呪霊はお友達
気がつけば、どこか見覚えのある路地裏にいた。
私の人生は既に終わっているのだから、途方に暮れてしまうね?
しかも、記憶はいまだに封印されたまま。
それでも、その安心感と寂しさから、ここが私の終った場所だと理解できた。
途方に暮れたまま、さとりたちも一緒に転移していないかとキョロ巨と探していると、声をかけられた。
「傑」
「さとり? ……悟」
ああ、ここで私は終わるのだ。かつての親友に。友達そっくりな君に殺されて。それならば仕方ない。
「遺言を、聞いてもらえるかな」
「いいよ。何」
「もしも、私のことを夏油って呼んで、君そっくりで、さとりって名乗る子が現れたら、この子を渡してほしい」
「はあ? 待って。傑なんか若くない?」
「後ね。私の死体は取っておいて、メロンパンって名乗る浮かぶ脳味噌がいたらその子にあげて欲しい」
「ふざけてんの?」
「私のお墓は脳みそだけでいいから。さとりの物を一つ備えてくれれば嬉しいかな」
「セーミちゃんって子は……どう説明すればいいのかな。うーん」
ポケットに端末があったので、待ち受けの写真を見せる。
「この子達がいたら保護してほしい」
メロンパンと、さとりと、セーミちゃんと、私の写真。伝えることはこれで全部かな。
「いいよ。殺して」
伝えるべき事を伝えた私は、力を抜く。
「いや、君別人だよね。僕が探してるのは百鬼夜行を起こした傑なんだけど」
「見逃してくれるのかい?」
「君は君で保護するけどさ」
「悟……?」
「あっ傑。これ、傑が作ったの?」
端末を、ずるずるとやってきた片腕を失った私そっくりの男に見せる。
「ええ!? 私が2人!? 私って攫われた本物じゃなかったのかい!? それだけはさとりに勝ってると思ってたのに!」
「えーと? つまり、私と君のクローンを誰かが作って育てたって事かい?」
「そういうことみたいだね。ま、後は僕に任せてよ」
「あっ 死体は火葬しないでくれ。君の死体を、私の友人のオリジナルが使う予定で……あっでも天元様のコントロールはともかく、悟の封印に使われるのは嫌だな」
「「は?」」
「あっ 私の死体なら君も人質に取られても平気だし、天元様のコントロールが出来るかな?」
「どういうことかな」
「私もよく知らないんだ。ただ、呪霊操術は進化した天元様に影響を与えられるってことと、私の死体を乗っ取って君をびっくりさせて封印させる計画があったとしか」
「悟」
「うん。傑の死体は誰にも悪用させないよ。ただ、そうするとこの子が君と勘違いされてしまう。悪いけど、2人いることを大勢の前で見せてからの紫での公開処刑になるね」
「こうなって仕舞えば仕方ないさ。私も、こうなれば少しは事情を知ってから死にたいし」
私は困った。余計な事を言ってしまっただろうか。私と悟の大切な時間を奪ってしまっただろうか。
「君、名前は」
「夏油 傑」
「それは私の名前だ」
「し、仕方ないだろ。私は今まで、本物の夏油傑が誘拐されて記憶に手を加えられたんだって思ってたんだ」
「記憶に手を加える?」
「私、高校生からグレたんだろ? 中学以降の記憶は封印されたんだよ」
「記憶ごと複製して、手を加えたって事かな?」
「そう」
「うーん、厄介な事になりそうだね。僕も、いや、さとりも記憶持ち?」
「さとりは、最初から五条悟の体と能力を与えられた別人って言ってたし」
「技は何が使える?」
「バリアと、赫と、蒼と、茈。あっ領域展開も!」
「ガッツリ記憶あるね。知識なしで使える技じゃない。参ったな」
傑を抱き上げて、ついてくるように言う。
敵が2倍になって帰ってきて、生徒達は驚いているようだった。
そこで説明する。
「はぁ!? 悟の記憶と能力を持つ偽物が夏油一派に造られたってことか!?」
「これに関しては私も被害者でね。今さっき知った所だよ」
「というわけで、傑はこれから死体を残さず秘匿死刑にする。見届け人になってくれないかな。傑のクローンの為にも、傑は死刑になったと知らしめておかないと」
「つっても、そいつの記憶と体を持つクローンなんだろ?」
「傑、最初は筋金入りの偽善者だったんだよね。弱者救済とかが信条で。悪い子じゃなかったんだよ」
「失礼だな。今も術者を救う事を考えているよ。そこの猿のような非術師を人間と認めないだけで」
女の子に向かって威嚇する私。
「喧嘩は良くないよ。私は非術師が嫌いなのかい?」
「ああ、嫌いだね。猿そのものだ!!」
「ど、怒鳴らないでくれないかな」
私は戸惑いつつも、直人を出す。
全員構える。
「大丈夫だよ。治療をするだけだから。ね。真人」
そうして、真人が女の子の頭に触れる。
「!? 真希、メガネ取ってみて」
「あ? !! 嘘だろ、裸眼で呪霊が見える……」
「これで問題は解決したね! じゃあ、仲良くできる?」
「あ……ああ。え? こういうのって、ありなのかい?」
「オリジナル。ちゃんと女の子に謝罪してくれないか」
「侮辱して悪かったよ。君も今日から術師だ。猿扱いはしない」
その言葉に、私はホッとする。
「仲良くできてよかったよ。非術師も呪霊も、みんな違うけどお友達に変わりはないんだ」
「は??? 非術師は友達ではないし、呪霊は論外だろう」
「さ、さとりは私の力を呪霊ともお友達になれる素晴らしい力だって」
「呪霊は手駒であってお友達ではないが?」
「どうして、そんな事ばかり言うんだい?」
「呪霊が友達など反吐が出る。非術師以上にありえない!」
「ど、怒鳴らないでよ」
そこで、パンダが言った。
「あー。確かに夏油とは全然違うみたいだな」
「あ、はは……。まあ、悪い人ではなさそう」
「しゃけ!」
そうして、夏油は秘匿死刑で紫を受けた。
悟にクローンの考えを改めさせて真っ当な呪術師にするという約束をさせて。