とある科学の極限生存(サバイバル)   作:冬野暖房器具

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超茶番を挟んでから3巻へ
でも3巻には実は行かなかったり、実質4巻だったり。

そして茶番のくせに長かったりする。


EX2 日常2
025 春の来ない夏  『8月10日』


「うーん、魔術師は一日にしてならず、か」

 

 現在、フル稼働中の学園都市製プリンタを眺めながら出た一言がコレだった。

 ラミネート加工対応の業務用なのでかなりのお値段がしたのだが、ステイルからぶんどったお金を半分以上使い果たし購入した。家に運び込む際には上条が「あんなにお高そうな物を買って……」と遠い目をしていたのが記憶に残っている。俺だってあの入金が無ければ買わなかっただろう。ステイルの奴の何年分の給料かは知らんが、このプリンタ代と上条家の玄関及びベランダ修理費でほとんど使い込んでしまった。残りはインデックスの食費にでもしてやるかな。せめてもの情けだ、アイツもこれなら満足だろう。

 

 そしてそのプリンタで印刷しているのは何かと言うと、これまたステイルが用いていたルーンのカードだ。だがまったく同じというわけではなく、ところどころに改良を加えてみた試作品とも言える。その結果次第では改悪ともなりかねないのだが、これは実際に使ってみないとわからないだろう。後でインデックスにも確認を取ってみるつもりだ。

 

 そんな微妙な作品なのだが、個人的には出来栄えが気に入っている。なにしろ初めて作ったマジックアイテムだ。パソコンでこのデザインを描いてるときはかなりわくわくした。プリンタの初期設定をしている時よりもだ。なので、インデックスに確認を取るまでもなく大量印刷を開始してしまっている。ダメだったらしまって大事に取っておこう。

 

 インデックスと言えば、今日は上条家に一日中いるらしい。家主の上条当麻が夏休みの補習(実際には補習のサボり分のツケなので補習の補習)に出かけているらしく、保護者不在の中インデックスは一人で留守番をしている。そこはかとなく不安なのだが、姫神が遊びに来てくれる予定なので、暇を持て余し電化製品を弄って爆発させるとか、勝手に遊びに行って迷子になるだとかはなさそうだ。

 

 ……当の姫神は上条が目当てではないのかと俺は睨んでいるのだが。もしそうなら今日はご愁傷様である。本人曰く、「イギリス清教からの届け物を待っている」だとかなんとか。吸血殺し(ディープブラッド)の能力を封じ込めるための霊装が届くらしいのだが、完成日がわからないので毎日来たいとのことだ。

 ……そういうことにしておこう。あれは深く追及するなという目をしていた。インデックスにはそんな事は察せないし、上条には言わずもがな。そう、この言葉は俺に当てられた警告なのだ。特殊警棒でボコボコにされたくはない。そんな趣味は俺にはない……ないよな?木原統一さん?

 

 とくだらない事を考えていた矢先、ピンポーンと自宅のチャイムが鳴った。誰だろうか? ステイルとかならお断りなんだが、とか考えながらドア窓を覗き込むと巫女服の少女がいた。

 ……なんだこのタイミングは。超怖い。ドア窓越しに目が合ってしまい更に怖い。でも開けないわけにはいかない。

 

「コ、コンニチハ姫神サン?」

 

「さんはいらない。姫神でいい」

 

 自然にさん付けしてしまった。

 

「そ、そうだったな。……もしかして上条家と間違えたか?」

 

「貴方に話がある」

 

 ……これは本当に警棒コースかもしれない。マジカルステッキでいっぺん、死んでみる? をされたくなければ木原統一よ。この子を追い返すのです。今忙しいとかなんとか言って、後日上条(味方)がいる時に改めて話を聞く事にする方が賢明───

 

「おじゃまします」

 

 ダメだった。訪ねてきた女の子を嘘をついて追い返すという高等技術が俺にはなかった。俺の馬鹿野郎。

 

「それで、話って?」

 

 とりあえずテーブルを挟みこんでの対話に持っていった。いざとなれば逃げれるように窓際も確保した。……警戒しすぎだって?いや、最近学んだのだが警戒というのは普段は過剰過ぎでも、いざという時は微塵も足りない。それを俺はここ2週間で痛いほど学んだ。もう手遅れかもしれないがな。

