「まったく、内から外から忙しい身体だね?回復能力があるからと言って、ここまで身体をいじめ抜く事はないだろうに」
カエル顔の医者はカルテをめくりながら……って、ここは!?
「見ての通り病院だね?」
病院…ああ、神裂が運んでくれたのか。あの状況でも敵に情けをかけてくれるとは。呼び捨てにはできまい、神裂さんと呼ばせてもらおう。
「あの、俺の親父は……」
「隣の部屋で寝てるね? まぁ大事には至らないから安心するといい。むしろ、運ばれてきた時は君のほうが重傷だったね?」
そういえばそうだ。直撃は避けたがステイルの魔術を2回食らい、更には能力者の魔術使用によるダメージも受けて、身体中ボロボロだったはず。だが今は……痛むところは特にない。それとも感覚が麻痺しているのか。
「運ばれてから何日くらいなんですか今は?」
「1日だよ」
……1日で治したのだろうか。それともやはり感覚がわからないほどメチャメチャなのだろうか? 正直自覚はある。
「なにか勘違いしているようだけど、実際に治療したのは君の能力だからね? 僕は栄養剤の点滴と包帯くらいしか指示してないね?」
俺の能力、
「ふむ、どうやら僕の仮説が間違っていたようだね。以前、僕は君の能力が即時発動しなかったのは、能力使用に慣れてなかったのが原因、と言ったね。もちろんそれもあるんだろうけど……それだけじゃないみたいだね?」
どういうことだろうか?
「おそらく君の能力は
なんと、そんな欠陥があるのか
「次にこれは仮説だが、君の能力は未知のダメージに対して回復が遅いようだね。火傷は一生分体験したみたいだけど、あの血管の裂傷の仕方は初だったみたいだね?」
魔術使用による肉体へのダメージ。確かに科学の住人だった木原統一には未知であることは間違いない。
「ということは、次に同じ怪我をした時は……」
「もう次に怪我をする予定があるのかね? 医者としては断固反対だね……まぁ参考までに言うと、血管の修復は難しいものじゃない。次からは一瞬で治るだろうね」
魔術を使う予定か……あると言えばあるだろうな。この先、俺がやろうとしてることを考えれば、むしろ必須だろう。
「その顔だとどうやら、怪我をするのは確定のようだね。やれやれ。なら、一つアドバイスをしようか。君の能力は、いまのところ
「そんなこと……」
「可能だね。能力と意識が直結していれば、能力効率は向上する。むしろ、無意識でもここまでの能力を使えるのだから、当然だね?」
それだけ言い残して、カエル顔の医者は出て行った。あんななりで実はアレイスターと旧知の仲というのだから侮れない。その後、看護師がやってきて、包帯やら点滴を外してくれた。病院的にはいつ出て行っても構わないとのことだ。治療費はどうすればいいのかと尋ねると、
そう、父親だ。意識的には出会って数日だが、その数日で何度助けられたことか。様子を見に行かなくては。
コンコン、と軽くノックをして、病室の扉を開けた。
「……おう」
病室に入るとそこにはムスッとした表情の父親がいた。全身包帯とはいかないが、覆われていない部分のほうが少ない。あらためて自分の規格外さがわかってしまう。さて、なんと声をかけたらいいのか。そういえば最後に話したのはあの火災現場での小っ恥ずかしい親子喧嘩だった。
「あの───」
「今回の件は……学園都市外部機関との行き違いが原因、ってことになるらしい」
口を開こうとした瞬間、それを遮るように木原数多の声が続いた。
「事故だよ事故。学生寮と今回の2件とも、事故ってことで処理されるってよ」
アレを……事故?
「えーと、そんなんでなんとかなるの?」
「普通はそうはいかねえ。だが、こういう
「……」
「俺に心当たりはねぇ。……つーことは、だ」
つまり、俺、木原統一に向けてのメッセージということになるのだろうか?
