本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン3G 作:JUBIA
【釣り名人の憂鬱】
水没林の穏やかに流れる川底では水草が生え、壁際のところどころに赤や青の鉱石が見える。
その一角に、水流でユラユラと揺れる赤い水草があった。
(ふふふっ。こうやって擬態していると、向こうからカモがやってくるのよね♪)
赤い水草の正体は、チャナガブルだった。
チャナガブルは、獲物を狩猟する時、地中に潜ってヒゲを水草のように見せ掛け、それに寄ってくる獲物に食らい付く。
(ふふふっ。この狩猟法の成功率は、ほぼ100%♪)
(あと1回で100%確定だわ♪)
(早く美味しい獲物がやってこないかしら♪)
チャナガブルは、
すると、突然、ザバーンと大きな音がした。
何かが、陸地からここへ勢いよく飛び込んできたようだ。
(え? 何? 何なの?)
地中から上を見上げると、数人のハンターが泳いでいるのが見えた。
(……このままジッとしてたら、私に気付きもしないで、通り過ぎていくに決まってるわ♪ ふふふっ)
チャナガブルは、ハンター達が通り過ぎるのを待った。
しかし、ハンターの1人がおもむろに、チャナガブルが擬態している水草に近付いてきた。
次の瞬間、なんと、擬態した水草から何かを採取しようとした。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ!
(ちょっ……痛っ……何やってんのコイツ?)
水草から採取したハンターが、手にした灯魚竜のヒゲを見て大はしゃぎをすると、ほかのハンター達を手招いている。
(えっ……ちょっ……困るわ)
寄って来たハンター達も我先にと、こぞってその水草から採取をし始めた。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ。
(痛っ……痛たたたた……もう怒った!)
ザバーッ!
チャナガブルは、我慢しきれずに地中から飛び出した。
「ちょっと、アンタ達ぃーー!」
地中からの急襲で驚いたハンター達は、採取目的だったのか軽装のようだ。
戦闘の意欲も見られないまま、ハンター達は急いで離れていく。
「ふん! ヘタレハンターめ!」
チャナガブルは痛めたヒゲの辺りを見ると、6本あったヒゲがなんと、わずか2本しか残っていなかった。
「やだ、何コレ? 超カッコ悪ぅ~! しかも、これで連勝ストップしたじゃない!」
チャナガブルは、ため息をついている。
「……また1から数え直しだわ」
チャナガブルは、ブクブクと気泡を立てながら、また地中へ潜っていった。
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【災いの兆し】
異常気象のせいで、生態系が崩れかけているモガの森。
草食種の繁殖時には、巨大なアプトノスや巨大なケルビが出現し、飛甲虫の繁殖時にも巨大なブナハブラが空中を舞うという。
そんな暗い噂を吹き飛ばそうと、モンスター達による大規模なバザーが開催された。
中央に浅い川のある、一番広いエリアが会場だ。
そこに、お宝を持ったモンスターが、続々と集まってきた。
「あ、ロアルドロス君、もー来てたんだー♪」
「やぁ、クルペッコじゃないか。今日は何を出品するんだい?」
「んふっ、【ペコペコラッパ】♪ ロアルドロス君はー?」
「僕は、【太古のオイル】さ」
と、そこへ、リオレイアとラギアクルスがやってきた。
「リオレイアさん、こんにちわー♪ リオレイアさん、今日は何出すのー?」
「あら、こんにちわ。私はね……【女王の霊薬】。これ、レアものよ」
「ラギアクルス君は何出すのー?」
「俺は【太古のオイル】を出そうと……」
「僕とかぶってるじゃないか!?」
「そ、そうなのか? それじゃ……仕方ないな。【海王の大竜鱗】にするよ」
ほとんどのモンスター達が揃ってくる中、みんなは出店の準備を始めている。
「ねぇねぇ、ロアルドロス君。まだ時間あるから少し見て回らない?」
「うん、いいね」
クルペッコとロアルドロスは、会場の端から順番にまわり始めた。
「あー、アオアシラ君のお店。……【珍味・熊の手】、って……まさか、アオアシラ君の手じゃないよねー?」
「だ、誰の手だろうね(汗」
「あー、ボルボロスさんのお店。【高級泥パック】欲しー!」
「あ、ロアルドロス亜種の店。……【もこもこタテガミ】? くそっ、そうきたか!(僕よりレアなものを……)」
「あー、ディアブロス君のお店。【ディアブロハート】って……あれ買ったら、ディアブロス君とお付き合いしないとダメなのかなー?」
