はぐれオークに捕まってしまった姫騎士アンジェリカ。
牢に入れられ絶体絶命。だがその対面の牢にも囚われの男がいた。
救いのヒーローぶりぶりざえもん……今ここに姫騎士と邂逅!?

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ぶりぶりざえもんって、本当に最低の屑だわっ!

 ロートシルト王国の王女アンジェリカは、輝く金糸の髪と翡翠の瞳を持つ典型的エルフの容姿を限りなく磨き上げた美貌を持ち、優れた剣の腕と高貴なる精神を持ち、民からの信奉に厚く、金色の姫騎士と呼ばれていた。

 そんな姫騎士が今、窮地に立たされている。

 薄暗い洞窟の奥底、はぐれオークの使う薄汚い牢獄に囚われてしまったのだ。

 

「出せぇー! ここから出せ畜生ども!」

 

 オーク討伐の際、卑劣な罠にかかり部下とはぐれてしまった結果である。

 胸と手足を守る軽量な青い鎧は着せられたままになっていたが、剣を奪われてしまった以上、巨体と怪力を誇るオークにかなう道理は無い。

 もはやこれまで……アンジェリカは覚悟を決めていた。

 

「この豚野郎! 高貴な私をこんな汚いところに閉じ込めおって……くっ、イヤだ、こんなところで死にたくない!」

 

 なればせめて、ロートシルト王国の姫騎士としての矜持は見せておかねばならぬ。

 最後まで誇りを捨てず、華々しく命を散らしてみせようではないか!

 

「私は泥をすすってでも生きてみせるぞ! 靴でもなんでも舐めてやる、だから助けてくれ! 頼むここから出してくれー!」

 

 

 

 

 …………ブチッ。

 

 

 

 

「うるさぁぁぁい! 隣の豚、静かにしなさい!」

「なんだと!? オークなんぞに捕まった無様な囚人の分際で、私がどうなってもいいというのか!」

「そういうあなたも同じ立場でしょう!? しかも薄汚いオーク!」

 

 対面の牢で騒いでいたのは、アンジェリカの股にも届かないような小さいオークであった。

 しかも妙に丸みがあり、オークらしい凶悪さや力強さをまったく感じない。

 上半身は裸で、下半身は青いズボンだかタイツだかを履いており、申し訳程度に剣なんかを腰に提げている。

 まるで子供の落書きのような豚だった。

 

「誰がオークだ。あんな醜い化物と一緒にするな、この雌豚が」

「だっ、誰が雌豚ですって!?」

「フンッ……オークに捕まるマヌケなんぞ雌豚で十分だ」

「だから、あなたも同じ立場でしょう!」

 

 鉄格子を握りしめてアンジェリカは怒鳴るが、牢屋越しであるため身の安全を確約されたその豚は上から目線を崩さない。

 

「お前と一緒にするな! 私はやむにやまれぬ事情があって身をやつしているのだ」

「ほう、どんな事情なのかしら」

「腹が減ったのでオークの食料庫に忍び込み、食っちゃ寝をマンキツしていたら牢屋に入れられてしまったのだ」

「なんなの、この屑……」

「誰が屑だ! 貴様のよーな奴は、もう頼まれたって助けてやらん!」

 

 ピクッ。エルフ特有の長い耳が動く。

 

「助け……? あなた、ここから脱出する手立てがあるの?」

「救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんに不可能は無い……」

 

 非常に色気のあるクールな声で言ってのける豚、ぶりぶりざえもん。

 あまりの格好よさに、耳から入り込んだ美声がキュンと心臓をときめかせる。

 が、その不恰好なルックスによってすぐかき消された。

 

「……はぁ、私としたことが……こんな出来損ないオークの言葉を真に受けるだなんて、どうかしているわ」

「誰が出来損ないオークだ! 私はあんな醜い連中とは違う!」

「ええそうね。オークと言うより子豚だわ」

「宇宙一の美男子に向かって子豚とはなんだ! 慰謝料ひゃくおくまんえんを要求する!」

 

 短い手足をジタバタさせて騒ぐぶりぶりざえもん。

 妙に可愛い仕草でもある、しかし。

 可愛さ余って憎たらしさひゃくおくまんばいであった。

 

 と、そこに。

 

