元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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23話 それゆけ愉快な仲間たち①

 

 そうだな──そう、まず結論から話そう。

 

 弾バカが覚醒してパーリナイ☆↑↑した結果、相手にもならず全てが片付いた。

 

 もう少し詳しく言うのであれば、うっかりユーちゃんが起動させてしまった防御陣地による弾幕形成。その一切が突如興奮した患者(弾バカ)の行手を阻むことが出来ず、悲しいくらいなす術もなく蹴散らされた。

 

 超スピードだとか差し込みだとかそんなチャチなもんじゃない、もっと恐ろしいものの片鱗がコンニチハしていたぜ……

 確かに本来の戦場(弾幕シューティング)と比較すればカスみたいな密度の弾幕だったけど、だからと言って鼻歌混じりで突破するのはどうかと思うんですよ元日本一さん。

 

 それで、だ。

 

 ユーちゃんがダンジョン入り口でポンコツを発動こそさせたものの、さして苦労することもなく。俺たちは、未知のダンジョンに突入することに成功した。

 

 してしまった。

 

 してしまったのが、完全に罠だったと誰が気づこうか?

 

 マップ名すら表示されないユニークダンジョン(仮称)を探索すること数分。まだ真新しいものが何もない、船内としか言いようのない通路を進んでいる時──ソレは、現れた。

 

 音もなく空中を滑るように泳ぐソレは異形も異形。

 

 胴体と思しき場所は、人の胴程もある太い三叉の棒。裏返した三脚のように、地面へ頂点を向けて骨組みだけの三角錐が形成されている。

 頭と思しき場所は、その推の中心に固定される逆さにした金魚鉢の様な硬質の物体。内側は何かは悍ましい雰囲気の蒼に満ち、目の様な黄色い一対の光が深奥には揺らめいている。

 そして三角錐の頂点を囲む様に回転しているのは、計6つの鬼火(ウィル=オ=ウィスプ)。青白く生気を欠いた雰囲気を放つ鬼火は、あからさまにスゴイ=キケンな雰囲気(アトモスフィア)を醸し出している。

 

 次いで、表示された名前は【The Heavenly will‐o'‐the‐wisp】

 

 あのゴブリンロードと同じ、ボス特有の英語表記の名前だった。

 

「オ、サッソク“サイジャクカク”トノエンカダナ。

 サッサトタオシテ、サキススンジマオウゼ!」

 

 この時の俺たちは、まだ知らなかったのだ。

 ユーちゃんがポンコツとうっかりの性質を併せ持つことを。

 そして俺たちは見誤っていたのだ。

 未発見のユニーククエストというものの難易度を

 

 

「あ、あー、あー! ん゛ん………ではここで一曲。

 オープンワールドあるある大学付属『適正レベルオーバー高校』校歌! 斉唱ォ!!」

 

「「うわぁぁぁ!!? クローニンが壊れたァァァ!!」」

「グポン」

《うわぁ、とマスターは仰っています》

 

 ──()()()()4()0()()。クローニンの理性が壊れた。

 

 元々建てていた予定の通り、ダンジョンに侵入しての初戦闘。

 艦内システムを操るというユーちゃんの荒技により、隔壁を閉じ孤立させた最弱格の相手との1vs5。そこまでの有利を取っておきながら、既に俺たちはそれだけの時間とリソースを浪費させられていた。

 

「イヤァ、オマエラナライケルトオモッタンタガナァ」

ひろん(理論)ひょー()ふぁ()ひへる(いける)()ほほい(思い)はふよ(ますよ)ひろん(理論)ひょー()ふぁ()

 

 Fluoriteさんの剛槍による連撃が敵を削り取り、

 弾バカの一斉射撃が穿ち抜き、

 アブっさんが大きくHPを削られつつも守りを固め、

 隙を突いて最大火力で俺が狙い撃つ。

 その指揮を取りながらクローニンが回復とバフを飛ばす、ゴブリンロードすら完封した基本戦術にして最強戦術。

 

 それが目の前の敵には……【The Heavenly will‐o'‐the‐wisp】には通用していなかった。なんか長いし鬼火でいいや。

 

朝日が昇る窓の外〜!

