本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン3G   作:JUBIA

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噂の前触れ ~ 今そこにある脅威 ~ 動くこと、蟻の如し

【噂の前触れ】

 

 熱砂の砂原から少し離れた、昼間でも涼しげな場所。

 そこには浅い泥沼があり、一頭のボルボロスが泥沼に沈んで、火照(ほて)った体を冷やしていた。

 

 と、そこへ、上空から一頭のリオレイアが舞い降りてきた。

 縄張りを荒らされると思ったボルボロスは、泥沼から飛び出し、リオレイアに向かって啖呵(たんか)を切った。

 

「おい! ここをどこだと思ってるんだ、この糞アマ!」

「それって……私のことかしら?」

 

 いきなり罵声を浴びせられたリオレイアは、いたって冷静に返した。

 

「お前だよ! ここは俺の縄張りだぞ!」

「ふ~ん」

 

 リオレイアは、ボルボロスの体をじろじろと眺めている。

 

「アナタ……獣竜種よね?」

「ああ、それがどうかしたか? この糞アマ!」

 

 リオレイアは、クスッと笑った。

 

「あら失礼。獣竜種のアナタと、飛竜種の私、どちらが格上かご存知?」

「な、なんだとおー!?」

 

 ボルボロスは頭から湯気を出しながら、リオレイアに向かって突進した。

 それをヒョイッと羽ばたいて回避したリオレイアは、低空飛行のまま空振りしたボルボロスに向かってサマーソルトを食らわした。

 

「なにっ!?」

 

 その衝撃でボルボロスの体から泥が落ち、あろうことか毒状態になっている。

 

「……くっそ!」

「ふふん♪ 泥を(まと)ってないアナタの弱点は……火、よね」

 

 リオレイアは静かに着地すると、ボルボロスに向けて火の球ブレスを吐いた。

 

「……あっち!」

 

 いくらボルボロスが反撃を仕掛けても、それをいとも簡単に回避するリオレイアに、まったく歯が立たないどころか、逆に攻撃を受け続けるありさまだ。

 火傷と毒のせいで、ボルボロスの全身はヒリヒリし、体力も奪われている。

 リオレイアに微塵も敵わず、いつしかボルボロスの戦意は消失していった。

 

「……あーあ、俺の負けだ、(ねえ)さん。煮るなり、焼くなり好きにしろ!」

 

 ボルボロスは居直(いなお)った。

 

「そうね。それじゃ……まず、お手をしてもらおうかしら?」

「は?」

 

「お手よ、お手。知らないの?」

「なんで俺が、犬っころのような真似をするんだよ」

 

 ボルボロスは、不服そうにしている。

 

「早くお手をしないと、本当に焼いて食べちゃうわよ♪(本当は、アナタみたいに硬くてマズイのは食べないけどね♪)」

「……くっ」

 

 ボルボロスは、仕方なくリオレイアの前に(ひざまず)き、お手をした。

 

「おりこうさんね、ポチ♪」

「……(くそっ)」

 

「それじゃ、次は伏せ♪」

「……(ぐぬぬっ)」

 

 ボルボロスは言われるがまま、その場で伏せをした。

 

(……くっそ、こんなところを誰かに見られでもしたら……)

 

 屈辱を噛みしめるボルボロスに、リオレイアは次々とリクエストしてくる。

 だが、従順過ぎるボルボロスに、リオレイアは次第に飽きてきた。

 

「今日のところは、この辺で許してあげるわ。じゃあね、ごきげんよう♪」

 

 リオレイアがどこかに飛んでいくと、ようやくボルボロスは解放された。

 

 が、何かの視線を感じたボルボロスは、エリアの入口へ目をやった。

 すると、そこに一匹のジャギィがいた。

 

「お、お前! いつからそこに!?」

 

 ボルボロスは慌てている。

 

「オイラ……何にも見てないっスよ、兄さん。あんな姿とか……こんな姿とか。何にも見なかったことにするっスよぉ(ニヤニヤ」

「ちょ、待て、お前! 誰にも言うなよ!!」

 

 ジャギィは小走りで去っていった。

 

 翌日の砂原で、ボルボロスのあらぬ噂が広まったのは言うまでもない。

 

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【今そこにある脅威】

 

 ここは夜の砂原。

 今日は、年に一度の砂原に生息するモンスター達の健康診断の日だ。

 

ハプルボッカ、ドスジャギィ、ボルボロスの3頭は、すでに健康診断を終えて雑談をしている。

 

ハ「はぁ~、また体重増えちゃった~」

ド「ドンマイ!」

 

ボ「私……二次検査が必要だって」

ド「ドンマイ!」

 

ハ「え? どこか悪いの?」

ボ「んー、なんか頭が硬くなりすぎてて、精密検査でハッキリしたら、削らないとダメかもしれないって……」

 

ハ「なにそれ、こわい!」

ド「こわっ!」

ボ「ちゃんと定期的に自分で削らないとダメですよ! ってドクターに怒られちゃった」

 

 と、そこへ、ドスドスとイビルジョーが慌ててやってきた。

 

イ「はぁはぁ、もしかして終わっちゃった?」

ハ「まだやってるわよ」

 

