強い方のオルガの逆行奮闘記   作:トライデント

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作品中でも重要な出会いのうちの1つですね。


ユニウスセブン

アルテミスを脱出したアークエンジェルは、航行を続けていた。

しかし、その間にも、アークエンジェルの中で、1つの大きな問題が発生していた。

 

 

「……水が足りない、か」

 

「ヘリオポリスでもうちょっと物資とかを積んでから、出航のつもりだったらしいからね。アルテミスでも貰えなかったしさ。ここまで持っただけ、まだマシだと思うけど」

 

「あんなことがあったなら、仕方ねえんじゃねえの。んじゃ、話した通りこれも武装プランな。紙にまとめといたから置いとくぞ」

 

「クッソぉ!誤魔化せなかった!!」

 

 

後ろで吠えるクロトの声を聞き流し、格納庫をあとにするオルガ。

話を逸らそうとしてたのが丸見えだったため、あまりクロトの話を広げようとはしていなかったが、問題自体は受け止めていた。

 

 

(どっかで貰うなり拾うなりしなきゃいけねえ、か。しかし、どうすりゃいいかね)

 

 

そう考えていたオルガが向かっているのは、アークエンジェルのブリッジ。

クロトが知っているなら、今ごろマリューたちが何か手を打とうとしているだろうと考えてのことだった。

 

 

「邪魔するぜ、艦長」

 

「オルガくん?どうかしたかしら」

 

「水不足、どうすんのかなと思ってよ」

 

「………………そう、ね」

 

 

マリューのその顔は、覚悟を決めたような顔だというのは、オルガにも分かった。

 

 

「……なんか、決まったのか?」

 

「……ここから近い宙域へ向かいます。目的は、移動中で」

 

「目的ぐらい、流れで分かる。手が必要になるんだったら、手伝いはするぞ」

 

「…………………」

 

「…………人死にが関わることじゃねえんだろ。だったら、そんな気にしないでいいだろうが」

 

「……ならば、キラくんやトールくんたちも頼めるかしら」

 

「へいへい」

 

 

その声を聞いたオルガは、ブリッジから退出する。

キラやトールたちに話を通しに行くため、それぞれの部屋へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「トール、サイ。大丈夫か?」

 

『はい。こちらは大丈夫です』

 

『こっちもです、オルガさん』

 

「周りに敵はいないんだ。落ち着いて動かせよ」

 

 

アークエンジェルから、4機の宇宙用モビルアーマー"ミストラル"が出撃する。

その随伴機として、ストライクとアドバンテージの姿もあった。

 

 

『……………』

 

「キラ。周りの警戒はオレもやってる。そこまで気負わないでいいぞ」

 

『……あっ。は、はい……』

 

(…………やれやれ。さっき、あの女が謝ってたのはオレも見たが、本当にカタチだけだったな。キラ自身は気にして無いようだし、あの女も、状況や諸々考えたら一定仕方ないとこはあるんだろうが……)

 

 

キラの曇った顔を見て、オルガは思考を進める。

先のフレイのこと、そして、それ以外にも心当たりはあった。

 

 

「………ユニウスセブン、か」

 

『あれって、プラントの……』

 

「……周りに浮かんでる戦艦からの採掘は、オレとトール、サイでやる。ミリアリアとカズイ、キラはユニウスセブンから頼むぜ」

 

『えっ?オレは構いませんけど…』

 

『……わ、分かりました……』

 

「キラ、頼んだぜ」

 

『はい。そちらも、気を付けて』

 

 

2組に分かれて、作業を始める。

多数が浮かんでいる戦艦の瓦礫からは、使用可能な弾薬など。

ユニウスセブンからは、飲用水を求めての作業だった。

 

 

(……フラガのおっさんの言う通り、水が見つかって喜ぶほど、オレは堕ちちゃいねえが……。あのすげえ爆発、核のせいだったよな、コレ)

 

 

