元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする)   作:銀鈴

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30話 第1回イベント「ラストスパート始まるよー!」

 

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 【お知らせ】

〈イベント:前線都市防衛戦β開始!〉New!

ー追記ー

 「Fines Explorator Viae」にて開催中の期間限定イベント「前線都市防衛戦β」において今後、実装を予定しているイベントの日程についてお知らせいたします。

 

 《レイドバトルの実施》

 イベント最終日の日曜日正午(現実時間:日本標準時)より大規模レイドバトルを実装します。

 参加することで多量の貢献度ポイントが、与えたダメージ量に応じて多量の撃破ポイントが獲得可能です。奮ってご参加ください。

 出現場所、レイドボスの形、ステータス等は未公開です。

 

 《特別クエストの開催》

 イベント最終日の前日、土曜日の0時(現実時間:日本標準時)より「南部前線都市アウステル」及びその周辺にて特別クエストを開催します。

 クリアすることでポイントの他、特殊任務賞金等が獲得可能なクエストとなっています。また通常のクエストと違い、初回発見時にも報酬が設定されています。ぜひ探してみて下さい。

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 運営からこんなメッセージが届いたのは、俺とユーちゃんがこっそり遠征に出かけてクローニン号泣激怒事件があった翌日。リアル時間で言う金曜日の朝7:00のことだった。

 

 しかし今日はあくまで平日。

 事前告知はありがたいが、即座に準備のために動ける人は限られている。かくいう俺自身も普通に大学で講義がある以上、うちのギルドも動けるのはユーちゃんだけだ。

 

 

 

[p.m.22:26(R(リアル))/p.m.19:02(G(ゲーム))]

[中央旗艦都市ケントルム・ギルドハウス]

 

「さあ、検証班系列ギルドの面目躍如の時です! 特別クエストの発見報酬、ボク達で全取りしましょう!」

 

 で、必然的にこうなった。

 夜も更け始めてきたギルドハウスの中心。ランプの灯りに照らされて、踊るのは長く伸びた金の髪と煌めく瞳。最近、古い紙とインクと埃の匂いがし始めたクローニンが吼える。

 

「グポーポン」

《理解できぬ、とマスターは仰っています》

 

ひひゃいへひぬ(理解できぬ)

 

「リカイデキヌ」

 

「驕るな──ッ!」

 

 弾バカのタイミングがまだだったけれど、仮面を被っている以上ここで叫ばねば不作法というもの。アブっさん、Fluoriteさん、ユーちゃんに続いて全力でクローニンに対抗する。

 

「ブルー○ーカイブ!!」

 

 ──決まった。

 弾バカの援護起動音によって、この透き通るような煽りコンボは完成する!

 さあ、完成したるは強力な先行制圧盤面。後手を取る形になったクローニンの手は如何に!

 

「ぐす……そんな、そんなに、みんな揃ってひどい。ひぐっ、そんなこと言わないで下さいよぉ……」

 

 ぐわーッ、無慈悲な全体除去!

 へなりとくずれ落ち、ぺたんと座るクローニンの目に涙が滲む。そして指先で涙を拭いながら、上目遣いでこちらを見つめてくる。なんという破壊力、後手捲りとして理想的!

 

「ボクはただ、みんなと楽しく遊びたくて、スン……それだけだったのに。酷いです……!」

 

 バカな、戦闘(サークルクラッシュ)力3,000……5,000……10,000……まだ上昇を続けるだと。

 

「完璧ですね……よもや僅か1ヶ月でこの境地に達するとは。このバッチバチの目を持ってきても見抜けませんでした」

「グポン?」

《その目、節穴じゃない?とマスターは仰っています》

わふぁひはひら(私たちが)ほはへまひは(育てました)

「セイサンシャヒョウジッテヤツダナ!」

「素人は黙っとれ──」

 

「ああもう、賑やか!! ユーちゃんが順応したせいで5割増しでうるさくなってる!! もう!!」

 

 もうどうしようもなく混沌とした空気に、結局根を上げたのはクローニンだった。

 HAHAHA、我々が一体何年の付き合いだと思っている。かなり……いやちょっと、やっぱりほんの少しだけ心は動いたが、その程度の姫攻撃ではノーダメージだ!