「うるせぇぞ雌エルフっ!」

 

 鉄の扉を乱暴に開いて、獣臭を撒き散らす雄オークがのっしのっしとやってきた。

 瞬間、ぶりぶりざえもんの視線が鋭さを増す。

 ハッタリではない? 脱出する手立てがあるというのか。

 緊張感からアンジェリカもまた表情を硬くし、じっと成り行きを見守ろうとする。

 オークは鉄格子の前で立ち止まり下卑た笑いを浮かべた。

 

「グヘヘ……天下の姫騎士様も、こうなっちまえばただの雌だな」

「おのれ……」

「オメェは俺様のメインディッシュよ! そのいやらしい肢体をたっぷり可愛がってやるぜぇ!」

 

 ぞっと背筋が冷たくなる。このオークの狙いはアンジェリカの命ではなく、性欲を満たすための玩具なのだ。

 なんと破廉恥な。

 低俗な劣等種であるオークの蛮行に怒りを覚えると同時に、このままでは成すすべもなくその通りになってしまうだろうと理解し、頭の冷静な部分がぶりぶりざえもんの動向を見守る。

 

「やーい、バーカバーカ、ざまぁみろ!」

 

 ケツをこっちに向けてブリブリと動かしながら、尻を叩いて笑っていた。

 ガキか。今すぐ死んでしまえと思わずにはいられない光景だった。

 

「ああ? うるせぇぞ子豚野郎! テメェも俺様のメインディッシュだ、覚悟しとけ!」

「なんだと!? い、いくらこの私が宇宙一美しいからといって、男同士でなど……あぁん、ダメェ……初めてな・の・にぃ」

 

 艶っぽさならアンジェリカすらはるかに上回る美声で悶える、その気色悪さ!

 アンジェリカはげんなりとうつむかずにはいられなかった。

 一方オークはぶりぶりざえもんの牢を蹴りつけ、鉄格子が重たく響く。

 

「妙な勘違いしてんじゃねえ! 女は処女をいただくが、テメェは豚の丸焼きだ!」

「豚の丸焼きなら、私よりもっと大きな豚が目の前にいるではないか。そっちを焼け」

「ふざけんじゃねえぶっ殺すぞ!」

 

 ガンガンと牢を蹴りつけるオーク。

 あまりの迫力にぶりぶりざえもんは悲鳴を上げて牢の隅にうずくまってしまった。

 なんであんなに強気だったのか。脱出の手立てはあるんじゃなかったのか。

 様々な期待がただの幻だったと理解してアンジェリカは悔しげに子豚を睨んだ。

 

「ケッ。この苛立ちをおさめるため、今すぐ俺様の相手をしてもらおうか、姫騎士さんよ!」

 

 クルリと向き直ったオークは舌なめずりをし、腰布を大きく盛り上がらせながら牢の扉を開いた。

 反射的にアンジェリカはオークに飛びかかるも、その剛腕に手首を掴まれ、宙吊りに持ち上げられてしまう。

 このままオークの辱めを受けるくらいなら、死んだ方がマシだった。

 

「くっ……殺せ!」

「グヘヘ、そうはいくかよ。まずその胸当てを脱がしてやるぜ。エルフのおっぱいは綺麗だからなぁ~」

「くっくっくっ、その次は尻だ……おお! この角度だと純白のパンツが見える!」

 

 オークの足元からもうひとつ、下卑た言葉が聞こえてきた。

 オークともども見下ろせば、蹴りのせいで歪んだ鉄格子の隙間から抜け出したらしいぶりぶりざえもんが、アンジェリカのミニスカートを覗き込んでいる。

 

「この豚野郎! 勝手に牢から出るんじゃねえ!」

 

 げしげしと踏みつけられるスケベ子豚。あっという間にズタボロに成り果てる。

 だがオークの体重で踏みつけられては人間でも命が危ういというのに、ぶりぶりざえもんの生命力はまるで衰えを見せなかった。

 

「ぼーりょく反対……」

「クソッ、なんだこいつは!? 死ぬ前に痛めつけられたくなかったら大人しくし――ッ!?」

 

 踏みつける。その行為がアンジェリカにヒントを与えた。

 オークの巨体に手首を持ち上げられたアンジェリカがぶりぶりざえもんを見下ろした時、ふたつのものが眼に入った!

