元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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落ち着いて物書き出来る環境が!!
ない!!!
私の体力もない!!!!


20話 イベントの途中だが特殊クエストだ!

 

「レッツゴー月の彼方まで! オーバーブースト発し──ぐえ」

 

 クローニンの背負うアイテムが完全に起動したと思わしき瞬間。背負った当人に潰れたカエルのような声を漏らさせつつ、殺人的な加速が俺たちを襲った。

 

「お、おぉ──ッ!?」

 

 思わず吹き飛ばされないように全身でしがみつく中、クローニンエンジンは更に出力を上昇。アフターバーナーまで噴射しながら加速、加速、加速。

 そうして遂に、相当な重量があるアブっさんのボディが推進力に負け──空を飛んだ。

 

「ぐぽん!」

《緊急離陸モード起動、とマスターは仰っています》

 

 そんな最中、アブっさんが両手×2セットの大盾を真横に向けた。言葉から察するに多分飛行機の翼的なサムシングなのだろうが、そんなことをしても墜落するだ、け──?

 

「……おい、どうして、揚力が、発生している……?」

 

 ──な、筈だったのに。

 

 アブっさんがぁぁ!

 (風を)捕まえてぇぇ!

 アブっさんがぁぁ!

 視界端ぃぃっ!

 攻撃受けでぇぇっ!

 まだ加速ぅぅ!

 アブっさんがぁ、飛んだぁぁぁぁ!!

 

 どういうわけか大盾の翼は風を掴み、完全になる離陸態勢に移行を完了。乗っただけ合体を果たしたアーマードタンクはtakeoff。地上10m程の高さで飛翔を開始した。

 

「グポポ、グポーン」

《グポポ、油断したな。大盾とはこういうものだ、とマスターは仰っています》

「クソォ、そうだったのか……!」

 

 しがみついた姿勢のまま、思わず尻尾で甲板……アブっさんの戦車部分を叩く。なんというか、なんというか、謎の敗北感が凄い。

 

()っ……まはまはへふね(まだまだですね)やふはめ(ヤブサメ)ほほ()はへ()ほは(とは)ほふひふほほれふ(そういうものです)

「……ところでその口からはみ出してる物は?」

はっひほんへひは(さっき飛んできた)せひ()へふ(です)へひほ(海老の)はひ()()()()はかはか(なかなか)ひへまふ(いけます)

 

 船首……船首?側でガイナ立ちをしているFluoritさんにそう言われてしまえば、まあそういう物だと納得するしかない。アブっさんに飛ベル津バサ……つまりメタカードも完備していると。くそぅ、序盤中盤隙が無い。

 

「グーポン」

《それより弾バカ、とマスターは仰っています》

「なんです?」

「グッピガン」

《なんかいい匂いだけど、ボディ押しつけられてて前が見えない。ハラスメント警告コードで。と、マスターは仰っています》

 

 なんか面白そうな雰囲気に見上げれば、アブっさんヘッドにしがみ付く弾バカの姿があった。コアラかな??? 俺やFluoriteさんのようなパワー型が全力でしがみ付かなきゃならない以上、限りなく合理的な固定方法とは思うけど。

 

「おやおや? おやおやおやおやぁ!?」

 

 明らかに物理的にもレスバ的にも絡む相手が出来る以上、この集まりでそれは悪手だよなぁ……

 

「誘惑したらムッツリですね? お可愛いこと。ほらほら、もっと押し付けていい思いをさせてあげましょう!」

「グポン」

《いや別に、本性知ってるから……とマスターは仰っています》

 

 確かにSNSにべろんべろんに酔っ払ったまま突撃してきたり、定期的に弾幕ゲーに対して発狂してたり。なんかそういう枠じゃないのは実によく分かる。

 

「くっ、このままじゃレディーとしての側面の沽券に関わります。ヤブサメ! Fluorite! クローニン! ジェットストリームアタックを仕掛けますよ!」

 

 だか許せアブっさん。既に形成されてる女子コミュニティと対峙した時、数的劣勢に陥った男子には人権も尊厳も存在しないに等しいのだ……自己防衛するには乗るしかない、このビッグウェーブに!