オルガ自身が、こうしてキラたちと出会う前、逆行する前のこと。

ボアズに向けての核攻撃、そしてプラントへの核攻撃未遂。

それを護衛していたのは、他でも無いオルガだった。

 

 

(……悪いが、そこまでは責任感じねえぞ。オレは関わってねえんだからな。思うことが1つも無いってことはねえが……。せめて、また核が使われなきゃいいと思うことだけだ)

 

 

そう思う反面、どうせまた使われることになるんだろうというのは、オルガ自身も、諦めに似た感情を抱いていた。

逆行前、自分の形式上の上司であるムルタ・アズラエルが、どこかからか手にしたものが関係していることぐらいしか、オルガは知らなかった。

彼自身が現状で出来ることは、何もない。

 

 

「………あっ、戦室とかは見ない方がいいぞ。見なくても、作業はできるだろ?」

 

『えっ?は、はい…。現状、出来てますけど……』

 

『なんでです?中まできっちり探した方がいいんじゃ……』

 

「………こうなる前は、普通に動いて、中にも船員はいた。だが今じゃこの有り様。あとは、分かるだろ」

 

『………………あ、あー…』

 

『…………………』

 

「……そういうこった。カズイは取り乱しそうだし、万が一ミリアリアに見せたとなると、後味悪い。消去法だったが、2人に頼んだんだよ。悪かったな、トール、サイ」

 

『い、いえ…。そういうことなら、気にしてませんよ』

 

『……たしかに、ミリィが見ることになるかもしれないぐらいだったら、オレが代わりにでも……』

 

「だから、あんま周りとか見ないようにしてくれ。オレも目星は付けとくからよ」

 

 

オルガの声により、慎重に作業を進めるトールたち。

キラたちの方も、アークエンジェルの方へと進んでいるのが見える。

これを何往復か繰り返すのは、ここにいる皆も察しがついていた。

 

 

「……しばらくやったし、ミリアリアは戻っていいぜ。お前さんに、やってもらいたいことがあるみたいだ」

 

『私に…ですか?』

 

「お前さんもオーブの生まれなら、知ってるよな。折り紙のアレ。えーっと、なんだっけ。あの鳥……」

 

『………ああ。折り鶴ですか?』

 

「ああ、そうそう。それだそれ。あっちでもやってるみたいなんだが、人が足りないみたいでよ」

 

『でしたら、私もやりますよ。小さい頃にお母さんに教わったから、覚えてますし』

 

「おう。カズイ、あともうちょっと頼んだぜ」

 

『は、はい……』

 

 

そうして、ミリアリアがアークエンジェルに戻り、交代でアーノルドたちが来てから、しばらく経つ。

作業の終わりが見え始めた頃に、ミリアリアの乗ったミストラルがアークエンジェルから発進する。

 

 

『…………じゃあ、お願い』

 

「…………はい」

 

 

マリューの声を聞いたミリアリアは、その腕に抱えた折り鶴をユニウスセブンに放つ。

それは、ミリアリアたちが折った、弔いのためのもの。

アークエンジェルの艦内でも、乗員たちが敬礼をしていた。

 

 

(……………………死んじまったら、その想いが届くかなんて、分かりゃしねえ。オレに、そんな人なんていなかったし。そもそも、死んですぐにここに来たんだから、分かるはずもねえんだがな)

 

 

そう思っているオルガも、警戒の目を一時的に止め、ユニウスセブンに散らばる折り鶴たちを見届けていた。

 

 

(……祈りなんかじゃなかったが、あの時もシャニに届いてたかなんて、オレには分からねえからな。だが、そういう行動や気持ちってのは、今を生きてる人間にしか出来ねえものってのは、今のオレなら分かる。こんなクソったれな世界だったんだ。向こうってのがあるんなら、せめてそっちでぐらい、静かにいれたらいい)

 

 

それはいつの間にか、目を閉じ、少しの祈りに繋がっていた。

 

 

「………なんて、ガラでもねえ。そろそろ作業の終わりも見えたし、周りの警戒を………ん?」

 