 一方姫神は業務用コピー機をチラチラと見ている。まあ見慣れない品だし、学園都市製とはいえそこそこデカイので気になるのも無理はない。

 

「まず最初に。アウレオルス=イザードのこと」

 

「……」

 

「彼の伝言。伝えてくれたこと。まだお礼を言ってなかった」

 

 割りと真面目な話だった。そうか、ここ2日で気持ちの整理でもしていたのだろうか。真剣な話をしにきた姫神を、俺は殺気に満ち溢れていると勘違いしていた。あえて言わせて貰おう、不可抗力であると。姫神の表情って読み取り辛いんだよなぁ……

 

「えーと、お約束の台詞しか言えないけどさ……礼はいらないよ」

 

「ううん。私も同じ。……ありがとう」

 

 面と向かってきちんとお礼が言える子、姫神秋沙。よし、上条がこの子を泣かせたらとりあえず殴ろう。

 

「それで。……あと。上条君のこと」

 

 上条を殴る前に俺がダメかもしれない。

 

「上条がどうかした?」

 

「……」

 

 黙ってしまった……落ち着け木原統一。女の子が黙ってしまった場合のマニュアルは記憶の中にあるか?……どうやら無いようだ。記憶力いいんだから覚えとけよこの野郎。こういう時は考えながらの時間稼ぎだ。

 

「上条は今日補習だってなー。昼過ぎまでは学校に釘付けらしいぞ」

 

「知ってる。そこを狙って来た」

 

 ……狙って、だと?

 ちょっと展開が読めなくなってきた。まさか本当に上条がいない間に俺を暗殺しに来たわけではあるまい。

 

「上条君がお昼過ぎまでいない時。あなたがインデックスのご飯を作ってると聞いた」

 

「作っているというか、それは昨日たまたま俺が作りに行っただけだぞ?」

 

 一昨日のシチューで味を占めたのか、インデックスは昨日俺の家に特攻してきた。上条が作っておいたご飯を既に食いつくし、なお腹をすかせる暴食の徒。もしかしてインデックス、昨日作ってやったのを毎回やってやるとでも思っているのか?……まぁ世話になってるのは事実だし、料理の間に貴重な話が聞けるから得ではあるんだが。ステイルの遺産(死んでない)の消費ルートもアレの腹の中で決定だしな。

 

「それ以外に。あなたは。上条君の家に材料を持っていってあげてるとも」

 

 魔術講習兼上条当麻勉強会の都合でな。なんだかやけに漢字が多いが事実だ。

 

「まぁたしかにそうだが。それがどうかしたか?」

 

「私にも。料理を作らせて欲しい」

 

 ああ、そういう事か。上条のために料理を作りたいが、コックポジの俺がいるのでやりづらいと。なので俺を説得するか亡き者にすることでそのポジションに収まりたいということか。亡き者は考え過ぎかもしれんが。

 

「でもそれって上条に言うべきことなんじゃ?」

 

 なんだかんだで家主は上条である。俺がとやかく言うことじゃないような。

 

「……そんなこと言えない」

 

「……」

 

 乙女だ。巫女服の乙女がここにいる。この子の姿勢を修道服の悪魔に少しでも分けてあげたい。

 

 たしかに、女の子が男の子に「料理を作らせて」は微妙にハードルが高いかもしれない。それに上条と会ったのは2日前。もしかして、俺がいなければ料理を作らせてという希望すら出なかったのではないだろうか。なんというかこう、俺がいることで自然に台所に立てるような流れが彼女には見えたのだろう。勝機あれば攻めるべし。上条がいないこの瞬間を狙って来た姫神秋沙。……まさかアウレオルスの件も口実だったりしないよな?流石にな?

 

「まー、いいんじゃないか? 作った物の大半はインデックスの腹の中に収まることさえ納得できれば」

 

「それは問題ない」

 

 じゃ、何の問題もないな。上条の勉強会ついでに食材を持って行き、姫神がやってきたらそれとなくフェードアウトするもよし、インデックスを連れて買い物に行くもよし。

 

「問題は貴方」

 

 ……いや確かに、俺の存在はお邪魔かもしれんが。そこまではっきり言われるとなんだかなぁ。言われずとも気は遣う予定なんだが。

 

「私としては。半々くらいが望ましい」

 

「半々?」

 

 半々ってアレだよな。5:5(フィフティーフィフティー)ってことだよな?

