元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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本日2話目


02話 キャラメイク

 

 

「さて……」

 

 1ヶ月ぶりに訪れたログイン画面。パスワード代わりの脳波測定を済まし、キャラメイクの空間へと移行する。

 

 ようこそ:Fines Explorator Viaeへ

 βテストのデータを確認

 おかえりなさい:渡り人

 

 そんな文字と共に、見慣れた初回ログイン画面から再ログイン画面へと切り替わった。粋なことをしてくれる。

 

 あなたの名前を教えてください

  PN:I         

 

「名前、名前かぁ……」

 

 所謂プレイヤーネーム。後から変更することは基本的に可能だけど、どうせならば1発で決めたい。あとは何か、ありきたりじゃない形がいい。

 

  PN:ヤブサメボーゲン2035I 

 

「これでよし、と」

 

 普段のハンドルネーム+やりたいこと+個人的に検証してたことのメモでファイナルアンサー。意図せずしてB級映画のタイトルか競走馬の産駒みたいな名前になったけど、まあ些事だ些事。

 

 PN:ヤブサメボーゲン2035様ですね?

 YES/NO

 

 答えは当然Yes。公序良俗に反する名前でもなし、誰かと被るはずもない。問題なく名前は承認され──

 

「っとと」

 

 気がつけば俺は、白を基調とした真っ白な空間に1人立っていた。身体の感覚はぼんやりとして覚つかなく、目の前には未調整のアバターが浮かんでいる。

 それはこれからゲームの世界で活動するための身体(アバター)、尤もまだ未調整だから現実の自分そのままだが。中肉中背、リモート授業のせいで少し痩せた気がするが、典型的な日本人の大学生。面白みはどこにもない。

 

「顔は下手に弄ると人形になるから触らないとして……」

 

 ことVRMMOにおいて、現実そのままの姿を俺はあまり晒したくはない。ネットリテラシーとしては古い価値観だが、元来ネットなんてそういう場所だ。

 

「おぉ……β版より選択できる項目増えてる」

 

 そうして始まった、本作の目玉要素の1つであるキャラメイク。

 人種・種族・体格・性別……元々そういった方面の自由度は折り紙付きだったが、本サービスになり入れ墨や角など細かい部分にも対応したらしい。一部の人には大喜びの案件だろうこれ。

 これでも、元は検証班と呼ばれてた一群に所属していた身。担当していた検証の範囲とは違うが、そこそこ知識は頭に残っているのだ。

 

 して、このゲームのキャラクリだが。

 大まかに

・種族/性別の設定

・種族で決まっている暫定ステータスを調整

・スキルを5つ選択

・装備/資金などのその他調整

 という流れで行われる。

 

 例えば、最も無難な選択肢である「人間」の場合は──

 


 種族:人間

 Lv:1

【ステータス】

 HP(体力):80

 MP(魔力):80

 SP(スタミナ):80

 Str(筋力):10  Dex(器用):10

 Vit(耐久力):10  Agl(敏捷):10

 Int(知力):10  Luk(幸運):10

 Min(精神):10


 

 といった形のステータスになる。

 HP・MP・SPは自動算出のため、他の7つの能力値を弄る形だ。

 変更できる数値は元数値の±5まで。種族別に決まっている初期ステータスを活かすため、けれどその中でも差別化する余地を残すためなのだろう。

 脳筋エルフとか、賢者なスライムとか、カタツムリの観光客とか。構築(ビルド)に限界はなくて良いのだから。所謂「極振り」をするには難しい環境となっている点だけ残念だが、過去に何かあったらしいのでさもありなん。

 

 能力値については……まあ、あまり詳しく説明する必要はないだろう。

 HPは体力、なくなると死亡する。

 MPは魔力、魔法などで消費する。

 SPはスタミナ、スキルなどで消費する。

 他の細々とした7種は文字通りの意味で、ゲームとしてはよくある形。敏捷(Agility)の略称表記がAgiではなくAglなのは珍しいが、特筆すべき点はそれくらいだろう。

 

「種族、種族は……」

 