『オルガさん…!むこうに、偵察型のジンが……!!』

 

 

オルガがそれを確認したと同時に、キラの声が聞こえる。

モニターに映ったのは、紫色をしたジン。長距離強行偵察複座型ジンのものだった。

外見からも分かる通り、両肩に配置されたレドームにより、長距離の偵察を可能にする機体だった。

 

 

「みんな、聞こえるか!アドバンテージから正面、4時の方向に偵察型のジンが見える!作業止めて、引き下がるの待つぞ!!」

 

『えっ、えええ!?』

 

『カ、カズイ!落ち着けって!!』

 

『くっ……!なぜこんなところに……!』

 

 

アーノルドの言う通り、こんなところに偵察型ジンが来ることなど、全く予想していなかったオルガたち。

とにかく、向こうが撤退していくのを待つしか無かった。

 

 

(ロックオンなんかしたら、さすがに気付かれる。だが、あれを使えるようには……)

 

『行ってくれ…!そのまま……!!』

 

 

キラの願い通り、偵察型ジンは撤退を始める。

 

 

『よし…!』

 

「まだだ。もう少し待て。油断は……」

 

 

油断はするなと言う前に、通信越しに警告が鳴ったのが聞こえた。

それは、アーノルドたちが乗るミストラルが、偵察型ジンに捕捉されたものだった。

 

 

『ぐっ………!!』

 

『くそっ…!撃ってきた……!!』

 

『アーノルドさん!?チャンドラさん!?』

 

「チッ……!撃ってきたのは、そっちだからな……!!」

 

 

攻撃を始めた偵察型ジンを、野放しには出来なかった。

すぐさま偵察型ジンをロックオンしたアドバンテージは、両肩からレールガンを発射する。

アドバンテージまで捕捉していなかった偵察型ジンは、レールガンに撃ち抜かれ、撃破された。

 

 

「……初めて使うのが、こんな時ってか………」

 

『すまない…。助かった』

 

『ありがとな、オルガ……』

 

「そっちが当たらなかっただけ、よかったぜ……。トールたちも大丈夫か?」

 

『は、はい…。こちらは全員無事です』

 

「……艦長!こっちの様子伝わってんだろ?そろそろ戻っていいか!他の奴らが来たら、ミストラルじゃ持たねえぞ!」

 

『もちろんです。作業途中でも、そのまま戻ってきてください』

 

「……よし。お前ら、戻るぞ」

 

『………すみません、オルガさん』

 

「なるべく一撃で仕留める必要があったんだ。だったらこっちがやった方がいい。気にすんな」

 

 

そう言って、キラからの通信を切ったオルガ。

アドバンテージとミストラルたちは、アークエンジェルへと戻るが……。

 

 

 

 

 

 

 

「………お前、また救命ポッド拾ったのかよ」

 

「見つけて、しまったもので……」

 

「別に責めてるワケじゃねえけど…。とことん縁があるな、キラ」

 

「準備できました。開けますぜ」

 

 

それから少し遅れて、キラの乗るストライクが帰艦した。

ストライクの腕には、救命ポッドが抱えられていた。

マードックの開放準備が整い、周りの兵が銃を用意し、万が一に備える。

 

 

『ハロ、ハロ』

 

「……………?」

 

 

呆気に取られたオルガだったが、それはこの場にいる全員も同じだった。

救命ポッドを開けると同時に出てきたのは、ピンク色をした小さな球体状のロボット。

そして、そのすぐ後から……。

 

 

「ありがとう。ご苦労様です」

 

『ハロ、ラクス、ハロ』

 

 

同じく、ピンク色の髪をした女の子がそこから現れた。

そのロボットの言った通り、彼女の名前はラクス…。ラクス・クライン。

キラと同じく、コーディネーターだった。




ミストラルに夢中で隠れてたアドバンテージに気付かず、的確にレールガンで撃ち抜かれた長距離強行偵察複座型ジンのパイロットにも黙祷。
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