元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
いっけな〜い、(レイドバトルに)遅刻遅刻!
私、転校生のクローニン! 胃痛キリキリのギルドマスター!
蜂「マ゜ッ」(交通事故)
《【R・B】Machinery Queen Bee Lv??》
一番槍としてド派手な戦果を挙げつつ、レイドバトルの戦端は開かれた。
ならば必然、後に退くことなど出来はしない。
HPバーを大きく消し飛ばされた結果として、レイドボスである蜂が怯んだ。
翅の動きが止まる。巨体が揺らぐ。空から女王が蹴り落とされる。僅かな間ながら、硬直した戦場で
「
無論それを、狙って起こした側が見過ごす筈もない。
「弾幕全開!」
「【狙撃】改め【精密狙撃】起動、技《剛弓・獄火》!」
「グポン!」
《技《シールドバッシュ》、起動します》
「
「ウオオ、ウナレ! オレノ《
目を覆いたくなる弾の壁が、防御貫通多段ヒットの狙撃が、重すぎるバフの乗った捕食攻撃が、専用BGMを掻き鳴らすユーちゃんを背景に炸裂する。あとカスダメ以下の盾パンチも。
「ピャアァァァァ! サイテイホショウッ!!?!?」
締められた鶏みたいな声出してら。ウケる。
──ではなくて。
「撤退カウント5!」
クローニンの号令で行い続けている、後先考えない最大火力の放出。防御なんて一切考えていないこんなこと、当然長く続けてなんていられない。
MP・SP
「4!」
「グポーポン!」
《弾バカ、道作って! ヤブサメは撤退ルートの策定! とマスターは仰っています》
「オレハ!?」
「
「オッケー!」
落下と攻撃を出来る限り続ける中、探知内で比較的安全なルートを探す。ほんとはクローニンの方がこういうの得意なんだけど、流石にいま以上にタスクを振るのは過重労働になってしまうからやむなし!
「3!」
必要条件は
・地上までの安全なルート
・MP消費の都合上、出来る限り最短距離
・他プレイヤーにトレイン*1しないルート
・降りるのは着陸後、孤立無援になって即死しない場所
であることの4条件。
当然ながらそんな便利な場所は存在しない。
が、まだレイドバトルが始まって間もない今。戦場の至るところに敵の密度が薄い場所はあり、無敵戦艦モードならそれは障害にはなり得ない。以上を踏まえてルートを探せば────
「見つけたァ! ルート記入完了!」
──割と候補地なんて、見つけられるものだ。
「グッポー!」
《グッド、とマスターは仰っています》
「これも楽しい弾幕シュートのため、これも楽しい弾幕シュートのため……!!」
不服そうな弾バカの言葉はシャットして、マップの情報を領域魔法を通じて共有。
「2!」
対ボスへのダメージは他3人に任せて、俺自身は背後へ向き直り弓を引く。ルートを選んだ責任をとって、着陸場所の露払いくらいはさせてもらう。
強攻撃系の技じゃないとボスにダメージが通らないとかじゃない。通ってもカスダメだったとかでもない。断じてそんな理由ではないったらない。ないのだ。本当に。
「1!」
弓に番えるのは古式ゆかしき拡散矢。
1発当たり35%まで威力が下がる代わりに発射後3発に分裂する、某モンスターをハントするゲーム方式の代物。
なお実情は『デカい相手以外には全弾ヒットしない』くせに『デカい相手は防御値が高いので最大ダメージが出ない』製作者も認める欠陥アイテムだったりする。
しかしそんな産廃アイテムでも、それこそ馬鹿と鋏は使いよう。やり方次第で案外、とんでもない結果を引き寄せられる。
「0! 0! 0!」
「弾幕停止《力場魔法》展開!」
「グポン、グポポポポン!」
《バックします、ご注意ください。とマスターは仰っています》
「オラァ! フウセンツキバクダンサンプウッ!!」
女王蜂のスタンが途切れた。
クローニンのカウントが聞こえたらしき
「クローニン、バフ下さい!」
「系統は!?」
「動き止める系!」
「《エンチャント・アイス》!」
大弓は縦のまま、引き手のひらは外側に。
魅了付与の為に蜂蜜に付けた拡散矢を、指に挟める最大の4本まとめて装填。4本となるとまともに照準は合わせられないが、【精密狙撃】のバフは乗るしマイ・ペンライ!