 

「で、突然なんでそんな荒唐無稽を言い出したんですかクローニン。仮にもMMOで全取りなんて、流石に無茶だと思いますが」

 

 しみじみと頷く弾バカの代わりに、嘘泣きをやめたクローニンに問いかける。

 確かにやりたくないかを問われれば、その答えは否だ。イベントに本腰を入れるのはやぶさかじゃない。が、自分がやるのとギルドで動くのは別の話だ。

 

「ソーダナ、オレモソコハキニナル「ふぉむ(ふむ)ひひ(いい)ひほい(匂い)れふ(です)ひゅーひゃん(ユーちゃん)ひひはひ(いい味に)()はりまひたにぇ(なりましたね)?」ヒヨァァァァァ!?!?!?」

「ぐ、ぐぽーぽん……」

《食欲一切落ちてなくてワロタ、とマスターは仰っています》

 

 などと話している間、少し目を離した隙にFluoriteさんがユーちゃんを捕食していた。しかし味濃くなってるのか、すげぇやFEV。

 

ひゃふへ(かつて)()ひゃいひょる(タイトル)へあ(では)ふへいやー(プレイヤー)()ほんふはー(モンスター)ふぉ()ひほふほ(1つの)ひょくひゃい(食材)ほひは(としか)はんはえへ(考えて)ひなはっは(いなかった)──でも、今は違います。ギュッ」

 

 謎の効果音!?

 

「FEVになってからは、1つの料理として解釈することで多種多様な味が部位ごとに味わえる新感覚を実現しています。無論、捕獲レベ──味の成長も」

「ちなみにどんな味になってました?」

「以前あった古びた紙とインクの匂いが消えて、そうですね……近いのはサトウキビの甘味でしょうか。加えてスパイス系の何かの、突き抜ける爽やかな香り。一般的な女の子のソレに近くなってきています。素敵ですね」

「コッワ、マジカヨテイスティング……!?」

 

 興味本位の質問は、どうやら藪から蛇を突きだしてしまったらしい。真剣な表情で語るFluoriteさんから、全力でユーちゃんが逃げ出してアブっさんに隠れてしまった。疾風迅雷やね。

 

「で、茶番は楽しかったですが本題はどうなんです。クローニンがそう言い出すってことは、何かあったんですよね?」

「弾バカ……」

 

 そんな弛緩し切った空気を改めるように、虚空を見つめてフリーズしていたクローニンに弾バカが話題をパスする。そうだった、最初はそんな話だった。

 

「──そうですね。ボク達の仲です、隠してるのも不誠実でした。それが見えてる爆弾の導火線に、勢いよく着火するようなことでも」

 

 神妙な顔で呟いたクローニンの言葉に、ピリと張り詰めた空気が満ちる。言い方から察するに、確実に何かよくないことか起きていたのだ。それも、俺たち側に火をつけるような何かが。

 

「端的に言って、舐められて、煽られました。

 ついでにボク自身には集団で囲むことによる強制的なPvP申請、及び無料での情報の供出。ギルドホームの損壊予告等の恐喝、イベントの参加妨害予告などがありました」

 

 なるほどなるほど、それはそれは……

 

「蜂の巣にしてやりましょう!」

はへほうはい(食べ放題)()ひはんへふね(時間ですね)!!!!?」

「任せて下さい、配置、構成、陣地、情報は全部抜いて来ましょう」

「オ、ジャア、オレモガンバルゼ。ウラヘノテマワシ」

「ブッピガァン!」

《やはり戦争か、私も同行しよう。と、マスターは仰っています。GMコールを実行なさいますか?》

 