ボ「どうしたの? 目、真っ赤にして、ヨダレもダダもれじゃない」

イ「はぁはぁ、健康診断に合わせてダイエットしようと思ってたら、極度の飢餓状態になっちゃった」

ド「ドンマイ!」

 

イ「どーしよ、これ……絶対、検査に引っ掛かるわよね?」

ハ「検査前に何か食べたほうがよくない?」

ボ「うん、そーしなよ。蟻かなんか捕まえてこようか?」

 

イ「ううん、そんなんじゃ全然足りないわ。……やばっ……なんか……あなた達が美味しそうなお肉に見えてきた」

ハ「は、早く検診行ってきたほうがいいわよ!」

ボ「そ、そうよ! 早く行かないと終わっちゃうわよ!」

ド「そーそー!」

 

イ「どーしよー、検査の途中で先生にガブリ付いたら……怒られるわよね?」

ハ「そうなる前に、チャッチャと終わらせなさいよ!」

ド「そーそー!」

イ「うん、じゃ行ってくる! みんな待っててね!」

 

 イビルジョーは、急いで検診に向かった。

 

ハ「冗談じゃないわよ。あの子が戻ってくる前に帰るわよ!」

ボ「ほんと、マジで怖いから!」

ド「帰るー、俺帰るー!」

 

 3頭は、すぐに解散した。

 

 その後、イビルジョーが無事に検診を終えたかどうかは……誰も知らない。

 

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【動くこと、蟻の如し】

 

 オルタロス達の朝は早い。

 今日も日の出とともに、蟻塚からワラワラと餌を求めて、あちらこちらに出発していく。

 

「うっわー、やっべー、寝過ごしたーっ!」

 

 夕日が美しく輝きだした頃、一匹のオルタロスが慌てて蟻塚を出発しようとした。

 と、そこへ、第一陣のオルタロス達が腹を十分に膨らませて帰還してきた。

 

「お前、今からかよ?(笑」

「どうして起こしてくんなかったんだよ!」

 

「だってよ……ぐっすり熟睡してたから、悪いかな、てさ(薄笑」

「今度から、ちゃんと起こしてくれよ!」

 

 そう言い残し、オルタロスはプンスカと一匹で出発した。

 日が沈むまで、あまり時間はない。

 近場で餌を探していると、木のそばで一匹の蝶がヒラヒラと舞っているポイントを発見した。

 

 あそこなら、何かあるかもしれない。

 

 蝶の元へ急いだオルタロスは、餌になりそうなものを探した。

 

 ……っ!?

 

 気が付くと、エリアの向こうからボルボロスがやって来た。

 急いで木の陰に隠れたオルタロスは、ボルボロスの様子をうかがった。

 

 アイツ……まさか!?

 

 ボルボロスは、オルタロスがさっきまでいた蟻塚をいとも簡単に壊し始めた。

 

 ……っ!! みんな……。

 

 お、俺は……どうすれば?

 こんなちっぽけな虫けら同然のこの俺が……ボルボロスに立ち向かうなんて……無理だ。

 

 オルタロスは、手足がガクガクと震えるのを必死に堪えている。

 

 今は……この場を動いたらダメだ。

 アイツに気付かれてしまう。

 アイツがいなくなってから、みんなの安全を確認しに行こう。

 今の俺には、それしかできない。

 

 ボロボロに崩れていく蟻塚。

 逃げ惑うオルタロス達。

 そのオルタロスを一匹、一匹つまんでは、口の中に放り込んでいくボルボロス。

 まさに、地獄の光景だった。

 

 うぅぅ……みんな、許してくれ。

 何もできないこの弱虫な俺を。

 

 しかし、その地獄絵図を目の当たりにしているうちに、オルタロスはボルボロスに対する恐れより、激しい憎しみが増していた。

 

 いつか……いつか必ず、この砂原中のボルボロス達を駆逐してやる!

 

 と、そこへ、一匹のメラルーがやって来た。

 

「オルタロスさん、オルタロスさん。あのボルボロスをやっつけたい、と思っているのかニャ?」

「当たり前だ! いつかこの手で必ずやっつけてやる! ……でも今の俺は……無力だ」

 

「噂で聞いたんニャけど、なにやら異国では、自分の何十倍も大きな敵に、立体機動装置とやらを駆使して、戦いを挑んでいる人間がいるらしいニャ」

「それだ! ……それってどうやって戦うんだ?」

 

「なんか長い紐みたいなのを使って、ヒュンヒュンって敵の回りを飛んで、弱点を斬るらしいニャ」

「こんな俺でもそれ使えるのか?」

「う~ん、わかんニャいけど、人間にできるんなら君にもできるんじゃないかニャ」

 

 オルタロスは、頭の中でイメージをシミュレーションしてみた。

 

 ヒュンヒュンッ……スパッ!

 

 おうぅ!

 ……なんか、俺、カッコよくね?

 

 俺は決めた!

 その立体機動装置とやらを使いこなし、あの憎きボルボロス達を殲滅してやることを!!

 

「で、どこに行けばいいんだ? この異国とやらは」

「う~ん、たぶんあっちニャ」

 

 オルタロスは、メラルーが指した方角へ旅立った。

 

 俺が戻るまで、どうにか持ちこたえてくれ、みんな……。

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