結ヶ丘女子高校スクールアイドル部より 作:ブルーガソウ
自称、人生をアニソンに捧げている小梅ではあるが、学校ではその趣味を隠している。ボッチである彼女は自分の正体がアンチオタク達の耳に入ることを恐れていた。イヤホンですら大好きなアニソンを聞かないという徹底振り。
しかし、放課後にもなると彼女の我慢は限界を迎え始めるのだ。
「(アニソンを摂取したい!でも帰宅まで我慢······!早く掃除終わらせるぞ)」
いつもの様に“スキハピ”のマスコットである梅宮さんのぬいぐるみを肩に乗せ、一人せっせと床を掃く小梅。しかし、そんな思惑とは裏腹に他の清掃班の班員のやる気は皆無。
「空き教室の掃除って意味あるー?」
「さぼるかー」
「それじゃあみんなでカラオケ行くか」
「
「赤司さん誰とも仲良くないし、誘うの逆に可愛そうだよ」
「赤司さん、そーいうことだから!あと掃除よろしくね~」
班員の全員が空き教室を後にする。
「え、あの······。赤司じゃなくて赤羽根です」
ピシャッ······。
小梅の声は誰一人にも届くことなく、空き教室で扉の閉まる音と共に空しく響いた。
「(私一人になっちゃった············なら、より急がないと終わらないぞ)」
小梅は一旦は呆気に取られたが、少しでも早くアニソンを摂取するために気合いを入れ直して掃除を再開する。
しかし、教室丸々一つの掃除は少女一人には荷が重かった。
「お、終わらない······机重っ······」
こうなると小梅のアニソンへの熱いパトスが行き場を求めて小梅をウズウズさせる。
「景気づけにちょっとだけ聴いちゃお······私一人ならちょっとくらい良いよね······」
小梅はイヤホンを耳に差してスイッチを入れた。すると小梅の魂が途端に震え上がり、彼女の意識を別世界へと連れていく。その情動は心だけに留まらず声帯までをも震わせ、小梅の欲望を解き放った。
『あーーーーーーーーーーーーーー······♪』
空き教室で小梅の声が反響する。
······ガラッ。
唐突に開いた扉の音にビビった小梅の体が跳ね、彼女の声帯はビートを生み出すのをやめた。
扉の向こうにはオレンジ色の癖っ毛を肩まで伸ばした紫色の瞳をした少女と、ことりベージュのボブヘアにマリンブルーの瞳をした少女が立っている。二人の視線は小梅に集まっていた。
「ねえ!今歌ってたのってあなた?」
癖っ毛の女の子の方が小梅にそう問い掛けるも、肝心の小梅はそれどころでは無いよ様子。
「(なんか突然美少女が乱入してきた······)」
ボッチであるが故に彼女の警戒スイッチは完全にONになっていた。
癖っ毛の少女は元々がつり目なのだが、それを見た小梅は盛大に勘違いをする。
「(怒ってる······まさか今のシャウトが今期アニメ“天才魔法使いになったのでいい子のふりはもうやめます”のOP冒頭だとバレて不況をかった!?」
小梅のビジョンでは目の前の二人がこう言っていた。オタク気持ちわるー······、苦情入れに行こ。
「あっ、すみません。3000円で許してもらえますか?全財産なんですけど······」
顔を青くした小梅は3000円を差し出しながら頭を下げると、ボブヘアの少女が小梅の両肩を掴んだ。
「かのん以外にもこんなウツクシイコエノヒトが······」
思いも掛けなかった言葉に小梅は口をポカーンと開けて顔を上げる。目の前には輝くような美しいマリンブルーの瞳が小梅を見つめたいた。
「それよりさ!あなたスクールアイドルに興味ない?」
再び癖っ毛の娘が小梅に問いかける。
「あっ、あっ、あの······誰ですか!?」
半ベソをかきながらようやく声を出せた小梅に癖っ毛の娘はばつが悪そうに答えた。
「あっ······あははー······。ごめんね。私はスクールアイドル同好会の渋谷かのん。で、こっちが」
「唐 可可デス!」
二人が名乗ったことで小梅も二人に倣う。
「あ、赤羽根 小梅と言います。なぜスクールアイドル同好会さんがこんな所に······」
対人慣れしていない小梅は視線を下に向けていた。赤羽根さんはコミュ症です。
「スクールアイドル部の部室を貰ったからこれから行くところだったの」
「そしたら使われていないはずの教室から小梅さんの声が聞こえたので入ってみたのデス」
かのんが小梅の質問に答えた後に可可が補足をする。
「すみません。掃除中だったのですが景気づけについ······」
「えっ?班員一人なの?」
小梅がたった一人で教室一つを掃除していた事にかのんは驚いた。
「私以外は皆さんでカラオケに行きました」
かのんの疑問に小梅は苦笑いを浮かべる。
それは小梅にとって何気無い言葉であったが、かのんと可可は小梅を不憫に思った。顔を見合わせると二人は頷く。
「かのんっ、手伝いましょう!」
「うん······ちーちゃん」
かのんは廊下を向かって誰かを呼ぶと、扉からまた別の少女が上半身を覗かせる。
「ほいほーい」
「ちーちゃんもここの掃除手伝ってくれない?」
「いいよー」
ちーちゃんと呼ばれた新たな登場人物も手伝ってくれる事となり、たった一人だった空き教室清掃の人員は瞬く間に四人となった。
「えっ、でもそんな······悪いですし。良いですよ~私一人で······」
ボッチ歴=年齢の小梅はこの様な展開にも当然慣れておらず、戸惑いのあまり遠慮してしまう。
「良いって良いって、チャチャッとおわらせちゃお!あ、私は嵐 千砂都。よろしくねっ」
既に掃除を始めていたかのんと可可に続いて千砂都も作業を始めた。
三人の優しさに小梅は感動する。
「(良い人達······これで早くアニソンにありつける!)」
筋金入りのボッチであるが故に小梅はずれているのだった。