元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
その割にライブ配信や数万規模の同サーバーで遅延が起きないのは奇妙極まるが、考えても分からない以上それは一旦置いておくとして。
つまり俺が何を言いたいのかというと、だ。
「参った……深夜だ」
大学の講義を終え、諸々の家事や支度を終えてログインしたのが16:40頃。FEVの内部においてその時間は深夜2時。ド深夜も深夜な、草木も眠るウシミツ・アワー真っ只中だった。
壊れない武器と防具も悪くないが、火力も防御力も悲しいくらいに足りていない。そうロード戦で実感したが、こんな時間じゃNPCの武具屋は空いている筈もない。
街中の探索に出掛けるには時間帯のせいで警備隊に捕まる可能性が高く、街外の探索に向かうには必要なアイテムが足りない。煙玉があるとないとじゃ、生還の可能性が大きく変わる。
「……本でも読もう」
よって今取れる選択肢の中で一番楽しいのは、苦労人なギルドマスターの趣味に相乗りすること。
そう──俺の現在位置は初期のアウステル噴水前に在らず。
新しく設定したログイン地点、ケントルムの一角にあるギルド【クローニンと愉快な仲間たち】*1の拠点に設置されたマイルームだった。
据え置きのベッドとアイテムボックスしかなく、窓から差し込む月明かりが唯一の光源である殺風景な空間。だがそこから出て、一歩共用スペースへ足を踏み入れれば別の空間がそこには広がっていた。
円形の外壁に沿うように配置された書架は、古い本が並んだ空間特有の匂いでこの場を満たし。中心の1Fへ続く螺旋階段部分から放射状に配置された棚には、未だ未分類のアイテムが所狭しと放置されている。
端的に言い表すのならば『広めかつお洒落さがプラスされた(図書館+博物館)/2の書架』だろうか。全然端的になってねぇわ。
しかし、ともあれそういう場所なのだ。
暇つぶし且つ、スキルのレベル上げにも丁度良いモノが1つや2つある筈で──
「っと」
階の中心付近の机に突っ伏して、寝息を立てるクローニンを見つけて動きを止めた。手元には燃料切れで光を失ったランタンと、ハードカバーの何某かの本。
読み耽っているうちに寝落ちしたと見た。存分にゲームを満喫しておられる。よだれ垂らして幸せそうな寝顔を晒しやがって、この、この。スクショしていつもの身内に共有しておこう。楽しそうだし。
≡ # 雑談 け
.再生数まだまだ伸びてますね
.ヤブサメ 16:42
.クローニンちゃんが可愛らしい寝顔を晒してた
.折角なんで投げときますね^ ^(編集済)
(すやすや寝ているクローニンの画像)
.弾バカ 16:43
.草
.保存しておきましょうか
.⚫︎⚫︎⚫︎アブ@決闘者が入力中...
「よしよし」
投げつけた火種に確かな満足を感じながら、何気なくクローニンの読んでいたであろう本に目を移す。
題名は……訳するなら『中央旗艦都市の伝承』と言ったところだろう。
昔取った杵柄とは言うのだったか。文字の判読スキルは持っていないが、まだそこそこはこの異言語を読めるらしい。
受験期だった去年の3ヶ月(ゲーム内時間)を捧げた甲斐はあった──と、思いたい。まあ英語と第二外国語の成績は良いし……支障出てないし……
「……あとは本格的に暇つぶししますか」
ゲーム内の早朝である4時までは2時間ちょっと。本を片手にSNSを見ながら、ゆっくりと深夜の空気を満喫しよう。現実はまだ夕方だけど。
・
・
・
〈スキル獲得! 《言語学Ⅰ》〉
〈スキルアップ!《言語学Ⅰ》→《言語学Ⅲ》
《暗視Ⅳ》→《暗視Ⅹ》〉
〈スキルの進化が可能です〉
そうして、気がついた時にはもう夜は明けていた。
窓には薄明かりの空が映し出され、感覚を研ぎ澄ませれば外が俄かに活気付いてきたことも感じ取れる。街が、ゆっくりと目を覚まそうとしていた。
「夜ふかし、サイコー……」
街外で自然に囲まれての夜明けは最高だが、こういう深夜から朝に切り替わる街の空気も嫌いじゃない。加えてぶっ続けでログインしている訳じゃないから眠気もない。個人的に最高の空気感の1つだと思う。
まあ、そんな話はどうでもいいとしてだ。
ここまで最も使ってきた《弓》スキルより早く、《暗視》が
微妙に釈然としない。確かにレベル上げのために、一切照明なしの状況で読書してはいたが……うーむ。
「まあいいや」
頬を一度叩いて気分を整理。
そういうことにした。
となれば問題は、完全に未知である《言語学》なるスキルと《暗視》スキルの進化の2つ。多少既知の範囲内にある後者より、どうせなら未知なる前者から見てみるが……
《言語学》
未知の言語であっても判読が可能になる
まあ、常時効果を発揮するスキルの説明なんてこんなモノだ。β版にあった《読書》スキルの下位互換……細分化? とか、そんな感じだろうか。《読書》スキルにあった『読書中に経験値を獲得する』効果が削られているだけな気がする。
ならば次。
今のところ進化をさせる気はないが、《暗視》スキルの進化を確認しておこうとして。
《暗視》
暗闇の中でも視界が確保できる。
【進化が可能です】
・夜の目(条件:達成済み)
・???(条件:望遠Ⅹ)
・???(条件:望遠Ⅹ・語学系スキルⅤ以上・???)
