なんでそうなってんだと言われると、2人が流れでMS乗ってる裏で、自分たちも出来ることをしたいという想いから、正史に比べてかなり繰り上がりで学生組は志願してます。カズイは完全に流れでしてますが。
なのでまだオルガとキラはまだ正規の軍人ではないです。まだ。
クルーゼ隊の襲撃を退け、第8艦隊との合流を果たしたアークエンジェル。
「あん?オレたちも行かなきゃいけねぇのかよ」
「MSのパイロットだからな。アルテミスの時みたいなことにはならないのは保証出来るぞ」
「それは疑ってねぇよ。そんなだったら、ちったぁ暗い顔するだろ」
「……………」
アーノルドたちに連れられ、メネラオスブリッジへと向かうオルガとキラ。
「第8艦隊つったよな。コクピットからも見えたが、ずいぶんな規模の艦隊だな」
「ハルバートン提督率いる大艦隊だからな」
「補給もたんまりくれるそうだ。戦力の補充は、大きくは望めなそうだが…」
「MS動かせるパイロットなんざ、そうそういねぇだろ。連合なんて、つい最近まで戦闘機が主力だったんだろ」
「地上だとリニアガンタンクとかはいたがな。ただオルガの言う通り、MS動かせるパイロットは、発掘も進んでないだろうな…」
厳密には何名かはいたのだが、この場の全員はそれについては触れなかった。
正規の軍人であるアーノルドやチャンドラたちはもちろん、オルガとキラも、ストライクやアドバンテージ、奪われたイージスたちの正規パイロットたちがいたということも知っていたが、それ以上を語ることは無い。
「ハルバートン提督。只今マリュー・ラミアス大尉、並びにムウ・ラ・フラガ大尉、ナタル・バジルール少尉、以下数名、着艦致しました」
「うむ。案内ご苦労だったな」
(……コイツが、そのハルバートン提督ね)
そう話している間に、ブリッジへと到着したオルガたち。
案内をしてくれた船員の声の後、敬礼をするマリューたちを後ろから見るオルガとキラは、遅れてそれに続く。
「話は聞いている。キミたちは正規の軍人ではないのだろう?無理して敬礼することはない」
「……そうですか」
「私はデュエイン・ハルバートン准将。第8艦隊の司令官だ」
「オルガ・サブナック。アドバンテージのパイロット」
「キラ・ヤマト…。ストライクのパイロット、です……」
「うむ。しかし、MSのパイロットが、キミたちのような少年とはな…」
「キラはともかく、オレはそんな年じゃないはず…です」
「私からしたら、ラミアス大尉やフラガ大尉も十分若い。彼らよりも若いのだから、こうも言いたくなる」
(……話に聞いてた通り、この人はマトモな軍人なんだな)
生体CPUとなっていた頃からの記憶から、常識的な軍人というのはほぼ存在しないと思っていたオルガだったが、アークエンジェルのクルーや、目の前にいるハルバートンからは、そんな不快な思いをすることはなかった。
「ラミアス大尉。アークエンジェルで保護している民間人を受け入れよう。全員搭乗可能なシャトルで、オーブへ送る準備は出来ている」
「感謝します。今からでよろしいですか?」
「構わない。補給に取り掛かってる人員の一部を、そちらへ回す」
「バジルール少尉、アークエンジェルにいるチャンドラ伍長へ伝えてちょうだい」
「了解。チャンドラ伍長、聞こえるか?」
そこからしばらく、軍人同士の会話が続く。
ザフトの動きに限らず、大西洋連邦、ユーラシア連邦の現状など、オルガからしたら、ほぼ興味の無い会話が続き、意識を別のことに向けていた。
(……ブルーコスモスの話もちらほら聞こえるが、あのオッサンが盟主なんだったよな。このままアークエンジェルにいたら、オーブでぶつかるか…)
前回の形式上の上司とも言える人物だった、ムルタ・アズラエルのこと。
戻って来てから、ブルーコスモスのことについてはフレイ関連のことでしか耳にしないこともあり、気にしていたことだった。
(いや、待てよ。オレとクロトがアークエンジェルにいるんだ。シャニだけ向こうにいるのか、シャニも別のとこにいるのか)
それに続き、気になるのはシャニのこと。
アズラエルのことも気になるが、クロトが近くにいる以上、シャニの方が重みは大きかった。
