本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン3G 作:JUBIA
【ラングロトラが大変です×2】
「か、会長! 大変です!!」
砂原町内会の会長を務めるドボルベルク亜種の元に、副会長のボルボロスが慌ててやってきた。
「何が大変なのかね?」
「ラ、ラングロトラが大変です×2!!」
副会長は、息を切らしながら言った。
「ラングロトラが大変なのはわかるが、その『×2』ってのは何なのかね?」
「と、とりあえず、現場に一緒に来てください!」
会長は重い腰を上げると、その場でグルグルと回り始め、副会長の向かった方向へ大ジャンプをした。
またその場でグルグルと回ると、今度はズサーッと、あらぬ方向へ滑り込んでしまい、大ジャンプは失敗に終わった。
「会長! もう歳なんですから、素直に走っていきましょうよ!」
副会長の言う通り、ワシも……もうそんな歳か。
どうりで最近、大ジャンプのキレが悪いと思ってはいたが。
副会長の案内で現場に到着すると、そこにはラングロトラが二頭いた。
互いの舌が複雑にからみ合ったまま、今にも一触即発の勢いだ。
「なんと! 互いの舌が絡んでおるのか? 副会長、解いてやりなさい」
「い、いやぁ、私の指はこんなですから……」
副会長は、太い指を申し訳なさそうに会長へかざした。
「……ふむ。ワシの指もアレだしな。誰か、手先が器用なヤツはいないのかね?」
「あ、ドスジャギィなら指先も細いし、器用そうですね」
「ふむ、ではドスジャギィを呼んできたまえ」
「では、呼んで参ります!」
副会長は地面に潜ると、ドスジャギィを探しに出掛けた。
会長は、目の前の惨事を見守っている。
「ちょっといい加減にしてよ!」
「もしかしてだけど、絡まったフリして誘ってるんじゃないの?」
「な、なんですってぇ?」
「そういうことだろ?」
舌の絡み合ったラングロトラ達は、雄と雌だった。
「これこれ、よしなさい」
会長が割って入ると二頭は舌を絡ませたまま、互いにソッポを向いた。
どうにか一時停戦になったようだ。
副会長がドスジャギィを探しに行ってから、早一時間が過ぎようとしている。
待ちくたびれた会長が、こっくりこっくりと船を漕ぎ始めた時、ベリオロス亜種がやってきた。
「あら、みささんお揃いで何かあったんですか?」
鼻
「あらまぁ、それは大変! よければ私が解いてあげましょうか?」
「なんと、ありがたい申し出。しかしながら、奥さんの指じゃ……」
「これでも?」
ベリオロス亜種は、短い指先にキラリと光り輝く鋭い爪を出して見せた。
「おぉぉ! それならば!」
二頭の絡み合った舌は、ベリオロス亜種に解いてもらうことになった。
「間違ってプスッと刺しちゃったら、ごめんなさいね」
微笑むベリオロス亜種に、二頭はブルブルと震え、互いに目を閉じている。
それから数分も経たずに、複雑に絡んでいた舌は無事に解けた。
「あぁ、よかった、よかった。奥さん、助かりました」
ベリオロス亜種に礼を言った会長は、ラングロトラ達にもちゃんと礼を言うよう、目配せした。
「それじゃ、また何かあれば、いつでも呼んでくださいな」
ベリオロス亜種は、そう言ってどこかへ飛んでいった。
「しかし、だ。君達ね……」
会長は、ラングロトラ達に説教しようとした。
が、二頭の雰囲気は、さっきまでのものと違っている。
「さっきは、ごめんなさいね。……あんなこと言って」
「いや、こっちこそ……ごめんよ」
……吊り橋効果、ってやつなのかね、やれやれ。
ラングロトラ達は揃って会長に礼を言うと、一緒にどこかへ仲良く立ち去っていった。
「さてと、ワシも帰るとするかの。……ん? はて……?」
会長は何かを忘れている気がしたが、歳のせいで思い出せずにいると、そのまま帰っていった。
一方、ようやくドスジャギィを探し出した副会長は、ラングロトラの舌を解いてくれるよう、交渉をしていた。