 

「なにが?」

 

「料理を作りにくる頻度」

 

 いやだから、俺はそもそも料理番ではなく食材係なのだよ。作ったのも昨日と一昨日のみ。そりゃたしかに一昨日、昨日の流れだとそう見えるかもしれないが。

 

「別に10:0(全部姫神)でもいいぞ? 上条の勉強会はやるし、食材の購入は引き続きやる予定だけど。料理は元々、やる気なかったし」

 

「そうなの?」

 

 姫神は不思議そうな顔をしている。そんなに俺が料理を作りたがっているように見えたのか?

 

インデックス(あの子)が言っていた。「きはらは私とおしゃべりするためにご飯を買って来るんだよ」って」

 

 ……まぁそうだが。まて、もしかして───

 

「……報われない恋。私と一緒。応援するから遠慮しなくていい」

 

「ちっがああアァァァァァァァァァァァァァァう!!!」

 

 なんでそうなるのっ!!?とんでもない勘違いをしてやがるこの巫女服吸血鬼キラー!!?

 

「あなたがインデックス(かのじょ)を仕留めれば。私にも勝機はある。共同戦線」

 

 人は無意識の内に自分に都合のいい想像をしてしまうらしい。そんな心理学的原因に恋する乙女補正も相まって、こんな突拍子もない答えにたどり着いた彼女の顔は、赤くなりながらも真剣だった。

 

「照れなくていい」

 

「照れとらんわ! 照れるってのがどういう表情なのか見たいなら、いますぐ鏡を見て来い!!」

 

 ……お、落ち着け木原統一。まずは誤解を解く事から始めよう。こんな反応じゃ、何を言っても通じない。

 

「いいですか姫神さん」

 

「さんはいらない」

 

「やかましい。あのですね、俺は別にインデックスのために食材を買っていってるわけじゃないんですよ」

 

「……」

 

「そういう目的で上条家に行ってる訳じゃなく、もっと別の、個人的事情でお邪魔してるだけなの。ね?」

 

 というかそもそもだ。実年齢こそ不詳だが、友人の家に泊まっている女の子に会うために食材を買っていく男ってどうなのよ。目の前の恋する乙女的には「辛いけど頑張ろう?」という目で見られているものの、一般人からすればちょっとヤバイのではないか。いや、姫神にも危ない目で見られているのかもしれない。危ない奴だが背に腹は変えられん理論で共同戦線を敷きに来た可能性すらある。

 

「……納得した?」

 

「……うん」

 

 ホントかこいつ。

 

「……つ、つまり木原君の目当ては……」

 

 オーケイ、俺たちはわかり合う必要がある。目の前の巫女の腐った脳内お花畑を焼き払ってやる。俺の名誉に関わるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、20分ほど俺と上条、インデックスの話を聞かせてやった。さらに俺がイギリス清教に籍を置いていること、インデックスから魔術を教わっていること。今さっき作っていたルーンのカードを見せたりする事でようやく納得してもらえたようだ。「敵じゃなかった」と安堵しているところをみると、どうやら本気でその可能性を考えていたらしい。

 ……まぁ最近上条に世話を焼きすぎていた気はするが、そんな思考に至るのはどうかと思う。友人の家に勉強を教えに行って、食材買っていって、ドアの修理依頼とかもやっちゃう隣人。……1割くらいの落ち度なら認めてやらなくもない。

 

 とにかく、料理を作るのは一向に構わないし、なんなら今日俺は上条家に顔を出さないから料理を作ってみるといい、と言って追い出したのだが、「不安だから後で来て」と言われた。何が不安なのかと聞くと「重い女だと思われたくない」とか言い出す始末。ちょっと何言ってるかわからないです。そこに俺が行くとなにがどう化学変化して姫神の印象が変わるの?俺はなにをすればいいの?……もうね、女性ってホントよくわからん。

 