 告げられた惨状に、一気にギルドが臨戦態勢に移行する。

 クローニン本人に手を出されただけなら兎も角、こっちの施設の破壊にイベントの妨害予告。加えて無料での情報供出とかいう信用問題まで引っ張り出されたら、それはもう戦争なのだ。

 

「GMコールは不要です。まあ落ち着いて下さい。ボクも無防備でやられた訳じゃなくて、むしろ罠に嵌めて“分からせ”した側なので」

 

 聞けば、コトの経緯はこう。

 

 まず初めに原因として挙げられるのが、俺たちがそれぞれ好き放題に投稿・配信してたチャンネルのコンテンツ。

 その中でも弾バカが配信していた『中央の地下ダンジョンで弾幕ごっこ』シリーズに、下手人の欲しい情報があったとのこと。多分ユーちゃんの散歩動画でも似たような模倣犯は出るだろうとのこと。申し訳ない。

 

 次に、クローニン自身はなんとなくこういう過激派が出ることを予想していたらしい。

 というのも、元々こういうことに発展するのを見越してご近所付き合いをしていたおばちゃん達から『お店(ギルド)の周りを不審者が彷徨いている』と忠告を受けていたそう。パッと見、女所帯のギルドだから気にかけていてくれたらしい。

 

 ここで下手人が犯行を決行。

 ギルド(プレイヤー側でない方)の図書室帰りのクローニンを追いかけて、嫌がるのを無視して捕まえ引き摺り倒し裏路地へ連行。『金を払うから情報を寄越せ』と強圧的な態度で命令。拒否しようとしたクローニンに対し、大勢で囲むことで他者に助けを求めれないようにし、GMコールをするなと強要。それでも拒否するクローニンに、無理やりPvPを承諾させて情報を奪い取ったらしい。

 

「まあ、弱々しく演技すればペラペラと事情は話してくれて楽でしたね。SNSアカウントまで見つけましたよ、ほら」

「ウワ……エゲツナ」

「あと渡した情報自体も『未検証ですぅ……』って泣きながら、とっくに検証済みのゴミを10,000Gで売りつけました。お財布が分厚いですよ!」

 

 して、ここからが肝なのだが。

 ()()()クローニンが路地裏に引き込まれるのを、ご近所付き合いをしていた噂大好きおばさんが目撃していたらしい。

 

「その後はわざと着衣と髪の毛をかなり乱れさせて、内股でガクガクしながら、泣き腫らして、メイクで意味深な暴行痕を作り、可哀想な演技をしながら路地裏から脱出しまして。あ、脅しは全部ここですね」

 

 ん……?

 

「周囲の人目から隠れるように、お風呂がある街中の宿に駆け込みました。いやぁ、宿のおじさんがやたら親切で助かりましたね!」

「ぐぽ……」

《あっ(察し)と、マスターはドン引きしています》

 

 流れ変わったな。

 

「結果、スピーカーおばさんからアウステル全域に。ボクが懇意にしていたNPCの商人からケントルム、他の3都市全域に噂が広まりました。『ある渡り人がクローニンという女の子の情報屋に袖にされたことを恨んで、数十人でその女の子を連れ去り全員で××××したあと路地裏に捨てた』とかなんとか」

「うわぁ……うっわぁ……」

 

 あまりにもエゲツない破壊力を伴ったクローニンの反撃に、思わず変な声が出た。

 悪評というのはプレイヤーにとって無視できないものだ。マスクデータではあるが、当然このFEVにも善悪(カルマ)値は設定されている。だのに、そんな悪評が全ての街で広まってしまった暁には……

 

「ほぼ全てのNPCのお店から出禁を喰らって、冒険者ギルドからもクビを言い渡され、プレイヤーギルドも信用問題に関わるのでよっぽどアウトロー寄りの所以外は取引停止です! えへ!!!」

 

 花の咲くような満面の笑みだった。

 

