元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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17話 第1回イベント②

 

[p.m.20:04(R(リアル))/p.m.12:12(G(ゲーム))]

[南部前線都市アウステル・南門]

 

 1限の講義は入れてなかったとはいえ流石に平日。2限3限4限5限と普通に講義はあったので、泣く泣く午前10時頃にはログアウトした。

 再ログイン出来たのはこの時間になってから。リアル朝の狙撃パーティーから数えて、今はゲーム内では1日経過した昼頃になる。そうなれば、多少は戦局が動いていてもいい筈なのだが……

 

「やっぱり、こういう所はちゃんとゲームしてるんですね」

 

 掲示板を探ってみたり実際に門の上に登って確認したが、戦局は朝の時点から大きく変化していないようだった。

 地上から迫る敵mob達はNPCが築いた陣地で迎え撃たれており、変化は鳥型の敵mobが出現し対空射撃が盛んになった程度。

 プレイヤーも変わらず陣地内から迎撃したり、パーティ単位で離脱して狩りと言えばいいか、遊撃と言えばいいか。好き放題暴れるような動きをしている。

 

「南部戦線異状なし──」

 

 プレイヤーはびっくりするくらい死に戻ってる?

 NPCと違って復活するし、別に被害として計上しなくていいだろう。

 

 故に、総じて変化なし。

 

 流石にイベント開始初日から、どデカく何かを動かすような真似はしなかったらしい。ゲーム的な配慮が有難い限りである。

 して、そんな平和な膠着が続いている間に、再びイベントに参加と洒落込みたいのだが…………いつものみんなが、アブっさんしかログインしてない。

 悲しいかなネトゲの宿命。フレンドがログインしていない事例に直面してしまっていた。

 アブっさんとのペア狩りも決して悪いものじゃないが、俺だけじゃおし寄せる雑魚を捌ききれない。いずれ真綿で首を絞めるように、俺だけ削り殺されるのがオチだ。

 同じ理由でソロ参戦もアウト。範囲攻撃が出来るにしても、12〜3発しか撃てないんじゃ長くは保たない。

 

「こういう所も、弓使いが増えない理由ですよねー」

 

 独り言の後、大きくため息。

 後で銃に乗り換える人は能力構築(ビルド)的にボウガン専だろうし、弓が増えることはそうそうないのだ。私は悲しい(ポロローン)……今はもう、このネタも通じないか。

 

 さて。ここで問題だ。

 

 現状の自分には範囲火力が足りず、

 イベント参加が可能な程のフレンドが居らず、

 今朝と同じ高台からの火力支援か、今朝の消費分の補給程度しかやれる事はない。

 

 Q.この状況でイベントを楽しみつつ、いい感じにスコアを稼ぐには何をすればいいでしょう?

 

「へーい、そこの特攻隊! 俺もメンバーに加えて貰っていいですかー?」

「おー、あんたもスコア稼ぎか? いいぜ、人数増える分にはなんともねぇ!」

 

 A.今朝から一定数いた生存度外視のプレイヤー群に参加する

 

 門の外。NPCの陣地の後ろでたむろしていた連中に声をかけた。

 多分これが一番早いと思います。

 大体スコア稼ぎがしたいだけの集まりだから、必要以上の何かもない。一番気楽にこのイベントを遊ぶなら、割とこういう立ち位置が最高だと思う。

 

「ヤブサメボーゲン……ってあの森の奴か。ざっくりでいいから何出来るか教えてくれ!」

「メインは索敵、紙耐久ですが火力とバフは撒けますよ!」

「了解、なら中段か後方からいい感じにやってくれー!」

「へーい」

 

 確認されたのは何が出来るかという最低限だけ、今朝見ていた集団の中でも緩そうな場所に入ったお陰か、そんな感じで受け入れて貰えた。

 しかし『森の奴』で周知されてるのは、なんか微妙に納得がいかない。せめて弓とかゴリラとか入らないのだろうか。

 