 ひとつ、自分の足。ふたつ、下賎にふくらんだオークの股間。

 その高さのなんと近しいことか!

 

 蹴りつけたのだ、オークのイチモツを。

 

 結果、剛腕の拘束が解け、着地したアンジェリカはすばやく駆け出した。

 不意を突いたとはいえ相手はオーク。素手のまま戦えば返り討ちは必定。

 牢屋から抜け出し、開けっ放しの鉄の扉をくぐる。

 幸いにもこのオークははぐれオーク。腕っ節が強く、ずる賢いため、エルフの騎士団ですら翻弄されてしまったが、相手は一匹なのだ。オークの群れに囲まれる心配は無いし、いかに強敵とはいえ剣さえ取り戻せば金色の姫騎士に倒せぬ相手ではない。

 だから、逃げるよりも剣を取り返すべきだ。

 

「でかしたぞ女! 褒美にあとで私の尻にキスをさせてやる」

 

 と、シリアスやってるアンジェリカの足元をぶりぶりざえもんが併走していた。

 しこたま踏みつけられたというのになんと元気な姿が。

 

「はぁっ!? ふざけてるのこの屑! 私は忙しいの、オークの倉庫に行かなくちゃいけないんだから」

「倉庫? ああ、食料庫の隣にあったあの部屋か」

「知ってるの!? 案内なさい! 剣があればあんなオーク返り討ちにできるわ」

「ほう……仕方ない教えてやるか。そこの曲がり道に入って左の扉だ」

 

 胡散臭いとはいえ他に手がかりはなく、ダメモトでその通りに進んでみれば、あった、扉の向こうにはオークの略奪品が乱雑に積まれている。

 大急ぎで自分の剣を探す。金貨袋をどかし、鋼の容器を放り捨て、金の腕輪とネックレスの合間に剣の握り手のようなものが見えて掘り出すも、単なる銀製の燭台だった。

 自分の剣でなくともせめて剣があれば。

 

「ない、ないぞ。どこだ」

 

 略奪品を引っくり返す音が隣からも聞こえてくる。

 ぶりぶりざえもんも剣を探すのを手伝ってくれているようだ。

 相当の屑だが、まあ、オークが追ってきたら命が危うい状況だ。手伝いもするだろう。

 ホラ、今まさにアンジェリカの愛用する剣を掴んで……。

 

「ああ、あった! その剣を渡しなさ――」

「ええい、金目のものはどこだ!」

 

 ポイ。

 邪魔だと言わんばかりに後ろへ放り捨てられる、愛用の剣。

 

「あ、ああ!? なんてことを……」

「ん? これは真珠か? おい女、これはいくらくらいで売れると思う?」

 

 真珠の入った宝石箱を持って振り向くアホ豚。

 剣を一刻も早く回収せねばならない状況ではあるが、アンジェリカはどうしても我慢できず、ぶりぶりざえもんの顔面にかかとをめり込ませた。

 

「豚に真珠ぅぅぅうう!!」

「ブヒィィイィ!?」

 

 ぶりぶりざえもんは真珠を落として痛烈に転げ回った。

 よし、お仕置き達成! 急いで剣を拾い――。

 

「よくもやってくれやがったな、雌エルフ様よぉ」

 

 剣を拾われた、倉庫に入ってきたオークに。

 しまった。手近に剣の代わりになるようなものはなく、唯一の出入り口をふさがれて逃げ場も無い。

 さらに臨戦態勢を取られており、さっきのように不意すら突けない。

 オークはゲタゲタと笑い、勝ち誇った。

 

 もはやこれまで……アンジェリカがそう思った時、彼女の前に一匹の豚が立つ!

 

「やれやれ……仕方ないな」

「ぶ、ぶりぶりざえもん?」

「ここは私に任せてもらおうか」

 

 さっき蹴られたばかりだというのにもう復活した豚は、奇妙な頼もしさを背負っていた。

 よく見ればこいつ、腰に剣なんかぶら下げているし、もしかしたら腕に覚えがあるのか?

