元検証班どもが征くVRMMO(手綱は握られていないものとする) 作:銀鈴
≡ # ゲーム系雑談 け
.弾バカ 20:15
.【悲報】クローニン寝落ち確定
.ヤブサメ 20:16
.知 っ て た
.敗 北 者
.切 り 札 抱 え 落 ち
.な ん か 書 い と け
.アブ@決闘者 20:17
.祝勝会なし?
.蛍石 20:17
.はい
.アブ@決闘者 20:18
.ファミチキ冷めちゃった……
.弾バカ 20:19
.草
.通話で聞いたあの悪酔いの仕方
.何かあったんです?
.ヤブサメ 20:21
.万全の準備を整えて、環境を整えて
.優勢の状況を作った、1vs1のレスバで
.証拠抱え落ちで惨敗した
.蛍石 20:25
.箸が進みますね
.⚫︎⚫︎⚫︎複数人が入力中...
あの不完全燃焼感が残るチーター達との最終決戦から数時間。小規模メンテが挟まったのもあって遅くなったが俺たちは────当然、再集合するなんてことはなく。
弾バカは弾幕ゲーに。
アブっさんはレイド戦の後夜祭へ。
Fluoriteさんとユーちゃんは食べ歩きへ向かっていった。
ならば俺はどうするかと問われれば、当然言うまでもなく……
[p.m.21:15(
[浮岩星景リラティック・テル・第八外縁]
赤く焼けた空に浮かぶ、1つ、2つでは済まない無数の、大小さまざまな島々。
ある島には樹々が生い茂り、ある島は流れる川が地上へと流れ落ち、ある島は衛星のように小さな島を己に侍らせ、ある島は霧にその身を包んでいる。
そんな、森を抜け草原に変わり始めた地上の空を占有する、
1度目はユーちゃんと共に訪れた南の果て、その入り口へと再び俺は赴いていた。
いやぁ便利だなぁ! 事実上のファストトラベル!
資金の消費はあるけど、50km以上を0秒で移動できるのは革命が過ぎる。
「これで開拓人口増えないかなぁ……増えないよなぁ……」
そんな自明の理でしかない話は一旦置いておくとして。
レイドボス戦とその直前に行ったみんなとの成長タイムのお陰で、今のヤブサメボーゲン2035のステータスはこうなっている。
PN:ヤブサメボーゲン2035
称号:肆番外征者
種族:獣人(猿)
Lv:44 所持金:6032 G
【ステータス】
HP:207
MP:101
SP:231
Str:100(150)Dex:59(89)
Vit:5(18) Agl:62(82)
Int:5 Luk:25
Min:29(32)
【スキル】
《剛弓Ⅷ》《操体術Ⅲ》《領域魔法Ⅸ》
《精密狙撃Ⅱ》《僭称・竜の炉心Ⅰ》
《試式測距定義眼Ⅴ》《サバイバルⅤ》
《情報操作Ⅰ》《デュアルアーツⅠ》
《パタス・ストライドⅠ》
ー控えー
《デスペナルティ軽減-アイテムⅧ》
《デスペナルティ軽減-ギルⅧ》
《デスペナルティ軽減-時間Ⅴ》
《簡易拠点作成Ⅱ》《支援AI》
【装備】
頭:正体隠しの仮面+Ⅰ
胴:弾薬ベルト改with 滑空用マント+Ⅲ
右手:GB-16+Ⅱ(大弓)
左手:鋼鉄の弓籠手+Ⅰ
腰:多機能ベルトwith 射出装置付ワイヤーフック
with 高性能ウインチ
with 簡易ポーチ(3スロット)
足:ハードキッカー+Ⅰ
アクセサリー(6 /10)
・GB-16M(矢筒)・対異常の護符
・ナックルナイフ ・天揺の鬼火
・剛力の腕輪 ・宗匠の腕輪
基本となる弓、体術、領域魔法の間にシナジーは……ないこともないが、一般的な構築と比較すると相対的に無に等しい。
火力に寄与するスキルは2種でアタッカーとしては貧弱、回避・耐久に寄与するスキルもまた2つ。タンクにも回避アタッカーにもなり得ない。斥候と見ても、罠解除がスキルとしてないから不十分。
