元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
[a.m.03:30(
[浮岩星景リラティック・テル手前・キャンプ1]
探索開始、2日目──
「昨日はなんだかんだ1日中お祭りでしたし、今日は昨日の成果確認から始めましょうか」
「オウ、イイゼェ!」
ぐっすりと寝たお陰で、リアルは深夜ながらも日が登り切った大自然の中。未開拓領域前に再設置した簡易拠点、そこで焚き火を囲みながらユーちゃんと向かい合う。
「先ずは今日の分の朝ごはんをば」
言いつつ、昨日ひっそりと釣りや狩りで手に入れた物を並べていく。
「サカナ〜!」
ハッ!? そのポーズは!
「チンアナゴ〜!」
どうだ……?
「「ユニコォォォン!!」」
──賭けには勝った。
ヒャッホウと落ちていないテンションのままハイタッチ。
大層な振りをした割には、なんかでっかい魚(無毒)と小さめの魚(無毒)、蛇っぽいなにか(有毒)、ユニコーン(馬肉)なので大したことはない。
適当に万能調味料振って、枝に刺して焚き火に傾けておく。遠赤外線パワー(?)か何かで上手に焼けてくれる筈だ。知らんけど。
「ア、ミズワカシトクワ」
「どうも」
「ドウモッテナンダヨ、ミズクセェ。ヒトバン“ネヤ”ヲトモニシタナカジャネェカ」
「閨だなんて、そんな……ユーちゃんのえっち!」
「!?!?!?」
脊髄反射で会話しながら、テキパキと飯の準備を進めていく。思考なんてねぇよ、データもない。とりあえず今は、ご飯と水を補給して1日を始めなくてはならないのだ。
「さて、ご飯ができるまでに昨日のリザルトの確認でもしましょうか」
「イヤ、イイケドヨォ……ウウン」
釈然としない様子のユーちゃんと、適当な引っ張ってきた倒木に並び座る。そのまま、パチパチと魚の焼ける音を聞きながらメニュー画面を展開させた。
「まずは称号ですけど……」
・肆番外征者
・はじめの一歩
・命名者
・浮岩星景
・落下者→墜落者→Fly Me To The Moon
「……一覧にするとこんな感じですが、ユーちゃん側は違う部分あります?」
「ソーダナ。アタリマエダガ、イチバンサイショノハチゲェゼ。オレノハ“イチバンガイセイキ-タイプF”ッテナッテルワ」
ホレ、と見せられた画面には確かに[壱番外征機-type F]という文字が。
「なんか、こう。男の子としてはカッケェ!しか思いませんが、思ったより運営はプレイヤーとAIは分けて考えてるっぽいですね」
「デモ、オレガ『オレハニンゲンダ!』ナンテイッタラ、メンドウナノガワイテクンダロ? ソレニ、ニンゲンジャネェジカククライアラァ」
「それが理解できるのは、最早人間なんだよなぁ」
まるで何事もないようにユーちゃんは言っているが、あんまりにもあんまりな話である。悪い方向じゃなくて、技術的なヤバさと精神的なヤバさの方向で。
「ソレニ、オレハケッコーキニイッテルンダゼ。イツカヘンケイガッタイデキソウデ」
「変形合体出来そうで!?」
「アコガレルヨナ……ジブンガブキニヘンシンシテ、ダレカニモトメテモラウノッテ」
しみじみと、噛み締めるようにユーちゃんが言う。そういうものなのか、とも思ったが違和感がある。
「何かアニメとかゲーム見ました?」
「ゼノブレ2」
すげぇ、現実のハードでしか出来ない筈なのに。
「納得です。で、個別に称号を見ると……」
「ケッコウマジメナネガイナンダガ!?」
「でも俺、セイバーじゃなくてアーチャーなので」
「グヌゥ」
まあそれはそれとしてだ。
================================
称号:はじめの一歩
詳細:初めて外界の探索へと踏み出した証
効果:セット時──なし
所有時───NPCからの好感度UP
================================
称号:命名者
詳細:初めて外界の土地に命名した証
効果:セット時──なし
所有時───ギルドNPCからの信頼UP
================================
称号:浮岩星景
詳細:浮岩星景リラティック・テルへ、初めて
足を踏み入れた証
効果:未解放
================================
称号:落下者
墜落者
Fly Me To The Moon
詳細:あなたは数え切れないほど地面へと叩き
つけられた。己を鳥と勘違いした馬鹿か
鳥と成るかは未だ分からない。
効果:セット時──落下ダメージ-30%
所有時───落下ダメージ-5%
================================
こうして見ると、思ったより壮観だ。
通常のプレイ範囲内ではそう数の多くない(検証班調べ)、所有しているだけで効果のある称号が3つ。それがたった1日の遠征で手に入った。明らかに隠し要素があるものもあるし、大豊作と言って問題ないだろう。
