元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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16話 第1回イベント①

   ゲーム系雑談           


 .#ゲーム系雑談へようこそ!

 .チャンネル「#ゲーム系雑談」の始まりです。


 .弾バカ 23:19

 .ふと思ったんですが、今回のイベント 

 .皆さんどのくらい参加するつもりです?(編集済)

 .メインは夜になってからですかね、私は


 .暗証番号は5963 23:25

 .仕事帰りにぼちぼちと参加しようかと

 .平日の朝とか真っ昼間は流石にちょっと


 .ヤブサメ 23:27

 .リモート講義ワイ、低みの見物

 .ぼちぼち狙撃して遊ぶ予定です


 .アブ@決闘者 23:28

 .リモート授業ワイ、カードをしばきながら

 .高みの見物

 .火力役がいないタンクは敗北者じゃけえ(編集済)


 .蛍石 23:31

 .時差の都合上、割となんとかなふ時と

 .ならない時があるかもしれません


 .暗証番号は5963 23:33

 .学生組はちゃんと勉強をだな……


 .ヤブサメ 23:35

 .前期成績AVE4.3/5マンですが


 .アブ@決闘者 23:36

 .テスト成績学内13位でした、対よろです


 .暗証番号は5963 23:38

 .くそっ、こいつら勉強できる馬鹿だった!!

 .⚫︎⚫︎⚫︎蛍石が入力中...

   そこそこの成績は取れてると思ってんすがね……l 

 

 

[a.m.07:56(R(リアル))/p.m.23:48(G(ゲーム))]

[南部前線都市アウステル・南門・壁上]

 

 そんな前日のやりとりもあって、今日の俺は単独(ソロ)活動。

 祝日でもない平日の朝からスタートとかいう、不親切設計だから仕方がない。しかし、なんだかんだで俺は大学生。リモート講義が中心なこともあり、迫るレポートの期限は怖いが時間を自由に使える身。

 一眠りして疲れを取って、心機一転FEVへログインしていた。

 

「どうせなら、イベの始まり、ちゃんと見てみたいものだし」

 

 3歩進んで2歩下がる歌のテンポで、適当に口ずさみながら歩みを進めていく。

 暗い夜の闇の中、煌々と焚かれた松明の光から逃げるよう《隠密》スキルで身を隠し、登っていく先は門の上。

 普段森の探索へ向かう時、頻繁に潜る高く聳える南門。明るい時間であれば絶景が広がるその上部だが、今は全く別の光景が見えていた。

 

 暗闇を義眼が暴き、映し出すのは人と獣の群れ。群れ。群れ。

 

 光の下、街の門を背後に隊伍を組み、銃列ならぬ弓列を敷いたNPC達。統一された装備と示唆されてきた情報から、彼らが軍属に近しいのは明らかだ。

 対するは森と闇の中に身を伏せて、じっと気を窺っている無数の気配達。距離と潜伏の上手さが相まって判別は出来ないが、その数が膨大であることは見てとれる。

 

 一触即発。

 時間が時間だからかプレイヤーをほぼ見かけないまま、戦端が開かれようとしていた。

 

「いい位置なんですけどね、壁の上」

 

 そんな光景を眼下に眺めながら、新たな大弓(あいぼう)を掴み取る。

 この場所はそう、大型の実体射撃攻撃持ちに取ってのベストポイント。射程の有利から来る独壇場だ。

 殆どの魔法や小型の弓、クロスボウの射程は大体100mちょっと。対し敵が潜伏する森は1000mほど先にあり、切り拓かれた淵までにすら届かない。

 だが壁上に備え付けられた数門の大型弩弓(バリスタ)や、(アーツ)込みの大弓・大型クロスボウであれば効力射が森まで届く。無論、当てられるかは射手の腕次第ではあるが。

 

「そこのところ、本職の方から見てどうです?」

「人力で狙い撃つのは馬鹿かゴリラの所業だと思うぞ」

「I'm Gorilla」

「猿人だろうがよ」

 

 ばっさりボケは切り捨てられてしまった。やっぱりピリピリした空気の中、振るべき話題じゃなかったか……

 などと考えている間に、気配を殺して登ってくる人の気配を感じた。俺と同じ不正な登攀である以上、相手がプレイヤーであるのは確実。加えてこのタイミングでと考えれば、同好(どうしゅ)(へんじん)の気配!

