異世界に転移した。それを否が応でも認識させられた。それを認識したのは異世界に転移して数週間経った頃。
別に友達でも、そもそも仲がいいとは言えない仲のクラスメイトである南雲ハジメがオルクス大迷宮の65階層で奈落へと落ちてしまったのだ。
俺は何故そこで兄を止めなかったのか。戦争にクラスメイト全員を参加させるなんて暴挙を何故力づくにでもやめさせなかったのか。
後悔はたくさんある。兄は南雲の死は気にするな、仕方のないことだったなんてほざいているが、この兄を止められなかった俺にとって南雲の死はとても重い。
クラスメイト1人助けられなかったその罪は、俺の身体に突き刺さって離れない。
南雲が奈落に落ちて、ほとんどのクラスメイトが動かなくなった。動こうとしても南雲の死が脳裏によぎって動けなくなるらしい。
動いている生徒のうち、小悪党なんて揶揄されるもの達や幼なじみの龍太郎なんかは根性がないやら楽そうでいいなとか嫌味を動かないクラスメイトにぶつけている。
「めんどくさいことしてるな……こういう問題は解決しにくい」
いじめではない。ただ嫌味を言っているだけだが、言われている側は傷つく。ただ注意しても止まらないのは明白だから、俺は結局何もしない。兄はそんなことをお構い無しに注意するんだろうが、最近様子がおかしい。
「……訓練も終えたし、資料を見に行こうかな」
俺は訓練を終えるといつも教会へ行っている。この国の宗教がどんなものなのか、どのような背景でできたのか。魔法があるとないとではどう違うのか気になるからだ。
「地球にいた頃は学者になりたかったんだけどな…」
今はもうその願いは叶いそうにない。俺は世界中を飛び回って歴史的建造物やそれにまつわる宗教とかを研究したかった。だがこの戦争に参加した時点で、俺はこの国この世界に骨を埋めることになるだろう。
兄はそれをよく理解していない。雫や中村の時みたく短期で解決しようとしている。そんなすぐに勇者の登場で戦争が終わるなら地球の戦争は核が出た時点で終わっている。
クラスメイトの殆ども、このことを理解していない。理解していそうなのは社会科教師の愛ちゃん先生くらいじゃないかな。
「一度兄に言ったんだけどな…」
兄に戦争はそう簡単に終わらない。そう言ったら、大丈夫、すぐ終わる。俺がいるから大丈夫なんて返答が返ってきた。希望的観測なんてやめた方がいいと思う。クラスメイトもほぼ全員が兄の信者みたいなもんだ。俺が言ったところで何も変わらない。
そんなことを考えていたら教会に着いた。ここの教会は俺たちが召喚されたところなのだが、俺的にはどう見ても教会には見えない。もう少し質素なものじゃねぇのか?
白髪の無表情なシスターさんが俺の事を案内してくれた。修道服に身を包んでいるが、普通にどこかの貴族の娘としてやって行けるんじゃない?と思えるくらい美しい人だ。召喚されてからずっとここに通っているけど毎日この人だ。もう係になってんのかな?
「着きました、どうぞ、ご存分に」
「ありがとうございます」
俺はシスターに頭を下げてから資料を閲覧する。昨日で今まで読んでた資料は無くなったから、俺は新しい資料を探す。……礼拝でどんな話をしているか書かれた資料か、読んでみよう。
「もうお時間です」
資料を読んで思考の海にダイブしていた。このままシスターが声をかけなかったらそのまま俺は資料を読み終えるまで目覚めなかっただろう。
「……うーん、また明日も来ます」
「わかりました」
俺はシスターによって入口まで連れられる。俺はこの数週間気になっていたことを口にする。
「シスターさんシスターさん」
「どうなさいましたか?」
「数週間経った今聞くのもあれですけど、貴女のお名前はなんですか?」
「…お話していませんでしたか。ノイントと申します」
「ノイントさん…ですか?」
「えぇ」
俺はシスターの名前を心の中で復唱する。ノイント、ノイント………9番目?ドイツ語だけどどういう意味が……
「私からも少しよろしいでしょうか」
「何でしょうか?」
「そのペンダントはいったいどういうものなのでしょうか」
ノイントさんは俺の首にかかっている白い輪っかのペンダントを指差す。
「昔ヨーロッパ……地球の地方のひとつを訪問した時に露店で購入したものですよ。歴史的な価値がある…と言われていましたが、別になんもなくてですね……まぁ思い出の品とでも言いましょうか」
俺は咄嗟に何時も言っている嘘と真実を織り交ぜた答えをノイントさんに答える。このペンダントは俺にとって特別なものだ。それは変わらないが、出処はヨーロッパでは無い。
それを知ってか知らずか、ノイントさんは俺の答えに納得したのか前を向いてまた歩き出したのだが──
前を向いた拍子に足をもつれさせてしまい、ステンと転びそうになってしまう。俺は急いでそれを支えるが、支えた瞬間に、ノイントさんの底知れぬ魔力を感じた。
「大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫です。ありがとうございます」
少しノイントさんを警戒するが、いつも通りの無表情で俺を見るので、俺はその警戒を解いてノイントさんの案内で教会を出る。
そして俺は教会から王宮へと戻って、兄たちと共に食事を共にとるのだった。
「謎の魔力反応、もとい光力反応の正体はあのペンダントでした。監視を続けますか?」
『……続けよ、新たに何かあればすぐさま報告せよ』
「我が主の御身のままに」
オリ主の名前などは次の話に。一応クロスオーバー作品なので転生特典?と思われる輪っかのペンダントはどっかの物語に登場するものがモチーフです。