結ヶ丘女子高校スクールアイドル部より 作:ブルーガソウ
ここは原宿某所のカラオケボックス。
『僕と私と君は強い♪みんな揃って完全体♪心に強くパンチ
少女は肩甲骨まで伸ばした薄紅の髪を揺らしながら派手な振り付けと共に大熱唱する。
「みんなありがとー!“スキパピ”オープニング曲“心に強くパンチpoipoi”はみんな一緒に盛り上がれて良いですね!それではスキパピ主人公のみうちゃんの決めゼリフでシメましょう!」
MCを進める少女はギャラリーを高らかに煽った。
「いつもつよつよ!私を見ろーー!」
ところが彼女以外に主人公の決めゼリフを叫ぶものは誰一人としていなかった。何故ならばこの部屋には彼女以外の人間はおらず、観客は少女の鞄の傍らに座る手のひらサイズのぬいぐるみ一つだからだ。
「はぁ······」
室内を静寂が支配する中、少女は一人ため息を吐く。
「一人カラオケ最高だーーー!!」
ヤケクソ気味に少女ほ叫んだ。
彼女がしていたのは昨年のアニソンフェスに出演した推し声優、はらりんの再現である。
「今年のライブも当選しますようにっ······。願掛けで“心に強くパンチpoipoi”五億回は聞いちゃお!」
緋色の瞳を閉じ、手を合わせて願掛けする少女の名は
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~
退室時間となり小梅は個室から受付へ向かって歩いていると年齢の近い団体客がワイワイと個室へ入っていくのに遭遇した。
「(そういえば私、一人カラオケだけで友達とカラオケとかしたこと無いなあ············その前に友達がいないんだけどね)」
友達いない歴15年。青春をアニソンに費やす彼女は筋金入りのボッチだった。それでもぬいぐるみと過ごすカラオケは十分楽しいから大丈夫と思うのが彼女の正直な所なのだ。
「(!······でも人間の友達がいると推しアニソン布教できるんじゃ)」
しかし同時にこうも思う。
「(聞いてくれる人なんているか?私のド下手な歌を······)」
以前、小梅は推しのアニソンを布教したくて動画投稿サイトに投稿したことがあるのだ。しかし、結果は再生数0······。この事実は自分の歌を聞いてもらった事のない彼女にとって自信を失うのに十分な出来事だった。
小梅はしばらく考えた末にいつもの日常へと戻ることを決める。
「帰ってアニソン聞こ~」