 友好的な関係を築きたいし──よし、初手は煽りから入ろう(変声ON)

 

「やっと、登れ、た……」

 

 登ってきたのは登ってきたのは、大きなジャケットを羽織った小柄な少年。目元の鱗としなる尻尾からして、種族はヒト寄りの蛇人とかそこらだろうか?

 猿人がパワータイプだとしたら、蛇人はテクニックタイプ。特に今後、銃が出てきた際に移行しやすい種族だ。背負っている得物も超大型ボウガン或いはクロスボウ……なるほど、コイツ分かっているな?

 

「大丈夫……大丈夫。今度はきっとああならない。間違えない、絶対に成功する……!」

 

 これで適当なレスバが出来る相手なら最高だったのだが……なんというか。見ていて可哀想なくらいに少年は緊張していた。それこそ、NPCのおっちゃんたちよりもずっと。

 

 こういう手合いはちょっと、煽っても何も楽しくない。

 あくまでこれはゲームなのだ。β版では大惨事が起きていたとしても、今は違うのだしもっとリラックスすればいいのに。

 

「ちえっ」

 

 予定変更だ。

 煽り合って仲良くなるインターネッツスラム街式のクソコミュニケーションではなく、普通に慰める感じで接する方針で行こう。貴重な同類だし。

 

やあ、少年。いい月の夜だね

「うわぁぁぁ! 痴女だぁぁあ!!!」

 

 目と目が合った瞬間叫び声を上げられた。

 

Oh , Bad Communication……

 

 改めて自分の服装を見直してみるが、そんな変な格好をしているだろうか?

 頭は不気味な仮面とフード。胴体はガンベルトオンリーで、背後は旅装風マント。右腕は生身、左腕はロボじみた装甲装備。腰にはピッケル、ポーチ、揺れる尻尾へ続く鉤縄。そして下半身もロボじみた装甲装備。

 ・

 ・

 ・

 うわぁぁぁ! 痴女だぁぁあ!!!

 男だが。声だけ女性ボイスだが。

 

全く、ネトゲじゃこれくらいはままある構成なのに。出合頭に酷いじゃないかキミ

「え、あっ、う、すみません」

 

 だがそれはそれとして、話は適当に流しておこう。曲がれ曲がれ……少年の性癖よひん曲がれ。折角いい感じのお姉さんVoiceが出せるのだ、キミやら少年呼びやらを食らって歪な方向に(まが)れ!

 

「なあおい、そこのガキ。そこの仮面野郎は声を変えてるだけの男だ。深入りすんなら、それは承知しておけよ」

 

 しかしそんな企みは、さっきまで話していたNPCのおっちゃんによって阻止されてしまった。

 

「え……? あ! 本当だ、ヤブサメボーゲンって森の()()じゃんこの! あ、フレンド登録お願いします」

「フレンド申請どうも」

 

 承認。しかし森の()()だなんて、なんてゴリラっぽいことを。褒めても矢とバフとお姉さんボイスしか出せないぞ。

 

それで、緊張は解けました? ゲオルグ少年

「……あっ」

 

 痴女扱いは甚だ不本意だったが、その衝撃のお陰か少年──ゲオルグという名のプレイヤーから、先程までの震えは消えていた。

 何か背負うものがあったとしても、折角の楽しいゲームなんだ。これくらい気楽に、どっしり構えているのがいい。

 

「もしかして、今の流れって僕のために……?」

そうですね、折角の同好の士ですから。

 

 大弓と大型クロスボウ、違いはあれどその2つは同類だ。

 前者の行き着く先が投石機で、後者の行き着く先が拳銃という程度の違いしかない。細かい差異はもっとあるが、そんなもの些事だ些事。

 

どうせプレイヤーは俺……私たちしかいないんです。なら一緒に、楽しく遊びたいというのが筋でしょう?