 

 変声仮面、スイッチON!

 

 喰らうがいい。男子2女子1性別不明1(今は全員女子ボイス)による、全方位あまあまASMRのクロスファイアを!

 

 なんとか加速に耐えつつ、アブっさんの耳元に寄って──

 

ねえ、弟クン。今から私たちとイ イ コ トしましょう……?

「グポポポポン!?」

《ウワーッ! お姉さんボイス。裏切ったな貴様ぁ! とマスターは仰っています》

 

 くくく、壁役(タンク)といえど心の守りは思春期男児。耳元で甘々ボイスの破壊力には耐えられまい(1敗)五感の1つ……いや今は味覚以外全ての主導権はこちらにある。オネショタの主導権はショタに握らせるな!

 

「いっつもいっつも馬鹿にしてくれてますけど……弾幕だけじゃなくて、私だって女の子なんですよ。ちょっとはそういう風に見てもらえないと……自信、なくなっちゃいます」

「ブッピガァン!?」

《ウワーッ! 嘘八百!? だが身体は正直ですね、マスター》

 

 凄い、このAI。形勢不利と見るや自分の主人を裏切りやがった。というか、段々何か人間臭くなってきてないかこの(AI)。大丈夫? シンギュラりったりしない???

 

「ふふふ、食べちゃいたいくらい可愛い反応ですね」

「ブブブブ!!」

《ウワーッ! 1人だけ食欲の赴くまま! とマスターは仰っています》

「──解せませんね」

 

 ただFluoriteさんのはそう取られて仕方ないと思う。今でもちょっと、目をやられた時のことには複雑なナニカがあるし。

 

けここ……

「グポン」

《今潰れた蛙みたいな声しなかった? とマスターは仰っています》

 

 クローニンはよくやってる。

 が。ピクリとも飛行姿勢が崩れないのは、アブっさんを称賛すべきか俺たちの力不足を憂うべきか。…………アブっさん視点にしてたチャンネル、大盛り上がりだから前者っぽいな! ヨシ!

 

「──ムムッ、コレはふざけてる場合じゃなさそうですね」

 

 などと遊んでいること数十秒。全方位に警戒を飛ばしていたらしき弾バカが、わざわざそんな警告を飛ばしてきた。

 

「領域魔法の探知には何も引っかかっていないですが」

「見れば分かりますよヤブサメ」

 

 言って弾バカが指差した方向にあるのは、確実に俺たちを捉えている2本の光条。とは言っても地上から伸びるこれには、攻撃性やデバフやバフでもないようだが。

 

「グポーン!」

《ガイドビーコンか何かだコレ! とマスターは仰っています》

「……ふむ。食べれるものでないですか」

 

 Fluoriteさんが食べれない以上、特に実体があるものでもないと。こんなイベント交戦中に出すものでないし、明らかに罠かイベントの2択だ。

 個人的には乗り込みたいが、あくまで今回の特攻はクローニンが発案者。意見が割れる前に当人に答えを出して貰わねばなるまい。ブースターに押し潰されてるけど。

 

ーギルドチャットー

 ・

 ・

 ・

 クローニン:突っ込んじゃって下さい!

 †絶対の楯戦車†:本当にいいの?

 クローニン:Go!Go!Go!

 

 などと思考を捏ねくり回している内に、我らがアブっさんはジェットコースターもかくやな角度で急降下。ガイドビーコンの発信源と思しき、森の中へと向けて一直線に加速を開始した。

 

かぺ……

なんですクローニン。ギルドチャットを見ろ? ああ、そっちでやり取りを

 

 全身にかかる強烈な落下感に耐えながら操作してみれば、クローニンが思ったよりノリノリで文字を打っていた。そんな自動ドアに挟まったカナブンみたいな姿勢で打てるんだ……

 

ーギルドチャットー

 クローニン:Go!Go!Go!

