元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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間に合った、間に合ったよバーニィ……



24話 それゆけ愉快な仲間たち②

 

 Q. あなたはオープンワールドゲームにおいて、適正レベルを大幅に超えるマップに迷い込みました。雑魚敵は全リソースを切って倒せましたが、その後探索を続けることはできるでしょうか?

 

 A.出来るわけねぇだろばーか!

 

 ・

 ・

 ・

 

[p.m.23:45(R(リアル))/p.m.23:15(G(ゲーム))]

[中央旗艦都市ケントルム・ギルドハウス]

 

 という訳で。

 

「死にましたね」

「死にましたわ」

「モノの見事に全滅しましたね、ボクら」

 

 鬼火戦後、特に語るべき何かはなく俺たちは順当に全滅したのだった。冷静に考えて、周りを封鎖してたとはいえ40分も戦闘してれば敵を集めるよねという話。

 ある程度の回復を済ませた後、いざ出発と扉を開けた先。待っていたのはモンスターハウス*1もかくやな敵の群れだった。

 クローニンと弾バカが秒速で消滅して、なるべく逃げたけど30秒くらいで俺も死亡。アブっさんとFluoriteさんはまだ戻ってきていないが、それも時間の問題だろう。

 

「……やはりやれますね、ドラゴンブレス」

 

 などと話している間に、目の前にFluoriteさんがリスポーンした。

 うちのメインダメージディーラーでも、あのモンスターハウス(仮)はどうにもならなかったらしい。まあ継戦能力高めとはいえ、後方支援が剥がれた前衛なんてそんなもんである。

 

「「「おかえりー」」」

はふぁいま(ただいま)ほほり(戻り)まひは(ました)

 

 3人で気の抜けた声をかければ、どこからか取り出したデカい骨つき肉を齧りつつFluoriteさんが席に着く。

 

 〈レベルアップ! Lv38→39〉

 〈スキルアップ! 8件〉

 〈レベルアップしたスキルを確認してください〉

 〈ステータスポイントを割り振ってください〉

 

 と、ちょうどそのタイミングでレベルアップのアナウンスが響いた。

 それはイコールで、1人の残されたアブっさんがあのダンジョンの敵を倒したということで──

 

「テテーン、シャアッ!!」

《道連れに出来たー! と、マスターは仰っています》

 

 ──嘘でしょ、アイキャッチ音声まで喋れるようになってる。

 くそっ、色々あった諸々の感想が全部吹き飛んだ。シャアめ、やってくれる。

 

「よくもまあ、道連れになんて出来たもんです。私たち5人でようやくの相手だったでしょうに」

「グポン」

《FF誘発させて削りつつ、反射ダメージを(アーツ)で確定ダメージにして無理くり通した。と、マスターは仰ってます》

 

 弾バカの疑問に、こともなげにアブっさんが答える。

 言われてみればあの状況なら、フレンドリーファイアの誘発はさせやすい。その上で防御ステータスを無視した確定ダメージをぶち込めるなら、なんとでもなる筈だ! ガンダムだし(効果音)

 

「さて、これで全員戻ってきましたが……」

 

 クローニンが僅かに言い淀む。

 これで普段なら、後は適当に反省会という名の締めに入って解散となるが……今日は、今回に限ってはそれだけで済まない。

 

「ユーちゃんには、申し訳ないことしましたね」

「そうですね……弾幕のお礼、言いそびれました」

 

 NPCはリスポーンしない。

 それがこのゲームにおける鉄則だ。それが覆るという情報は、検証班のデータベースをして見たことがない。

 つまり、辿々しくも日本語を覚え始めていたあのユーちゃんと再会することはもう──ない。

 

「あの攻撃の物量、多分ボクらのユーちゃんも……」

ひひほほれ(生き残れ)はへんへ(ませんね)

「ぐぽーん……」

 

 なんて、しんみりとした空気の中。

 

「イヤァ、イキノコレッテノガムリナハナシダヨナァ?」

「そうですよねぇ」

 

 何事もなかったかのように、机からニュッとユーちゃんが生えてきていた。

 

「えっ?」

 