一般的に特定の役割を果たすなら最低でも4種類は同系統のスキルで固めることになるあたり、何にもなりきれてない。
レイド戦で中途半端な活躍しかできなかったことが示す通り、対人や対モンスターという点で見れば所謂『弱い』構築だ。
だが同時に、レイド戦による強化を経て目指す方向性としては一定の完成をみた。
自衛が出来る戦闘力、継戦能力、逃走能力、情報収集能力、不意な事故死の対策。その全てが一定水準で揃っているこの構築は、探索という一点に於いて同型の構築を除き他の追随を許さない。
「さて」
そして今、ユーちゃんという接待すべき相手もいない今。
その性能を十全に発揮するべき時が来た。
東西北の先駆者ニキネキ達と比較して大幅に進行が遅れている以上、ちょっと本気で遊ばねばなるまい。ぶっちゃけレイドで大したダメージ出せなかったことより、こっちの方がよっぽど悔しい。
「いっち、にー、さん、し」
ぐいぐいと身体を動かし動作を確認。
準備運動は大切、古事記にもそう書いてある。
「やるか」
浮岩星景リラティック・テルのマップ構造は大まかに区分して8つ。
いま俺が立っている、中心点から見て最も外の
続いて4割ほど探索が済んでいる、
そこから第六、第五と続き第四内縁で一度名称が変更。前回来た時はついに辿り着くことは出来なかったが、中心点であろう何もない空間がある。
「目指せ第ゼロ区画」
自分に言い聞かせながら、両手を地面にクラウチングスタートの体勢を取る。
外縁および内縁の幅は、それそれの数字km。
つまり推定第ゼロ区画まで辿り着くには、直線距離で36kmほど。
「はい。よーい、スタート!」
(他愛)ないです。
領域魔法による探知を享受しながら、情報操作スキルも並行使用して隠蔽状態へ移行。全力ダッシュを敢行した。
1歩、2歩、3歩。
パタスストライドのパッシブ効果により、たったそれだけで自分の出せる最高速度へ到達。
4歩目。
頭上を通りがかった巨大な
5歩目。
更に身体が空へと向かい始めたところで、重力を発生させている
「ていく、おーふ!」
6歩目。
ウインチの巻き取りと元の加速、そして展開した滑空翼により空の世界へと飛び出した。聞き覚えのあるBGMをバックミュージックに、地面がどんどん離れて霞がかっていく。
「相変わらず凄い風だな、っと!」
周りを見渡せば見えるのは、地上からは見えなかった無数の絶景。
地平の先まで続く自転しながら公転の軌道にある星々。星々の周りには衛星のように付き従う星や、虹と海を持つ星、雲や水を輪のように従える星も少なくない。更に遠くには地上からは見えなかった山や森、雪山さえ確認できる。
リラティック・テル、そう名付けられたフィールドを一望できた。
ゲームの世界だとは理解している。
浮島の星々が現実には存在しないファンタジーの産物だと証明している。だとしても、
「……ああ、やっぱり綺麗だ」
見たかったものが目の前にあった。
チーターなんかとやり合っていたせいで、無駄に荒んでいた心に潤いが戻っていくのを感じる。
そんなパノラマの大絶景に浸っていられたのも僅かな間。
飛翔に利用した巨大な
まだ翼のお陰で滑空と呼べる速度で留まっているが、経験則としておよそ1分。それで完全に重力圏に捉えられて、俺は努力も虚しく墜落死を迎えることになるだろう。なっている(n敗)
だが、今は違う。
ギュッとベルトを握りしめ、一瞬だけ翼を収納。体の向きを反転させてから再展開し、地上側の
気分はインディーズゲームの壺おじの最終局面に近い。
墜落するより空へと飛び出す速度を確保しながら、円を描く軌道で巨大な
肌を撫でるビリビリとした衝撃とうるさいほどの風切り音。そんな中でも目指す方向を失わず、平衡感覚も失調せずに済むのは領域魔法のサーチがあるから。