「そ、そうですね」

 

 微妙にキョドりながらゲオルグ少年が答える。

 切るタイミング見失って起動したままの変声機能だったが、思っている以上に破壊力があったようだ。……なんか面白いし、暫く声は変えたままにしておこう。

 

「そこの“渡り人”ども、そろそろ開戦の時間だ。おふざけはそろそろ控えてくれ」

 

 刻一刻と作戦(イベント)開始時刻が迫る中、真剣な表情で弩弓兵のおっちゃんが聞いてきた。俺たちにとっては1イベントでも、NPCから見れば街が滅ぶ危機なのだ。真面目に、けれど気負いすぎず、やっぱりそれが一番だろう。

 

──それで、一応の確認ですが。ゲオルグ少年のボウガンは、森まで届きますか?

「当たり前です。貴方こそ、大弓で届くんです?」

勿論。面制圧は無理ですが、ログイン時間目一杯ドタマぶち抜いてやるつもりですよ

 

 固定設置式の大型弩弓(バリスタ)と比較した場合、威力・射程・その他諸々の性能において、大弓やボウガンは下位互換の性能に甘んじることになる。

 

大型弩弓大弓・ボウガン

射程最大1,000m最大300m

威力度し難い大剣よりは弱い

(アーツ)ほぼ無し無数

 

 勝てる部分と行けば、単独で携行可能な武器である点と(アーツ)だけ。集団運用の兵器と個人運用の武器の違いが、悲しいくらいに現れてしまっている。

 なんなら俺の大弓は200mまでしか素では届かないし、自分のステータスの尖り具合から考えるに、ゲオルグ少年の射程もそんなものだろう。

 概算にして5倍。どう考えても矢が届く距離じゃない。だがこの超長距離狙撃だからこそ、最大限に効果を発揮する(アーツ)がある。

 

少年、そっちのSPは?

「詳しくは言えないけど、200後半」

俺……私は大体200です。無駄遣いは出来ませんね

 

 《剛弓・旋刃》(必要SP12)

 ここ数日散々検証してきた剛弓のアーツの1つで、距離が離れれば離れるほど火力の増す単体射撃。このアーツも属する弓の長距離射程系アーツには、副次効果として有効射程の延長がある。

 初期の[ロングショット]で2倍

    [レンジショット]で3倍

    [剛弓・旋風]  で4倍

 そして[剛弓・旋刃]  で5倍

 スキルが1回進化した状態を想定しているだろう今時イベの射程ぴったりだ。矢次第でまだ伸ばせるが、それにしても粋なことをしてくれる。

 

「00:00ジャスト、作戦開始だ!」

 

 そんなおっちゃんの声と同時、眼下の軍団から鬨の声が上がった。地を揺らす男達の声は、当然NPCだけのものではない。

 嫉妬するくらい多い近接系のプレイヤーと、森の側から響く獣たちの咆哮。それらが混じり合って、VR慣れしていない人であれば萎縮してしまうような気配が撒き散らされている。

 

 懐かしのイベントが

 初めてのイベントが

 楽しいイベントが

 悪夢のイベントが──今、始まる。

 

こういうところは、どうにもちゃんとゲームしてるんですね

 

 NPCの軍が敷設した陣地にて万全の守りを固め、攻撃一辺倒のプレイヤーが陣地から飛び出していく。同時にこれまで徹底的に姿を隠していたモンスター側も、気配を撒き散らしながら突撃を開始した。

 壁の上という、状況を俯瞰できる位置にいるからそれがよく分かる。

 

「こういうの、狙撃手の醍醐味ですよね」

 

