのをチョコエクレールは気づいていない。
 ちなみに他の馬と違って馬っ気出しても怒りを鎮め気持ちと頭を切り替えるとすぐに引っ込むため、レースに支障が出たことは無い。


【牝馬と揶揄されることに忌避感を抱くチョコエクレール】

 普段から温厚で多少の事では滅多に怒らない彼だが「牝馬(おんな)」と揶揄われたときだけは酷く感情的になる。「グズやノロマ、役立たずと言われるのは我慢できるけど「牝馬(おんな)」扱いされるのだけは絶対に嫌だ。これだけは許せないし我慢できない」と言う。彼にとって牝馬扱いしそう呼ぶのは最大の地雷であり禁句である。それはきっと前世が■■■で■■■に■■■されて■■■■■■■■■■■■■だからである。

チョコエクレールはトニービン系とステイゴールド系の血統を持つ競争馬と言う設定がありますが、父系・母系はどちらが良いと思いますか?

  • 父:ステイゴールド系、母:トニービン系
  • 父:トニービン系、母:ステイゴールド系
  • どちらでもよい
  • その他 (詳細を活動報告へ記入)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。