 あまりにも自然に割り込んできたが故に、弾バカが素直に返事をし──ぴたりと、ギルド内の空気が固まる。

 

「──?」

 

 きっと、何かの見間違い聞き間違いだろう。

 幾らHPバーがないタイプだったとはいえ、俺やFluoriteさんの速度で躱しきれず、弾バカやアブっさんの装甲でも耐え切れなかった死地だったのだ。

 

「ドウシタヨ、ハトガマメデッポウクラッタミテェナカオシテ」

 

 ましてや、ピンポイントでギルドにリポップするなんて。そんなことある筈が──

 

「オイ」

 

 ──無言で両腕を顔面に突き込まれた。

 どうやらユーちゃんはオブジェクト透過を取得したらしい。目の前が見えねぇ。

 

「ウソダロ……!? カケラモドウジテネェッ!??」

「こちとら、目玉抉り出されて食べられてますからねぇ」

「ダレニダヨ!?」

 

 目は見えないが、嬉々としてFluoriteさんが手を挙げたのを感じた。そこそこ美味しかったらしいし、きっと満面の笑みを浮かべていることだろう。

 

「まあそんなことはいいとして」

「イイノカ???」

 

 いいのだ。

 

「ユーちゃん、死んだ筈じゃ」

「ザンネンダッタナァ、トリックダヨ」

 

 そうか、トリックか。なら仕方ないかな……仕方ないかも。

 なんて中身がまるでない会話をしている間に、残りのみんなも再起動が済んだらしい。食事中の約1名を除いて、全員が凄い勢いで動き出した。

 

「ぽっぽー!」

《死んじゃったかと思った、とマスターは仰っています!》

 

「私たちのしんみりとした時間返してくださいよ!」

 

「ボクとしては、なんでユーちゃんがここにいるのかを聞きたいのですが」

 

「マ、マッテクレヨ。コトバノコウズイヲ、ワットアビセルノハ。“ショウトクタイシ”ジャネェンダ、リカイデキネェッテ」

 

 そんな動きから逃げ出そうとしてか、スポンと顔面に埋まっていた腕が抜ける。おお、世界が、世界が明るい。

 

「レロ……この味は、ウソをついてる“味”、ですよ」

「ンヒィッ!?」

 

 未だうなじにガッツリと刻まれた歯型を舐められユーちゃんが逃げ出し、アブっさんが素直にそれを追いかけ、悪ノリした弾バカが弾幕を撃ち始め、胃が痛そうにクローニンが机に沈む。

 

 それは全滅前と何も変わらない光景で。

 

 だからこそ、問いたださねばならないことがある。

 

「うぇっほん!」

 

 室内に響いたのは、音に反し威厳もへったくれもない可愛らしい咳払い。さぞ配信も盛り上がって……ありゃ、配信切れてら。

 

「この場でまだ冷静な者として、ボクはユーちゃんに聞かなければいけないことがあります」

 

 さっきまでのおふざけモードではなく、キッチリとした検証班モードでクローニンが言う。

 その雰囲気を察し、一旦ユーちゃんを追いかけていた3人も動きを止めた。締めるところは締められるのだ、我々は賢いので。

 

「ンォ? ナンダヨアラタマッテ」

「さっきまでの話を聞いてる限り、ユーちゃん自身の認識では一度死んで蘇った感じでいいんですよね?」

「ンー、マア、ソウナルナ。リクツハワカンネェガ、キガツイタラコノタテモノニイタカンジニナル」

「一度死んで蘇ったことある?」
 

「あるある〜」
 

「グポン!」
 

《お黙り!とマスターは仰っています》

 

 賢くても自制心がある訳ではないのだ(手のひら返し)

 シリアスな空気って、こう、いい感じにぶち壊したくなるよね。

 

「敢えて酷い言い方をしますが、ソレがNPCとしての挙動に反してるのは理解してますか?」

「トウゼンダナ、イキカエッテルシ」

 

 なるほどつまり

 

 ・客観的に見て挙動が怪しくて

 ・当人(NPC)からしても怪しくて

 ・出力されてる結果もおかしいと。

 

 3アウトってところかな。

 

「GMコォォォォォル!!」

 

「五月蝿いですよヤブサメ。リアルもゲームも何時だと思ってるんですか」

 

ーギルドチャットー

 ・

 ・

 ・

 ヤブサメボーゲン2035:(GMコールしますね)

 クローニン:こいつ、直接脳内に!