「!!」
そこに、今度こそ未知の文字列を見た。
2個目の進化先は《鷹の目》という元々狙っていたスキル。元の望遠と暗視に加えて、クリティカルの発生率を上げるものだった。
だが3つ目の選択肢は見たことがない。そもそも推定新スキルが前提なのだからそうなのだが、未知の選択肢を目の前にしてワクワクしないゲーマーがいるだろうか。いや、いない。
攻略サイト確認ヨシ。
検証班の掲示板確認ヨシ。
完全に未知の新スキル!
まあ《望遠》と《暗視》の組み合わせはメジャーだから、すぐに後追いが来て判明してしまうだろうが。
「最後のピースは『水晶玉×1 照準装置×1 鋼材×5』……?」
心を躍らせながら、最後の???となっている条件をタップ。ヒント機能を起動させれば、表示されたのはそんな文言。
探せばケントルムどころかアウステルでも売ってそうなアイテム群だが、何か凄まじく嫌な予感がする。《領域魔法》の時も素材と別スキルが要求されたから、強力なスキルになるのは違いないが──
.┏ ヤブサメ クローニンちゃんが可愛らしい寝顔を晒してた
.弾バカ 17:30
.今から5963を冷やかす為にログインします
.時間大丈夫なら遊びません?
そんな思考を断ち切るように、いいタイミングでお誘いが来た。
どうせ後からクローニンに怒られるのは見えているのだし、うん、悪くない。最後に盛大に冷やかして、そっから弾バカと遊びに行こう。
頷いて、『盛大に冷やかしましょう!!』と了承する旨を返信。《望遠》で拡大した視界の中、《言語学》で街中に出ている看板を読みながら、合流まで時間は潰しておこう。
〈スキルアップ!《言語学Ⅲ》→《言語学Ⅳ》
《望遠Ⅱ》→《望遠Ⅲ》〉
「えぇ、雑ぅ……」
そんなこんなで、クローニンから大層なお小言を頂いてから1時間ほど。
「今の我がクラスは
「へいへい、ヤブサメびびってるぅ!」
「そりゃあオワタ式で
俺たちのいる場所は、人口灯の光に照らされた
無論、この探索はクローニンたっての希望(拒否権なし)である。ダンジョンの推奨レベル? 表層付近なら30くらい。
イカれた攻略メンバーを紹介するぜ!
突入時のレベルは上から26!23!19!
以上だ!
