【一発ネタ】五条悟ハッピーセット   作:かりん2022

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左近の胃痛

「どうやら、今日もいらっしゃったようですね」

 

 アジアで情報収集をしていて、同業者にあった。

 とはいえ、酷く拙いものだ。情報収集の仕方から中国語から写真の撮り方まで、酷く拙い。

 だが、彼は逃げるのがとても上手かった。

 

 それを見たのは本当に偶然。ふっと宙に消えたのを見て、我を疑った。

 

 ……何者だろう。オルタ3の残滓だろうか?

 

 超能力。テレポーテーション。そんな馬鹿な。

 調べれば調べるほどわかる不思議な現象。

 

 宙に物をしまった。

 

 空中で消えた。

 

 BETAの首を素手で落とした。

 

 両目を隠しているのに目が見えているかのよう。

 

 なまじ強いだけに、他の諜報員も、手を出しあぐねているようだった。

 

 興味が湧いた私は、彼の本拠地を調べる事とした。

 簡単に見つかった指示書は日本語。

 

 BETAのデータと戦術機のデータ、大体の情勢を集めよというもの。

 用意されたレポートはそれはまあ酷いもの。

 

 どこかの組織のものなのだろうが、どこかの組織ではあり得ない。

 そもそも、一般人でも知ってるような事がわかってないのも伺えた。

 

 写真なんて焦点があってないものもいくつか。しかも、撮った場所は戦場のど真ん中。

 

 資料を添削して、機密に反しない範囲で用意してみる。

 

 聡い彼は、私の気配にすぐに気づいていた。戦闘力だけはずば抜けている。

 オルタの残滓が新たな組織を立ち上げたとかであろうか?

 それならば妙な世間知らずも納得できる。

 

 彼は人懐こかった。

 素直に礼を言って資料を抱きしめる。

 大柄な男だが、そうしてみるとどこか小動物じみていた。

 

「初めまして、さとりさん。迷子のようでしたら、お家まで送って差し上げましょうか? お家はどちらに?」

「呪術界。ちゃんと帰れるから大丈夫。俺、最強だから」

 

 ジュジュツカイ。

 魔法の国からやってきた女の子、などという女児向けの童話のフレーズが頭に浮かぶ。

 困った様子の彼に、和かに話しかける。

 

「どうぞ、不可視の鞄に入れてください。私の目は気にせずともいいですよ」

 

 当人は無理に隠すつもりはないらしく、素直に何かにしまうのを見せてくれた。

 追うような真似をしなくて良かった。

 友好的に接してみれば、彼は全く素直だった。

 

「呪術界と言いましたが、貴方は呪術師だったりするのですか?」

 

 魔法使いみたいに。

 

「そー。仕事手伝ってくれたから、一回だけ手伝ってやるよ。お前の望む奴を呪ってやる」

 

 それはなんとも。大体、大体のファンタジーはBETAに否定されている。

 夢も希望も奇跡も、全てBETAは粉砕した。

 

「私が憎いのはBETAなのですが、呪いはBETAに効きますか?」

「あいつら硬いからなぁ。でもいいよ。然るべき時に、呪ってやる。ここでの調査も終わったし、最後に盛大に呪ってから帰るつもり」

 

 呪う。

 随分と物騒で、なおかつ無意味な言葉だと思う。

 だが、不可思議なことを実際に行っていた男の言葉だ。

 

 他の者に「盛大に呪う」を任せる事として、私はこの近くから出る船の予定を確認する事とした。

 おそらく、本拠地が日本だというのなら、これから密航をすると予測して。

 

 いくつかマークして、合わせて帰国する。

 案の定、男を見つけ、同じホテルに泊まる事が出来た。

 

 私は船に乗る直前に渡されたデータを見てため息を吐く。

 

 そこには、まるで人外の如く、地球のように美しい眼をして宙に浮かび、光線を防ぎ、BETAを消しとばす冗談のような姿が写っていたのだから。

 

 呪術界がどうのという話を聞いていなければ、天使だと思っていただろう。

 接触しようとしたものは、須く逃げられているらしい。

 私とだけ話してくれたのは、一度も追おうとしなかったからと、手伝ったからだろう。

 ソ連なんかの刺客はそれはもう必死になっているらしいが。

 

