ザフトの襲撃を退け、ひとまずの危機を乗り越えたヘリオポリス。
「………見慣れたモンが、周りボロッボロで、各地で火災発生…か。なんてこったよ」
数十分前の事を思い出すも、それとは比べ物にならない光景が広がっていた。
地球連合軍の新型MS奪取の為、襲撃して来たザフトにより、建物は崩壊、火災は治まったものの、被害は残ったまま。
「………中立コロニーでMS作ってるってことを抜きにしても、襲撃は流石にマズいんじゃねえかよ……いや、人のことは言えねえか…」
ザフトに悪態を吐くも、逆行前の自分も似たような事をしたのを思い出し、それ以上の言葉を抑えるオルガ。
「………まあ、いい。流石にそろそろ降りるか」
戦闘が終わったストライクからキラとマリューが降りてから少し経っている為、アドバンテージに乗っているのがオルガだというのは、マリューの治療をしているトール達にも伝わっている。
なので、トール達がチラチラとこちらの方を見ていることに、オルガは気付いている。
コクピットハッチを開き、上部からロープリフトを下ろし、それを使いオルガは地上へ降りる。
「っと…なんとか降りれたか」
「オルガさん!心配しましたよ!!」
「あの機体、オルガさんが乗ってたんですね!わざわざザフトのMSをこっちから離してくれて、ありがとうございます!」
「いや、一番ヤバかったの対処したキラに礼言えよ。言った?ならいい」
地上へ降りたオルガに駆け寄ってくるトール達。
オルガは奥の方へと目をやると、ベンチに横たわるマリューと、そのそばにキラとミリアリアもいるのを確認する。
ひとまずの安全を確認し、安堵するオルガ。
「………で、でもオルガさん…すごいですね。こんなの動かせるなんて……」
「あー…火事場の馬鹿力だか知らねえが、身体が覚えてるんだか知らねえが、動かせてな。自分でもビックリだ」
「ま、まあ…オルガさんならそんな驚きませんし……それに、キラも動かせても、そこまで……」
「…………そうかい」
カズイにそう言われ、誤魔化すオルガ。
カトウゼミ内でも、色々と出来るお兄さんとして通って来た為、MSを動かせたとしてもそこまで驚かなかったのは、カズイだけでなくトール達も同じ気持ちだった。
キラも教授からOS関係で色々と無理難題を押し付けられてるのを全員把握してた為、トール達はもちろん、オルガも驚くことはなかった。
カズイに誤魔化し、キラに目線をやるオルガ。MSを動かし、ジンを撃破したことを、上手く飲み込むことが出来ていないようだった。
「そっちも無事だったか、キラ」
「オ、オルガさん……。オルガさんも無事で、良かったです」
「OSが動かしづらいやつだったが、何とかな。サーベルが装備されてなきゃ、多分死んでたぜ」
「貴方も…よくMSを動かせたわね」
「アンタがどういう役職かは知らねえが、推進剤ぐらいしっかり積んどいてくれねえか?危うく死にかけたんだけど」
「まだ試験を控えてるところだったのよ…それに、全て終わってなかったわ…」
「………そうかい。だがまあ、アンタがこっちに来いって言ってくれなきゃ、オレ達は2人とも揃って爆炎に呑まれてたろうよ。そこは、感謝しとくぜ」
「そう…ですね…MSに乗れてなきゃ、あそこから脱出出来ませんでしたし…ありがとう…ございます」
「…………………お礼を言われることは、ないわね」
オルガとキラがこうして無事でいられるのは、マリューがMSの方へと誘導したおかげだと、その礼を言う2人。
ただマリューからしたら、民間人である2人をMSに乗せたことや、自分らがヘリオポリスでMSを開発したせいでザフトに襲撃されたこと等を含めて、自分がしたことに対して礼を言われても、素直に喜べなかった。
「しっかし、こんなデッカいのが動くなんてなー」
「あ、貴方達!そこから離れ…」
「あー、待ってくれや。オレが言う」
「えっ…?」
トールやカズイ達がストライクやアドバンテージに触ってるのをマリューが静止しようとしたところ、オルガが割って入る。
「………事情は分かるが、いきなり銃なんて突き付けようとするんじゃねえよ。これからの事、アンタの脅しで進めるのはよくねえだろ」
「…………」
マリューが懐に忍ばせた拳銃を取り出そうとしたのを、オルガは見ていた。
