人獣伝   作:abc2148

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立つ鳥後を……

何が起こっている、何を相手にしているんだ。

 

己は魔物に堕ちた、その代わりとして生前を超える力を手に入れた。

この島に流され、絶望に暮れるも地脈を見付け、それを掌握することで此処まで強くなった。

使役している蛇は己が捕縛される際の戦いで弱り、消滅の危機に瀕したが地脈から流れる膨大な霊力を与える事で持ちこたえた。

その身は単身で国を傾けさせる事が出来る程強大なのだ。

 

「■■■■■■■■ッ!?」

 

己が育ていた大蛇が声なき叫びを挙げる。

完全体ではないと言えその力は強大、かつて一晩で十を超える村を滅ぼし、百の人を喰らうと恐れられた魔物。

それを己は使役し、その暴力を振るってきた。

使役者である己が魔道に堕ち、引き摺られるように弱体化していても弱くは無い。

加えて此処まで妖力を回復させたのだ、最盛期とはいかないまでも、それに後一歩で届く力は持っている筈なのだ。

 

術を行使する時が無い、戦運びを考える余裕さえ与えられない。

身に迫る大剣を蛇の尾で防ぐ、硬質な物が衝突して甲高い音を立てる。

迫る一撃は大剣を防ぎ、幾つか鱗を割るだけに留まった。

 

続いて二撃目が迫る。

防いだとはいえ安心は出来ない、妖力を蛇に与え膜を張る

これで無傷で耐えられるはずだ。

 

だが二撃目が重なって斬り込んできたことで全てが無駄に終わる。

宙に浮く大剣の内三振りが尾に、同時に、同一個所に打ち込まれる。

膜を容易く破り、鱗を砕き、肉を断ち切り、骨を粉砕した。

 

蛇が鳴く、痛みに、苦痛に耐えかねて。

だが相手は待ってはくれない。

 

乱雑に食い込んだ大剣を抜き取る、そして再び三振り同時に襲い掛かる。

真面に受けては身が持たない、蛇と共に何とか大剣から逃げ出し蛇に命じる。

それに従い蛇は口に妖力を溜め──僅かに空いた口の隙間に紅い石が入り込み、爆ぜた。

 

ならば使役者である己が術を行使するしかなく、その為には最低でも一拍動きを止める必要がある。

妖力を練り、術を構築し、発動するという過程が必要なのだ。

だが眼を凝らさねば見失ってしまう程の速さで動き回る刃、それが立ち止まった瞬間に襲ってくる。

既に三度、手足を細切れされ斬り飛ばされた。

 

何なのだ、一体どうすればいいのだ!

僅かな時間さえ与えられない、視線の先にいる畜生は、魔物は一体何なんだ、己は一体何を相手にしているのだ!

 

「■■■■■■■■ッ!」

 

雄叫びを上げ蛇が魔物に向かって突き進む。

使役しているとは蛇にも自我はある。

それは度重なる負傷と苦痛に耐えきれなくなり使役する為の支配が弱まった瞬間に本能に任せた行動に出た。

巨体と勢いに任せた突進、己の意図しなかった行動であるがお陰で魔物の意識は外れた。

魔物は蛇を止めようと爆ぜる礫を何発も打ち込む。

だが捨て身の突進は身体をいくら削り取られても止まらない。

 

この時、ようやく己は勝ち筋を掴んだ。

妖力を練り、術を構築する、半端なものでは殺しきれない、己の持つ最強の術をぶつけるのだ。

蛇の突進はもう避けられまい、奴は背負う小さな魔物を気遣ってか自ら動くことはこの戦いではなかった。

それが奴の隙となったのだ。

 

だが衝突まであと少しの所で一本の大剣が天から地面に突き立つ、そして赤褐色の刀身が紅色に染まる。

その後ろで魔物は不動のまま立ち続けた。

 

まさか、有り得ない──だが己の最悪の予感は当たった。

 

勢いのまま突き進む蛇が紅色に染まった刀身に触れる否や斬り裂かれ、いや、あれは焼き切られている。

刀身の刃先に触れたものから順に炭となり脆く崩れている。

 

己は夢を、悪夢を見ているのだろうか。

そう壊れかけの知性で現実を疑うも何も変わらなかった。

 

頭の先から尾の先まで両断された蛇の死体が魔物の後ろにあった。

捨て身の突進、その勢いを利用され蛇は自ら両断されに赴いたのだ。

そして己は術は構築の最中であり無防備な姿を晒している──見逃す手合いではなかった。

 

蒼く輝く薄刃、ソレに五体を切り刻まれる。

首を、腰を、腕を、手を、脚を、頭を、腸を、骨を、肉を。

斬り飛ばされる度に、視界は狭まり、意識は暗闇へと進んで行く。

その先に待つのは死、魔物へ堕ちてでも拒んだモノ、そして死を拒んで迄果たしたかった復讐があ────

 

 

 

 