 オルタ3の残滓というには、少し違う気がした。

 呪ってやるとは、またインパクトのある言葉である。

 呪うことで生き物が殺せるならば、人類はBETAを100回は全滅させられる。

 

 呪なんてない。そのはずなのだが。

 

 

「んーっ 疲れたぁ。ハイヴの単独攻略は無理そうだな。はぁ。あと1日休んでから合流しよ」

 

 まだ疲れが取れない様子で、愚痴りながら合成食糧を食べ、悲しい顔をする男。

 にこやかに笑いながら、向かいに座った。

 

「おや、偶然ですね。本拠地はやはり日本で?」

「うっわ。まあそうなんだけどさ」

 

 多少は驚いた様子だったが、危機感などは感じられない。これぐらいは予測の上か。

 

「呪術とは素晴らしいものなのですね」

「まあ、俺、最強だし。六眼だし」

「呪術とは、私にも扱う事ができるのですか?」

「血筋と才能の世界だから、無理かなぁ。俺の呪霊だって、見えないだろ? 肩に今もいるんだけど」

 

 肩を見る。言われてみれば、不自然な皺を見つける事ができたが、それだけだ。

 血筋。血筋。ならばコミュニティがあるはずだ。

 日本の裏にそんな異能を持った者達が連綿と息づいていた? そんな馬鹿な。

 

「それは残念。コミュニティには、何人いらっしゃるのですか?」

「それは流石に言っちゃダメだと思うんだ」

「私の望む相手を呪ってくれるとのことですが。ハイヴでもよろしいか」

 

 頼む時は大きく頼むのは基本である。それに、本人がハイヴの単独攻略について話していたではないか。

 さとりはうんざりした顔で、釘を刺してくる。

 

「出来立て、ならすげー頑張って助けも借りればどうにかなるかも……? 無理でも文句言うなよ」

 

 すごい自信だ。それは、連合軍に単騎で勝ると豪語するに等しい。しかし、その自信を納得できるだけの力はある。流石にハイヴ単独攻略には足りないと思うが。

 

「ありがとうございます。しかし、貴方の様な方が今まで潜伏していたなど、信じ難いですね」

「あー。地球には割と最近来たんだよ」

 

 そこで電話が来た為、会話を中断して電話に出る。

 地球には最近きた。これはまた、新しい情報だ。

 私と同じく、煙に撒こうとしているのかと思ったが、そもそもその発想がないと思う。

 とにかく、私はお呼ばれする事になった。

 

 戦闘は考えない。敵対はいつでもできるし、少なくともさとりの有用性は担保できているのだから、懐柔に必要な物を考える。

 欲しがっていた資料に、いくらあっても困ることはない現金。

 それと中国でのお土産。

 

 そして、彼に連れられて山を登る。

 

 何もない所で手を引かれて、何かの幕を通った感触に顔を上げると宇宙船があった。

 なるほど。ファンタジーである。

 

 第一のエイリアンは意思疎通もできずに暴れ回る怪物。

 第二のエイリアンは宇宙から来ているのにファンタジーな生き物。

 

 そして私は、宇宙船に一歩入って、彼らが宇宙人であることを腹の底から理解した。

 

「ただいまー」

「おかえりー」

「やあ、おかえり。今日はパスタだよ」

「やった」

 

 宇宙船で出迎えてくれたのは2人。

 人間にしか見えない黒髪の体格のいい美丈夫。

 浮かぶ脳みそ。

 

 浮かぶ脳みそ。

 

 喋る脳みそのご馳走するパスタとは。

 

 さとりはインパクト抜群な脳みそをスルーし、黒髪の男を観察する。

 

「顔色悪いな。無理させててごめんな。俺、話とかいくらでも聞くし」

「こら。疲れているのはどう考えたって君だし、今はお客人の前だろう?」

 

 気遣い、穏やかな返答にホッとした様子。違うそうじゃない。

 

「メロンパンも、お疲れ様。お土産は後で渡すな。この人は左近さん。日本のスパイさん」

 

 違うそうじゃない。そう思いつつも、メロンパンとは言い得て妙だなと思う。

 なるほど、彼らは馴染んでるらしい。

 名前が偽名である事を確信する。むしろ、真の姿は全員喋る脳みそなのかも?