「ナア。サイゴノショウゴウ、ウワガキサレテッケドジョウケンッテドンナンダ?」
「落下ダメージで初めて即死→50回→150回ですね。体感ちょっと少な目にズレてる気がするので、検証班wikiが間違ってる気がしますが」
「キノウダケデ、オレタチソンナシンデ……シンデ、ソウダナ、ウン……」
最初こそ首を傾げていたが、次第にお互いの目が死んでいく。初めて星に引き寄せられ墜落してから、昨日だけで最大150回は墜落死した結果が出てるのだ。
正直、時間的な都合もあって100回くらいしか墜落してない気がするけど……それはそれで大概な数値か。我ながらちょっと引く。ないわ。
「最後に、問題の[肆番外征者]と[壱番外征機-type F]ですが」
================================
称号:肆番外征者
詳細:外界へと踏み出した4人目の開拓者の証
専用ネットワークへのアクセス権を有し
外征兵装の製作権利を持つ。
遠征が可能となり、続く者の導とならん
効果:セット時──[任意の称号効果を選択]
所有時───NPCからの好感度UP
スキル《サバイバル》取得
================================
称号:壱番外征機-type F
詳細:外界へと踏み出した1人目のNPCの証
専用ネットワークへのアクセス権を有し
外征兵装の製作権利を持つ。
遠征が可能となり、続く者の導とならん
効果:セット時──[任意の称号効果を選択]
所有時───NPCからの好感度UP
スキル《サバイバル》取得
================================
「タブン、ナマエダケデナカミハカワンネェヨナ」
「同感です。そういう所は真面目ですよね、運営」
肆番と壱番の部分に関しては、状況証拠から考えて外界への到達番号。type Fは簡単に当てはめると女性という部分だろうか?
逆に言えば差異はそれだけで、2つの称号の内容は変わらない。やはりバランス調整に関しては、相当気をつけているのだと思う。特に昨今はそういうのにうるさいタイプが多いし。
「だからその分、例の外征兵装とやらがオリジナリティを出せる部分なんでしょうが……」
「カンゼンニ“ユニークアイテム”ツクルダケアッテ、ミタカンジクソシヨウトイウカ、ナンツーカ」
プレイヤー個人個人に合わせてオーダーメイドに作成されるユニークアイテム。
闇夜を切り開く光のような決意を持ちて、弛みなき歩幅で歩んだ先。天より降る前の力を取り戻すだろう。
制限:譲渡・売却・トレード等不可
昨日、幾つかの称号の獲得と同時にゲットした〈外征兵装の設計図〉というアイテム。そこに記されていたフレーバーテキストがこれだ。
わざわざ『ユニークアイテム』なんて文言を出した以上、正直イヤな予感がヒシヒシとしていたのだが……案の定だったと言えば良いのか。なんというか。
「クソ重コンテンツ拾っちゃいましたねぇ」
「ヤッパソウダヨナァ、コレ」
設計図に記された内容を見て、揃ってため息を吐いた。
3段階目まで明らかにされている製作フローチャート。それはこのご時世に『ユニークアイテム』を作り出すという意味を、目に見える苦行として示していた。
================================
第一段階《器の作成》
〈必要素材〉
・○番外征の欠片 ×10
・10,000G
================================
第二段階《器を+10まで強化》
〈必要素材〉
・○番外征の欠片 ×45
・任意の素材 ×(+10)に必要な個数
・(時価)G
================================
第三段階《器の新生》
〈必要素材〉
・○番外征の欠片 ×45
・特殊任務賞金 ×30
・指定の「地結晶系」アイテム ×100
・指定の「エレメント系」アイテム×50
・指定の「モンスター系」アイテム×30
・高性能集積回路 ×3
・エーテライト ×1
・(時価)G
================================
そう、つまり──周回要素。
まだ作り始めていない以上、何とも言えない部分はある。だが誰がどう見ても、古より連綿と繋がる悪しき文化の醜大成がそこにはあった。
「コノ『ナンチャラノカケラ』ッテノハ、キノウショウゴウトイッショニモラエタアレダヨナ?」
「そうですね」
「ホカノニュウシュシュダンハ?」
「現状、皆目見当がつきませんね」
検証班の方に照会をかけても該当なし。
接続権を得た専用掲示板で聞いても該当なし。
全員、初期取得の5個だけだった。
「ジャア、『モンスターケイ』ハトモカク『チケッショウ』トカ『エレメントケイ』アイテムッテノハ??」
