結ヶ丘女子高校スクールアイドル部より 作:ブルーガソウ
生ぬる~く聞いてやってください。小梅はそう言った。しかし、そんな言葉とは裏腹に彼女の歌は圧倒的だった。聞いている三人の意識をうつし世から切り離し、自身の歌へと引き込む。
先程までのオドオドした姿は既に無く、むしろ幾度と無くライブをこなしてきたかの様な貫禄さえ感じさせた。歌への愛情が見てとれる程に楽しそうに歌詞を紡ぎつつ、手振りや表情のタイミングも完璧で盛り上がりを演出できている。
そして歌は終盤に差し掛かった。
『僕と私と君は強い♪みんな揃って完全体♪心に強くパンチ
最後のポーズも決まり、小梅の全てを込めたライブは終演を迎える。
「あの、えっと······お、終わりました~。ふへへ······」
急激に緊張を解いた小梅はにへら顔を三人に向けた。
「「「······」」」
しかし小梅の呼び掛けに誰一人として反応を見せない。そんな三人に小梅は次第に不安を募らせる。
「(ヤバッ、引かれた······)」
やっぱりアニソンはマズかったのか······歌い方がキモかったか······コメントに困らせているのか。ネガティブな想像が次々と小梅の脳裏に浮上した。
歌を聴いていた三人がようやく動き出したと思ったら全員小梅に詰め寄る。小梅はビビって頭を抱えしゃがみ込んだ。
「「凄いよっ!」」「スバラシイデス!」
しかし三人の反応は小梅の予想と真逆。
「今まで色んな生徒を勧誘してきたけど、こんな逸材が隠れてたなんて!」
「私もっと小梅さんの歌聴きたいです!一緒に歌いたいデス!!」
かのんと可可の賛辞を受けた小梅だが、思っていたのと真逆の反応がきたため頭の中のCPUが唸りをあげる。数秒掛けて情報の処理を終えた小梅の顔は途端に赤みをおびた。
「あっありっ······ありがとうございまっ······うぁ······」
他人にこんなに誉められた事が無かった小梅は喜びが溢れ、コントロールができなくなっていた。当然この様な気持ちになったのも初めての経験である。
「こんな歌下手マンな私になんて御慈悲っ······」
小梅の目からは嬉し涙がホロホロ流れてきた。
「さっきから謙遜しすぎだって」
どこまでも卑屈な小梅に千砂都は苦笑いを浮かべる。
「だって私······動画サイトに投稿しても再生数0でしたし」
小梅の打ち明けた事実に三者とも信じられないといった表情となった。
「0!?どこにアップロードしたデスか!?」
「こ、こちらにっ」
激しく詰め寄る可可に思わず自身のスマートフォンを差し出す。
「こっ······これはっ!?」
可可は何かに気付いた様子。思わず小梅も息を飲んだ。
「非公開設定になっています······」
可可によって告げられた真実に小梅はただただ唖然とする。
「(え~~~~~~~~?????······)」
小梅が自分の馬鹿さ加減にガックリと肩を落とした。
「ただの私のミス······うそやん、バカすぎ······」
「そもそも再生数0とは誰も小梅さんの歌を聴いてないって事デス。上手いも下手もありません」
そして可可の核心を突いた言葉に小梅は更に項垂れる。
「公開設定にしておきます。ついでに同好会のTWISTERアカウントで動画を拡散しましょう」
前回のライブでスクールアイドル同好会のフォロワーは2000人を突破していた。そこに上げられた内容は······。
【先日、鮮烈なデビューを飾った結が丘女子高スクールアイドル同好会に新メンバー加入!初ライブ前に彼女の美声をここに公開!!】
「(既に入部したことになってるっ!!?)」
可可の投稿にひっそり驚愕する小梅。しかし、可可に対して抗議する度胸など、彼女は持ち合わせていなかった。
「ほらっ、さっそく反応がありましたよ」
【抑揚もしゃくりもビブラートも全部完璧。こんな逸材がどこに隠れてたの!?】
【歌に物語を感じる!!聞いたことない曲なのに場景が思い浮かぶ!!!】
【恋に落ちる歌唱だよ。私この曲好きになっちゃった】
次々と反応が帰ってくる。動画の方も再生数はうなぎ登りに増えていく。
「見てくださいっ。もう一千再生いきましたよ!!」
可可が小梅のスマートフォンを彼女の目の前に突き出した。再生数は未だ伸び続けている。
「これはバズってるね~」
SNSを見ても先程のツイストにリツイストが次々と付いていった。
「やっぱり赤羽根さん歌うまいんだよっ。こんなに沢山の人に評価されてるんだから!」
「私、歌うまい······?」
スマートフォンに写し出される光景やかのんの言葉に思考な追い付かない小梅だが、次第に状況を飲み込んでいくと頬が赤みを帯びてきた。
「マジかぁ······」
手を握って一言呟く。自信が評価される事に慣れていない彼女だが、不器用ながらも喜んでいるのはは何かに今日初めて会った三人からも読み取れた。
「改めて小梅ちゃん。スクールアイドルやりませんか?」
かのんは小梅に手を差し出す。
「はいっ。私やれる気がしてきました!」
コミュ症の小梅はかのんの手を取ることはできなかったが、はっきりとスクールアイドルとなることを表明した。
今回使わなかった使えなかったいろどりネタはその内使うつもりです。
“いろどり高校合唱部より”の1話だけこちらで読めますので、ご興味のある方は読んでみてください。
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