「どうして俺が、あんなヤツらを助けないとダメなんだよ」
「いやぁ、ですから、ここは会長の顔を立てると思って……」
「アイツら、この前、俺に向かってゴロゴロと転がってきたクセに、謝りもしなかったんだぜ?」
「いやぁ、ですから、それについても謝罪させますんで、ここは一つ……」
「いんや、俺は絶対にアイツらを許さないねっ」
「いやぁ、ですから……」
骨折り損とは知らず、副会長の交渉は、なおも続く。
------------------------------
【モン・パレ】
フ「どーもーっ♪ フロギィでーす」
ジ「ジャギィでーす」
バ「バギィでーす」
フ・ジ・バ「三匹合わせてドスアンチでーっす♪」
週に一度、闘技場では、モンスターのモンスターによる、モンスターのための演芸『モンスター・パレード』が繰り広げられていた。
人気急上昇中のトリオ漫才「ドスアンチ」は、今日で三度目の出場だ。
彼らの持ち味は、なんといってもすべてアドリブで漫才をするところだった。
フ「えー、最近アレですね。むやみやたらと蟻塚を壊すモンスターがいるってね」
ジ「とんでもない話ですねー」
バ「まったくなってないっすわー」
フ「毒らせるぞ、コノヤローっ! ってね」
バ「眠らせるぞ、バカヤローっ! ってね」
ジ「……っ! ……???(あたふた」
特有の攻撃方法がないジャギィは、うろたえている。
フバ「まー、まー、まー♪」
そんなジャギィをなだめる二匹。
フ「えー、最近アレですね。むやみやたらと透明モンスターになって、ピンポンダッシュする奴がいるってね」
ジ「ほんっと大迷惑ですねー」
バ「まったくなってないっすわー」
フ「毒らせるぞ、コノヤローっ! ってね」
バ「眠らせるぞ、バカヤローっ! ってね」
ジ「……っ! ……???(あたふた」
ジャギィは、またうろたえている。
フバ「まー、まー、まー♪」
そんなジャギィをなだめる二匹。
ジ「あの……さ、俺って……必要?」
フ「何言ってんだよー」
バ「必要に決まってるさー」
ジ「だって……さ、なんか……さ、俺いなくても……」
フ「お前がいないと、誰が俺とバギィの喧嘩を止めるんだよ!」
バ「そうさ、お前がいないと、俺達の喧嘩は終わりなき終焉を迎えるぞ!」
ジ「そ、そっか! はは……は……って、俺、毒って眠ったら死ぬやんっ!?」
フバ「まー、まー、まー♪」
ジ「まー、まー、まー♪ じゃねぇっつーのっ!」
フ・ジ・バ「失礼しましたー♪」
------------------------------
【少年日記(郵便アイルー編)】
やぁ!
オイラ、モガの村から、トーちゃんと魚を売りに船でやってきたんダ!
トーちゃんが仕事してる間は、港で遊んだり、釣りして待ってんのサ!
待ってる間、暇だから港をブラブラしてみたんダ!
そうしたら、今日もギルドカードを配ってる郵便アイルーがいたから、話掛けてみたんダ!
「やぁ! 今日も配達頑張ってるネ!」
「は? これが仕事だからニャ」
さっきまでニコニコしてたのに、一瞬で真顔になった時は、さすがのオイラも少しビビったんダ!
「本当はサボリたいのに、こんなにすれ違いやがって。カスハンどもにはホトホト困るニャ」
「えっ!?」
「でも、まぁ、これだけ足を棒にして集めてきやがったんだから、こちらとしても配らざるを得ないっていうかニャ」
「えぇっ!?」
「ブニャニャニャッ、この俺様が配ってやるのニャ。愚民どもよ、地に
「…………」
「ニャ……ニャハっ、冗談ニャ。そんなことしたら……ギルドにクレーマーが電凸してくるから、我慢してるニャ」
「…………」
「……まぁ、アレニャ。君も大人になったらわかるのニャ。仕事とか、世間っていうものをニャ」
……オイラ、触れてはいけない何かに触れてしまったのかナ。
いくら純粋無垢なオイラでも、わ分かるんダ!
郵便アイルーは、心のどこかに……何かしらの深い闇を抱えているってサ。
今日の出来事は、オイラの胸にそっとしまっておくヨ!