 適正レベルは戦闘が成立するレベルだっ()ってんだろ

 

 鬼火の主な行動パターンは5つ。

 

 ・巨体を使っての突進

 ・身の毛もよだつ金切り声(デバフ付き)

 ・鬼火の投擲?発射?による射撃

 ・鬼火の補充兼のバリア展開

 ・鬼火を吸収することによる自己回復

 

 たったそれだけだ。

 取ってくる択は少ないし、なんなら予備動作も分かりやすい。なるほど、確かに最弱の敵と言えるだろう。

 

 ステータス差があり過ぎるって点を除けばなァ!!! 

 

 こちらの攻撃は7割近くが最低保証ダメージで、

 逆に攻撃を受ければ瀕死になり、

 攻撃・防御・回復と隙がない鬼火は時間で補充される。

 

若き生命(いのち)遊戯(ゲーム)に燃やし

 プレイヤースキルにだって限界はあるんだよ

 

 ──そんな相手に40分。

 戦闘を続けた結果、削れた鬼火のHPは7割弱。

 こちらが削られたリソースは大体7割強。

 

 うーん……参った。

 ちょっと勝てない。

 

電子の海へと今飛び込もう!

 MMOなんだから無理があるだろ

 

 〜おぉ、我らが適正レベルオーバー高校〜

 〜適正レベルオーバー高校〜

 ……なんか死ぬほど縁起悪い高校の名前だなこれ。

 

「ちょっと集中出来ないんで静かにしてくれませんかクローニン」

「!?」

 

 そんなショックを受けた様な顔をしないで欲しい。

 天然モノのFluoriteさんを除いて、割と真面目なシーンでは俺たちだって真面目なのだから。同調圧力先輩をするぞこの野郎、この女郎。Yeah。

 

「……っ! そうですね、ボクとしたことが。学生ではない身で高校の校歌なんて……」

 

 ハッとした様子で首を横に振り、澄んだ目でクローニンが呟いた。

 ヨシ、正気に戻ったな。現場猫もこれで安心だぜ!

 

では改めて、オッぺラスッチョンコーポレーション社歌を──

 

 どうして大丈夫って言ったんですか(AA略)

 チクショウ、こうなったら仕方ない。唸れ俺の右手、完全没入(フルダイブ)VR版CoCのセッションで鍛えた黄金の右ストレート!

 

「精神分析パンチ!」

 

 ダメージ量は低くなるよう加減した。だがノックバックはどうしようもなく、力に押されてクローニンは弾バカの方へ。幾ら楽しいフィーバータイムといえど、無論ヤツがそんな隙を見逃すはずもなく……

 

「ナイスちんちん!!」

「弱酸性!?」

 

 スパーンと小気味よく、急所を捉えて振り抜かれた弾幕のキューブ。

 その日、人類(の半分くらい)は思い出した。大体小学校低学年辺りで一度は経験する、あの絶望的な痛みの感覚を。

 

 ……あ、ふらつきながら戻ってきた。

 

 今は違うが元々同性。せめてもの情けだ、優しく受け止めてあげよう。矢も心許なくなってきたし。

 

「ぁ……ヤブサメ」

 

 蚊の鳴くような声で、そのまま静かにクローニンが身を寄せてくる。

 えっ、ちいさ、やわ……いい匂い……元の人物知ってるのに、アッアッちょっとヤバ。

 

みひぇ(見て)ふらはい(ください)ひゅーひゃん(ユーちゃん)ふぁれは(アレが)ひょにゆー(世にいう)ひーふいはれひ(DV彼氏)()ほの(その)はのひょ(彼女)へふ(です)

「コワイナー、トジマリシトコ」

 

 謂われない誹謗中傷は流石にやめて欲しいんだが?

 

「ふふ……聞いてくださいよ。“ない”筈なのに“ある”痛みがするんです……いたい……鈍痛が……」

 

「グポン」

《薔薇で作った百合の造花、実在したんだ……とマスターは仰っています》

 

 サンキュー親愛なる煽りカス共。

 

 美少女の涙目上目遣い+弱々しく身を寄せるかいうリーサルコンボは、確かに健全な男子学生の理性に10割入れていた。TSモノが流行るワケだ、破壊力が高すぎるっピ。

 

「まあそんなことはどうでもいいとして」

「フンッ!!」

 

 ……ッ! ぁ……!!

 ォ──ふ、ぐ、ぉ……!?