 

「お初お目にかかります。貿易商の左近です。こちら、お土産の中国大陸のキョンシーに使うと言われるお札です」

 

 情報量に混乱しつつも、訓練は裏切らない。口は勝手に動き、頭は回り、私はお土産を差し出す。

 

 さとりは目隠しをずり下げてチラッと見る。人間にあり得ない美しい青の瞳。西洋人の青い目とは全く違う輝きを宿した瞳。

 

「ただの紙」

「こら。本当のことを言ってはいけないよ。この人は非術師なんだから、呪物とおもちゃの違いなんてわからないさ」

「2人とも、ただのお土産にそんな呪具が贈られるわけがないだろ」

「いえ、ご希望の物があればお持ちしますよ。本物の呪物は無理でしょうが」

 

 そして用意されたパスタを食べる。大丈夫。この辺で売っているものだ。むしろ天然素材すら使っている上質なもの。だから黙って食え。腹を括れ。

 

「いただきますっ んー。おいしー」

「ようやくこの宇宙船の農場が軌道に乗ってね」

「すげー。さすが夏油!」

「それで皆さん、どうしてこの星へ?」

 

 もはや疑ってはいない。浮かぶ脳みそなんて地球人は存在しない。

 

「実は、軽い気持ちで依頼を受けたら私たち3人だけでこの宇宙船に放り出される事になってしまってね。難儀していたんだよ。3人だけで地球を手助けしろなんて、無茶だと思わないかい? 私は頭脳労働に確かに覚えがあるが、機械系は得意ではないし、後の2人も戦闘一辺倒だし。ひとまず潜伏して情報収集していたんだけど、最近限界を感じてね。資金も手もないし、手を引いてもいいんじゃないかと」

 

 言い出した要求は簡単なもの。要するに、資金と伝手を寄越せというもの。

 それはいい。地球が救われるならなんだってくれてやる。

 でも、何故そうなるかがわからない。エイリアンが、何故地球の為に?

 

「資金と手があれば、この地球を救えるということですか?」

「私達にできるのは手助けだけさ。君らの星は君らで守らないと」

「我らの星の中での事なら、我らがなんとかしましょう。しかし、あれは、BETAは我らの星のものではありませんが」

「私達とも無関係だよ。依頼主から事情をほんの少し聞いている程度さ。ああ、依頼主もBETAとは無関係だ。彼は純粋にこの星を心配して私達をよこしたようだ。ただまあ、君らはすこぶる不運だった」

 

 歯切れ悪くいう。BETAの情報ならどんな物でも欲しい。地球侵略の意図とは。

 

「事情というのをぜひお聞きしたいものですな」

「超新星爆発で高性能資源掘削機がエラーを起こしたらしいんだ。全くひどい話しだと思うよ。君らは宇宙船技術を磨いて、賠償を求めにいくべきだと思うね! 難民をたくさん見たよ。辛そうだった」

 

 プリプリと怒って夏油と紹介された男はいう。思考が止まった。え、らー?

 

「夏油。それ、言っちゃいけないやつでは?」

「重ね重ねいうが、私達は無関係だからね。彼らの創造主が私達ならば、そもそも緊急停止コードなりボタンなり持っているし。あっ移住に適した星が移住可能圏内にあるし、この星はすでに汚染が酷いから、宇宙船技術はどう転んでも磨いておいた方がいいよ」

 

「はあああああああああああああ!!???」

 

 簡単に!!!! 簡単に言ってくれる!! 宇宙船技術を磨いて、賠償を求めにいくべきだ!? 難民を見て辛そうだった!? 汚染がひどいから移住の準備をしろ!?

 

 ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!!