(それも分かってないし、あの3つのMSで来るんだとしたら、他の2人は誰だ?正直言って、こっちの方はそんな興味はねぇけど。シャニは気になるな…)
「あ、あの…。オルガさん」
「っと…。どうした、キラ」
「トールたちは志願してますけど、僕たちはまだ民間人だから、ここで艦を降りることが出来るって、ラミアス大尉に言われました」
「ああ…。なるほどな。キラはどうすんだ」
「僕は…」
気付いた時には、マリューやナタルたちは奥の方まで行き、近くにいるのはキラだけだった。
そうオルガに聞かれたキラは、表情を少し曇らせる。
誰が見ても、迷っているかのようなものだった。
「オレたちはまだ民間人なんだ。引き返すなら、今だぞ」
「………オルガさんは、どうするんですか?」
「お前には言わねえ」
「な、なんでですか!?」
「オレが残ると言ったら、それに続いて残るって言うだろ。そんでオレが降りるって言っても、オレが降りるって言ったら、『僕がその分頑張らないと…』とか言って残るだろ」
「こ、声真似、似てませんよ…」
「うるせぇ」
「あたっ…」
オルガにチョップを当てられたキラだったが、先のオルガの言葉は図星だったようで、更に表情を曇らせている。
「今まで艦を守ってたんだ。何を選んだって、ここにいる奴らはお前に対してマイナスなことは言わねえよ」
「そう、ですかね…」
「もし言われたらオレに言え。ぶっ飛ばしてやる」
「別の問題が生まれますから…!」
「とにかく、オレらのことなんか考えないで、自分のことだけ考えろ。オレもオーブ生まれなんだ。オレが残ったとしても、今生の別れにはならねぇよ」
「………」
それを聞いたキラは、考え込みながらその場から立ち去る。
そんな様子のキラの背中を見届け、それを追おうとするオルガだったが…。
「すまない。少しいいかな」
「ん…。なんですか、提督」
「キミがアドバンテージのパイロットというのは聞いている。ストライクやゼロの援護をしてくれていたそうだな」
「まあ、そうですね。性能もジンぐらいならどうにか対応出来ましたけど」
「奪われたG兵器と、ラウ・ル・クルーゼのシグー…か。クルーゼ隊に目を付けられるとは、災難だな」
「アークエンジェルだけじゃなく、第8艦隊も巻き込まれたんじゃないですか?部隊の再編を済ませて向かってくる可能性、無いとは言えないでしょう」
「ふむ……。それは、そうだな。艦隊戦なら遅れは取らないが、やはりMSは脅威となるか。開発プロジェクトを提唱した私からしたら、複雑ではあるが…。それは、ラミアス大尉の方が大きいか」
呼び止めて来たハルバートンと、そんな会話を続けるオルガ。
准将が相手となると、流石のオルガも、しっかりと敬語を使い会話をしているが、それを見ている者が数名。
「……アイツ、しっかりした敬語使えたんだな」
「ならば、普段の態度はなんなのだ…?」
「……気を遣ってるのかもしれないわ」
「気を遣ってる…とは?」
「彼は以前から、無理矢理MSに乗らされたと思ってはいないと言っているの。普段の口調からかけ離れた態度だと、その言葉に偽りが出てきてしまうと思ってるから、私たちには砕けた敬語を使ってる…」
「………」
「……考え過ぎかも、しれないけど」
そのマリューの考えに、異を唱える者はいなかった。
真実だろうが、誇張だろうが、関係無く。
ムウとナタルは、オルガのことを、考え無しで動いているような人間と思っては無かったからだった。
「そう言えば、アークエンジェルに補給を回してると言ってましたけど、何を回してくれたのですか?」
「大気圏用だが、ストライクの支援機を2機。そして新たなストライカーパックと、アドバンテージ用のパーツだ。気になるなら、実際に見に行くといい」
「……では、そうさせてもらいます」
「ああ。ならば最後に1つだけ、いいか」
「なんでしょうか?」
立ち去ろうとしたオルガを、ハルバートンが呼び止める。
少しの沈黙の後、ハルバートンは口を開く。
「キミは、何故アドバンテージへと乗った?」
「何故か、ですか?」
