本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズン3G   作:JUBIA

5 / 19
私がヒロインよ! ~ 少年日記(アプトノス編)

【私がヒロインよ!】

 

「これより、オーディションを開始します」

 

 マイクで司会者の声が響く。

 来年公開予定の映画『俺が主人公だ!』。

 そのヒロイン役を決める公開オーディションが、この陸の闘技場で開催された。

 

 最終選考まで残ったのは、5頭のヒロイン候補達。

 審査員は、トリプル主人公のナルガクルガ、リオレウス、ジンオウガに加え、友情出演のブラキディオスの計4頭。

 

 会場からは、ヒロイン候補ではなく、審査員に対しての黄色い声援が飛び交っている。

 

「キャーッ! ジンオウガ様ステキーッ!」

「毛で見えないけど、きっとお腹は8つに割れてるわよ!」

 

「キャーッ! ナルガクルガ様ステキーッ!」

「シュッとした、あの細身のラインがタマラナイわ!」

 

「キャーッ! リオレウス様ステキーッ!」

「王の風格がシビレルわ!」

 

 湧き上がる声援に、審査員達は会場に向けてにこやかに手を振っている。

 

(あれ? 俺だけ声援ナッシング?)

 

 ブラキディオスも、とりあえず手を振った。

 

「最終選考では、各自それぞれ特技を披露して頂きます。ではまず、最初の候補者、リオレイアさんです」

 

 司会者の合図で、リオレイアが空から会場の真ん中へ優雅に舞い降りた。

 

「えー、コホン。私、孤島で女王をしているリオレイアと申します。特技は、3つの的に連続でファイアーボールを当てることです」

 

 会場に用意されたのは、3つの的。

 そこへ火の玉を見事命中させたリオレイアは、礼儀正しく一礼をすると、審査員のリオレウスへウインクをした。

 

 すると、会場はブーイングの嵐に見舞われた。

 審査員席では、ジンオウガがリオレウスへそっと耳打ちをしている。

 

「おいおい、アレ、お前の彼女かよ?」

「ち、ちげーよ!た、ただの……友達だよ」

「ふーん(ニヤニヤ」

 

「えーでは、次の候補者、ディアブロス亜種さんです」

 

 ドドドッという地響きとともに、地中からディアブロス亜種が派手に登場した。

 

「砂原から来ました。まだまだ若い子には負けられません! 繁殖期真っ盛りのディアブロス亜種です。特技は、地中からの一点集中スクリュージャンプです」

 

 空中に用意されたのは、1つの的。

 そこに、地中から見事なスクリュージャンプで命中したディアブロス亜種は、礼儀正しく一礼をした。

 

 審査員席では、ジンオウガがナルガクルガへそっと耳打ちをしている。

 

「繁殖期だけあって、妖艶な感じだな。特にあの内腿(うちもも)の肉付き、ゾクゾクするな」

「君ってやつは……(ため息」

 

「えーでは、次の候補者、ギギネブラさんです」

 

 地べたを這いずりながら、ギギネブラが登場した。

 

「はるばる凍土からやって来ました、ギギネブラです。えーと、背中の卵は気にしないでくださいね。保育園の空きがなかったもので……。特技は、天井を歩けるこ……!? ここ、天井がありませんね。……では、毒爆弾精製をします!」

 

 背中に卵を乗せたままギギネブラは、その場で紫色の毒爆弾を産み落とした。

 毒爆弾の爆発と同時に、爆風と毒の霧の中でギギネブラは一礼をし、その場はちょっとしたイリュージョンと化した。

 

 審査員席では、ジンオウガがボソリと一言呟いた。

 

「ちっ、子持ちかよ」

 

「えーでは、次の候補者は、クルペッコさんです」

 

 翼を大きく広げ、滑稽(こっけい)なスキップとともに、クルペッコが登場した。

 

「孤島から来ました、クルペッコです。特技は、ソロ合唱です!」

 

 観客席から、一際大きな声の声援が聞こえる。

 