「地結晶は……確か採掘して集めるタイプのアイテム。エレメント系は情報なしですね!」
地結晶系列のアイテムは、未開拓領域の採掘スポットで掘れば普通に取れた筈だ。リラティック・テルでも取れるだろう。ツルハシは持ってるし、サバイバルを採取に全振りすれば……多分。きっと。めいびー。
エレメント系アイテムは知らん。なにそれ。
「ナラ『コウセイノウシュウセキカイロ』ト『エーテライト』ハ???」
「高性能集積回路は……名前的に中央旗艦都市のダンジョン深部の敵から取れそうですね」
いつだったか皆んなで乗り込んだ時、ドロップ品に集積回路なるアイテムがあった筈だから間違いない。高レベル機械系の敵からのドロップ品か、或いはレア泥のどちらかだろう。
だがどのアイテムも、地結晶系列を除いて検証班wikiに記述はない。それに俺自身も見たことがないアイテムになっている。
「ただ」
「タダ?」
1つだけ例外があった。
「『エーテライト』だけは今回のイベント報酬にあるみたいです」
「オオ!」
クローニンとの約束もあるからと、何となく確認していたイベント画面。ずっと放置していた防衛戦の交換アイテムの中に、エーテライトの文字は燦然と輝いていた。
交換制限1個。必要なポイントは[撃破・貢献合計10,000p]。長ったらしいフレーバーテキスト付き。
これで名前だけ同じ別のアイテムということは流石にあるまいて。
「ジャア、トレバイインジャネーノ?」
「残念ながら、ポイントが全く足りてません」
尤も、ここでずっとイベントをサボって遊んでいたツケが回ってきた。
現状の保有ポイントは[撃破:3241 貢献:981]程度。最終日にある(筈の)デカいイベントを込みにしても、当たり前だが足りなくなる。欲しいのはエーテライトだけじゃないのだし。
「ウヘェ、オレモゼンゼンポイントタリテネェヤ。ホカノニュウシュホウホウ、ラクナノネェノ?」
「そこにないのでないですね」
「クソォ……」
ぐぬぬ、と唸るユーちゃんへ丁度焼き上がった魚を渡す。魚でも食べてリラックスしなよ。
「ウメェ。カエッテシューカイスリャ、タリルカ?」
「多分。でもユーちゃん戦えましたっけ?」
「オウヨ。Dex・Agl・Lukトッカノ、クリティカルギャンブルコウチクダゼ!」
今作FEVの場合、ダメージ判定でクリティカルが出るともう1回ダメージ判定が行える。その2回目のダメージ判定でクリティカルが出た場合、さらにもう1度。3回目のクリティカルが出れば更にさらに……と言った形で、ダメージは若干の減衰を経ながら増加していく。
コレを意図的に狙うため、手数と命中率とクリ率に特化したのがユーちゃんのクリティカルギャンブル構築という。
「ロマンですねぇ」
「ダロォ? フダンハカスダメシカデネェケド」
メリットは前述の通り、ギャンブルが当たった時のボスすらワンパン出来る超ダメージ。
デメリットは今言っていた通り、ギャンブル失敗の方が多くカスダメばっかりになること。
「トウゼン、サポートモオボエテルゼ。ヤブサメガイルカラ、デバフニヨセテッケド」
「基本に忠実ですねぇ。えっ、魚美味しいなこれ」
「クローニンカンシュウダカラナ」
それなら安心安全もーまんたい。レベル的な不安こそあれ、地獄の戦線に突っ込んでもそうそう変なことにはならないだろう。
「じゃあ、これ食べ終わったら帰りますか」
「OKダ。エンセイキノウ、イチバンノシュウカクダッタヨナ」
「
こうして、散々苦労した旅路を引き返す決断ができた理由。それは昨日解放された【遠征】という新たなシステムにあった。
その名の通り【遠征】システムは、未開拓領域への遠征を行いやすくするためのシステムだった。
中央旗艦都市と周囲4つの都市、そして外界にあたる未開拓領域。その間を移動する方法は今まで、自らの足で長時間移動するか、デスルーラを利用するしかなかった。
だが、今は違う。ギュッ
都市 ⇔ 都市の移動は今までと変わらないが、都市 ⇔ 未開拓領域間は、遠征システムが解放されたプレイヤーに限りワープ出来る。
無論、条件はそれなりに厳しい。ワープ先の未開拓領域の探索率が20%を超えていることや、名目上はギルドによるサービスのため距離に応じて
しかしそれでも、数時間かかる旅路が0秒(ラグを含まず)に短縮されるのは革新的と言っていい。
「クローニン達にいっぱい自慢してやりましょうよ」
「イイネェ、ノッタ!」
そうして拳を合わせ、悪巧みに笑い合った数時間後。
とんでもない配信をしたこと、自分を連れて行かなかったこと、その他etcetcが降り積もったクローニンに、泣きながら雷を落とされることになる。
けれどこの時は、そんなことが起きるなんて俺たちは欠片も想像していなかったのだった。