 

「ぶ、ぶん殴るならBETAの作り主にしろよ。俺ら関係ないし……むしろ俺らも巻き込まれた側だし」

「落ち着き給え。我が家の最強様が怯えているではないか」

「怯えてねーし!」

 

 もしも、彼らが創造主関連だったとしたら。いや、それはない。落ち着け。

 八つ当たりをして、せっかくの助けの手を振り払ってはならない。

 

 落ち着くんだ。

 

「手助けというなら、訴訟の手伝いをしていただく事はできないのですか?」

「それで済むなら俺ら呼ばれてねーし」

「ルール的にも可能不可能的にもアウトっぽいよね」

「私達を送るのすら本当ならアウトなんじゃないかな」

 

 彼らは困った様子で顔を見合わせる。どこまでも他人事で、そこに罪悪感はない。

 なるほど、彼らは巻き込まれただけらしい。

 

「今日はもうこの辺にしようか。俺疲れたし、左近さんも疲れたろ。麓まで送るよ。資金と人手のこと、考えといて」

「寝る前にBETAを寄越してくれないかな。詳しい調査と実験をしないと」

「BETAだけど、生きているのも欲しいな。私も実験したい。左近に合わせたってことは、私を温存するのはなしにしたんだろう?」

「そうだね。成人男性が隠れているのは無理があるし、そもそも人手がなさすぎるから。条件が折り合えば、3人でアジアの方に遠征に行こう」

 

 ほら、私が冷静さを失ったがために、せっかくの会談が終わろうとしている。

 いや、絶対に次に繋げなくては。信頼を損ってはいけない。

 

「いや、精神修養がなっていなくてすみません。資金ですが、ひとまずこれぐらいで」

 

 資金と資料を渡すと、彼らは喜んでくれた。

 ついでに記念写真を頼むと、それも快諾。

 

「これは中国での尽力の対価です。何卒今後も地球にお力添えいただきたい。いや。有意義な会談でした。それでは遠慮なく送ってもらいましょう」

 

 宇宙船から出て、振り返って。

 改めて、中と外の大きさが全く違う事にも気づく。

 全くファンタジーなエイリアンが来たものである。

 

 そして、さとりは言葉通り一瞬で私を麓まで送ってくれた。罰のわるそうな顔をしていう。

 

「今日のこと。ごめんな。俺だったら、やっぱりふざけんなって思うよ。もっと手助けしてやりたいけど、科学力はあんたたちの方がずっと上だし、こういう時役立つのはやっぱ科学だし」

「いえ、こちらこそ大きな声を出してしまってすみません。しかし、有意義な時間が過ごせました。また招いて下さいますか?」

「左近さん1人ならな」

「良かった。しかし、依頼主どのはどうして地球に肩入れを? 監視員か何かですか? 依頼主どのかそちらの宇宙船で、先方まで飛べない物でしょうか」

「絶対無理。確実に遠すぎる場所だし、そもそもお前達の宇宙船の方がすごいと思うよ?」

「あれはあれで技術の結晶かと思いますが。そうですか、呪力ですか。ああ、こちらの連絡先にいつでも連絡ください。あなたの連絡先を貰っても?」

「ん。そうだ。肩入れの理由だけど、多分……祈った、からじゃないかな。祈りは、ちゃんと届いたんだよ」

 

 連絡先を交換し、さとりは消えた。

 

 最後の言葉について考える。地球に降りた監視員が、地球のどこかで偶像化されていた?

 大量の情報に、眩暈がする。

 

 さて、これからが大変になる。

 彼らに八つ当たりが向かわないように、上手く調節しなくてはならない。

 しかし、資源掘削機……エラー……超新星爆発……。

 

 ぐぬぬと怒りが腹の底から込み上げてくる。冷静であると自負している私ですらこうなのだから、彼らを八つ当たりか守るのは趙高難易度ミッションだ。

 しかし、やり遂げなばならない。

 彼らが稼ぐ時間が、地球を救うだろう。逆に言えば、多分、彼らは情報と時間を少し稼ぐぐらいしかできないだろう。技術系統があまりに違いすぎる。結局、自分の身は自分たちで守らなくてはならない。神は自らを助る者を助るということだろう。

 

 

 オルタ3とオルタ5が躍進するだろうから、日本の立ち回りについても相談しなくては。あれもこれも同時に進められる余力はないのだ。

 

 しばらく休暇はなくなりそうだ。




次も他者視点かも。
マシュマロ、感想、ありがとうございます! 励みになります!!
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