結ヶ丘女子高校スクールアイドル部より   作:ブルーガソウ

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心に強く

「あの······お三方とも手伝ってくれてありがとうございました」

 

 小梅が深々とお辞儀をして三人にお礼を言う。四人で行うと掃除はあっと言う間に終わった。

 

「じゃあ私はこれで······」

「待ってくださいっ」

 

 少しでも早くアニソンにありつく為、早々に帰宅しようとする小梅の手を可可が掴む。

 

「小梅さんもスクールアイドル同好会に入りませんか!」

 

 可可は真剣な眼差しで見つめ、小梅をスクールアイドル同好会に誘った。

 勧誘を受けた小梅の表情が驚きに変わる。

 

「わたっ!?私てすかぁっ!?!?」

「さっき廊下で小梅さんの歌声を聴きまして、これは勧誘しないとと、かのんと話していたのデス!!」

 

 熱烈なラブコールを可可から受けている小梅だが、自分は音痴だと思っている彼女は、歌を歌っている人間に片っ端から声を掛けるほどスクールアイドル同好会は人材不足なのかと誤解していた。まあ、人材不足なのは間違いないのだが。

 

「(うー······部活かぁ。アニソン聴く時間が減ったら困るな······)」

 

 小梅が同好会に参加するにあたり一番ネックになるのがこれである。これまで何度も挙げた通り小梅にとってアニソンとは自らの全てを捧げた、云わば人生そのものなのだ。

 だが、そんな小梅はふと煌めいた。

 

「(はっ······でもこれってアニソンを布教できるチャンスなのでは!?ライブの曲目にさりげなくアニソンを紛れ込ませたりなんかして······)」

 

 これから彼女達が目指すこととなるスクールアイドルの頂点を決める戦い、ラブライブは未発表のオリジナルソングしか認められていないのだが、それを小梅が知るのはまだ少しだけ先の話である。

 

「ちょっと······興味はあります······!」

 

 小梅は控えめだが、はっきりとそう答えた。

 

「本当ですか!?」

 

 可可が興奮ぎみにリアクションをとる。

 

「赤羽根さん声凄く伸びてたよね。普通科みたいだけど誰かにレッスン受けてたの?」

 

 この中で唯一の音楽科である千砂都が小梅に尋ねた。

 結ヶ丘女子高校は普通科と音楽科に別れており、制服も普通科は紺、音楽科は白と一目で分かるようになっている。小梅は紺色の制服を着ていることから千砂都は小梅を普通科の生徒と判断した。

 

「あ、いえ。趣味が一人カラオケなので······。普通は友達と順番に歌うんでしょうけど、私は12時間一人で歌い続けたりするのでそれでかなー、と······」

 

 千砂都の問いに小梅は少し恥ずかしそうに答える。

 

「12時間っ!?ずっと一人で!?」

「お休みの日は一日の半分をカラオケで過ごしてます~」

 

 かのんを筆頭に驚きを見せる一同の様子に気付かず、小梅は当たり前のように自身の超人振りを話す。

 

「レッスンとかも受けてないです······。私は好きな曲、ひたすら聞いて······それを真似してるだけなので······。何十回も、何百回も聞きます。えへへ······」

 

 楽しそうに笑う小梅。それは言葉の文なんかでは無く、本当に何十と何百と聞いて、そして歌ってきた。その理由は単純明確。

 

「大好きなので、アニソn······歌が!」

 

 話を聞いた三人の小梅に対する興味は数段深まっていた。

 

「赤羽根さんっ······何か歌ってみて!赤羽根さんの歌、ちゃんと聞きたい!」

 

 そう言うかのんの横で可可もかのんに同意するように頷く。

 

「えっ······ひっ、人前で歌!?無理です!!!」

 

 スクールアイドル同好会に所属すれば人前で歌うことは確定しているのだが、にもかかわらず小梅は拒否反応を見せた。

 アニソンを布教することしか頭になかったのか、“みんなで歌えば怖くない”か、はたまた本当にステージで歌うつもりが無かったのか······。

 

「私ヒトカラでしかまともに歌ったことなくてっ······下手だし、絶対笑われますもの!」

 

 小梅は駄々っ子の様に机に突っ伏してじたばたする。

 そんな小梅に千砂都はしゃがみこんで目線を合わせた。

 

「そんなこと無いって。ほら、自信が無いなら歌いやすい曲とか、小梅ちゃんの好きな歌(・・・・・・・・・・)を歌ったら?」

 

 好きな曲と聞いて小梅はヨロヨロと起き上がる。

 

「そ、そんなこと言うならアニソン歌っちゃいますよ!?」

 

 アニソンを歌うとなれば絶対に引かれる。小梅はそう思っていたのだが。

 

「うんっ、聞かせて!」

 

 そんなものはただの杞憂で、答えたかのんの横では可可も目を輝かせて小梅を見つめていた。千砂都も手近な机に腰を掛けて歌を聴く体制に入っている。

 

「(あ、アニソンでも良い······だと······?)」

 

 望まれてアニソンを歌い、布教できる千載一遇のチャンスだと小梅は考えた。

 

「えっと······私の歌う歌、もし皆さんが気に入ったら······後々一緒に歌ってくださるなんて事は······」

 

 自信なさげに皆に問う小梅。彼女は誰とも目を会わせられないくらい緊張していた。

 

「うん。小梅ちゃんの好きな歌、私も歌ってみたい!」

 

 対してかのんは真っ直ぐに答える。

 

「あとカラオケもっ······一緒に行っていたっ······頂けたり」

 

 尚もコミュ症っぷりを発揮する小梅。

 

「はいっ。赤羽根さんの歌、たくさん聞きたいデス!」

 

 そんな彼女に可可も食いぎみに答えた。

 

 これ程にも自分を受け入れてもらえたのは小梅にとって初めての経験である。

 小梅は思う。オタクに優しいパンピーが存在するんだ······再生数0のオタクの歌で良いと、一緒に一人カラオケを卒業してくれると言ってくれるのだ。勇気を出してみよう、と。

 

「わっ、わぅ······分かりました。歌います! (言っちゃったよ······。で、でも上手くいけば同志が得られるかもしれないんだっ。アニソンのためなら歌下手を笑われてもいい!!)」

 

 小梅は震えながらも拳を掲げた。

 

「心に強くパンチpoipoi”生ぬる~く聞いてやってください······!」




その時、スクールアイドル同好会の部室では一人の娘が待ちぼうけを食らっていたとかなんとか。
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