後衛が3人……(全滅が)来るぞ、という訳で《体術》スキルを持っている俺が急遽前衛を張ることになっている。
「弾バカ! 投げる、落とせ!」
「がってん!」
「どっせい!」
気合いの掛け声を入れながら、目の前に存在する猛犬風のロボットに向けサマーソルト。全力で蹴り上げたロボットわんこは宙を舞い、弾幕が殺到してHPが蒸発する。
「くぅぅ〜、やっぱり1人前衛がいるとやり易さがダンチですねヤブサメぇ!」
くそぅ、いい空気吸いやがって。俺だって弓撃ちたいぞコラ。いやでも誘った手間なんかアレだし、そもそもここら辺の機械系の敵には弓の相性最悪だし……煽るか。
「おっそうだな。なら弾バカもやろうぜ、同じオワタ式後衛のよしみだ……援護は存分にしてやるよ」
「ハッハッハッ! Vit5の私にそんなマネが務まるとでも……いや、やれなくもない気がしてきたな」
「まあ、わざわざ武器と防具を買ったので前衛は譲りませんが」
いくら壁を展開できても、光る弾じゃ壁にはなれないのだ。壁には。あと地味に値段がした
「左腕を盾に! 右腕を矛に!」
「その構えは、まさかヤブサメ!」
「装備込みでVit14の紙装甲が出来るかあんなの! トンファーキック!」
「ギャンッ!?」
近づいてきたメカニックわんこの顔面をキック。怯んだところを、頭を抱えて変則ブレードランナー*3。サイバネドッグはしめやかに爆散。データの海へと帰っていった。
「
「貴方も弾幕ゲーをやりませんかぁぁぁ!」
「うるせぇ!!」
回復したMPを消費して今後は索敵用の領域魔法を起動。どっかの裏切りそうなボイスの鬼のように、攻撃を捌きながら殴り返していく。
「ところで、まーだ時間かかりそうですかねぇ!」
そんな漫才じみたやり取りをしているが、現状はなんだかんだ言ってピンチもピンチ。大ピンチそのものだ。
背後には閉じられた隔壁ドア。前には無尽蔵にいる今日のわんこ。今はなんとか弾バカの障壁による進路妨害で1vs3くらいに制限しているが、幾ら魔力極振りに近い弾バカといえど長くは保たない。
そう、今はよくある
ダンジョンアタックには!
漢感知*4なんて出来るかばーかばーか。
「待って下さい! もうちょっとで暗号が解け……解け、ない! ふざけんなゴルァ!」
背後から衝撃音。具体的には金属を人体で殴りつけたような鈍い音。おっ、全滅かな???
「よっしゃ開きました! この手に限る!」
「この手しか知らない奴のセリフですよねクローニン!」
やはり暴力、暴力はマスターキー……!
「撤退ですヤブサメ! セーブポイントになってます!」
「了解!」
嬉しそうなクローニンの声に、正式名称[二一式獣型自動警備兵-リーダー機]を撃破し大きくバックステップ。扉を超えて、2人が逃げ込んだ部屋に飛び込んだ。
その瞬間、パシュンという圧縮空気が弾ける音と共に扉が閉じる。レベルやスキルアップのリザルトも表示されて、ようやく一息付けると息を吐いたところで。
「バチバチ死すとも、弾幕死せず──!!」
「えっ」
謎の断末魔に振り返った時に視界に移ったのは、大口を開けた宝箱がこちらに噛みつこうとしている図。
つまり、起動したミミックがこちらに攻撃をしている最中だった。弾バカとクローニンの姿は既にない。
なるほどなるほど……
「だから!!! あれほど
ティウンティウンティウン
ヤブサメ は めのまえ が
まっくら に なった
【おまけ】
【FEV】チュートリアルボス最速攻略【ノーカット版】
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● 双角 15分前(編集済み)
増援リスキルされてて笑った
4件の返信 ♥いいね
● rainbow6 6時間前
Nothing doing!
日本語に翻訳
♥いいね
● 田中 1日前
サービス開始2時間で推奨レベル満たさず攻略とか意味不明すぎて草
3件の返信 ♥いいね
│● 1日前
│ メンバーの練度が化け物すぎる
│ │● 8時間前
│ │ 何も参考にならねぇ
│ ───────────────────
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● 茶羅 1時間前(編集済み)
全プレイヤーの楽しみを奪ったクズ
● chord name XX 12時間前
倒せるもんなんだあのボス……
5件の返信 ♥いいね
│● 11時間前
│ めっちゃ分かる
│● 3時間前
│ 非公式だが撃破報告上がってきたゾ
● K.W 4時間前(編集済み)
AIを困惑させるなwwwww
♥いいね
● Archery 9時間前(編集済み)
弓の引き方が全然なってないし構えもめちゃくちゃで気持ちが悪い。それだけで見る気を無くす。友達選んだ方がいいよ
● 俺たち 10時間前
馬鹿な……早すぎる
28件の返信 ♥いいね
│● 10時間前
│ や〜れやれ…『コイツら』は待つってことを知らないねぇ
│ │● 9時間前
│ │ よし……行くぞ!
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