視界に映る事前にマーキングしたタイミングポイントが迫る中、メニュー画面→アイテム欄と操作して[初心者の大弓]を実体化。脚で掴んで準備を完了。
「《精密狙撃》《デュアルアーツ》起動、
最大限のバフを乗せた《剛弓・獄火+滝落》の最大火力×最大攻撃数の大暴発。HPを3割消し飛ばすことを代償に、巨大な
「スイング、バイ!」
2重3重の墜落速度も合算し、自分単独では不可能な速度を経て第七外縁の方向へ向けて発射した。
「イヤッッホォォォオオォオウ!!」
飛行時間は5分間を予定しております。
そうして、各々のプレイヤーが普段通りの活動を再開し始めた頃。
プレイヤー達以上に時間を加速して、働き詰めとなっている運営の会議室には、重く苦しい空気が満ちていた。
「おかしい。我々はもっと、マップが焼失したりボスがオモチャにされるような、面白おかしい問題への対策チームだったはずでは?」
「そッスね」
「なのに我々は今、いったい何を相手にしている?」
「レイドボスの出現位置に介入する程、スペックの高い人造バグコードへの対策っすね」
「おかしくない?」
「おかしいッスね」
ずんと沈み込むような気配の原因は、言わずもがなチーター達が走らせていたバグコードだった。色々とデータ自体は集まっているが、楽しさと忙しさの悲鳴を上げることができないほど、彼らは行き詰まっていた。
「データはあるんだ、データは。
異常なステータスの増加数値、動画による現行犯の使用確認、本人達の自白。何もかもが、奴らを黒だと判断している」
「すッス」
「なのにどうして、どこを見ても
「ッスねぇ」
今回、チーター達をBAN出来たのはあくまで状況証拠。
チートを使っていない限り有り得ない数値的変動があり、グリッチや既存データの掛け合わせでは済まない内容だったから。それを運営が直に確認できたからにすぎない。
ゲームのプログラム上、そして稼働していたログの上では一切の痕跡が残っていない。
チーター達は全員、ゲームの通常プレイの範疇でしかないと電子の記録は告げている。
「垢BAN措置の解除は検討する必要すらないとはいえ、なんだかなぁ」
「あ、チーフ。プログラム班の方ら報告が来てるッス。『あと一歩のところで取り逃してしまったけど、バグの大凡の正体を掴んだ』っ……て、えぇ?」
DX化が進んだ弊害で、チーフと助手くんしかいない空間に困惑が溢れた。たった今まで対処不能と話していた内容が、ものすごく軽い内容で伝えられたのだ。さもありなん。
「落ち着きたまえよ助手くん。プログラム班には彼が在籍している、驚くことじゃぁない」
「あー、元極振りの? でもそれならそれで、アレで捉えられなかったって……」
自力で数千個の物理演算を行える人力スパコンのような
答えは添付された報告書の末尾に、しっかりと記されていた。
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以上の結果により本チートの頒布元、及びチートコードそのものは人類の制作したものではないと結論づける。
ここからは個人的な推論になるが、多分FEV内のNPCかAIで発生していたバグの修正を受け持っていた個体。それか意図的な誤学習でバグに侵食されて暴走した個体。
犯人はそこら辺と思われる。シンギュラってるよこれ。
あと多分、チートコードそのものがAIの分御霊みたいな感じだと思う。処理速度で負けたから人類じゃないわ、あれ。
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日常の裏で、静かに暗雲が姿を見せ始めていた。