 先に言った通り、このゲームでは選んだ種族によって初期ステータスが決定される。

 平均的で大きく劣る部分がない『人間』

 速度で劣るが硬く重くパワーのある『ドワーフ』

 耐久面に難があるが速く賢い『エルフ』etcetc……目玉要素の1つであるだけ、バリエーションはあまりにも豊富だ。

 

 問題点といえば、選択肢が多すぎること。

 

 手元に表示されているウィンドウを滑らせるが、1回のスクロールで終端にまで辿り着かない。人間・獣人・昆虫人・スライム・ハーピィetc……中には『竜人』など課金専用の強種族まで存在している。その選択肢はあまりにも膨大だ。

 

 加えてオプションとして髪色肌色目の色彩、多腕や多脚、逆に減らして隻腕、脚、隻眼を始めとして、設定できる項目はあまりに多い。面倒でデフォルトキャラで始める人までいる程度には。

 

「よし、あったあった」

 

 また、完全人外のアバターを作成するときは専用のAIが付くらしい。興味はそそられるが、生憎と今回選ぶのは完全人型。おまけにアバター自体はβ時代のデータを流用できるっぽいので、そのまま使って時間を大幅カットする。

 

 ところで

 

 突然だが、弓矢とはゴリラのための武器だ。

 

 いきなり何だと思うかもしれないが、ちょっと聞いてほしい。

 

 昨今の創作物では細っこいエルフやら細腕の女の子キャラ辺りが使っているイメージが定着しているが、突き詰めれば弓は筋肉isパワーを体現している武器だ。

 現代科学の粋が集まったアーチェリーなどの機械弓などであれば、或いはよく分からない魔法などの不思議パワー等があれば、過度な力は不要だろう。

 しかしこと洋弓や和弓などになれば、弓を引くのに十数キロから数十キロの力が必要になることも少なくない。

 

 しかるに、弓とは当てるための器用さと弾道計算の為の頭脳、そして何より圧倒的なパワーが必要であり……必然、森の賢者ことゴリラこそがその担い手の最適解である。古事記にもそう書いてあるし、百年戦争史にもそう書いてある。

 

 よって──

 

「俺の答えは、これだ!」

 


 PN:ヤブサメボーゲン2035

 称号:βテスター

 種族:獣人(猿)

 Lv:1 所持金:150 G(ギル)

【ステータス】

 HP:81

 MP:65

 SP:93

 Str:16  Dex:15(17)

 Vit:5(7)Agl:14(16)

 Int:5    Luk:10

 Min:5

【スキル】

《弓Ⅰ》《領域魔法Ⅰ》

《隠密Ⅰ》《狙撃Ⅰ》《識別Ⅰ》

【装備】

 頭:なし

 胴:なし

 右手:初心者の大弓

 左手:初心者の弓籠手(Vit+1 Dex+2)

 腰:なし

 足:初心者の脚衣(Vit+1 Agl+2)

 アクセサリー(1/10)

 ・矢筒


 

 フルゴリラはちょっと嫌なので妥協。

 選んだ種族はStr・Dex・Agiが高めに、Int・Minが低めに設定されている獣人(猿)の男性型。それをVitの値を減らして上記3ステータスを強化(ゴリラ化)した。

 なんだかんだで、人が戦いのために生み出した道具を使うには人型の方が都合がいいのだ。剣や槍なら兎も角、こと2本の腕と弦を引く距離が必要な弓なんて武器は特に。

 

 そうして完成したのはヒトミミの部分がサルミミになり、長い尾を持った中肉中背の男キャラ。顔はリアルの自分とは微妙に印象が違い、髪がニホンザルテイストな栗毛の短髪。

 デカい弓と矢筒を背負い、スタート地点が街中であるため下半身の装備だけはしているが、その姿は……まあ、端的にいって不審者である。

 

 胴装備は犠牲となったのだ……初期装備として選べる中では割高な大弓の資金、その犠牲にな。願ったデカい弓のためだ、半身裸くらい暫くは甘んじて受けようじゃないか。ネトゲじゃ珍しいことでもないし! ないし!