 クローニン:前方から複数の高エネルギー反応!

 

 

 とはいえ索敵に集中してくれるのはありがたい。

 そう、あくまで此処は戦場。これまではX軸的な位置のズレがあったお陰で攻撃が届いていなかったが、絶賛急降下中の今そのメリットは消え去っている。

 そんな中、ガイドビーコンなんて狙いやすいものに沿って降下しているのだ。必然、敵の攻撃のみならず、人の邪魔をすることが生きがいな連中からの攻撃も殺到することになる。

 

ーギルドチャットー

 クローニン:前方から複数の高エネルギー反応!

 クローニン:タマとヤブサメは撃ち返しで対応!

       アブは抜けてくるのを防御、

       Fluoriteは撃ち漏らしの迎撃!

 

 

 

「「了解!」」

 

 だがこちらも司令塔が復活した以上、遅れをとるようなことは──ない!

 弓矢という武器の都合上、俺が前面を。弾バカの弾幕が後方から迫る攻撃に、特に意見を交わすこともなく対応する。無論その全てを弾けはしないが、Fluoriteさんやアブっさんという銃後の守りも万全。

 

「楽しいですねヤブサメェ! 私の愛する弾幕ゲーそのものですよ!」

「嘘つけ密度が全然足りないゾこの程度ォ!」

 

 しかしこういう雑なシューティングは、適当なレスバしながらの方が効率よく進められる。これが、これこそが、仲間の力!

 

「……ん、1人大物が来ますね。いただきます」

 

 そんな中、どちらの意味にとって良いのか分からない言葉を残してFluoriteさんが跳躍し……否、飛び立った。

 その背に半透明ながら確かな竜の翼を広げ、地上から一直線に打ち上がってきたプレイヤーに突貫する。見た限りの種族は人間、武器は短弓。領域の反応は黄色。最前線より奥地だけあって、割と同程度の強さらしいが……

 

「手前らだけにいい思いさせてたまるか! 俺は──」

 

 「ご飯が喋ってる」

 

「──ヒュッ!?」

 

 向けられた純粋な食欲に気圧され、次の瞬間にはFluoriteさんの夏夏しい混天截(こんてんせつ)にぶち抜かれた。

 

「あー……相手が悪いですねアレ。Fluoriteと戦うなら、自分が被捕食者である自覚を持たないと」

「人間、食欲を向けられるなんて文明社会内じゃありませんもんねぇ……」

「グポン」

《吸血鬼とかいたら別なんだろうね、とマスターは仰っています》

 

 かつてのVR黎明期にネットを汚染した翡翠色のミーム、その直系にいるのがFluoriteさんなのだ。見た目や声が可愛らしいだけで,本質は人の知恵を持った肉食獣のソレに近い。くわばらくわばら(カニバラカニバラ)

 

「この世の全ての食材に感謝を込めて」

「ちょ、ちょっと待ておま、クソ女! 名乗りくらい最後まで──」

「いただきます」

 

 突き立てた混天截の柄に立つ強者ムーブをしながら、哀れな獲物にFluoriteさんが両手を合わせる。アイサツも食材への感謝も大事,古事記にもそう書いてある。

 

「ああーっと! Fluorite選手、躊躇いなく頸動脈を狙って噛みちぎった──ッ!! どう思いますかヤブサメ」

「人の身でデスロールまでカマしてる辺り、尋常じゃない食欲だと思います」

 

ーギルドチャットー

 クローニン:Fluoriteは撃ち漏らしの迎撃!

 クローニン:ソレ、何味でした?