「何人か飛び入りが増えましたが、そろそろ突撃の時間です。という事で、ウチらの隊長からちょっと挨拶があります」

 

 そう魔法使いらしき人が告げると同時、視界外からエントリーしてくる3つの影。

 

 左側、ケモケモしい屈強なモフモフのプレイヤー。決めているポーズはモストマスキュラー。

 \キレてる! キレてる!/

 \毛皮と筋肉のマリアージュ!!/

 

 右側、透き通った鉱石生命体。筋肉はどこかは知らないが、自信満々にサイドチェストを決めている。

 \土台が違うよ土台が!/

 \結晶筋が光ってる!/

 

 そして中央。今朝も見た筋骨隆々な、大剣二刀流のキメラなお方。ビシッと決めているのはフロントダブルバイセップス。

 \生物の特徴と一緒に筋肉も取り込んでるのかよ!/

 \暗黒筋肉のキメラ=アント!/

 

 何処からともなく聞こえてきた掛け声に、何故か現場のボルテージが上がっていく。心なしかDJが回しているようなBGMの幻聴まで聞こえてきた気がして────

 

「「「スピアヘッド隊へようこそ!!!」」」

 

 カッッッッ!

 突然筋肉が放った眩い閃光が目を焼いた。

 おお、筋肉。或いはマッスルよ。我らがパワー↑の祈りが聞こえぬのか……

 

「やめんかバカ共!」

 

 即座に直前まで説明をしていた人が、3人をハリセンで殴打して筋肉の発光現象はおさまった。

 どうしようキャラが、キャラが濃い……でもゴリラとマッスルは≒だから分からなくもない……なんだこの感情は。

 

「……!」

 

 などと考えていたら、目が合った。

 キメラの人が何かを感じ取ったのか、明らかにこちらを見据えながら無言のラッドスプレッド・バック。筋肉と白い歯が眩しい。

 

「……ッ!」

 

 こちらも対抗してサイドチェスト。

 こちらヤブサメ。筋肉式コミュニケーション(???)で対話を試みる。

 

 CQ CQ DE YBSM2035 AU K(全局呼び出し。こちらヤブサメ2035、アウステルより。どうぞ)

 

 返答やいかに。

 

 YBSM2835 GE UR PRTIN BK(こんばんはヤブサメ2035、そちらの信号はプロテインです。どうぞ)

 

 BK GE UR PRTIN TU(感度良好。こんばんは、そちらの信号も同じです)

 

 QSL UR MUS ARC MUS SP SA TU E E(了解、その偏った筋肉、弓兵とお見受けする。筋肉式の対話ができて満足、Thank you)

 

 TU E E (Thank you)

 

 ポージングによる無言の対話の終了後、ニカっと向こうが笑顔を見せた。仮面越しだが同じように笑顔を浮かべ、こちらの返答とする。そうしてそのまま無言で近寄って、ガッツリと握手を交わした。

 いいよね、Str(筋肉)

 パンがなければプロテイン。己を鍛えなさいと、かのマリー・アントワネットも言っているのだ。間違いない。

 

「なかなかなりますね、キメラのお方」

「そっちこそ、弓兵殿」

「うそでしょ……ポージングだけで会話が成立してる」

 

 ツッコミ役の女性が絶望したような顔でこちらを見つめ、言葉を溢していた。確かに我ながらちょっとアレだとは思ったけど、読み解けてる時点で貴方も同類だと思うのだが。

 

「えー……あー……はい。改めて!」

 

 この混沌とした場の収集は諦めたらしい。

 

「こちらからお願いしたいのは2つです。

 ・誤射をしないこと

 ・日和らず前進

 それ以外は自由に、各々好き勝手して下さい。よろしくお願いしまーす!」

 

 ツッコミ役の少女に対して、うぇーいとまばらに返事の声が上がる。そんな緩いバイトみたいな雰囲気で、集まった十数人がそれぞれにバフを掛けていく。

 

「ところで弓兵殿」

 

 どうせなら俺もバフを撒いておくかと思ったところで、握手を交わしたままだった筋肉のキメラに話しかけられた。

 しかし、改めて凄いなこの人。ライオンヘッド、爬虫類系の鱗付きボディに腕がゴリラで背中に羽、下半身は丸々4脚のチーターとは。今朝、上から見た時は分からなかったが尻尾も鰐か何かかこれ。なんてロマンだけを詰めたケンタウロスッ!