 

【ハラスメント警告】

 システムが貴方に対し、性的なハラスメント行為が行われたことを確認しました。確認してください。

 〈行為内容〉

 場所:ユニーククエスト特殊ダンジョン内部

 日時:××月××日××時××分(タップで開示)

    04秒前

 対象:加害──PN:クローニン

 

 心当たりがない場合、このメッセージは消去して構いません。

 通報しますか? Yes/No

 

「ナア、ナンデコンナキョクメンニナッテンノニ、アイツラハ“スンゲキ”シテンダ?」

「そりゃあ、弾幕の導きがあるからですよ」

ほいひい(美味しい)ほはん(ご飯)はのへ(なので)

「グポーン!」

《そう言う集まりだからね、とマスターは仰っています》

 

 腹の底に響く鈍痛に耐えながら、震える手でNoを選択。システムウィンドウ自体を閉じる。

 

「ワカンネェ、ニンゲンガゼンゼンワカンネェッ!!」

わふぁりまふ(分かります)わふぁりまふ(分かります)

「オメェガイチバンリカイフノウナンダヨ!!?」

 

 可哀想なユーちゃん。ひとえにてめェが酔った日本人に助けを求めたせいだが……

 

「ふー、ヤブサメ殴ってスッキリしました」

 

 まるで憑き物が落ちたような顔でクローニンが呟く。お陰で凝り固まった思考も解れましたと言ってる辺り、犠牲は無駄じゃなかったのだ。多分。

 

 『ゴヴォ……』

 

「グポン!!」

《叫びが来るよ、とマスターは仰っています!》

 

 などと後衛組が遊んでいる間にも、当然だが戦局は進み続けている。

 パーティが受けるヘイトを一身に背負い、最前線で壁となっているアブっさんから飛んできた警告。粘性が高い液体が泡立つようなその音は、金切り声の前兆動作。

 

「方針転換です。コレを防いだら、ヤブサメは剣状矢を解禁! 弾バカはMP使用制限解除、Fluoriteも最大火力のブレス解放を許可! 一気呵成に打ち倒して、プランBに切り替えます!」

「「了解(ひょうはい)!」」

「グポン!」

 

 初めのうちは驚異だった全体攻撃デバフ付きも、40分戦い続ければ対処は慣れたもの。

 アブっさんが大盾二刀流を生かし、〈大盾〉系列の「味方のダメージを軽減する」(アーツ)と「味方のダメージを自分が引き受ける」(アーツ)を同時起動。

 併せてクローニンが〈光魔法〉系列の「状態異常無効化(1回)」を付与する魔法と「単体回復」魔法の準備をして対策は完了。

 アタッカーである弾バカ、俺は動きの止まった相手に狙いを定め、Fluoriteさんは被ダメを無視して突撃を敢行する。

 

 戦闘開始10分程度で分析を完了し、確立させた反撃のルーティン。

 

 これまでは消耗抑制の為に半端な反撃しかできなかったが──

 

ほひゃ(おや)はふはへ(ヤブサメ)()はへひ(前に)?」

「理論値火力出すには、そうしないといけないので、ね!」

 

 これまでラストエリクサー症候群(それを使うなんてもったいない)で抜いていなかった剣状矢を右手に、大弓を左手に。走り出したFluoriteさんの隣を駆け抜ける。

 

 ──既に作戦は[いのちだいじに]ではなく

        [がんがんいこうぜ

 

 押せ押せゴーゴーの精神でいざ参らん!

 

「オイ、“コウエイ”アタッカーガ“ゼンセン”ニハシッテッタンダガ!?」

「ほう、流石はヤブサメ。アレこそはボクらの検証成果」

「知っているのですか雷で……クローニン!」

「ふふ……左様!」

 

 一方、後ろではお約束が始まっていた。  

 解せぬ。いや楽しそうだけどさ。

 

「《剛弓》スキルを用いた理論値火力は、スキルと(アーツ)の複合技。

 マスタリーLv7で取得可能な技《剛弓・矢斬》による火力と命中バフを、攻撃を直撃させることにより1.2倍の効果で起動。

 続けて技《剛弓・舞奉》で打撃して、1.3倍の効果でクリティカルバフを起動。

 そのあと完全静止《狙撃》でバフを盛るペコした後、《剛弓・獄火》による防御最大30%貫通射撃になります。

 FEV検証班有志Wiki『各武器系スキル・アーツの理論値火力組み合わせ参考例』より!」

 