 Fluorite:3種のチーズ牛丼温玉付きみたいな

      なんとも言えない味してます   

 

 

「グポン」

《量的に胃もたれしそうだね、とマスターは仰っています》

 

 などと感心していたら、名前も知らない食料1号を蹴り落とし、飛来した食料2号へ向けて全力でFluoriteさんが飛翔を始めた。捕食で回復は完了してるし、多分あのままビュッフェ形式で暫くは遊んでいられるだろう。

 

ーギルドチャットー

 Fluorite:6ede! 6ede!

 クローニン:そろそろ地上も近づいてきましたし

       さぁ……頼みますよアブ 

 

 

「グポポポン!」

《任せてクローニン、とマスターは仰っています》

 

 そして遂に、この無茶な突撃作戦は最終フェーズに移行する。

 

「弾バカ、足場!」

「ガッテン承知です!」

 

 背中のブースターをパージしたクローニンの合図に合わせ、これまで散々遮蔽物として使わせてもらったアブっさんから離脱。吹き飛んだクローニンを回収しつつ、弾バカの発生させた障壁魔法を足場として着地する。

 

 パーティ単位で行動していると忘れがちだが、アブっさんは本来自己完結型の壁役(タンク)構築。その本領は、受けたダメージの反射と自己回復にこそある。

 それはつまり、この『加速から墜落まで全ての要因を他者(クローニン)が負っている落下ダメージ』も、一定範囲内に反射・ばら撒くことが可能ということ!

 

「喰らえボク達の友情コンボ!」

「空対地弾道プレイヤー誘導ミサイル!」

「FOX2!」

 

 3人でいい感じにタイミングを合わせ叫んだ瞬間、アブっさんが消えた森の地点が大爆発を引き起こした。大地が抉れ、木々が砕けながら吹き飛び、至る所からプレイヤーの消滅演出が垣間見える。

 爆発半径は50mくらいだろうか。割と反射スキルのダメージ反射圏内って、狭いようで広いんだなぁ。

 

「いやぁ……作戦を立案しておいてなんですが、結構ヤバめな火力してますね」

 

 産まれたての子鹿のように手足をガクガクさせながら、冷や汗を流してクローニンが言う。システム上やれるんだから検証したいとは言ってたけど、元凶がそんな顔しちゃいかんでしょ。

 

「確かに落下ダメージ関連に修正入りそうな威力してますね」

「……外部ツールで軽く計算したんですが、PL換算で大体2000〜3000ダメージがばら撒かれる計算ですよコレ」

「うわぁ」

 

 後衛としては高めの俺のHPが大凡190、壁役のアブっさんですらスキルによる増加込みでHP総量は360くらいしかない。そう考えると破格も破格の威力と言えるだろう。修正はよ。

 

ほれは(これは)()ひゃ()()ひゃ()ふほい(凄い)ほほに(ことに)なっへ(なって)まふね(ますね)

「イヤイヤ、マッタクダゼ。ユウドウコソシテヤッタガ、マジデソノママツッコンデクルナンテナ」

 

 けれどこれで探索も少しは容易になっただろう。そんなことを思った直後のことだった。

 聞き慣れた何かを食べている最中の声と一緒に、まるで聞き覚えのない声が響いた。

 

「!?」

 

 何事かと振り返れば、そこに居たのは半透明に透ける少女。領域の探知には一切の反応がなく、ネコ科の子供のようにFluoriteさんに咥えられたその存在は紛れもなく──

 

なほ()()ひゅーへい(幽霊)ひょうひょ(少女)なんひゃ(なんか)いひゃのへ(居たので)ふはまえへ(捕まえて)ひまひた(みました)

「ヘヘッ、ツカマッチマッタゼ」

 

 謎の幽霊少女という語感から感じる儚さは欠片もない、しかし噂通り視覚を除く一切に反応がない存在がそこには居た。




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10代中〜後半の少女が、半透明の10代前〜中頃の少女の首筋にガッツリ噛みつき保持している図(ぷらーんとしている)
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