 

「なんですかキメラ筋の人」

「私はそんな足の筋肉に特化はしてないのだが……?」

 

 何か微妙に話が噛み合ってない気がする。

 

「まあいい。弓兵、君は確か索敵が得意と聞いた。共に一番槍を駆け抜けないか?」

「いいでしょう、筋肉のよしみです。背中は空いてますか?」

「いいや、残念ながら指定席だ」

 

 せっかく久しぶりに流鏑馬的に撃とうと思ったが、どうやら指定席だったらしい。視線の動きからして乗り手は、さっきツッコミ役だった魔法使い系の女性か。

 件の女性に頭を下げられたが、手を振って断っておく。先頭の景色は譲って並走することにしよう。走りながらの射撃は慣れてるし。

 

「ところで、あー……名前はなんとお呼びすれば?」

 

 改めて話そうと思い、見上げた先にあったのは[PN:その狂戦士(バーサーカー)筋肉(マッスル)だった。]という表示。くそっ、こんな濃いキャラの人と当たるなんて。今朝の少年の性癖を歪ませたバチでも当たったのだろうか?

 

「適当にキメラ筋でもなんでもいいさ」

「ならキメラ筋の人。索敵は出来ますが、向かう方向は?」

「敵の多い方に」

 

 白い歯が眩しい笑顔で、ポージングを決めなからキメラの人が言う。ふっ……聞くのは野暮な内容だったらしい。筋肉がそう言っている。

 

「出撃までのカウントダウンを開始しまーす!」

 

 ツッコミ少女がキメラ筋の人に騎乗し、いよいよ準備が整ったらしい。十数名のプレイヤーが、何も言わずとも一本の槍にも似た形で集結していく。

 

「領域魔法《円形(サークル)──索敵(サーチ)》」

 

 展開した領域から伝わってくるのは、ちょっと洒落にならないレベルの数で迫ってくる敵mobの反応。レベルが上がり200m半径になった探知範囲には、既に表示限界の50体を越えて表示されている。

 

[南142m   ウルフ  危険度:中 戦闘中]

[南東59m  ゴブリン 危険度:中 戦闘中]

[南南東88m 名称不明 危険度:中 戦闘中]

 etc……

 

 幸いにもレベルは多少向こうが上で済んでいるが、改めて確認しても馬鹿みたいな数をしている。その中で敵が密集しているのは──

 

「敵が密集しているのは南東方向ですね」

「了解した。チーターの脚が作る加速についてこれるかな、弓兵殿?」

「当然」

 

 馬鹿でかい剣を両手に構えたキメラ筋の人と並ぶケモケモしい人、結晶が透き通った鉱石生命体の背後。続く形で大弓を構え、いつでも攻撃可能な体勢を整える。

 

「カウントダウン5!」

 

 イベント始まって以来初めての地上戦だ。いつもの面子でなく行きずりの筋肉達と、という点はマイナスだが心が躍らない訳がない。

 

「4!」

 

 防御陣地としか呼べそうにない簡易的な要塞の中央。貨物の運搬用であろう通路から人が捌けていく。

 

「3!」

 

 開かれた道を助走路に、大地を蹴って加速していく。

 

「2!」

 

 適当に集まっただけの集団である筈なのに、俺たちは一丸となって放たれた矢のように加速する。

 

「1!」

 

 陣地がもうすぐ途切れる。

 それは即ち、適応されていたイベント専用の特殊バフが切れることを意味する。特殊な攻撃力や防御力の上昇が途切れればどうなるか。そんなこと、眼前を埋め尽くす敵の群れを見れば想像に難くない。