「ラミアス大尉から聞いた。無理矢理戦わされているとは思っていないと、そう言ったそうだな」
「そうですね。嘘をついた覚えも、ありません」
「ならば、キミの意思で戦場へ向かったことになる。元々民間人だったキミが、何故そこまで、自分の意思でMSへと乗れたのだ?」
「………」
その言葉を聞いたオルガの雰囲気が、少し変わった。
それを見たハルバートンも、目を少し細めるが、お互い、それは一瞬のことだった。
「ヘリオポリスで、世話になったヤツらがアークエンジェルにいるんです。それを護れるのはオレたちだけなら、やるしかないでしょう」
「……それは半分、無理矢理ということにならないか?」
「なりませんよ。MSに乗ってるのは、オレの意志なんですから。戦うことしか残されてなかったり、少なくとも、アークエンジェルの人たちは、オレのことをパーツとしか思ってたりなんかしてませんから」
「なに…?」
「……では、失礼します」
そう言い残したオルガは、今度こそその場から立ち去り、アークエンジェルへと戻る。
残され、その言葉を聞いたハルバートンとマリューたちは、複雑な表情をしていた。
(……今の方が、状況としてはずっとマシってのは、ホントなんだけどな)
「あっ、お兄ちゃん!」
「ん…?」
アークエンジェルへと戻ったオルガは、補給の確認をすべく、格納庫へと向かおうとしていた。
その途中に声をかけられ、振り返る。
そこには、以前に行く末を尋ねて来た、少女と母親がいた。
「……ああ。この前の…」
「アタシたち、シャトルで地球に降りるんだって。オーブに帰るの!」
「もう少し準備にはかかるそうなんですが…」
「そうか、よかったじゃねえか。こんな危ないとこより、自分の家に帰りたいだろ」
「うん。オーブのお父さんのお家に行くの。それより…はい!これ!」
「これは…花、か?」
オルガが少女に渡されたのは、折り紙で出来た花だった。
その花は、オルガの髪色と同じ、緑色をしていた。
「今まで守ってくれたんだよね。そのお礼!」
「……………」
「こっちの黄色の方は、もう1人のお兄ちゃんにあげるの!」
「……そう、か。多分、喜ぶと思うぜ。名前、なんて言うんだ?」
「アタシ、エルって言うの!お兄ちゃんは?」
「オルガだ」
「じゃあ、オルガお兄ちゃん!今まで守ってくれてありがとう!また会える?」
「オレもオーブ生まれだ。オーブにいるなら、またいつか会えるかもな」
「…うん!」
「本当に、ありがとうございました。エル、そろそろ行こう?」
「でも、このお花…」
「まだお船を移動したりしないから、お部屋へ戻るだけよ」
「なら、分かった!バイバイ!オルガお兄ちゃん!」
「おう。元気でな」
母親と手を繋ぎ、もう片方の手を振っているエルを、オルガは見送った。
それから少し、右手に持った折り紙の花を見つめる。
(……まさかオレが、こんなの貰うなんてな)
生体CPUとされた前回からは、とても考えられないことだった。
そのこともあり、オルガの胸には、温もりが広がっていた。
(記憶を失う前は知らないが、こんなの初めてだ。柄にもねぇけど、とても無下にはできねぇな…)
格納庫へと向かう前に、一先ず貰った花を自室へと置いて行くことにしたオルガ。
こんなところを見たクロトに笑われる前にと、足を進めようとした。
『オルガお兄ちゃん!』
「っ……?」
その刹那、オルガの脳内に声が響く。
その声は、女の子のものだったが、先ほど見送ったエルのものとは違い、聞き覚えの無い声だった。
「また、聞き覚えの無い声…?しかも、この前のとは違う…」
このことは、初めてではなかった。
以前は、聞き覚えのない男の子の声だった。
今の女の子の声はもちろん、その男の子も、周りにそれらしき人物はおらず、声だけが、オルガの脳内に響いていた。
「……気のせい、じゃない…のか?」
2度も似たような現象が起こるとなると、とても気のせいの一言で済ませることが出来なかったが、答えも分からなければ、解決策も分かるはずもないことに対して、深く意識を割くことは出来なかった。
不可解なことに疑問を抱きながら、オルガは自室へと急いだ。
もちろんキラにも、お花は届けられます。