確かに、俺自身に秘密はある。この世界の、
そもそも、双方とはどの勢力のことを言うのだろうか? 今回は学園都市とイギリス清教の衝突、ということなのだから、実際に連絡を取り合ったのは
おそらく、今なお対応に追われている裏方がいるはずだ。事故で解決しようとしているというのは、追及されたくないのではなく大事にしたくないという、その裏方の意向ではないだろうか? 木原数多は魔術サイドやら科学サイドと言った大きなくくりを知らないのだから、この解答には辿り着かないだろう。
……そういえば神裂達は、いまどうしているのだろうか? イギリスに戻るとも言っていたが、俺は気絶する直前に
「おい」
木原数多の声ではっと我に返った。色々考えなきゃならないことはあるが、まずは目の前の父親である。
「ああ、ごめん。俺にも心当たりはないよ。だけど……」
これは言っておかなければなるまい。
「今回の件は、なにも追及しないほうがいいと思う」
「……心当たりはねえが、知ってることはあるって顔だな」
「うん」
「それは俺の身を案じてってことか?」
「……うん」
裏方の意向で有耶無耶にしようと言うのなら是非も無い。というか、ここでごねたらなんとしても両サイドの衝突を避けたいと考える者(アロハ陰陽師とか)が仕掛けてくる可能性だってある。それに魔術サイドと科学サイドの溝は深い。そこに興味本位で首を突っ込むとなにが飛んでくるかわかったもんじゃない。
木原数多は眉をひそめながら考え込んでいるようだ。正直、こんな回答をしたらぶっ飛ばされるのではないかとひやひやしていたのだが。案外、今回の件に親父もなにか不穏な気配でも感じていたのだろうか?
「今回の件……『木原』は関係あるのか?」
「それは無いよ。それは断言できる」
「……そうか」
それだけ聞くと安心したようだ。しかし『木原』か……なるほど、親父は『木原』絡みの事件と考えていたのか。それもそうか、白昼堂々学生が襲われる事件なんてそうそう……いや、この街ではわりと(ry
「お前の身は安全なのか?」
「それは……これからの俺次第ってとこかな」
「大丈夫か?」
「わからない。でもなんとかやってみるよ」
「なんとかやってみる、ねぇ……まったく、一体どうしちまったんだか。昔のお前とは大違いだなオイ」
大違いもなにも別人です。なんて口が裂けても言えない。裂けても治るけど。
「変、かな?」
「……いや、今のほうがいい。よくわかんねーが吹っ切れたみたいだしな」
吹っ切れた、ね。確かにそうだ。でもそれは……木原数多、あんたのお陰だ。そうだ、お礼を言ってない。
「あのさ、今回は……」
「礼はいらねえよ。俺は好きでやっただけだからな」
「……ありがとう」
「……いらねぇって」
いらないのはわかってるって。でも俺は今回、アンタが考えてる以上に救われたんだ。詳しくは言えないけど、でもやっぱりお礼くらいは言いたいのさ。
「まぁ、なんだ。火ダルマになったり瓦礫の下敷きになったりはしたが……」
「……うん?」
「巨乳のねーちゃんに抱きかかえられて空を飛ぶってのは、いいもんだな」
一瞬真顔になり、そして吹き出した。木原数多も耐え切れずに笑い出した。そんなこと、この流れで言い出すなよまったくもう。というかやっぱり起きてたんじゃねーかこの野郎。
その後、他愛もない世間話を延々とした。記憶の有無に関係なくできる、というかここ数日の互いの話を、冗談交じりに話し合った。迎えの
……父親が生きててよかった。心からそう思える時間だった。
世間的にどうかは知らない。
うまくは言えない。一つだけ言えるとしたら
俺にとって、木原数多はいい
主人公の原作(?)知識ですが
旧約全巻
新約10巻
超電磁砲9巻
偽典超電磁砲
とある魔術の禁書目録SP
アニメ禁書Ⅰ&Ⅱ
アニメ超電磁砲Ⅰ&Ⅱ
エンデュミオン
まで知っているという設定です。学芸都市やらジーンズ店主は知りません。