 

ふぁ()ふんへひ(寸劇)ひへるはいはに(してる間に)ひふもん(質問)ふぁ()らいはい(大体)ふまへへ(済ませて)ほひ(おき)まひは(ました)ひょ()

「グポン」

《ぐう有能、とマスターは仰っています》

 

 質疑応答まで済ませている辺り、本当にそうとしか言いようがない。

 「GMコールする」と心の中で思ったならッ! その時スデに行動は終わっているんだッ! くるりと回転させられた手元のウィンドウには、

 

 Q.NPCが死亡した場合、蘇生することはありますか?

 A.いいえ、ありません。本作において、一部の特殊事例を除きNPCは蘇生しません。

 Q.目の前にそれっぽい事例があるんだけど(意訳)

 A.──精査完了、事例を確認しました。

  .バグ許容値を計測中です Now Loading....

 

 既にバグであると確定したやり取りが記されていた。

 これが世に言うバグ技確定ならぬ、システムなあな確定か。たまげたなぁ。

 

「ヴェ。テコトハ、モシカシテ“オレ”コノママジャ“バグ”トシテケサレルンジャネーノ?」

「助命嘆願の田代砲(だんまく)、準備は出来てますよ!」

「ヤメロォ!」

 

 だがそれはそうと、短いながらもユーちゃんは冒険を共にした仲間だ。バグなのではい消去、なんてことを見逃すつもりはない。

 1プレイヤーとして助命の嘆願を飛ばすくらいの、やれる限りは手を尽くそうと思う。折角生きて……生き返っているのだ、自分達の手で終わらせたくないじゃん。

 

「と、言いますか。よっぽど深刻なバグじゃない限り、即消去とかにはなりませんよ。ここの運営、変なバグとか大好きですし」

「確かに、クソガキテレポートバグとか運営が笑い転げたせいで仕様になりましたもんね」

 

 クローニンの言葉に、β時代にあったクソバグが仕様と化した謎事件があったことを思い出す。正式サービス版でも残ってるんだろうか、あれ。

 

ふぁ()ふぁふ(バグ)()へんひょうへっは(検証結果)ほほひまひは(届きました)ひょ()

 

 と、話している間に結果が出た。

 今後のユーちゃんの運命を決めるその結果は──

 

 【件名】報告されたバグについて

 from:運営

 バグ内容:ユニーククエストのフラグを持ったNPCがクエスト受注区画から、本来存在しない位置へ移動している

 脅威度:小

 コメント:直ちに修正が必要ですが、ゲームバランスやシステム負荷への影響は少ないバグとなります。よって当社の営業方針に従い、当該NPCの処遇は当該NPC自身の希望に沿って確定します。

 追送したメールをNPCへお見せください。

 

 ──なんか想定とは違う方向の結論が出ていた。

 

「グポン?」

《つまりこれ、どういうこと? とマスターは仰っています》

「私たちの想定だと復活がバグでしたが、そっちは仕様で移動してることがバグだったみたいです……ね?」

 

 情報を統合すれば、確かに弾バカが言った通りの結論だ。勧告もユーちゃんの消去とかの物騒なものでも無いように見える。

 

「それで、続きのメールの方にはなんと?」

「アー……『ユニーククエストノフラグヲモッタママモトノバショニカエル』カ『フラグヲトウケツシテ“ハンPCカ”スル』カ、エラベルラシイゼ」

 

 はぁ、それはまたなんとも。

 

「つまりボク達とこのまま遊ぶことも出来るし、元のクエスト管理用NPCにも戻れると」

 

 宣言の通りNPCを。ひいてはAIの自由意志を優先するという判断が下されていた。思っていた通り、かなりの融通を効かせてくれている。こういうノリの良さ、嫌いじゃないわ!