そばに居るキラにも聞こえないように小声で話し、オルガはトール達に近づく。
「MSってのは、軍の技術の塊ってやつだ。それにコイツらは地球軍の試作MSってやつだろ?」
「……ええ。そうね」
「だったら、本来民間人のオレ達が、見たり触ったりしていいようなもんじゃねえ。とくにロールアウト前はな」
「ろ、ろーるあうと…?」
「あー……まあ、機体の運用が始まる前ってこったよ」
「で、でも…キラやオルガさんが乗ってましたよね……?」
「オレ達は軍人じゃねえ。そもそも、民間人がMSに乗るのだって、本来は大分マズイことだぜ」
「と、言うと……?」
「場所によっちゃ、即刻銃殺とかもあり得るんじゃねえかな」
「え、えええ!?」
「と言うことは、私たちも……!?」
「ちょ、ちょっと貴方!いくらそこまでは…!」
今の自分達の現状について説明するオルガ。
そのことについて戸惑いを隠せないキラ達を見て、マリューが止めようとするが、すぐにオルガは話を続ける。
「だが、オレ達はそうはならなかった。そうなる場合は、オレとキラなんてこの場にはいねえからよ。そのつもりもないんだろ?」
「も、もちろんよ…。流石に、銃殺だなんてするつもりはありません」
「じゃ、じゃあ私たちはどうなるの…?」
「……どうなるんだ?緘口令でも敷かれるか?」
「……………そのつもりではあります。ですが、ここでは出来ませんので、場所を変えてになります」
「………だとよ。まあ、こんな状況じゃ家に帰れねえからな。せめて親御さんに連絡取るのは許してくれるかよ?もちろん、現状全ては説明しないようにさせてもらうが」
「ええ。それぐらいは。流石に、無事を伝えた方がいい状況でしょうし」
「……じゃあ、さっさとしてこいお前ら。オレはコイツの見張りしとくからよ」
アドバンテージを親指で指し、トール達を送るオルガ。
それを受けて、少し離れてから携帯電話を取り出すトール、カズイ、ミリアリア、サイの4人。
「……キミは、いいの?」
「え、えっと……」
「キラもしてこいよ。ここはオレ1人いりゃ充分だからよ」
「…………では。ありがとうございます」
少し遅れて、キラもトール達と同じく、携帯電話を取り出す。
あれだけ派手な事をしてきたが、どうやら携帯電話は無事だったようだ。
「………………」
「………キミは?」
「………オレに連絡を取るようなヤツは、いねえよ。宿主の連絡先も知らねえしな」
「……そう」
「………本当は緘口令どころじゃねえんだろ。最高軍事機密に触れた状況だ。なのに、オレの説明にほぼ口出ししなかったな」
「貴方がそこまで軍のことに詳しいのかは、今は聞かないでおくわ。ただ……そうね。私も軍人で、綺麗事を言っていられる立場でないとは分かっているけれど…貴方とあの子を巻き込んだのは私で、他の子もそれに巻き込まれる形になった。貴方が止めてくれなかったら、銃を突き付けながら、説明することになっていたでしょうから……」
「………オレのやったことも、そんな変わんねえよ。どうせ緘口令を敷かれるだけじゃ済まないだろうし。それを深く説明しなかった、オレも同罪みたいなもんだ」
「………なら、どうして?」
「……………………」
「………?」
さっきまでと違い、黙り込むオルガの顔を覗くマリュー。
「………身体を弄ったり、薬がなきゃ生きていけねえ、短命な身体になんかしねえだろ?」
「…ッ!?」
そう言いながら、マリューの方を向いたオルガの顔は、何とも言い表せない、諦めや安堵が混ざり合ったような顔をしていた。
「す、するわけないでしょう!?な、なんでそんなことを……!!」
「……なら、いい。これから、戦いに巻き込まれるって言うなら、オレは協力してやる。その代わり、なるべくキラ達を巻き込まないでやって欲しくてな。アイツがそうしたいって言うなら止めやしねえけど、そういうようなヤツじゃねえってのは、分かってるからな」
「…………貴方、いったい……?」
「……オルガ・サブナック。ただのナチュラルで、オーブ在住の一市民……らしいぜ?」
生年月日だけ確認出来ない住民カードを見せながら、オルガはそう言った。
自分をあんな目に遭わせた(暫定)ラボ関係の人間は許せなくても、普通の軍人には恨みは持ってないです。