 信用されてるのかされてないのか、結局よくわからないままに姫神は上条家に入っていった。ドアを閉める前の「……ゼッタイキテネ」という声が耳に付いて離れない。なんだか呪われた気がする。教会に行って呪いを……って、マシな教会がないんだったなこの世界は。

 

「あ、嵐のような人だった……」

 

 乙女たる姫神は色んな意味で俺の精神を削って行った。ステータス画面が見られるならMPがだいぶ削られているんではないだろうか。

 

 膝から崩れ落ち、うなだれているとまた家のチャイムが鳴った。

 

 ピンポーン

 

「次は誰だよ!!」

 

「俺だ」

 

 白衣にウルトラマンみたいなTシャツ。顔の刺青。見間違えることもなく木原数多(父親)だった。

 

「うおっ……久しぶり、上がってく?」

 

「いや、近くに来たから寄っただけだ……ドアぶっ壊したって聞いたからな」

 

 あーなるほど。まぁつい最近襲撃された息子が、家のドアをぶち壊したとか聞いたらそりゃ来るわな。

 

「忙しそうだね」

 

「まったくだ……なんで俺がテレなんとかっていう『木原』の後片付けをしなきゃなんねんだか」

 

「後片付け?」

 

「まぁ対警備員(アンチスキル)関連でな。秘密工作なんて柄じゃねえんだがな……」

 

 むしろ似合いすぎだよ畜生。笑うとこか?笑っていいのか?

 

「ま、元気でやってんならそれでいい……ところで…」

 

 木原数多は声をひそめた。

 

「昨日ドアをぶっ壊した隣人ってのは、あっちか?」

 

 と言って上条家のほうを顎でさす。なんだ?木原数多ってもしかして、上条当麻(イマジンブレイカー)についてなにか知ってるのか?いや、たしか俺が襲われた時、通報者をツンツン頭のガキと言っていたから、せいぜい入居者名簿から写真を手に入れたくらいだろう。

 

「そうだけど……」

 

「そうか、そういうことねぇ……」

 

 なにをニヤニヤしているのか。一体何を悟ったんだ?

 

「かわいい隣人のために、ドアの修理を請け負ったって事か」

 

「ぬぐぉ!!? な、ななななななにを?」

 

「いや、さっき隣に巫女服姿の女が入っていくのが見えたんだがな。思えば昔から、コスプレしてる女が好きだったよなお前」

 

 ここにきて木原統一の隠された秘密が明らかに!!? しかもすんげーどうでもいいぞそれ!?

 俺が言葉を失い、口をパクパクしていると───

 

「ぎゃはははははははは! 昔は「そんなことより実験の方が大事だ」なんて言ってたお前がよ、昼間っから女たらし込んで───」

 

「結局お前も色ボケかー!!!」

 

 めんどくさい、ああめんどくさい、めんどくさい。だがしかし、姫神の名誉を守るためにも、ここはきちんと話さなくては。

 

「第一、さっきの巫女さんはここの寮生じゃないっつうの」

 

「おお、そうか」

 

 こいつ、話聞いとんのか。

 

「ついでに言うと、さっきの子が惚れてんのはたぶんその隣に住んでる奴。ほら、ツンツン頭の通報者」

 

 許せ姫神、たぶんコイツからはお前の情報は漏れない。

 すると、木原数多はバツの悪そうな顔をしはじめた。何? 今度はなんだよ?

 

「まぁ、元気出せや」

 

「俺が惚れてるの前提かよ!」

 

 どうやら木原数多の中では 息子=コスプレ好き で大決定のようだ。というか本当に木原統一ってそうなの? そんなキャラなの?

 

「あー面白えもんも見れたし、帰るとすっかな」

 

 人を散々痛めつけた挙句に帰宅のようである。……覚えてろよ。

 

「んで、なんか困った事とかはあるか?」

 

「困った事……? うーん」

 

 困った事というよりは知りたい事がある。素直に言ったら教えてくれるだろうか。

 

「聞きたいことならあるんだけども」

 

「なんだ?」

 

「……絶対能力進化(レベル6シフト)計画。それと、一方通行(アクセラレータ)について」

 

 




統一「そもそもこの世界ってコスプレイヤーいすぎじゃね……?」

???「Exactly」


茶番を書いて落ち着きました。次の章もいつも通りにやろうと思います。

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