傷を治すたびに黒い靄が減少していったから致命傷を与え続ければ殺せるのではないか。

そう考えて、死ぬまで殺し続けたのだが正解だったようだ。

 

人の形が残っているとひょっこりと甦りそうだからだと即身仏は細切れに切り刻んだ。

その後に残ったのは弱弱しい靄を放つ肉塊だ。

蛇に至っては二枚に卸したがどうすればいいのだろうか、細切れにするしかないのだが巨大な分面倒くさい。

 

少し考えた結果、白い火でまとめて焼いてしまう事にするが……

 

「────!」

 

恨めし気な言葉が頭の中で紡がれていく、その出所は靄を放つ肉塊だった

 

──煩い、さっさと死ね

 

聞くに堪えない呪言を呟く肉塊へ向けて白い火を吹きかける。

骨の一欠けら、肉の一片さえ残さず、甦ることが無い様に。

だが幾ら吹きかけても火が燃え移ることが無く、それどころか肉塊が放つ靄が多すぎて火が消えそうになっていく。

 

「くる!」

 

チビに後ろから呼ばれる。

いつの間にか元気になって背中から降りたチビ、その視線の先には蛇の死骸があった。

だが蛇の死骸は黒く染まり、全部が黒に覆われると液体になったかのように地面に黒い液体となって広がり肉塊に向けて集まりだした。

そして肉塊は黒い水を取り込むと膨張を始めた。

 

まずい、非常にまずい。

膨らみ続ける肉塊に向けて火を吹き続けるが分解可能な量を超えて膨らみ続けていく。

恨めし気な声も未だに聞こえている事から即身仏は未だにこの世に留まっているのは間違いない。

 

現状は非常に危険な状態だ。

目の前には膨張を続ける即身仏だったもの、あれが今から何をするのか全く分からない。

だが碌なものではない事だけが分かる。

最悪の場合、蛇と即身仏が合体して強化されて甦ってくる可能性が出てきてしまった。

そうなってしまえば此処から逃げ出しても島から出ない以上、完全に甦った強化即身仏と再度戦う事になる。

それだけは避けたい、今回は勝てたが次も勝てるとは限らない。

何より即身仏に手札を知られた状態で戦うので此方にとって不利である。

 

だからこの場で何が何でも決着をつける必要がある。

 

膨張を続ける肉塊からも漏れ出す黒い靄は白い火を寄せ付けない。

これでは火力が圧倒的に不足してしまっている。

 

一旦中断し再び喉に力を込める、先程よりも多く倍以上の力を込める。

想像する、単純な炎ではなく黒い靄そのものを燃やし尽くす炎を。

そして吐き出す、火ではなく炎を、火焔を。

喉が燃えるように熱い、焼けるような痛みを感じる、その事を出来るだけ無視して炎を吹き出し続ける。

 

視界を覆う白い炎、その奥で黒い靄が確かに燃えていた。

方向性は正しかった、だがまだ火力が足りない。

もう少し上げなければ拮抗状態に持ち込む事も出来ない。

身体は限界に近い、それでも無理をしなければ現状を打開できない!

 

「くるー!」

 

だが遠くでチビの声が聞こえてくると何故か肉塊の膨張が止まった。

それどころか靄が燃えやすく変化していく。

 

何してるんだあのチビは!でもよくやった!

視界が届かない何処かで何かをしているチビに向けて二言心で呟きながら残った力を振り絞る。

 

靄が徐々に白い炎の飲まれて消えていく。

ペース配分を考慮せず、今出せる最大火力を吐き出し続ける。

それからどれくらい経ったのだろか、半日か、一日か、もしかしたら十分も経っていないかもしれない。

だが苦労の甲斐もあって黒い靄は一変残さず燃やし尽くした。

恨めし気な言葉は何処にも聞こえず──目の前にあるのは無色透明な大きなナニかだった。

 

──ナニコレ

 

肌感覚では何か悪いモノではない、そんな感じがするが正体が全く分からない。

目の前にある謎の物体を観察していると遠くからチビが口に何かを加えながら走ってくるのが見えた。

心配していた怪我は無く、無事な姿に安心して駆け寄ろうとして──何かが軋みをあげた。

その音は余りにも不吉であり、急いで周囲を確認する。

異常は直ぐに見つかった、空間そのものが軋みを挙げていたのだ。

それだけに留まらず、靄を燃やし尽くした後に残った無色の大きな塊が共鳴するように高い音を奏で始めた。

 

「くるーーー!?!?!?」

 

「グルァアアアアアアアアア!?!?!?」

 

やばいやばいやばいやばい!?!?!?

 

本日何回目か忘れた、その中で最大級の警告をだす本能に従う。

チビを急いで捕まえて背中に載せると残ったすべての力を振り絞り急いで森から離れる。

そして森の中心、無職透明なナニかから光が溢れ──




主人公、大昔のRPGのボスをアクションゲームのガンダムファンネルで虐める
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