「おいおいおい、まさか俺が直接会いに来るとか夢にも思いませんでしたってか? なに固まってんだよオイ。悲しいなー、久々の再会に息子がなーんにも言ってくれないなんて、パパ悲しいなー」
顔の刺青、この口調、そしてひろしボイス。
「悲しくって、ぶっ殺したくなってきたなぁ」
そして突然の死亡フラグ。ちょっとまて考えさせろ。
木原
「おーい、マジでどうなってんだ? 焼かれすぎて頭ん中パーにでもなったのかよ」
「ひ、久しぶり、です」
おもいっきりキョドってしまった。正直言ってどうしたらいいのかがまったく思いつかない。原作知識はあるが、木原
……それ以前に、実の父親に「久しぶりです」は無い気がする。
「んー、こいつぁ本格的に頭イッちまったかぁ? いや、お前に限ってそりゃねぇか。なにせ
さりげなく自分の能力についての情報が手に入った。
と、そんなことを考えている場合じゃない。すっごい怪しんでる。そりゃ、容姿がそのままとはいえ
「これはあれだな」
「……」
「思春期か。お前も年頃だしな」
なんだろう、このもやもや感は。とりあえず思春期ありがとう。
「お前に思春期なんてもんがあんのかは知らねえが、まぁんなこたどーでもいい。時間がねぇからサクッと用事済ませるか」
というと、木原数多は肩にかけたカバンからノートパソコンを取り出す。その際黒光りしたなにかが見えたがとりあえず見なかった事に。
(できるか!! あれって銃だよな? もしかして今の俺、滅茶苦茶に大ピンチなんじゃ!?)
悪意もなく、雑草を引っこ抜くように携行型対戦車ミサイルをぶっぱなす人間相手に、親子のふりをしなくてはならない人間の気持ちがおわかりいただけるだろうか?
「よーし、とりあえずこれを見ろ。
……なるほど、これは犯人探しということか。
「面子ってもんがあるしな。それにやられっぱなしってのは、性に合わねぇんだわ。見つけ次第、愉快なオブジェに変えてやっから、協力しろよ?」
愉快なオブジェいただきました。何故だろう、芸術になるのは襲撃犯なのに、いますぐ自分がソレに変えられそうな危機感を感じる。とりあえず芸術になる予定は無いのでリストを眺める振りをしながら画面をスクロールしていくことに。
当然だが俺を焼いた犯人であるクソ神父はこのリストにはいない。奴は科学側とは対を成す魔術側の人間だからだ。ステイル=マグヌス、イギリス清教、
「この中には……いない」
3分ほどでスクロールが終わってしまった。探すフリは大丈夫だっただろうか。……それにしても、木原統一としてのキャラがさっぱりわからん。この世界は特徴的な喋り方をするキャラが多いし、元の木原統一がそういう
「なるほど、なるほどねぇ」
と呟くと木原数多はノートパソコンをしまう。
「まぁそんな気はしてたんだわ。あの付近での監視カメラの映像、交通網の記録やらなんやらその他もろもろ消されてたし、そう簡単に尻尾は出さねえよな。通報者の隣人はいまんとこ行方がわかんねーし、関係があんのかねぇのか……夏休みでハメ外してるだけかもしんねーが、消し炭になったお隣さん見てその足でパーティってのもないだろ。ま、怖がってどっかに避難してるってのが妥当な線か」
「通報者?」
おもわず聞き返してしまった。
「隣の奴だよ、名前は忘れちまったが
ツンツン頭の無能力者、と聞いて思い当たるのは一人しかいない。『上条当麻』紛れもない主人公である。そう、あの光景───ステイルとインデックスが学生寮の廊下で一緒にいたあれは、原作第1巻のワンシーンだ。原作のどのタイミングで自分が出てしまったのかはわからないが、少なくとも登場人物として上条当麻、ステイル=マグヌス、そしてインデックス以外にはあの場面での登場人物はいない。つまり───
(さっそく原作改変しちまった……まずいぞ、俺の登場が原作にどんな影響を与えるのかまったく見当もつかん)
たとえばである。上条当麻が俺の死体(生きてるけど)をみて動揺し、ステイルがぶっ飛ばされずに上条が消し炭に、とか。これは通報者が上条であることを鑑みればおそらく大丈夫だろう。
だが動揺したせいで
「そんな難しい顔すんなって、死体は1体しかなかったんだから。そいつも死んでねーよ」
隣人の心配をしていると思ったのか、木原数多はその顔に似合わない言葉をかけてくる。いや、隣人への心配事という点なら間違ってはいないのだが。
(……あれ、木原数多ってこんなキャラなの?いい人?)
「ただ、そいつが犯人と仲間だってんなら、話は別だがな」
(その顔でニヤリとされると怖いです)
顔は怖いが、その実中身はどうなのだろうか。原作ではあまり過去を語られないキャラ故に判断がつかない。善人ではないといえ……この世界の善悪勘定も難しいし、なんとも言えない。
「よし、んじゃ帰るわ。またな」
と言って木原数多は踵を返す。
「う、うん。またね」
「……お前、そのキャラやっぱ気持ちわりーぞ」
ガラッっという音とともに、父親は帰っていった
「……あードキドキした。あれが父親かぁ」
母親は誰なんだろうか。
ガラッ
「あー忘れてたわ」
つかつかと木原数多は部屋に入ってきて、肩に下げたカバンに手を突っ込む。撃たれる!? と、思わず身構えるが、取り出したのは小さなカバンだった。
「お前、財布ごと燃やされたんだろ? 当面の生活費が入ったカードと、新しい部屋……どっちかっつうとドアか。その鍵な。あと服も適当にいれてあっから、それ着て帰れ。以上」
と早口で述べ、顔面に袋を投げつけた後に、父親は部屋から出て行った。
わりといい人なのかもしれない。