ふぉのあほは(そのあとは)ふぁにひゃ(何か)ありまひは(ありました)?」

「ええ。なんでも『ガセネタを掴ませやがって』『噂を取り消せ』『レコードホルダーがいい気しやがって』『俺たちのギルドにすら及ばねぇカスギルドが』とかなんとか叫びながら、お店(ギルド)の中にまで入り込んできたので──」

 

 すぅ、と大きく息を吸い込んで。

 

『知らない! 私何も知らない! 知らないです! いや、やだ、叩かないで!! もうあんなこと嫌、いや! 助けて、やだ、情報は上げる、あげますから! お願いです、もういや………』

 

 ──と事件性のある雰囲気を醸し出しながら、情報をくれてやりました。なにせ既に売却済みで、空っぽの宝箱の情報でしたからね」

 

 その時、()()()クローニンが壁に押さえつけられたり、()()()一般配信者が店前を通過していたり、()()()例のスピーカーおばさんがまた近くにいたらしいが。

 

「おまけに『大丈夫か?』って心配してくれた優しいNPCの方に『いいんです……ボクが我慢すれば、その他の人には手を出さないでくれますから。あんな人のせいで、渡り人みんなに迷惑はかけられません。ボクが、ボクだけが、我慢すれば、それで……うぅ』と泣き落としを仕掛けましたので」

 

 なおその一連の都合が良過ぎる流れに、クローニンは1ミリも関与はしていないとのことだ(大本営発表)

 

「民衆は悲劇のヒロインが好きで、ボクは何一つウソ“は”言ってない。よって──ここに社会的確殺陣は完成しました」

 

 でもまだ、なんか足んねぇよなぁ? とクローニンは続ける。

 

「ここは極悪インターネッツ。ルールを守らないものは、罰を受ける……舐められたら殺す、そして根まで追って叩いたら叩いて潰す。

 なので、最初の話に戻りまして。イベント結果で完全なマウントを取った後、ギルド対抗戦を仕掛けてケツの毛までむしり取ってからGMに証拠を突きつけます」

 

 その有無を言わさぬ圧力に、思わずみんなをぐるりと見渡す。我関せずと野菜スティックをサクサクしているFluoriteさんを除き、どうやら気持ちは一つらしい。

 

「ハイ、セーノ」

「「人の心とかないんか?」」

「グポポ、ぽぽぽぽん?」

 

「失敬な、あるから壊しに行くんですよ!」

 

 こうして、我らがギルドの新たなる目標が決まったのだった。

 




感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!

【ヤブサメ】
 当たり前のように特別クエストの発見は独占した(150/182個)
 いいだろ? 半径200m圏内のクエストフラグは全探知できる飛行能力持ちだぜ?

【弾バカ】
 自分が原因なのでちょっとはやる気を出していたが、クローニンが本気すぎてひっこんだ。今後、ちょっと優しくしようと思っている。

【ユー】
 ニンゲン、コワイ

【アブっさん】
 大人って怖い

【Fluorite】
 サクサクサクサクサクサク……あ、終わりました?

【謀略を巡らす者 クローニン】
 罪状:未鑑定の情報を偽って適正価格以上で売ったこと。以上。
 時間経過で追加開放系のクエストは逃しましたか……ですが飛行許可を取っていた甲斐はありました。さて、今回かかった費用とヤブサメ達の収入を計算して……いやしかし、まさか女子のアバターというだけでああも舐められるとは。

【哀れな被害者たる子羊達】
 狂人どもがいないなら、いつも振り回されてる奴くらいどうとでも出来ると思っていた。ちょっと立場をチラつかせて脅せば、気弱な奴は俺たちの世代では反抗せずに従っていた。
 とんだブーピートラップだった。
 
【運営が丹精込めて作成したレイドボス】
 えっ、あの、わたし前座……????
 秘されていた情報は特別クエストをクリアすることて段階的に開放されるぞ!→→なお
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