「ついでに《エンチャント・ファイア》!」
「なにっ!?」
「モエツキルホド、ホンノージ!」
なんだこのおっさん!?(幻覚)、なんてふざけるのは一旦置いておくとして。
背後で轟く風船型ボムの起爆音を聞きながら、氷属性を纏っていた矢に追加で炎属性が付与された。くそッ、性能的には嬉しいけどこれじゃ用意していた決め台詞が使えない。
「うおおお、無間氷焔世紀!」
よし、なんとか懐かしい場所からネタを引っ張り出せた!
「
「ウッテルデメルング!!!」
ちくしょう、畜生みたいなインターセプトが!?
「ぐぽーぽん!」
《当該アプリはサービスを終了しています、とマスターは仰っています》
心にもダメージが!?
「ぴょーん!」
「クローニン、それはダメだと思います」
「えっ」
清渓川に棲むピラニア並みの速度で食いつかれながら、限界まで引き絞った弓の弦を離す。
乗っているバフはクローニンから貰った2種の属性に、矢に塗った魅了付与の蜂蜜、ダメージバフとして【精密狙撃】、
「【デュアルアーツ】起動!
弾バカから買い取ったスキルで重ねた技により、数少ない弓でしか出来ない大技を解き放った。
【精密狙撃】で放たれた矢は先ず、拡散矢として3本に分裂──計12本。
次に技《剛弓・驟雨》の効果を受け1本が20本に分裂──計240本。
ダメージは拡散矢により1/3となり驟雨の影響で更にその50%まで減──本来の約17%
最後にダメージ判定後、《剛弓・影縫》を含めた全ての状態異常判定が行われる。
「しゃあっ!! 凍結、火傷、魅了、拘束、殆ど全ヒットォ!」
結果として大弓は──ダメージは最低保証分しか出せないものの、超広範囲に4種類の状態異常を重複してばら撒く極悪兵装と化す。
「Fluorite発艦! 刈り取ってきてください!」
「
クローニンの指示で暇をしていたFluoriteさんが発艦。竜魔法で展開した翼を大きく羽ばたかせ、長い尻尾を揺らして地上へと急降下。俺が削って動きを止めた雑魚をビュッフェのように次々と捕食していく。
わぁ、大人の雄があんな情けない声で鳴くんですね(配点:悲鳴)
「グポン!」
《まもなく着陸します、ご注意下さい》
そうして
「タマ、一斉射、もう一度!」
「ハジケていきましょう、死 ぬ が よ い !」
さっきの範囲射撃でSPを消し飛ばした俺の代わりに、全方位に向けて弾バカが色とりどりの弾を乱射。上から見れば綺麗な同心円状であろう物量の暴力が、PC以外のHPを削り飛ばしていく。
「あ、アブっさん。使ってない腕2本、バンザイして貰っていいです?」
「グポーン?」
《いいけどなんで? とマスターは仰っています》
「いいから、いいから」
素直にバンザァァァイ!!してくれたアブっさんの腕に向けて、尻尾で遊ばせているかぎ付きワイヤーを発射。いい感じに操作して、腕と腕の間にワイヤーの橋を架ける。
「──!!!」
飛んでいるFluoriteさんにどう伝えるかと逡巡している間に、ふと見れば目を輝かせたユーちゃんの姿。
やる? やるのね、そう。こんなデンジャーなゾーンで。OK、OK、やるんだったら盛大に行こうか!