 小さな身体に大きな態度。

 そのギャップは百戦錬磨のオークすら警戒させ、張り詰めた空気の中を悠々と歩くぶりぶりざえもん。

 威風堂々とした立ち振る舞いでオークの手前までやってきたぶりぶりざえもんは、すばやい動作で剣を引き抜き、振り向いた!

 白い切っ先をアンジェリカに向けて。

 

「さあかかってこい女エルフ! オーク様がやっつけてやる!」

 

 ガシャーン。そこいらの略奪品を引っくり返してずっこけるアンジェリカ。

 この土壇場で、まさかこの豚……。

 

「う、裏切るつもり!?」

「なんとでも言え、私は常に強い者の味方だ。さあオークの旦那、あの生意気な女エルフをやっちまってください!」

「あ、あんた……最低の屑よ! 恥を知りなさい!」

「うるさーい! 私は自分が一番大事なのだ。これ以上悪口を言うならオーク様が許しておかんぞ! ねえ、オーク様」

 

 蹴り! 返事は全力の蹴り一発!

 後頭部を蹴られたぶりぶりざえもんは岩肌の地面に強烈なキスをしてアンジェリカの下へ転がってくる。

 真っ赤になった顔を上げてアンジェリカの姿を認めるも、屹然とした態度を崩さず言う。

 

「ただいま」

 

 踏みつけ! アンジェリカ無言の踏みつけ。頭を踏みつけ、何度も踏みつけ、げしげしと踏みつけ、とにかく踏みつける。

 裏切り者に容赦は無い。しかも最低の屑が相手だ、容赦してはいけない。

 ついでにぶりぶりざえもんが持っていた小さな剣を取り上げる。

 こんな奴の剣で自決などしたくないし、せめてもの抵抗で王族の誇りを見せねばならぬ。

 

「邪悪なオークよ! ロートシルト王国の名に於いて、貴様を討つ!」

「グヘヘ。そんなオモチャで何ができるってんだ、可愛がってやるぜ!」

 

 言って、オークは剣を引き抜いた。アンジェリカの愛刀を。

 オークの身体すらやすやすと切り裂くあの刃、まともに受ける訳にはいかない。

 アンジェリカは歯を食いしばって、敗色濃厚な戦いに身を投じた。

 

 剣を振るい、避け、足元に転がっていた金の腕輪を蹴り飛ばしてけん制し、オークの分厚い肉の壁に弾かれ、それをぶりぶりざえもんが拾って風呂敷にしまう。

 アンジェリカが跳躍し、オークの拳に叩き落されて地面を転がり、追い詰められ、手近にあった何枚もの金貨が転がっていたので、石つぶてのように投げつけ、やはり通用せず地面に転がり、せっせとその金貨を拾ってポケットにしまうぶりぶりざえもん。

 

「って、なにをしてるのよあなたは!」

「俺様の宝をくすねてんじゃねえ!」

 

 アンジェリカとオーク、双方から怒鳴られたぶりぶりざえもんは一度は身をすくめるも、両者が隙をうかがい合ってると悟るや馬鹿にした態度で息を吐いた。

 

「フッ……愚か者同士、好きなだけ争っていてくれ。このお宝は私が有効活用してやる。ではさらばだ!」

 

 と、倉庫の扉に向かって小さな足を動かしていく。

 もはや怒りすら湧いてこない。ただただ失望するアンジェリカ。

 一方オークは、意地汚い子豚にくすねられたお宝の価値に怒りを燃やしながらも、隙を見せてまで追おうとはせずアンジェリカに向き直る。

 

「まあ、いい。ロートシルト王国のお姫様を人質にしてんだ。身代金をいただけば、ここのお宝全部より価値はあるだろうぜ」

「くっ……屑が!」

「安心しろ、身代金をもらって国に帰してやる前に、たっぷりと可愛がってやるからよぉ! ゲッヘッヘ。さあ、おねんねしなお姫さんよぉー!」

 

 オークが剣を振り上げて迫る。

 逃げ場が無い――壁や略奪品が邪魔でもはやろくな身動きが取れず、アンジェリカは自害するため喉元に剣を突きつけようとした。

 でも、きっと間に合わない……。

 それでも一縷の望みをかけて、刃を――。

 

 

 

 ズ ブ リ 。

 

 

 