 

「しかし、βテストの御礼としてスキルが引き継げるとは」

 

 予想外だったのはその点。

 まるでさっさと最初の街を出て遊んでくれと言わんばかりに、βテストプレイヤーには特典が用意されていた。

 具体的には「資金の引き継ぎ」

      「任意のスキルを1つ引き継ぎ」

      「任意のアイテムを1つ引き継ぎ」

      「課金専用強種族選択権」

 の4種類から何れか1つ。

 お陰で便利だった《領域魔法》のスキルを、1つ下位の《測量魔法》から鍛え直さないで済んだ。熟練度はリセットされたようだが、何か意図を感じざるを得ない。

 

「……まあ、普通に遊べばいいか」

 

 逡巡は一瞬、難しいことは考えずにそのままキャラクリエイトを完了させる。考察やらなんやらは、やりたい人に任せておこう。

 

 因みにスキルに関しても大抵のゲームと同じだ。

 自分を強化したり、武器や魔法を効果的に使えるようにするアドオンのようなもの。プレイヤーの行動やスキル自体の熟練度など、様々な条件に応じて進化・変形していく。

 引き継いだ《領域魔法Ⅰ》の例で言えば、初期選択が可能な《測量魔法》を一定時間使い続け、かつ熟練度が(10)に達すると特定のアイテムを消費することで進化出来る──といった形だ。

 

 選んだスキルの内訳は

 

 《弓》──武器スキル、ダメージと命中ボーナス。(アーツ)解禁。技使用時SP消費。

 《領域魔法》──探知系の魔法と、範囲を指定して多少有利効果(バフ)がつけられる。MP消費。

 《隠密》──所謂ステルス機能。起動中SP消費。

 《狙撃》──遠距離攻撃の射程・威力・ダメージボーナス。ただし静止の必要性あり。起動中SP消費。

 《識別》──対象としたヒト・モノの名前、レベルなどを瞬間的に識別出来る。レベル差で失敗する可能性あり。使用時SP消費。

 

 初期で選べる個数は5。レベルが5の倍数になると1枠ずつセット可能数が増え、確認済みの最大セット数は10。取り外しておけるのは通常10。大体それくらいで組み合わせることになる。

 

 基本的なコンセプトは探索と遠距離特化。

 

 隣についてる数字は熟練度の目安みたいなもの。自己強化系やステータスを強化するスキルはあるが、ひとまずはこれで完成だ。ファンタジー大自然の満喫、その目的をブレさせるつもりはないのだから。

 

 最後に装備だが。

==============================

【初心者の弓籠手】

 Vit +1

 Dex +2

 耐久値:∞

============================== 

【初心者の脚衣】

 Vit +1

 Agl +2

 耐久値:∞

==============================

【矢筒】

 矢を入れて置くための筒。

 入れておく限り基本的に、矢は望まない限り落ちることはない。

 耐久値:∞ 装填数:24/24

==============================

【初心者の大弓】

 冒険を始めた初心者が使う弓、その中でも力自慢の者が手に取るであろう剛弓。特段特別な効果はないが、矢の射程と威力は通常の弓とは比べ物にならない。

 耐久値:∞

==============================

【通常矢】

 一般的に流通している矢(鏃:鉄製)

 ダメージボーナス:Str×1.0

 耐久値:100/100

==============================

 性能こそ最低限なものの、使用中に壊れるということはないらしい。

 余った資金で矢は追加購入して、矢筒1つに入れられる限界の24本に。大弓の都合上回収は絶望的だが、これだけあれば最初は困るまい。

 

「これでよし!」

 

 キャラクタークリエイトお疲れ様でした

 ヤブサメボーゲン2035様の旅路に幸多からんことを!

 

 そんな文章を最後に強い光が辺りを満たし、エレベーターに乗っているような浮遊感が俺を包み込んだ。




 なお、キャラクリ時点でステータスを0にすると、その値に関する設定が半減するペナルティがあります。
 Str→物理ダメージ半減
 Vit→物理被ダメージ倍増
 など。



【参考データ】
 種族:獣人(猿)
【ステータス】
 HP:84
 MP:65
 SP:90
 Str:13  Dex:13
 Vit:10  Agl:14
 Int:5  Luk:10
 Min:5

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