「あなたならやれるハズよ! 特訓の成果を見せてやりなさい!」

 

 声援を受けたクルペッコは軽く頷くと、ゆっくりと大きく息を吸い込んだ。

 

 ブピッ♪

 

 すみません、すみません、と何度も頭を下げ、クルペッコは再び、大きく息を吸い込んだ。

 

 ブプッ♪

 

 またもや失敗に終わったクルペッコは、司会者から「もういいから下がってください」と言われ、シュンとうな垂れながら一礼をした。

 

 会場も、審査員席も静かな中、ブラキディオスは『嫌いじゃないな♪』と、密かに思っていた。

 

「えーでは、最後の候補者、ガーグァさんです」

 

 トテトテと小走りで登場したガーグァ。

 中央付近でドテッと転んでしまい、会場を失笑の渦にした。

 

「あ、えっと、私は渓流出身のガーグァです。えっと、えっと、特技は、タマゴ占いです。金の卵が出たら、大当たりです♪」

 

 ガーグァは、司会者に自分を驚かして欲しいと頼んだ。

 司会者はガーグァの背後に回り、後ろから「ワッ!」と脅かすと、ガーグァはビックリして卵を1つ産み落とした。

 

 産み落とされたのは、真っ白な卵。

 

「司会者さん、ハッズレ~♪」

 

 司会者は、困ったように頭を掻いている。

 

「ゴホンっ。候補者すべてが揃いましたので、これから審査に入りたいと思います。審査員の方達は協議をお願いいたします」

 

 しばらくして協議が終了し、いよいよヒロインの結果発表の時がきた。

 

 ドゥードルドルドルッ♪

 

「では『俺が主人公だ!』のヒロインは……ガーグァさんです!」

 

 会場からは、パチパチとまばらな拍手が送られた。

 

「えー、では、審査員長のブラキディオスさんに、総評を聞いてみたいと思います」

 

 司会者は、ブラキディオスへマイクを渡した。

 

「えー、まー、途中、協議が難航しましたが最終的には、あの天真爛漫さが今回の役どころにピッタリじゃないか、というところで全員一致になりました」

 

 ブラキディオスは、司会者へマイクを返した。

 

「えーでは、審査員長のブラキディオスさんから、見事、ヒロインの座をゲットしたガーグァさんへ、粗品が手渡されます」

 

 ガーグァへ粗品を手渡すところで、パシャッパシャッと記者達のフラッシュを浴びながら、ブラキディオスはにこやかな表情を変えずに、ガーグァへそっと耳打ちした。

 

「あいつら、肉食系だから気を付けろよ」

 

 え?

 ええっ!

 えっと、えっと、それってどっちの意味だろ???

 

 ガーグァの妄想が膨らむと、混乱した頭でポトリと、その場に卵を産み落としてしまった。

 

 後日、誌面を飾ったのは、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔のガーグァと、金の卵だった。

 

------------------------------

 

【少年日記(アプトノス編)】

 

 やぁ!

 オイラ、モガの村から、トーちゃんと魚を売りに船でやってきたんダ!

 トーちゃんが仕事してる間は、港で遊んだり、釣りして待ってんのサ!

 待っている間、暇だから港をブラブラしてみたんダ!

 

 今日は、少し奥にいるアプトノスに話掛けてみたんダ!

 

「やぁ! 今日も元気モリモリだね」

 

「モ? ブモーーっ! ブモモモモっ、ブモモーーーーっ!」

「えっ!?」

 

「ブモっ、ブモモーーっ、ブブモモモーーっ!!」

「…………」

 

「……ブモっ」

「…………」

 

「……、ブモっ、ブモモモっ、ブモーー」

「…………」

 

 なんだかよく分からないけど……オイラ、触れてはいけない何かに触れてしまったのかナ。

 いくら純粋無垢なオイラでも分かるんダ!

 アプトノスは、心のどこかに何かしらの深い闇を抱えているってサ。

 

 今日の出来事は、オイラの胸にそっとしまっておくヨ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。