 

ふゅーひゃん(ユーちゃん)()ほうふぃまふ(どうします)?」

「マア『オマエラトアソブ』イッタクダヨナァ」

 

 直後、ユーちゃんが何か手元のウィンドウを操作し──

 

 【件名】NPCのギルド加入について

 from:運営

 ただ今よりギルド【クローニンと愉快な仲間たち】にNPC:ユーが臨時加入します。

 扱いとしては暫定的にβテスト時代の拠点防衛用NPCの処理を適応。PLと同様に蘇生が可能ですが、その際に10,000Gを消費するようになります。

 指定ユニーククエストを未クリアの為、初期はLv10相当の能力値が適応となります。

 彼女と一緒に、ぜひ冒険を楽しんで下さいね!

 

 ──即座に運営からメールが送信されてきた。

 判断が早い(対面天狗面)

 

「オレタチAIヲ、フツウノ“ヒト”トオナジヨウニアツカッテクレルヤツ、スクナインダロ?」

 

 ヘラリと笑うユーちゃんの言葉に、思わず皆んなを見渡す。デッカいお肉に齧り付いているFluoriteさんを除き、頷きは三者三様。誰もそれを否定できないでいた。

 

「絶賛、世界の転換期ですからねぇ。ボクとタマ辺りはまだ、ちょっと違和感ある世代ですし」

「逆に俺とかアブっさんは、物心ついた時からAIに触れてますもんね」

「グポン!」

 

 所謂、AIを人として扱うか扱わないか問題。

 露骨に年齢によって考えが変わる問題で、割と現実(リアル)でも大きな論争になっている問題だ。いわんやネトゲをやという話でもある。

 

「ダッタラマァ、イツウガミエテテモタノシイホウニツクダロ?」

 

 尤も、この面子においてソレは殆ど意味をなさない話題でもあるが。

 

「テナワケデ、コンゴトモヨロシク」

 

 そんなこんなで。

 ヌルッとユーちゃんは、我らがギルドに加入することになったのだった。

 

 なぞ の びしょうじょ ゆうれい の

 ユー が なかまになった

 

 

*1
よくあるタイプの罠。死ぬほど敵が沸いてプレイヤーは死ぬ




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【クソガキテレポートバグ】
 β版において存在したバグの1つ。分類としてはNPCのテレポート。※正式サービス版では修正済み
 中身が男性の女性ボディアバター(スカート装備)を見かけると、ターバンのガキ並みの無敵性能で接近してスカート捲りをし、Agl換算500程の速度で逃亡するショタNPC(以降クソガキと呼称)が特定条件を満たすと街中をテレポートする。
 手順①:路上でクソガキの突進を回避スキル《ステップ》で躱す
 手順②:《ステップ》の無敵判定中にNPCの馬車に衝突する
 手順③:何故か無敵を上書きしノックバックと移動が発生するので、その移動にクソガキを巻き込む
 手順④:巻き込んだクソガキと一緒に街路樹と街灯の隙間(30cm以内)に倒れ込む
 手順⑤:地面に衝突する瞬間、何故か空高くへクソガキがワープする(検証の結果一律で15mと確認)
 手順⑥:3秒間空中でフリーズした後、クソガキが消滅。街中のどこかへリポップする。
抜粋:検証班有志wiki
 

【ヤブサメ】
 実は既にユニークダンジョンのマップ情報は馬鹿みたいな範囲で入手できた。

【クローニン】
 実は足元に散乱していた文章系アイテムを戦闘中にも関わらず根こそぎ回収した。

【アブっさん】
 想起:うっかり密集配置の場所まで通してしまった[富栄養化したクローラー]に一斉攻撃

【弾バカ】
 実は弾幕が絡まなければ割とまとも。

【Fluorite】
 オレサマ オマエ マルカジリ

なお前話でコイツらが取得した称号は
・初級ダンジョン探索者(補正あり)
・ジャイアント・キリング(補正あり)
・Fatal Over Enemy遭遇者(効果なし)
・    〃     討伐者(効果なし)
・天揺の鬼火に挑みし者(効果なし)
の5つです
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