 ゲオルグ少年も何だかんだ落ち着き、楽しそうにその光景を眺めている。しかしこうして見ると、プレイヤーの間でも明らかに動きの格差があって面白い。

 集団として一番綺麗な動きをしているのが、見覚えのあるリビングメイル(ワンダーAMさん)有する推定攻略組集団。4〜5人のPT単位に分かれながらも、綺麗に隊列を整えて突撃している。

 そんなプレイヤーの先頭を走るのは、馬鹿でかい剣二刀流のよく分からない種族の人物。なんなんだろうこの人。クソでかいチーターボディに鱗が生えた上半身がついてて、頭がライオンで腕ゴリラのケンタウロスって。羽根も生えてるし。キメラ?

 

ですね。でも、そろそろ私たちの出番みたいですよ

 

 そうこうしている間に、森の淵で動きがあった。

 ここまでプレイヤー側に突撃してきていたのは、狼やゴブリンなどの通常時でも見られる敵mobばかり。だが漸く、大物が出てきた。

 

 背から刃のような結晶を生やした狼──ブレードウルフ

 明らかに巨大化しているゴブリン──ボブゴブリン

 もの凄く見覚えのある蜂──まだ名称不明な子

 

 蜂だけは相性最悪なので相手にしたくないが、他の2種との相性は良い。数もそれなりにいるし、まだあまり動く気配はない。よりどりみどりである。

 

《領域魔法》起動!《星形(スター)──天導(リード)》!

 命中率を上げました、どうせなんで利用してください!

 

 自己強化のついでにばら撒くのは、火力の強化ではなく命中率のバフ。物理的な射撃武器に限定しているが、その上昇値は破格の30%。普段は使い道がないが、結構ハードな活躍をしてくれますよコイツは。

 

「なるほどな。アイツらにも命中強化魔法をくれてやれ!」

「ありがとうございます()()()()! なら僕も、《戦術指揮》起動!」

 

 お兄さんなんだが……まあいいか! 俺とゲオルグ少年、そしてNPCの大型弩弓(バリスタ)兵の人たちが全員、何かしらの強化を発動し重ね掛けしていく。

 超長距離射撃の場合、命中率強化なんてあればある程良いのだ。やっぱりアーチャーは助け合いでしょ。

 

ふぅ……

 

 跳ねる心を鎮めて、一度大きく深呼吸。

 一気に音が遠ざかり、心の水面が凪に落ちる。

 

《狙撃》起動

 

 義眼が拡大した視界で獲物を捉えながら、引き抜いた徹甲矢を番え引き絞る。キリキリと鳴く弓の声は、悲鳴でなく舌舐めずりのソレだ。

 狙う獲物──ボブゴブリンの心臓を《狙撃》スキルのレティクルに重ね合わせる。現実(リアル)の射撃と違って、スコープのゼロイン調整*1とかが不要なのは助かるラスカルパトラッシュ。

 

照準──

 

 当然だが相手はまだこちらに気づいていない。

 それでも脳内に、相手の未来の動きを描け。一撃必殺、心の臓をぶち抜くために。

 

──合いました

 

 呼吸を抑え、深く心を鎮める。

 透き通った世界の中、見えるのは自らと相手だけ。

 

(アーツ)《剛弓・旋刃》

 

 静かに離した矢は、ズドンというおかしな音を響かせ空を疾り抜けた。

 

「ナイスショット」

そっちこそ

「やるな、“渡り人”ども!」

 

 当然、俺もゲオルグ少年も狙いを過たず、それぞれの獲物に矢は直撃。見事に一撃でそのHPを吹き飛ばしていた。

 狙撃として完璧な仕事に、少年と拳を合わせて互いを讃えあう。さあ、バリバリ狩るぞー!

*1
射撃を当てるために必須なこと。詳細は省略するが、しなければ射撃は当たらない細かい作業




[p.m.23:48]表記は作者が間違わないための故意です。
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