「あ、ウラガンキンの店だ。【安眠ガス袋】……なんか危険な香りがするな。って、隣のウラガンキン亜種の店でも【安眠ガス袋】? こっちもダダかぶりじゃないか」
「あー!」
「あっ!」
2頭は、イビルジョーの店の前で立ち止まった。
【世界を喰らう胃袋 (プライスレス)】
「な、なんかー、怖くなーい?」
「ぷ、プライスレスって……そもそも売る気あるのかよ?」
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【降り注ぐ愛雷】
水没林のポカポカと陽気な日差しが当たる場所で、うたた寝をしていたラギアクルス亜種。
と、そこへ、ヒラヒラと一枚の大きな葉っぱがそよ風に乗って、ラギアクルス亜種の顔にピタリと張り付いた。
「……っぷ。な、何よコレ?」
眠りを邪魔されたラギアクルス亜種は、顔に張り付いた葉っぱを手にした。
すると、そこには、なにやら鋭い爪で引っ掻いたような文字があった。
「え~と、なになに? 親愛なる君へ……?」
ラギアクルス亜種は、葉っぱに書かれている文章を読み始めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
親愛なる君へ
気付くと僕は、毎日、知らず知らずのうちに、君の姿を目で追っていた。
幼い頃から一緒に過ごした毎日。
運動神経のいい君の後を、いつも追い掛けるのに僕は必死だった。
そして、立派な雌に成長を遂げた君に、いつか、この気持ちを告げようと決心したんだ。
でも、君に断られるのが不安で、なかなか言いだせないまま、この日を迎えてしまった。
このままでは、いつか君はほかの雄に取られてしまう。
そう思うと、夜も眠れずにいたんだ。
今、ここで君に伝えたい言葉を言うよ。
好きだ。
これからもずっと、僕のそばにいてくれるかい?
返事は、いつまでも待ってるよ。
断られるのも覚悟で、この手紙を君に贈る。
長年の友である僕より
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「やだ、なにこれ!? もしかして……」
ラギアクルス亜種は、ポッと頬を赤らめている。
ラギアクルス亜種には、幼少から仲のよかった幼なじみ、ラギアクルスがいた。
自分よりも泳ぎが遅く、いつも自分の後ろを付いて回っていたあのラギアクルス。
今でも続く友情で、時々、一緒に遊びに出掛けることもあった。
そのラギアクルスに、まさか思いを寄せられていたとは、目から厚鱗だった。
「こんな手紙じゃなくて、直接言えばいいのに。どこまでモジモジモンスなのよ!」
ラギアクルス亜種は、葉っぱの手紙を大事そうに抱えた。
「……それじゃ、返事をしに行かなくちゃ、ね」
ラギアクルス亜種は、水辺に立ち寄った。
水面に映る自身の姿で身だしなみを整え、鼻歌混じりに去っていく。
それを木の影から見ていたフロギィ。
「……言えねぇ。あれは、俺がフロギィのあの子に書いた手紙だなんて、今さら言えねぇ」
あの手紙は、フロギィが書いたものだった。
しかし、書き終わると同時に、手紙は突風で風に飛ばされ、ここまで追い掛けてきたものの、まさかの事態が起きてしまった。
もしも、ここでラギアクルス亜種に本当のことを言いに行ったら……。
サイドアタックと、雷玉ブレスは免れない。
そう確信したフロギィは、そしらぬフリをしようとした。
「まぁ、これでうまくいけばOK。フラれたら南無三ってことで。……って、また、あれを書かなくちゃいけないのか」
フロギィは肩を落としながら、トボトボと歩いていった。
一方、ラギアクルス亜種は長年の友、ラギアクルスのところへやってきた。
「ちょっとぉー、あなたねー、わざわざこんな手紙を書かなくても……」
と、そこへ、一匹の見知らぬ雌のラギアクルスがやってきた。
「ごめんなさい、遅れちゃった。待った? ……って、この方、どなた?」
雄のラギアクルスは、手紙を手にしたラギアクルス亜種に気付いた。
「あ、コイツは幼なじみのラギアクルス亜種」
雄のラギアクルスは、そう説明すると続けて言った。
「ラギアクルス亜種、紹介しとくよ。こちらは僕の大事なモンスター、ラギアクルスだ。僕達、結婚するんだ」
そう言って、仲睦まじく並ぶ二頭。
それを聞いたラギアクルス亜種は、手にした手紙へ目を落とした。
(それじゃ……この手紙は……!?)
ラギアクルス亜種は、目の前でイチャイチャし始めたラギアクルス達に向かって言い放った。
「……おめでとう。これ、私からのプレゼント。お幸せに!」
ラギアクルス亜種は、二頭へ雷撃シャワーを浴びせると、プリプリと怒りながら、どこかへ去って行った。