本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン3G   作:JUBIA

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特製注意!? ~ 漢目立つ

【特製注意!?】

 

 俺は、ふらっとモンスター。

 ぶらり一匹旅が好きなルドロスだ。

 

 特に目的があるわけでもなく、その日、その日で気の向くまま、放浪の旅を続けている。

 一番の楽しみは、なんといってもご当地でしか食べられない料理だ。

 

 今日は、しばらく留守にしていた孤島に戻ってきた。

 しばらく見ないうちに、俺の知らない店があるな。

 

『お食事処 どすっと ~当店オリジナルのおすすめメニューあり!~』

 

 ほぉ、オリジナルメニュー、か。

 これは一応、おさえておく必要があるな。

 

 自分で言うのもなんだが、俺の舌はゴッドベロだと自負している。

 今まで、いろんなところで、いろんな料理を食べてきたせいか、味には結構うるさいほうだ。

 

 暖簾(のれん)をくぐり、店の中へ入ってみる。

 少し手狭な感じはするが、カウンターの中には捻じりハチマキをした、いかにも店主らしいドスジャギィがいた。

 

「お、いらっしゃい!」

 

 濃いゲジマユの店主は、一見すると怖そうなオヤジに見えた。

 だが、話をしてみると意外と気さくだった。

 客の相談や愚痴を聞いたり、職人を思わせる美味しい料理を提供したり、大衆から慕われている、おやっさん的な感じがした。

 

 俺が座ったのは、カウンター。

 こういう店では、カウンターに座るのが定石(じょうせき)だ。

 カウンター越しの調理場では、店主の料理さばきなどが見える以外に、店主の人柄が一番分かりやすい特等席となっているからだ。

 

「お客さん、初めてだね。何にする?」

「表の看板にあったオリジナルメニューって、何ですか?」

 

「あぁ、あれね。特製ココットライスだよ」

「へぇ、じゃ、その特製ココットライスと……キングターキーに、タンジアビールを頼むよ」

「あいよ」

 

 店主はまず先に、冷えたタンジアビールと、ツマミのキングターキーを提供すると、テキパキと調理に取り掛かった。

 

 特製ココットライス、か。

 ココットライス自体は、どこでも食べられる超一般的な料理だが、オリジナルという響きが俺の心をくすぐった。

 

 ターキーを食べ終えた頃、特製ココットライスが出てきた。

 見た目は、どこにでもあるココットライスだ。

 

 俺は、スプーンで一口目を頬張った。

 ……うっ、……こ、これは……!?

 

「どうだい? ウチのココットライス、美味いだろ?」

 

 店主は、自信に満ちあふれた顔で聞いてきた。

 

「……は、はい。……美味しいです」

 

 俺は、そう答えた。

 だが、俺の舌は、『ふ、普通のココットライスだ!』と、言っている。

 

 いや、まだ一口しか食べてないからかもしれない。

 もしかして、中のほうにオリジナルな秘密が隠されているのかもしれない。

 

 底のほうからスプーンですくい、口に運んでみる。

 

 器の端、真ん中、どこをどうすくって食べてみても……何の変哲もない、普通のココットライスだった。

 

 どこが特製なのか!?

 俺は、店主へ今一度、問うてみたかった。

 

 が、旅先ならいざ知れず、地元であるこの店で難癖を付けても仕方がない。

 

『当店オリジナルの特製ココットライス』

 

 オリジナル……特製……果たして、この単語に意味はあったのだろうか?

 ただ、料理名の前に付ければいいってものではないハズだ。

 

 俺は勇気を振り絞って、さりげなく店主に聞いてみることにした。

 

「このココットライス……すごく美味しいんですけど、何か特別なものでも入ってるんですか?」

「お? そこを聞いてくるとは、お客さん、通だね。でもこれは、企業秘密ってヤツで、そう簡単には教えられないのさ」

 

 まぁ、そう言うだろうよ。

 別に変わったものも何も入っていないんだろ?

 

 そういえば、昼時だというのに店内はガラガラだ。

 ……つまり、そういうことか。

 

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【漢目立つ】

 

 暑い太陽の日差しが降り注ぐ砂原に、一頭のドボルベルク亜種がいた。

 

 俺は、何ものにも動じない男。

 鉄の心臓(はあと)を持つ、砂原一の寡黙(かもく)な男だ。

 唯一、気に食わないのは、女々しい色合いの見た目だ。

 

 稀に大回転攻撃の時に、スタミナ切れで失敗する時もあるが、

 

「あっれ~、失敗しちゃった、テヘペロ♪」

 

 とでも言うと思ったか?

 たとえ失敗したとしても、何事もなかったかのように、無言でその場を立ち去ることができる……俺はそういう男だ。

 

 広大な砂漠をドボルベルク亜種が散歩をしていると、トコトコと一頭のディアブロスの子供が近寄って来た。

 

「…………(なんだ、コイツは? ママはどうした?)」

「ねぇねぇ、おっちゃん、私のママ知らない?」

 

「…………(し、知らんぞ! それに俺は、まだおっちゃんという歳ではない!)」

「うぇ~ん、迷子になっちったぁ~。うぇ~ん」

 

「…………(ま、まずいな、これではまるで俺が泣かしてるみたいじゃないか!)」

 

 ドボルベルク亜種はどうしたものかと、ディアブロスの子供をまじまじと見つめた。

 子供のせいか、まだ角も短く、体の色合いも……?

 

「…………(確か、黒いのって繁殖期の雌だったはず。こ、こいつ、子供のクセに黒い体してやがる! ったく、最近のガキは、みんなこうなのか?)」

「ねぇ、おっちゃん。なんかして遊ぼうよ♪」

 

「…………(この俺が子供と遊ぶ? 何の冗談だよ。俺はガキが苦手なんだよ)」

「ねぇねぇ、ママから聞いたけど、おっちゃん、グルグル回るんだってぇ? 見たい、ソレ見たーい♪」

 

「…………(なんでこの俺が、子供にグルグルして回らなきゃならないんだ?)」

「やってくれないの? ……ぐすっ」

 

「…………(お、おいっ! 泣くな、泣くな!)」

 

 俺は、さりげなく辺りを見回した。

 運よく、回りには誰もいない。

 

「……い、一回だけだぞ(くそっ)」

「わーい、わーい♪」

 

 ドボルベルク亜種は、子供に当たらないよう、その場でグルグルと大回転をして見せた。

 と、その時、ここへディアブロスの母親が、子供を探しにやってきた。

 

「ちょっ、何やってるんですか? ウチの娘の前でそんな……」

「…………(いや、これは……。くそっ、おい、ガキ! お前から説明しろ)」

「おっちゃんが、いきなりグルグルしたよー♪」

 

「…………(こ、こいつ!?)」

「ウチの娘に変なこと教えるの、やめてもらえません?」

 

 母親は、変な目でドボルベルク亜種を見ている。

 

「…………(いや、お前のガキが……。って、ガキのクセに繁殖期って、お前、どういう教育してんだよ?)」

「さ、行くわよ!」

「うん♪ おっちゃん、バイバーイ♪」

 

「もう、あのおじさんと口聞いたらダメよ!」

 

「…………(二度と来るな! ……ったく。これだからガキは好かん。って、だーかーらー、俺はまだおじさんという歳ではない!)」

 

 それ以来、ドボルベルク亜種は、見知らぬ子供と二度と口を聞かなかった。

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