「“シュホウ"チャッカンフェェェェズ!!」
キラキラとした笑顔で叫ぶユーちゃん、掲げた剣も何故か金色に光っている。
異様に目立つその光景は、地上付近を旋回していたFluoriteさんの目にも入ったらしい。一目でこちらの意図に気がついて、サムズアップを返してくれた。
「
「……善処します」
通りすがりに掛けられた言葉に頷き、スラローム軌道で走るアブっさんのボディにしがみついた。
戦闘機の着艦といえばアレしかなく、ワイヤーが切れたら大惨事間違いなしになってしまう。物理的にもカッコよさ的にも。どうせ今はSP切れでチャージ中、遊ばせて貰おう。
「ラーンディーング!」
「グボッポー!」
《パワー! とマスターは叫んでおります》
ユーちゃんの合図でグッと全身に力を込めた直後、凄まじい力が尻尾にかかった。ギリギリとワイヤーが軋む、減速が始まる。
即ちアブっさんの両腕の間に張ったワイヤーに、Fluoriteさんが足を引っ掛け空母スタイルの着艦を試みているのだ。やはり竜種は戦闘機、間違いない。
「あば、あばばばば、尻尾! 尻尾がちぎ、千切れ、千切れ……」
減速完了。Fluoriteさんは満足気に、ワイヤーに絡めていた足を外した。
「千切れない!!」
「ソコハチギレトケヨ、プレイヤートシテ」
なんとかなってしまったのだから仕方ないだろう。
「ふっ」
戯れ合う俺たちを鼻で笑いながら、くるりと前転して着艦した当人は
「
降り注ぐニードルガンを回避する都合上、アブっさんが一時停止したタイミング。そこを逃さず、完璧なサンライズ立ちを決めていた。
「ブッピガァン!」
《僕いつの間に航空母艦になったの!? ヤッターとマスターは喜んでいます。可愛いですね》
「グポン!?!?!?」
少し崩れた浴衣スタイルと、半透明の竜翼竜尾、構えられた混天截の重厚感による対比が美しい。……口元の食い千切られた何かを見なかったことにすれば。
「たーまやー」
「バッチバチですが!?」
「えっ、別に呼んでませんよ?」
「!?」
刹那、漸く俺たちに追いついたらしきプレイヤー達の攻撃が炸裂。レイドボスを含めた空中に、色とりどりの魔法で大輪の花が咲き誇る。
……なんて、なんて完璧なロボアニメOPの1カット。
今のうちに配信画面の画角を調整しておこう。こういうのはみんなで共有するから尊いんだ、絆が深まるんだ。
「ソレデ、コッカラドースンダ?」
再度発進したアブっさんの上で、先ほどの機雷らしきアイテムをばら撒きながらユーちゃんが問い掛ける。
ただし挑戦的なその笑顔は、疑問の提起ではなく前提の確認だ。Goサインさえあれば全員がまた爆発する、その引き金に指を掛けているのはたった1人。
「ボク達の目的は、初めからポイントの獲得。イベントは満喫しながら、ちょっかいを出してきた奴らの面子を消し飛ばすこと」
ぐるりと周囲を、俺と弾バカによる削りで大幅に減った敵mobの群れを見て。次いで執拗に俺たちを追いかけてくるレイドボスを、怒り狂った女王蜂を見て言葉を続ける。
「……素晴らしい、鏖殺ですよ!」
どちらかといえば聖女系のスキル構成なのに、呪いの王らしき振る舞い方。隙を見せましたねえええ!! 急急如律令! 喰らえい! 茶番界曼荼羅!!
「ごめんなさい。私たちのギルマス、お腹空くとスクナみたいになっちゃうんですよね」
「コンナトキニハ?」
「スニッカーズ!」
「グポーポン」
《ないよ、とマスターは仰っています》
弾バカのパスをユーちゃんがトス、俺がスパイクを決めようとした瞬間だった。画風の違う顔をしたアブっさんがインターセプト。
「グポン、ピシューン」
《そんなもの、ウチにはないよ……とマスターはキメ顔で言ってます》
「ポッポー!?」
AI反乱!蒸気機関車と化した後輩!?
いや、だがしかし。我らがギルドには頼れる最後の1人が──
「
「んー! ん゛ーッ!? ン゛ーッ!!!」
──ビチビチと痙攣する指らしき物体を、無理やりクローニンの口へ捩じ込んでいた。ワァ……ぁ……泣いちゃった。
……まあ、ともあれだ。
漸く他のプレイヤーも追いついて来て、いよいよレイドボス戦も本格始動。ガッツリポイントを稼ぐ、ボーナスタイムのスタートである。締まらないけど。締まらないけど!!!
感想とか評価、お気に入り等いつもありがとうございます!
【ヤブサメ】
狙撃一本しかバフを盛ってない所為で、対格上に対する火力が本職と比べて低い。リソースをほぼ全て探索力に振ってるせい。
結果、極悪状態異常ばら撒きマンと化した。
【ユー】
最近オンラインメダルゲームにどハマりした
溢れるクリティカルで──トふぜ……!!な構築をしている。
【弾バカ】
トぶどころかVR機器がそろそろ警告を出しかねない程、何か脳みそでドバドバ出ている。
流石に未成年(稼働1年未満)にパチンコを教えない程度の理性は残っていた。
【アブっさん】
××日後に発売するアーマードコアの新作に脳のリソースを食われている。今日も懐かしのコーラルを啜っている。
【クローニン】
割と間接キスを気にしているタイプ──ではなく、普通に齧ってた鮭とば突っ込まれたら動揺するよねって話。それはそうと健全な男性ソウルは現在である。
【Fluorite】
あの指ですか? いいですよね[アボカドわさび醤油味のチーズ]味