 

「総員、突撃ぃぃぃぃッ!!」

 

 だが──昔、偉い人は言った。

 『攻撃は最大の防御である』と。

 その言葉を証明するような光景が、突撃の開始と共に広がることになった。

 

(アーツ)《剛弓・驟雨》!」

 

 俺自身が放った矢の雨を含め、殺到する無数の(アーツ)。無数の魔法。過剰すぎる火力の波濤が、今か今かと獲物(プレイヤー)を待っていた敵mob達を飲み込んでいく。

 

「さあさあ! 稼ぎどきです、出し惜しみなんてするものじゃありませんよ!」

 

 その殲滅力はさながらマップ兵器のよう。

 死に戻り前提という狂った死生観のバカ達によって、戦場が一筆書きのように削り飛ばされていく。これぞ数の暴力と言わんばかりの破壊力だが、当然のように代償は存在する。

 

「グワーッ!」

「ナムアミダブツ!」

「筋肉死すとも、マッスル死せず──!!」

 

 鏃となっている筋肉3人と俺を含めた5人も含め、当たり前のように連続する被弾。まだ回復と防御バフで耐えることは出来る範囲だが、後方に行くにつれ被害は顕著だ。

 足の遅い者から脱落し、敵の群れの中に取り残され、奮戦も虚しくリスポーンさせられていく。今朝も散々見た文字通りの玉砕。もう少し悲壮感があるものかと思ったが、なんか楽しそうなんだよなぁ。

 

「「「スキル起動、《狂戦士の魂》!!」」」

「いィッ!?」

 

 人数が減るにつれ、必然的にこちらの殲滅力も減少する。ひいては被弾率が上がり、被ダメージが伸び、進行速度まで急速に萎んでいく。

 そんなありふれた特攻の末路に向かう最中。前方で暴れる筋肉三人衆が突然、全く同じタイミングでスキルを起動した。

 

《狂戦士の魂》

 それは記憶が確かなら、区分は大凡自爆スキル。

 起動したが最後、装備中の防具と遠距離武器のすべてが弾け飛び、被ダメも与ダメも2倍になる決戦スキル。あと30秒後or死亡時に、スキル起動後に与えた分+受けた分のダメージを伴って自爆する。

 

 つまり、眼前の3人がインナーのみの変態の編隊になるのは必然で。

 

「うわぁァァ変た──あれ?」

 

 思わず叫び声を上げかけたが、不思議なことに。本来飛び散る筈の防具や遠距離武器がない。つまりマッスル三人衆は、そんなもの最初から装備していなかった……???

 

「やっぱり変態じゃないですか!!」

「サラダバー!」

 

 復活した叫び声に呼応するように、結晶生命体の筋肉3号が爆発した。

 改めて考えると、結晶生命体に筋肉ってあるのだろうか。わからん……ぜんぜんわからん……

 

「ぅルルル……ワン!」

「喋れなかったんですか!?」

 

 次に限界が訪れたのはケモケモしい筋肉2号。

 何の躊躇いもなく、近場の群れに突っ込んで爆発した。えぇ……じゃあ最初のマッスルフラッシュの時に聞こえた3人目の声はいったい誰ぇ?

 

「では、またな弓兵殿」

「Good Luck!」

 

 最後に、大剣二刀をブンブン振り回していたキメラ筋の人も爆散した。当然その背に乗っていた少女も、一緒に空へ向けて打ち上がり──あ、爆発した。

 昔のVRMMOだと1プレイヤーの手でビルが花火として打ち上がってたらしいけど、最近は人が花火になる原点回帰が流行っているのかもしれない……? いや、ないか。

 

「あっ」

 

 などと、意味不明な光景に思考を止めてしまったのが運の尽き。弾バカでもなければ避けられないだろう、火力の壁が目の前に出来上がっていて。

 

 

YOU DIED

 

 




ポイントの実入りだけは本当にいい模様

感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!
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