show down!!   作:トンプソン@ワートリ

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甲斐祐希①『EP.2 黒のナイフにオール・イン』【加筆修正版】

 

 

「……そんなのに興味ないし」

 

 『黒ずくめ』の声色が不信た怪訝に変わる。ソロ戦の相手がいきなり賭けを持ちかけたら驚くだろう。しかも9戦終わった後で『次勝ったら全ポイントあげる』なんてものなんて、提案したユウキからしても自分が受けたら信じられない内容だ。

 しかし、相手の声に拒絶は含まれていない。誘いに乗らせるのには十分と判断したユウキはすかさず二の矢を放つ。

 

「えー、憧れの影浦さんにも近づけますよ?」

「っ!なんでそれを……!」

「いやいや、9戦やってたら分かりますよ流石に」

「……」

 

 誰から見てもバレバレであったのに、『黒ずくめ』からしたら隠しておきたかったのだろう、通話越しでも奥歯を噛みしめる音が聞こえる。

 相手の黒ずくめの服装、俊敏な戦闘スタイル、マンティス、ギラついた目。あまりにも影浦隊長を意識しているのがわかりやすすぎる。

 

「しかも……フリーですよね?ここでポイント稼いでおけば影浦さんに近い位置で部隊にスカウトされるかもしれないし、もしかしたら4人目の影浦隊になれるかもしれませんよ」

 

 相手を持ち上げて調子に乗らせるとはいえ、ここまで言ってしまうのは流石にあからさますぎて気持ち悪いか。

 数秒の沈黙。憧れてると言っても、そこまででは……と伺いの言葉を立てようとしたが。

 

「……いいよ、面白そーじゃん!」

 

思ったよりチョロかった。

 

 後にボーダー部内誌のインタビューでユウキがそう語ることになるのだが、それはまた別の話。

 

「で?仮にボクが負けたらどうするんだ?ポイント全部やるか?」

「んー流石に全敗してて同じ条件だと不公平だからなぁ……。例えば、私に勝てなかったら、なんでもひとつ言うことを聞くというのでどうです?」

「いいよ!ぜってーありえねぇけどな!」

 

 自分から賭けを持ち出してきて、保険を混ぜつつ『不公平』という言葉を持ち出すのがまぁ、詐欺師らしいな。

 トントン拍子に話が進んでしまった戸惑いと、相手を煙に巻くような自身の言動に苦笑いを浮かべつつ、ユウキはタブレットを操作して自らを負けることの許されないテーブルへと投げ込んだ。

 

10戦目。転送完了。

 

 20メートル離れた先でも『黒ずくめ』のギラついた笑顔は目に見えていた。

 

「よっしゃ、行くぞ!」

 

 掛け声一つ、『黒ずくめ』はグラスホッパーを足元に敷くと一直線に跳躍してきた。

 ここまでの全勝から見てあまりにも分かりやすい、予測できる行動。ユウキは今のトリガー構成を思い出しながら、相手と同じように跳躍板を足元に敷いて飛び出した。

 相対的に一気に近づく『黒ずくめ』の顔が驚愕へと変わる。9戦すべてにおいてオプショントリガーを一切使ってこなかったユウキに対して、その反応は当然だ。そして彼女は『黒ずくめ』のその反応を引き出すために、9戦を全て捨てて温存していた。

 それでも『黒ずくめ』の実力は確かだった。予測に反して一気に近づく間合いでも反応が鈍ることなく、ユウキに向かって右手でスコーピオンを繰り出す。ユウキは右肩を後ろにひき背中越しにかわすと左手に黒いスコーピオンを起動し、相手の剣にぶつける。

 

ユウキの背中にプスリとした感触。

 

幻踊のような軌道で伸ばされた2本目のスコーピオン。マンティス。

 

次の一瞬には自分が死ぬ未来が見えた。

 

しかし、その次はない。ユウキは黒い刀身を『黒ずくめ』の拳にあてると、オプショントリガーを組み込む。

 

鉛弾・レッドバレット

 

 本来、弾丸に込められる鉛を剣に流し、それが『黒ずくめ』の手に送り込まれる。相手の腕に100キロの鉛が生えるのと、背中の感触がなくなったのはほぼ同時だった。

 しかし、マンティスが起動されてしまっている以上危機を回避できたわけでなく、数瞬の間しか時間を稼げないのだ。

 

目を見開く『黒ずくめ』。

 

歯を食いしばるユウキ。

 

見せかけの勝利などいらない。

 

 最後の一手が通ると確信したユウキは右手に現出させたレイガストの柄をつかんだ刹那、吠える。

 

「スラスターオン!」

 

 ユウキの右腕がわずかに生成が間に合ったレイガストの刃によって『黒ずくめ』の胸に穴をあけるのと、マンティスによって自分の胸から剣が生えるのはまったく同時であった。




甲斐 祐希(かい ゆうき)B級攻撃手 ※オリジナル

第二次大規模侵攻に遭遇し、そこで人々を守るボーダー隊員に憧れて退職。23歳でボーダー入隊した新人隊員。
スコーピオンでB級に昇格したものの、突出した能力がなくソロ隊員として訓練と防衛任務に明け暮れている。
ある日、本部の偉い人から職員勤務への転属紹介を受けたことで危機感を覚え、自身が隊を作ってランク戦に参戦することを志す。

オプショントリガーを数多く盛り込んで、相手に駆け引きをしかけ実力外の展開に持っていく「ポーカースタイル」を武器とする。

・ステータス評価
トリオン……5
攻撃……4 防御・援護……5
機動……6 技術……………4
射程……2 指揮……………2
特殊戦術……9
トータル……37

・トリガー構成
MAIN
レイガスト(黒)
スラスター
シールド
Flee

SUB
スコーピオン(黒)
鉛弾
シールド
グラスホッパー
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