 深々と突き刺さり、オークは全身を硬直させた。

 その背後、ぶりぶりざえもんが剣の鞘を、オークの尻に深々と突き刺している。

 鞘なんかがオークの肉に刺さる訳がない。

 じゃあどこに刺さってるんだと言えば、そこしかないだろう。

 

「あ、お、が、お……」

「フッ……またつまらぬものを斬ってしまった」

 

 格好いいセリフを吐きながら、ぐりりと鞘を捻るぶりぶりざえもん。

 異物に内臓をかき回される不快感にオークが喘ぎ、膝を折ってうずくまる。

 オークの手から、剣が落ち――。

 

「今!」

 

 絶好の好機を得たアンジェリカは剣をキャッチして一閃。

 銀の光がオークの胸を刺し貫き、赤い飛沫を散らす。

 いかに頑強なオークといえど心臓をやられてはひとたまりもない。

 

 見事なまでの逆転勝利であり、その立役者はまさしく小さくて卑怯で意地汚い……救いのヒーローだった。

 

 

 

 

 

 

 アンジェリカとぶりぶりざえもんは、はぐれオークの洞窟から出ると、森の木々から射し込む陽光を浴びて一息つく。

 意外にもぶりぶりざえもんは自分の剣を返してもらうと、オークの略奪品を置いて身軽な姿になるのを選んだ。

 金に汚い屑と思っていたが、本当は、そんなことないのかもしれない。

 

「なんだかんだで、あなたにはお世話になったわね」

「私は救いのヒーローだからな、当然のことをしたまでだ」

 

 クスッ。思わず笑ってしまうエルフの姫騎士。

 格好いいんだか悪いんだか。生意気な態度も今となっては愛嬌さえ感じてしまう。

 だからこちらも愛嬌を見せて、お日様のような笑顔をぶりぶりざえもんに向けた。

 

「最低の屑って言ったの、撤回するわ。あなたは私の……救いのヒーローよ、ぶりぶりざえもん」

 

 素直に褒められるのが意外だったのか、ぶりぶりざえもんは赤面してそっぽを向いてしまう。

 そしてもじもじと身をよじらせていたかと思うと、麗しい声色で訊ねてきた。

 

「そういえばお姫様、まだ名前を聞いていなかったな……教えてもらえるか?」

 

 そういえば、まだ名乗っていなかったか。

 名乗るような相手と思っていなかったが、今は、そんな心証も塗り替えられてしまっている。

 

「ロートシルト王国、第一王女。アンジェリカ・ロートシルト。此度は助けていたき、お礼申し上げる。ありがとう」

「礼の言葉などいいさ……」

 

 鼓膜が恋をしそうな美声とセリフに、アンジェリカの頬と耳がわずかに朱に染まる。

 こんな豚相手に……けれど、悪い気はしない。

 お日様のような笑顔のままぶりぶりざえもんを見つめていると、彼はくるりと振り返って一枚の紙切れを差し出した。

 何かしら。手にとって確かめてみると、そこにはヘッタクソな文字でこう書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 せーきゅーしょ

         あんじぇりかさま

  おたすけりょう

     ひゃくおくまんえん

 

 

 

 

 

 ピキッ――アンジェリカの笑顔が一瞬で凍てつく。

 怒気がオーラとなって立ち昇り始め、しかしそれに気づいた様子もなくぶりぶりざえもんは饒舌に語り出す。

 

「まさかお姫様とは思わなかったのでな……あんな臭いオークなんぞの宝なんぞ、もういらん。お助け料ひゃくおくまんえん、耳をそろえて払ってもらおう。それとお姫様を助けたのだ、救国の英雄として盛大に歓迎しろ。全国民に歓迎パーティーを開かせ、ありったけのご馳走を可愛い女の子に"あーん"させて食べさせてもらおうか。どうしてもと言うのならアンジェリカにもさせてやるぞ? 光栄に思って私に尽くせ」

 

 ビリビリと請求書を破り捨てる。

 無言の返答であった。

 

「ああ!? 何をする貴様ァ!」

「前言撤回! あなたって、本当に最低の屑ねっ! あんたなんか死ねばいいのにっ!!」

 

 

 

 こうして、アンジェリカは異種族を嫌うようになったとかならなかったとか。

 めでたし、めでたし。




某所の雑談ネタを大急ぎで書いてみた。

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