「説明どうも!」

 

 クローニンの完全詠唱構文を背に受けながら、ぽこじゃか飛来する鬼火を壁も足場に回避。肉薄した勢いのまま、抜き放ったままの剣状矢に(アーツ)を乗せて斬撃する。

 

「ひとぉつ!」

 

 硬い手応え。ドット単位でしか減らない鬼火のHP。

 けれど確かに必要な火力と命中バフは、自分のステータスに点灯している。

 

「ふたぁつ!」

 

 そのまま足を切り返し、現実ではできない弓本体で相手を殴りつける仮面ライダークラッシュを敢行。僅かにノックバックさせ攻撃動作を中断させながら、自分にクリティカルバフを付与。

 

「3!」

 

 そしてその場で完全静止。

 大弓を鬼火の中心へ突きつけ、剣そのもの……鋼の塊である剣状矢を大弓に番え、長く大きく弦を引き絞る。

 ぎち、ぎち、と弓から聴こえるのはこれまでとはレベルの違う悲鳴。

 

「この距離ならバリアは張れないな!」

 

 本来なら揺れ動く《狙撃》スキルのレティクルは、当然のように完全静止。呼吸を抑え。心を鎮め。荒れ狂う“暴”を解き放つ。

 

「技《剛弓・獄火》」

 

 刹那、マズルフラッシュの如く噴き上げる焔のエフェクト。噴き上げる火の粉の中、咲き誇るは紅に燃える華。その中心を撃ち抜き、赤熱した剣状の矢が飛翔する。

 これで物理属性しかないってマ? 

 

 『──ッ!!』

 

 ボパン、と弓らしからぬ音で発射された剣状矢は、鬼火のHPを1割吹き飛ばしながら胴体を貫通。鬼火があげた悲鳴を聞きながら、ダンジョンの壁に直撃して爆散した。

 財布には非常に痛いが、やるべきことはこれで十分。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、なにせほら。

 

「フグ刺しは無理ですが、洗濯機なら今のリソースでも!」

 

 洗濯機のように渦を巻く弾幕が鬼火を弾けさせ、

 

ふわらふぉふぁひーん(ぐわらごがきぃーん)

 

 馬鹿でかいFluoriteさんの戟がホームランスイングで振り抜かれた。

 残り2割も残っていた鬼火のHPは、アワレにも爆発四散。戦闘終了と相なったのだった。……あれ、ドラゴンブレスは?

 

 HPが12/192

 MPが5/80

 SPが23/215

 

 ……まあ勝ちは勝ち!

 大体みんな同じ被害で死にかけているけど。

 なんで負けたか明日まで考えといてください。

 

 〈レベルアップ! Lv36→38〉

 〈5件の称号を獲得しました〉

 〈スキルアップ! 8件〉

 〈レベルアップしたスキルを確認してください〉

 〈ステータスポイントを割り振ってください〉

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【フルダイブ版CoC】
 CERO:Z 基本プレイ無料 ソフト内課金あり
 名前の通りフルダイブでCoCが遊べるソフト。
 オリジナルのシナリオ制作の難易度は上がった(舞台を作る手間)が、コアなファンが極めて多い。
 野良でセッションを募集すると、APP18の美男美女が紛れ込んできたり、NPCの邪神がプログラムにない動きをする(シナリオを逸脱はしない)という都市伝説がある。

【ヤブサメ】
 一度だけこの世の者じゃないほど綺麗な女性と遭遇している。褐色奇乳は趣味じゃないので難を逃れた。
 クトゥルフ神話技能を5%持っている。

【クローニン】
 昔GMをしたセッションでNPCのニャルが勝手に動き出した。その時のセッションメンバーの半分と連絡が取れない。
 クトゥルフ神話技能を10%持っている。

【アブっさん】
 いつか普段つるんでるみんなと遊びたいなぁと思っている。
 未経験。

【弾バカ】
 TRPGより弾幕派。ネットの底に潜むリアルな陰陽の蜂と遭遇、知り合いのSeilというシューターと共に撃退したことがある。
 新たな形になっていない。

【Fluorite】
 発狂表で食人癖を引いてしまったので、隣のプレイヤー(APP18)を泣きながら調理してセッション終了した。タコみたいな味がしたらしい。
 クトゥルフ神話技能を所持していない。

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